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スマホ新法に向け、メーカーらが業界団体設立。スマホとヘッドフォンの互換性問題などの解消目指す
2025年5月14日 14:09
スマホのOSやアプリストアなどを手掛ける、大手テクノロジー企業に対して特定の禁止事項などを設ける「スマホソフトウェア競争促進法」が昨年6月に成立し、2025年末に全面的に施行される。これに関連し、デバイスメーカーやソフトウェアを提供している事業者らによる新たな業界団体「オープンデジタルビジネスコンソーシアム」が設立。その記念イベントが14日に行なわれた。
広く普及したスマホのOSやブラウザなどは、社会インフラのような重要性を持つ一方で、大手事業者による寡占状態になっている。これが原因で、アプリやハードウェアの新規参入時に制約があったり、サードパーティーが利用できる機能に制約があるといった問題がある。こうした閉鎖的なエコシステムによって、消費者がデバイスやサービスを選ぶ際の選択肢に、制限が生じているという懸念が高まっている。
スマホソフトウェア競争促進法、通称スマホ新法は、大手テクノロジー企業を規制することで、スマートフォン関連市場の競争促進を目標としており、公正取引委員会は3月に、対象企業としてグーグルとアップルを指定した。
14日に設立したオープンデジタルビジネスコンソーシアムの黒田岳士代表理事は、消費者の自由な選択を阻害されている実例として、デバイス間の乗り換えをする時の、データ移行の煩雑さや、周辺機器が使えなくなるなどの問題。写真や動画を共有する時に、異なるプラットフォーム間でスムーズに行なえない。スマホとヘッドフォンの互換性が不十分で、ユーザーが好きな製品を使えない……といった問題を挙げる。
そして、これらを解消するための目標として、「AI時代に相応しい、安全で信頼性の高いデジタルサービスを選択する自由を消費者に保障」、「オープンデジタルエコシステムの育成」を掲げており、その実現のために、デジタル領域、モバイルセクターにおける公平・透明な競争環境の構築と、業界横断的な相互運用性の確保、イノベーションの促進に取り組むという。
黒田代表理事は、「企業の目線からすると、例えば企業が良い技術アイデアを持っていても参入障壁が高い、あるいは利用できる機能に制限のあるような環境では公平公正な競争をするのは困難。(スマホ新法のような法律は)日本はじめEUなど、世界各国で導入されつつある。新たな規制はこういった課題に直面している企業にとって歓迎すべき状況だが、一方で適切に声を上げ、具体的な行動を起こして起こしていかなければ、その機会を失いかねない」という。
黒田代表理事は、「コンソーシアムの目的にご賛同いただける企業や団体の皆様には、業種を問わず是非ご参加いただきたい」とし、デバイスやハード、アプリ、サービスなどを手掛ける多くの企業に、参加を呼びかけた。
さらに、「特に、リソースと資金が限られているスタートアップ企業との協力を強化していきたい。スタートアップが画期的なイノベーションを創出する機会を、より拡大させていくことに尽力したい」と語った。
「現場の生の声を気軽に公正取引委員会へ」
登壇した公正取引委員会 デジタル市場企画調査室の稲葉僚太室長は、スマホ新法の年末の全面的な施工に備え、公正取引委員会の体制を強化したことや、公正取引委員会としての考え方を明確化するため、ガイドラインの策定作業を進めている事を説明。ガイドラインは間もなく公表予定で、それに対してパブリックコメントを募集。同時に、スマホ新法自体の周知拡大も図るという。
稲葉室長は、「新法について、アプリストアの手数料という側面にかなり注目が集まっていると認識しているが、それ以外にも重要な規制がある。その1つがOSの機能へのアクセスを解放していくことで、相互運用性やインタラクティビティを向上していくこと」と指摘。
さらに、「新法の運用を通じ、日本のデジタル市場の成長と発展、そしてこの日本市場から内発的なイノベーションが起こっていくような形にしていくことが重要」とし、それを実現するためには、アプリを開発しているデベロッパー、そしてユーザーも含め、市場におけるステークホルダーと、公正取引委員会がしっかりとコミュニケーションを取りながら、オープンな市場を形成していく事が大切だとした。
また、規制の対象になるプラットフォーム事業者が、規制を遵守しているかどうかをモニタリングするためにも、「気軽に公正取引会の方に情報提供していただきたい。皆様から、現場の生の声をぜひ気軽に届けていただきたい」という。
最後に、「事業者の皆さんから躊躇なく、情報提供していただけるように、スマホ新法の中には、“公正取引委員会に対して情報提供したことを理由として、報復行為が行なわれるのを禁止する規定”も盛り込んでいる。情報提供を気軽に行なっていただけるように、公正取引委員会に新たに相談窓口も整備していく」とした。