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パナソニック、CES基調講演で56型4K有機ELパネルを披露

20型4K IPSα液晶搭載タブレットを年内に製品化

パナソニックの津賀一宏社長

 米ラスベガスで開幕した2013 International CESの初日に行なわれたオープニングキーノートに、パナソニックの津賀一宏社長が登壇した。

 これまでにも、パナソニックの幹部がCESの基調講演に登場したケースはあったが、2004年の大坪文雄会長、2008年の坂本俊弘氏はいずれも当時は専務取締役兼カンパニー社長の立場。パナソニックの社長が講演を行なうのは初めてのこととなった。

 開催元であるCEAのゲーリー・シャピーロCEOから、「申請中のものを含め、100件以上の特許を持つ人物」として紹介された津賀社長は、それを受けるように、「1979年の入社以来、技術者としてやってきたことが、私のモノの見方であり、情熱の基礎となっている。心からエンジニアである。技術者は合理的で、分析的な人が多いといわれるが、問題解決には情熱を持って取り組んでいる。理想的なビジョンを、実際に使えるものに変えていくことに取り組んでいる。エンジニアは、世界をよりよいものにすることに深い関心を持っている」と切り出した。

 そして、津賀社長は、「パナソニックと聞くと、テレビのマニュファクチュアリングカンパニーだとイメージする人が多いだろう。それは当然のことである。だが、いまパナソニックが目指しているのは、エコ・エンジニアリング・カンパニー。これに向けて社員が努力をしている」と語り、北米におけるテレビメーカーからのイメージ脱却を示すことが、この基調講演の狙いであることに触れた。

 また、「パナソニックを動かすものはなにか。その答えはとてもシンプルである。それは『人』、すなわち『お客様』である。真のお客様価値の実現のために、これまで以上に努力をしており、2つの不可欠なことに取り組んでいる。ひとつは、お客様がなにを求め、なにを必要としているのかについて。これは、お客様がパナソニックの製品を購入するずっと前から深く耳を傾けることが大切である。具体例のひとつとして、世界の主要地域に設置しているパナソニックの生活研究センターの取り組みがある。2つめは、お客様に商品を購入していただいたあとも、長くお客様との関係を構築することであり、そのためには、ワクワクするようなサービスを提供していくことが必要である」と述べた。

56型4K有機ELパネルを開発。「重量は通常の約半分」

「住宅空間」、「非住宅空間」、「モビリティ」、「パーソナル」の4つの領域にフォーカス

 津賀社長は社長就任以来、ひとつの商品カテゴリーを超えた商品展開、リビングルームを超えた商品展開に取り組んでいく姿勢を示し、「住宅空間」、「非住宅空間」、「モビリティ」、「パーソナル」の4つの領域にフォーカスすることを示しているが、「この4つの領域をつなぐのが『人』である。人は、パナソニックのすべての活動の中心であり、お客様がどこにいても、お客様の価値を高めたいと考えている。そのためにはハードウェア単体の販売に留まらず、ソフトウェアやサービスを含めたトータルソリューションを提供する新たなビジネスモデルに取り組んでいく必要がある。それがBtoB事業であり、これを最大化していく必要がある」などと語り、「多くの人が、パナソニックが事業をやっているとは思っていない領域において、生活向上に貢献する活動を行なっている。たとえば、自動車、店舗、アビオニクス、広告、エネルギーといった領域がそれにあたる。そうしたBtoBtoCの事例を紹介していく。そんな領域までカバーしているのかと、びっくりするようなものがあるかもしれない」とし、モデレータであるリサ・リン氏との対話を通じて、「YOUR TV」、「YOUR HOME」、「YOUR CAR」、「YOUR BUSINESS」、「YOUR JOURNEY」、「YOUR COMMUNITY」という6つの観点から説明をはじめた。

YOUR TVをはじめ、6つの観点から説明

 最初のYOUR TVにおいては、「米国のテレビ産業は大きな変化の真っ直中にあり、次の5年で、これまでの25年以上の変化がある。コンテンツへの簡単なアクセスや柔軟な選択肢、シンプルで直感的なユーザーエクスペリエンスなどが求められている。画質が美しい以上の多くのものを望んでおり、ありきたりのスクリーンは必要とされていない」とした。

