JEITA新会長に、NECの矢野会長が就任

「震災からの復興に全力で貢献したい」


 電子情報技術産業協会(JEITA)は27日、2011年度の会長に、NEC会長の矢野薫氏が就任したと発表した。

 2011年4月1日より、JEITAは社団法人から一般社団法人へと移行。一般社団法人に移行してから最初の会長となる。

JEITA新会長に就任したNECの矢野薫会長

 矢野新会長は就任後の会見において、「IT・エレクトロニクス産業は、多方面への部品、製品、サービスを供給しており、スマート化の旗印の下、復興に向け最大限の貢献、グローバルサプライチェーンの責務を果たす必要がある。東日本大震災復興に向けて最大の努力で取り組む」とした。

 また、「電力供給の配慮について申し入れた結果、使用制限の一部緩和などの措置があり、経済活動への影響を最低限に抑えることができた」などとした。

 さらに、IT・エレクトロニクス業界における夏場の節電対策については、「JEITAには、素材、部品の川上から、完成品の川下まで多様な企業が参加しており、さらに多くの中小企業がそれに連なっている。業界団体として足並みを揃えて土日稼働などに踏み出しにくい環境にある。また半導体製造やデータセンターなど節電の余地が少ない業態もある。各社ごとに、節電への取り組みを行なうことで、生産を落とさない、あるいは停止をミニマイズすることになる。空調の設定温度の変更やクールビズをもう一歩進めた取り組み、夏期休暇を長期化し、土日出勤するなどの様々な組み合わせによって、15%削減という目標達成が可能になるだろう」と述べた。

 JEITAでは、2011年度の事業計画における基本方針として、「環境と経済成長の両立」を掲げ、「3月11日に発生した東日本大震災の影響は甚大であり企業活動はいまなお厳しい状況のなか、復旧、復興に向けた課題に全力で取り組む」としたほか、「IT・エレクトロニクス産業が豊かな暮らしと、低炭素社会の実現に貢献していくため、『環境と経済成長の両立』に向けて、関係機関と連携し、R&Dなどを通じて、グリーンイノベーションの推進を図る。その際、成長分野の開拓、振興に向け、国際的なイコールフッティング確保は不可欠。競争条件整備に向けた政策提言の強化、新興国などのボリュームゾーンへの戦略的なビジネス展開を支援するといった点に重点的に取り組む」としている。

 東日本大震災復興に向けた対応としては、政府と連携しながら、関東・東北地区を中心とする電力不足への業界対応について検討、これを実行するとともに、一日も早い震災の復旧、復興に向けて、短期のみならず、中長期的な対策を提案し、国民生活、経済、産業、グローバルサプライチェーンの早期復旧と復興の実現を求めるとした。

 また、政策提言においては、「イノベーションの加速と競争力強化に資する産業政策、経済政策への提言」、「税制改正要望」、「グローバル物流競争力の強化」を掲げ、とくに税制改正要望では、会員企業の国際競争力を維持、強化し、企業の海外流出防止と国内雇用の確保に資するため、世界水準の事業環境整備を目指すとし、「具体的には法人実効税率の引き下げ、研究開発促進税制の拡充および延長などを働きかけるという。

 さらに、製品、サービスによる貢献を含めた温室効果ガスの排出削減を世界規模で推進するための、国際的に公平で実効性のある次期国際枠組の確立に向けた政策提言を実施するという。

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)については、「JEITAとしては、TPPへの早期参加を強く求めていく。その際には、農業改革も同時に行なわれなくてはならない。日本の農業の競争力を高めるには、ITを活用する必要がある。東北地区の農業の復興にもITの活用が不可欠であり、そのためには、規制を緩和してもらうということも必要だ」と語った。

 一方、市場創出への取り組みとして、「クラウドコンピューティングの推進」、「情報端末、電子書籍、3Dなどの新規製品市場の拡大」、「低炭素社会の実現に資するグリーンITの推進」、「省エネと快適さを実現するスマートコミュニティの実現推進および関連ビジネス市場の創出」、「医療分野における情報システムの連携化と機器開発環境の改善に向けた規制緩和、審査迅速化への取り組み」、「デジタル放送により実現する新たなサービスを見据えた新市場創出への取り組み」をあげた。

 「クラウドに関しては、震災によって長所を実感した企業も多く、BCP(事業継続計画)としての観点からもデータセンターの安全性が理解されている。今後、市場の拡大が期待される。電子書籍や情報端末はBtoBtoCとしてのソリューション型のビジネスが拡大することになるだろう」と語った。

 東日本大震災の需要への影響については、「マクロ的にいうと、第1四半期は震災の影響により需要が停滞している。さらに、戦後というなかでみても、供給サイクルが需要に追いつかないという初めての状況ではないだろうか。しかし、第2四半期からは徐々に回復し、もとの状態に戻りはじめる。さらに、下期には被災地における需要の回復、各種対策による復興需要により、震災前の予想よりも上回るだろう。年間では前年並みから、若干にプラスになるのではないか。震災をきっかけとして、新たなニーズが出てきている。日本における新たな国家のモデルを作るチャンスであり、日本のモノづくりが試されている」などとした。



(2011年 5月 27日)

[ Reported by 大河原克行 ]