小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1233回

「使い道がない」を解消する360度カメラ、DJI「Osmo 360 II」のアプローチ
2026年9月3日 11:15
早くも後継機登場
2つのレンズを前後に搭載し、360度の空間が撮影できる360度カメラは、2013年のリコー「THETA」にまで遡る。最初は静止画だけだったが、当時ヘッドマウントディスプレイを使ったVRはアリだねということで、多くのカメラメーカーが参入し、次第に動画撮影も可能になっていった。おそらく製品のピークは2016〜17年ごろだったと思われる。
だがそこから次第にVRが失速状態となり、360度カメラも縮小傾向に入っていく。その中で生き残ったのは、Insta360、DJI、GoProといった、アクションカメラ系のメーカーだった。中でもDJIの初号機「Osmo 360」の発売は2025年で、「え、今から?」という印象を持ったものだった。
DJIの強みは、独自開発のセンサーだ。最大8K/50pの撮影を可能にした正方形センサーを搭載しつつ、360度映像でVRという方向性ではなく、切り出しでも高解像度のままという使い方に舵を切った。つまりやることはOsmo Pocketと同じだ。ジンバルでカメラを振るか、全方位撮っておいて、あとから切り出すかの違いである。
そして今年、約1年の間をおいて後継機となる「Osmo 360 II」が発表された。最大動画撮影能力は8K/60pとなり、日本及びアメリカのビデオ規格とも合致する。価格はスタンダードコンボが93,610円。以下のバリエーションやアクセサリーも用意している。
- Osmo 360 II スタンダードコンボ:93,610円
- Osmo 360 II アドベンチャーコンボ:110,990円
- Osmo 360 IIレンズ交換キット(デュアル):5,280円
- Osmo 360 インビジブル防水ケース:11,550円
- Osmo 360 II バッテリー延長ロッド:15,950円
- Osmo ヘビーデューティークランプキット:6,490円
今回はいち早くサンプルをお借りすることができた。360度カメラは好きな人しか使ってないという印象があるが、新モデルでそのイメージを払拭できるだろうか。早速試してみよう。
サイズは全く同じだが……
Osmo 360 IIの外寸及び重量は、実寸で横61mm、高さ81mm、厚み36.3mm、重量183gで、初号機と全く変わっていない。正面のパネルはビス止めになり、剛性が高いことをアピールしているように見える。正面のマイク部と背面の録画ボタンのデザインが変更されている。ただパッと見はほぼ同じだ。毎回製品を新設計してくるDJIにしては、珍しいタイプの後継機である。
レンズの絞りF1.9という仕様も変わっていないが、今回からはレンズがユーザーでも交換できるようになっている。360度カメラはレンズがボディから飛び出しているので、かなり丈夫なガラスを採用しているとは言っても、傷が入ったりする可能性は普通のカメラよりも格段に高い。
そこが不安で思い切った使い方ができないケースもあったと思われるが、今回は両レンズに超高硬度の光学フィルムが採用されており、さらに現場でレンズ交換可能になったことで、この不安を解消した。Osmo 360 IIレンズ交換キット(デュアル)は、5,280円。また外寸設計が同じなので、引き続きレンズプロテクターも使用できる。
今回大きな変更としては、センサー性能がある。初号機同様1/1.1インチの正方形CMOSセンサーだが、360度撮影では最大8K/60p撮影に対応。またダイナミックレンジも13.5ストップから14.5ストップへ引き上げられている。
スローモーション撮影も従来4K/100fpsだったものが、4K/240fpsに引き上げられた。タイムラプスは8K/30pが16K/30pへ、専用ハンドルを用いて回転撮影を行なうボルテックスも6K/120fpsから8K/120fpsへと引き上げられている。