 ここでは、前日に行なわれた同社プレスカンファレンスで発表されたmy Home Screenについて説明を行ない、「音声認識と顔認証技術により、マイホームというだけで、自分のパーソナルページに切り替えることができるといったパーソナライズ化が可能になる」などとした。

 さらに、サービスパートナーやコンテンツパートナーとの連携により、インターネットを通じた放送コンテンツ配信や、スマートデバイスでの視聴、ユーザーごとにカスタマイズした広告配信にも取り組むとした。

my Home Screenをデモストレーションする津賀社長。津賀社長が好きなハーフムーンベイのゴルフコースの写真を表示した

 津賀社長は、「YOUR TVのコンセプトは、パナソニックの方向性そのものである。お客様ニーズにあわせたAVテクノロジーの開発やPDPや液晶の開発もこれまで通りに進めるが、YOUR TVによって、ハードウェアメーカーから、トータルソリューションプロバイダーへの事業領域の拡大や、他のグローバルリーダーとの連携、お客様との深く、長い関係構築によるお客様価値の提供により、パナソニックの新たな時代が始まる」とした。

公開された56型4K2K有機ELパネル

 同社では、新たなAVテクノロジーへの取り組みのひとつとして、56型4K2K有機ELパネルの開発を発表した。同パネルに採用したTFTは、ソニーとの共同開発によるものだという。

 パナソニックが開発した有機ELパネルは、有機EL材料を印刷により塗布し、発光層を形成するRGBオール印刷方式を採用。同方式の有機ELパネルでは世界最大規模になる。

 有機ELパネルの印刷方式は、生産工程がシンプルであり、異なる画面サイズでも印刷ヘッドを共有できるなど、多様な画面サイズへの展開が容易な方式であるとともに、必要な箇所にのみ必要な分量を塗布できるため、材料ロスが少なく、生産リードタイムの縮小につながるというメリットがある。

 同社では、RGBの3色すべての有機EL材料を印刷で塗り分ける方法を採用。大画面で均一に塗布する印刷設備技術および印刷プロセス技術を新たに開発したという。

 また、多重反射なしに光を通す「透明陰極」側から有機ELの発光を取り出す独自の「透明陰極型トップエミッション構造」を採用したことにより、光取り出し効率を高め、広視野角を実現した。

 画面寸法は、1,233×693×1,414mm。解像度は3,840×2,160ドット。ピーク輝度は500cd/m2。階調表現は10bitで、コントラストは3,000,000:1。また最薄部の厚さは8.9mm、重量は12.4kgとなっている。「重量は通常の4Kパネルの約半分」だとし、「この良さを体験してもらうには、近くで見てもらうしかない。ぜひパナソニックブースでみてほしい」と語った。

 YOUR TVに関しては、パナソニックの北米総代表であり、パナソニック ノースアメリカ会長のジョゼフ・テーラー役員も登壇して説明したほか、スペシフィック社のティム・ヴァンダーフックCEOが登場。「テレビの経験が変わるタイミングに入ってきている。個人に向けたコンテンツや広告が提供できるようになる」とコメント。また、ユニビジョンのセールス担当プレジデントのキース・ターナー氏がビデオメッセージを寄せ、「パナソニックの技術によって、ターゲットに対して効果的な広告が配信できるようになる」などとした。

パナソニック ノースアメリカ会長のジョゼフ・テーラー役員
スペシフィック社のティム・ヴァンダーフックCEO

20型4K液晶のタブレットを年内に製品化

創エネ、蓄エネ、省エネ、エネルギーマネジメントをあわせたソリューションを提供

 YOUR HOMEについては、テーラー役員が説明を行なった。

 「パナソニックは、創エネ、蓄エネ、省エネ、エネルギーマネジメントをあわせたソリューションを提供しており、家電製品やAV機器、LED照明などの省エネ製品は、最優先で取り組んできた。SEG(スマートエナジーゲートウェイ)は、様々なデバイスを使い、家電製品を家の中や離れたところからコントロールでき、電力の使用状況もチェックできる。このノウハウを店舗やコミュニティなど他の領域にも展開していく」としたほか、「パナソニックでは、エネルギーと同様に、クラウドが重要になる。クラウドは機器を接続するだけで、家のなかで外でも、必要なことを予測し、それに応えてくれる。このビジョンを実現するために、IBMをはじめとするいくつかの世界的なIT企業とパートナーシップを結んでいる」とした。

