アクトビラ、VOD進化とともにBtoBなど事業領域拡大

-'13年以降にスマホ視聴も。会員登録は52万


 アクトビラは10日、事業方針説明会を開催。これまでの「テレビ向け映像配信」を強化していくとともに、プラットフォームとしてのアクトビラを活用した事業や、BtoB向けの展開など、新規事業に取り組む方針を明らかにした。


■ 会員数は52万。4月からはクレジットカード無しでも登録可能に

アクトビラのサービスに関する最新データ

 アクトビラのサービスに関する最新データも公開(4月末時点)。アクトビラの動画対応テレビは累計4,000万台以上が出荷され、11社227機種が対応。そのうち、アクトビラへの接続台数は420万台、会員登録数は52万件。同社が会員数を公表したのは今回が初めて。

 なお、3月末までは会員登録にクレジットカード登録を必須としていたが、4月以降はメールアドレスなどの情報だけで登録可能にした。これにより、3月末時点では50万件だったが、4月だけで2万件増加したという。今後のマルチスクリーン展開をにらみ、'12年末までに100万件を目指す。

 コンテンツ数は映画やアニメ、ドラマなどを中心に6万本以上で、VOD作品提供業者は63社、見放題パック商品は16商品となった。

 VOD(ビデオ・オン・デマンド)の売上は、2011年度に前年比約2倍に伸張。NHKオンデマンドのような「月額見放題パック」の販売構成比が向上していることが要因で、見放題パックの比率は47%となったという。

 また、VODだけでなく、広告サービスや情報サービスにも取り組んでおり、特にコア層である「40代男性」に人気のあるビジネス関連コンテンツを強化。また、地方局コンテンツの配信や東日本大震災被災者支援のための「みなみそうまチャンネル」などの取り組みも紹介した。

アクトビラのVOD取扱高推移アクトビラサービスの特徴番組プログラム

■ 新データ放送対応やサービス高度化。タブレット/スマホ視聴も計画

スマートフォンで検索、視聴予約に対応

 アクトビラの強化については、'12年度はスマートフォンやタブレットの対応を強化。スマートフォンなどからアクトビラの番組を検索し、見たいページを登録。テレビ側では登録番組を呼び出して、すぐに再生操作が行なえる。すでに4月からスマートフォンからの検索、視聴予約に対応している。

 同社ではアクトビラを「テレビ用サービス」と位置づけている。しかし、'13年以降には、スマートフォンやタブレット、テレビなど、様々なデバイスでシームレスに視聴可能にする、マルチスクリーン対応も計画しているという。会員登録でクレジットカード情報を不要にしたのも、こうしたマルチスクリーン展開を睨んだものという。

 アクトビラのプラットフォームは、マルチスクリーン対応やサービス高度化に向けて、様々な用途に対応できるように機能APIの整備を進めている。これによりAjax-CEや各社スマートフォン、スマートTV、放送連携などの対応を加速していくという。

 その一例としてパナソニックのVIERA/DIGAにおける「アクトビラ オンデマンド for Panasonic」を紹介。コンテンツは通常のアクトビラとほぼ同じだが、スムーズなUI動作やキーワードの横断検索、コンテンツ提供者ごとの検索などを可能としている。

アクトビラ オンデマンド for Panasonicジャンル検索キーワード入力も

 法人向けの展開として、「マイチャンネル」という機能も紹介。これはテレビの「アクトビラ」ボタンを押した際にアクトビラのトップページとともに、任意の法人のページを表示可能とするもの。例えばパナソニックの販売店がVIERAを販売した際には、アクトビラとともに、同販売店のサービスページに誘導する事が可能になる。

放送通信連携サービス。新データ放送に対応

 新データ放送にも対応し、放送通信連携を強化。NHKが2012年夏にサービス開始予定の「タイプ2」と呼ばれるデータ放送に対応する。

 従来は、データ放送からVODに誘導すると、画面切り替えが発生し、HTMLブラウザのVOD画面に遷移。また、VOD画面から放送画面に自動で復帰することも出来なかった。しかし、タイプ2では、放送画面上にVODを重ねあわせて表示可能になり、VOD画面から元の放送画面に自動復帰が行なえる。そのため、ドラマ視聴中にデータ放送を立ち上げ、前回放送のVODを誘導する、といった放送通信連携が容易になる。


データ放送からNHKデータオンラインを呼び出し新しいデータ放送画面テレビ放送を小画面で表示したまま、VOD紹介画面に

■ プラットフォーム事業など多様化で収益拡大へ

香西卓 社長

 香西卓代表取締役社長は、アクトビラが目指す姿として「映像配信事業&プラットフォーム事業のテレビ向けネットサービス革新企業」と紹介。これまでのアクトビラ事業の強化に加え、「新アクトビラサービス」、「プラットフォーム」、「システムオペレーション」の3つの新規分野を経営の柱に育てると説明。「プラットフォームとしてのアクトビラを強化して、オープンマインドに取り組んでいく」という。

 「新アクトビラサービス」は、従来のVOD強化とともに前述のマルチスクリーン化、放送連携強化などによるサービスの多様化による収益拡大策。


中期計画の考え方アクトビラ事業の変化目指す姿

 「プラットフォーム」分野では、4,000万台というアクトビラ対応テレビの普及台数を生かし、パートナー企業との連携を進めるもの。「マイチャンネル」による法人ページヘの誘導は、CATV事業者、ネットスーパー、放送事業者などに展開。さらに映画館におけるODS(Other Digital Stuff)展開も強化する。

 ODSにおいて、アクトビラはマイシアターや電通、コンテンツ提供者とODS製作委員会として関与し、コンテンツの調達などを担当。ワーナー・マイカルやTOHOシネマズなどの映画館でのコンテンツ上映とともに、アクトビラで関連コンテンツをセットにして提供。VOD配信はアクトビラ以外のJ:COMオンデマンドやひかりTV、Hulu、TSUTAYA TVなどへも展開する。5月12日から、ワーナー・マイカルやTOHOシネマズなどで公開する「中島みゆき『歌旅劇場版』」を皮切りに、拡大を図る。

 劇場前売券と、アクトビラでのシリーズ作視聴権を連携させるなどで魅力を高め、今後のコンテンツとしては、「ニューヨーク ブロードウェイのミュージカルの劇場展開などを考えている」という。

 「システムオペレーション」は、業務用VOD市場の開拓や、ホテル用VOD、ライブ配信などのBtoB向けの展開を計画。例えば、パナソニック系列店の店頭販促用ビデオは、従来DVDを店舗に配布する、という方式だった。しかし、今ではアクトビラの仕組みを使いストリーミングで提供している。こういった事例を今後も拡大していく方針で、例えば、「ある法人が株主総会の模様を全国支店に一斉配信する際に、アクトビラの仕組みを使うことで、リアルタイムに多拠点に配信できる」といった提案を行なっていく。パナソニックグループのBtoB向け映像配信関連事業がアクトビラに集約されたこともあり、この領域での事業拡大を進めていくという。

 香西社長は、「VODも年間2桁成長を見込んでいるが、数年後にはこれらの新規分野の売上が半分以上を超えるのではないかと考えている。短期的にはBtoB向けの分野が期待できる」と説明した。なお、民放キー局と電通が中心となり4月にスタートした「もっとTV」については、テレビ向けのVODサービスとしてアクトビラと競合する形になるが、「IPを使ったVODを盛り上げるという点では、有料配信のマーケットが大きくなる機会になる。その点では追い風になると考えている」とした。


(2012年 5月 10日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]