このあたりはセンサーの性能に加え、SoCの性能も向上したからだ。スマートフォンクラスのSoCでは8K/50p程度で性能が頭打ちになるところ、専用設計のSoCを搭載することでスループットの問題を解決した。
内蔵ストレージは引き続き105GBを搭載。昨今はメモリー高騰のあおりを受けて、SDカードの価格も上昇しているが、外部メモリーなしでも撮影できるのはありがたい。
今回ハードウェアとしての新しい取り組みとして、NFC対応がある。ディスプレイの下あたりがタッチポイントになっているので、そこにスマホのNFCリーダー部を当てるとDJI Mimoが起動し、ファイル転送が可能になる。従来はアプリを起動してカメラと接続してからの転送だったが、アプリを探さなくても勝手に起動するのは便利だ。
撮影補助機能として、「ツイストショット」は面白い。カメラを2回素早くひねることで、録画の開始と停止ができる。スティックの先にカメラを取り付けたときに、いちいちカメラまで手を伸ばして録画ボタンを押さなくても撮影開始と停止ができるわけだ。
機能的には、AIを使った強化が行なわれている。AI スーパーナイト2.0では、新しいAI画像ノイズ低減アルゴリズムにより、クリアで明るい低照度ショットが撮影できる。またステッチング能力も向上し、2つの映像のつなぎ目を横切る被写体や、近距離のオブジェクトのズレや歪みを低減するという。
モードとして新搭載されたのが、「スポットライトフォロー」だ。これは被写体を登録すると、その被写体を中央にとらえ続ける。
元々はドローンに搭載されてきたトラッキング機能だが、Osmo Pocketやスマホジンバルに搭載され始め、昨今はアクションカムにも搭載され、360度カメラでも撮影時のトラッキングとして使えるようになった。以前から後処理でトラッキングすることは可能だったが、カメラでの撮影時にあらかじめトラッキングしておくことで、その後の映像活用が早くなる。
さらに編集ツールのDJI Studioを使えば、AIフレーム補間により、クロップした8K/480fps相当のなめらかなスローモーションを出力できる。また4K/240fpsで撮影すれば、ポスト処理で最大64倍のスローモーションを実現できる。
撮影は簡単で効果は高い
360度カメラに馴染みがない人にとって敷居の高いところは、どうやって構えたらいいのかわからないということかもしれない。撮りたいものを見つけた、じゃあアングルはこうして、みたいな、写真や動画の撮影方法とは基本的に異なる。
「撮る」というよりは「写っちゃう」というものなので、自分がどこかへ行った時にとにかく回しておくと、空間全体が撮影できる。使いどころはあとから考えるという格好のカメラだ。ただし手持ち撮影では指が写ってしまうので、セルフィースティックを併用することが必須となる。
昨今はAIレコーダーやAIグラスの使い方として、とにかくずっと録音しておいて1日のライフログを取るみたいな使い方も出てきているが、いわばあれの映像版と考えれば理解が早いかもしれない。
一番オーソドックスな撮影モードは、「パノラマ動画」だろう。ここではセンサーのダイナミックレンジを活かして、ノーマル10bitのほか、D-Log Mでの撮影が可能だ。Log撮影ではモニター表示が減色するが、補正モードもあるので通常の色味で確認できる。
通常D-Log Mで撮影したものはカラーグレーディングが必要になるが、DJIが無料配布しているDJI Studioを使うと、パノラマ撮影からの切り出しとHLG出力が一括で可能だ。HLGで出力したサンプルを掲載しておく。
今回新搭載されたモードに、「スポットライトフォロー」がある。これは人の顔などトラッキングしたいものを登録しておくと、自動的にその被写体をフォローしてくれるという機能だ。カメラをどの方向に向けても必ず写っているので、自分を中心にしたダイナミックな映像が撮れる。
街中ではあまりセルフィースティックを長くすると迷惑だが、人の少ない場所で自分を中心としたパノラマ的な撮影が可能になる。観光で使うと面白そうな機能だ。トラッキング動作はあとからアプリ上でも可能だが、このモードのポイントは撮影時点で既にカメラがトラッキングしておいてくれるというところである。