 YOUR CARでは、再び、津賀社長が説明。「1984年にカリフォルニア大学サンタバーバラ校にコンピュータサイエンスの修士号を取るために、米国にきたが、そのときに米国のイノベーションを示す部分と個人的に密接なつながりを築いた。それが自動車である」とし、画面には1985年に津賀社長が運転していたマスタングのコンバーチブルの写真を表示し、会場の笑いを誘った。

 ここではゲストとして、ゼネラルモータースのフィル・エイブラムCIOが登場。「新たなアプリケーションをあとから追加して利用するといった新たな環境を提案できる」とし、テスラ・モーターズのイーロン・マスクCEOはビデオメッセージで「パナソニックの技術がなければ、このような車を出すことができなかった」とした。

1985年に津賀社長が運転していたマスタングのコンバーチブル
EVで登場したゼネラルモータースのフィル・エイブラムCIO
フィル・エイブラム氏

 津賀社長は、「パナソニックは、自動車産業界をリードするメーカーとのヒジネスを拡大する戦略として、家庭におけるエナジー・ソリューション技術を活用したEVをはじめとするエコカーへのトータルソリューション展開と、つながるホームAVソリューション技術を活用するコネクティッドカーソリューション展開がある。エコカー向けソリューションでは、バッテリーをより効率的に使うためのEVパワーマネジメントシステム、ハイブリッド車やEVでエアコンを使う際にパワーを減らすマネジメントシステムを新たに開発。コネクティッドカーソリューションでは、GMと共同で、新たなインフォメーションシステムとして『My Link』を開発した」と話した。

 My Linkは、車内でのAV、通信、ナビゲーション機能を搭載。さらにネットワークを通じて新たなアプリケーションを追加することができるという。

20型4K IPSα液晶パネルを搭載した「4K Tablet」

 YOUR BUSINESSでは、テーラー役員が新たなタブレット端末を公開した。これは、20型4K IPSα液晶パネルを搭載した「4K Tablet」と呼ばれるものだ。今年中に製品化し、法人向けに販売していく考えだという。

 画面解像度は3,840×2,560ドット、983万画素を実現。1インチあたり230万画素の解像度を達成。176度以上の視野角を持ち、10点マルチタッチを採用している。

4K Tabletにデジタルペンで書きこむこともできる

 また、15:10のアスペクト比とすることで、A3サイズの紙面をほぼそのままのサイズで表示できるのも特徴だ。「新聞や雑誌、あるいは写真などのコンテンツに最適化した表示が可能になる」としている。また、4K解像度と同等の入力分解機能を持つペン入力インターフェースを採用。手書きと同じ感覚で画面上にデータを書き込むことができるという。

 CPUにはIntel Core i5 3427U vPro 1.8GHzを搭載。OSにはWindows 8 Pro 64ビットを採用している。4GBのメインメモリー、128GBのフラッシュドライブを搭載する。サイズは、474.5×334×10.8mm。重量は約2.4kgとなっている。

 同製品を説明したテーラー役員は、店舗向けソリューションとして、ローソンの環境配慮型店舗の展開に協力し、2006年比で20%のエネルギー使用量の削減を実現したことや、マクドナルド向けにPOSシステム、セキュリティカメラ、モニターなどを導入している事例を紹介した。

 ビデオメッセージでは、写真家のダニエル・ベレフューラック氏が、「写真の編集作業において、高い画質の環境を利用しながら、細かいところにまで修正ができるようになる」と期待を寄せた。

 また、マクドナルドのオーナーであるトラビス・ヘリウッド氏は、「パナソニックによるシームレスなトータルシステムによって、お客様にすぐに商品を提供できる環境が整っている」と語った。

 YOUR JOURNEYでは、津賀社長が「パナソニックは、航空会社275社、5,000機以上の旅客機に機内エンターテイメントシステムや通信機器を提供。2012年には5億人以上がそのサービスを体験した」と語り、「2013年には、1,600機以上の航空機で、ブロードバンドのインターネットサービスを楽しめる次世代のシステムを投入する」と語った。

 パナソニックでは、1998年にユナイテッド航空との協業を開始。同社が導入しているボーイング787にもエンターテイメントシステムを導入しているという。

 「ユナイテッド航空は、パナソニック最大のグローバルコミュニケーションスイートカスタマーとなり、2013年には、世界中の路線向けに300機以上に最先端ソリューションを提供する」と語った。

 さらにニュージーランド航空にもシステムを導入していることを説明。2014年にはこれまで以上に低電力で、軽量なeXLiteを納入することも明らかにした。

スターアライアンスグループのロブ・ファイフ会長

 ニュージーランド航空の前CEOであり、スターアライアンスグループのロブ・ファイフ会長が登場。「ニュージーランド航空は地理的な特性上、12時間以上の長いフライト時間の路線が多い。そのため、エンターテイメントシステムの充実は不可欠であり、パナソニックのシステムは理想的である」とコメント。また、ユナイテッド航空のジム・コンプトン副会長がビデオメッセージを寄せ、「機内でインターネット接続した環境を提供することが、今後の標準になってくる。そのゴールに向けてパナソニックと協力していく」などとした。

変革の必要性を強調。「創業以来のDNAは変わらない」

 YOUR COMMUNITYに関しては、テーラー役員が説明を行なった。

 パナソニックではオリンピックのTOPスポンサーとして、エンド・トゥ・エンドの放送システムを導入し、25年間に渡って感動を全世界に伝えていること、USメジャーリーグサッカー(MSL)のスポンサーとして、全米のMLSスタジアムに幅広く総合ソリューションを提供していることなどを紹介。また、東京スカイツリーへのLED照明ソリューションの提供、藤沢市でのFUJISAWAサスティナブル・スマートタウンの取り組みでは、2014年に数千人が暮らす街になることが紹介された。

 ビデオメッセージでは、女子サッカー米代表のアビー・ワンバック選手とアレックス・モーガン選手が、「パナソニックの映像技術によって、ロンドンオリンピックでは3Dによる放送が行なわれた。次のオリンピックでも期待している」などとした。

 さらに、パナソニック ノースアメリカ本社ビルを現在のセコーカスから、ニュージャージー州ニューアーク市に移転することを公表。環境技術の導入や、社員の通勤に公共交通機関を利用することでCO2排出量を50%削減できるという。

 ここでは、ニューアーク市のコリー・ブッカー市長が登壇し、「7年前に市長に就任したときは、予算もなく、犯罪も多かった。しかし、その後、大きく変革し、今回のパナソニックの本社が来ることで、成長と発展を確実なものにできる」などとした。

ニューアーク市に移転するパナソニック ノースアメリカ本社ビルの外観
ニューアーク市のコリー・ブッカー市長
津賀一宏社長

 1時間に渡る基調講演の最後に津賀社長は、ゆっくりと言葉を噛みしめるような口調に変え、「人の数や家庭の数、コミュニティの数だけ、より良い世界のビジョンがある。今日、お話ししたことは、みなさんが知っているパナソニックとは異なり、大胆であり、意外なことと感じるかもしれない。だが、お客様と一緒により良い世界を作っていくとコミットメントしたものであり、この目標を達成するためにパナソニックに求められる変革と革新の必要性はかつてないほど大きい」とした。

 また、「松下幸之助創業者が約100年前にパナソニックを創業して以来のDNAは変わらない。モノを作る前に人を作る、産業報国の精神、お客様大事の心といったDNAを維持していく。そして、『エコ&スマートソリューション』により、大切なものをより良くしていくことが、パナソニックの今も、昔も変わらない姿。パナソニックは、Engineering a Better World for youによって、お客様一人ひとりが求めるより良い世界の実現に貢献していく」として、講演を締めくくった。

(大河原 克行)