よってカメラからスマホ等に転送した時点で既にトラッキング済の動画になっているので、あとは使い所を決めて書き出すだけである。撮影からSNSに投稿するまでが簡単になるというメリットがある。
「ツイストショット」もなかなか便利だった。スティックにつけたカメラを2回ひねると撮影が開始される機能だが、大きくひねると反応しない。少しひねれば十分のようなので、何度か練習してコツを掴んでおくといいだろう。
静止画撮影のときにツイストショットを使うと、自動的に3秒前からのセルフタイマー撮影となる。動作したのを確認してからカメラを構えても間に合う。
音声の集音機能も試してみた。今回はセルフィースティックの先にカメラがあるので、カメラとの距離はだいたい1mぐらいあるが、問題なく集音されている。ちょっとしたVlog撮影にも使えるだろう。
こなれた編集機能
360度カメラの宿命として、いわゆる「撮って出し」みたいなことはできない。ナマのデータは特殊形式なので、VR対応でないSNS等に投稿するには、何らかの加工や編集を加える必要がある。
そこでOsmo 360 IIでは、NFC対応により、スマートフォンとの連携を簡単にしている。カメラにスマホをタッチするとカメラが認識され、接続が促される。接続を許可するとまずはBluetoothで接続され、その後Wi-Fi接続に移行する。
そこまでいけば、カメラとスマホは多少離れていても問題ない。DJI Mimoアプリでカメラ内の映像を確認し、必要なものをダウンロード、編集できる。
編集機能もかなり充実しており、オープニング・エンディングを付ける、音楽を追加、エフェクトを追加といった加工も可能だ。カメラワークはかなりの数があるので選ぶのが大変ではあるが、スマホのジャイロセンサーを使って、360度の空間から見たいアングルを記録することができる。回転する椅子などに座って作業すると早いだろう。使うアングルが決まれば、そこからは数分で動画を完成させられる。
スマホではやりにくいという場合は、DJIが無償公開しているPC/Mac向け編集ツール、DJI Studioが使える。今回はAI スーパーナイトモードで撮影した動画を編集してみたが、プリセットされたカメラワークを使って、360度カメラの歪みを活かした面白いショットを作ることができる。
ご覧のように川の両脇に街灯があるだけの道路だが、夜間撮影の品質もよく、ノイズもほとんど感じない。
スロー撮影では、4K/240fpsで撮影可能なので、30p再生なら8倍スローとなる。DJI Studioを使えばそこからさらに0.1倍まで落とすことができるが、こちらもAI処理でフレームを補間してくれるものと期待したら、単に再生スピードが落とせるというだけだったのは残念だ。
総論
360度カメラの第1次ブームはもう10年前なので、360度カメラがなんなのかご存知ない読者もいらっしゃるだろう。当時は自分まで写っちゃうということが懸念材料として挙げられたが、今は自分を積極的に露出していく時代に変化しており、自分が映り込むことに抵抗がない……というか自分を撮るために撮影するという人も少なくない。
ユーザー側の意識の変化によって、360度カメラのあり方はもう一度再考すべきタイミングに差し掛かっていると言える。
そんなタイミングで登場したOsmo 360 IIは、好調なOsmoシリーズの一つとして注目度も高い。カメラを構えて撮影するというタイプのカメラではなく、どこかに固定なりしておいて撮影するというカメラだ。
課題は、セルフィースティックが必須ということだろう。ただこれも、リュックの肩紐の部分に固定するなどして、常時固定されているならば、ジンバルカメラよりも動作は安定する。可動部がないからだ。
360度らしい撮影をしなければならないと思うと、どうしても気負いが出てしまうが、ずーっと回しておくサブカメラとして別に1台用意しておくという方法もあるだろう。必ず全周囲写っているので、撮り漏らしがない。
8Kという解像度の映像を全部出すのではなく、切り抜き前提という使い方はある意味贅沢だが、切り抜きの解像度を上げたいとするならば、今後は8K以上に進化していく要素も残している。

















