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AQUOS XL10やUD1が認められたテレビの画質基準「THXディスプレイ認証」とは?
(2014/4/11 19:02)
シャープは、'13年11月より順次発売した液晶テレビ「AQUOS クアトロン プロ XL10シリーズ」や、4Kパネル搭載の「AQUOS UD1シリーズ」('13年8月発売)などが取得した「THXディスプレイ認証」に関する記者説明会を開催した。米国からTHX認定員のJon Cielo氏を招き、認定基準などについて明かされた。
THXについて改めて説明すると、ジョージ・ルーカス監督が、1983年のスターウォーズ「ジェダイの復讐」を劇場で観て、映像と音声が監督の意図と異なっていたことに気付いたのが発端となり、「制作者の意図した映像と音を、忠実に再現すること」を目的に、ルーカスフィルムと共に立ち上げた認証規格。映画スタジオや映画館、ホームシアターなど、認証の対象は多岐に渡る。シャープは、液晶テレビでTHXディスプレイ認証を最初に取得したメーカーであり、THXも「重要なパートナー」と位置付けている。
THXディスプレイ認証で求められる大きな3つの要素は、「パネル性能」と「動画処理」、「正確な色再現」。このうち、「パネル性能」を示す大きな要素が輝度の均一性(ユニフォーミティ)。画面の明るさを均一に保つことで、映像内の人や物体の奥行き感を正確に再現。輝度にムラがあることで、観る人の遠近感が崩れてしまい、作品のストーリーに入り込めなくなることを防げるという。
「動画処理」は、動きのある映像表示時に、ジャギー(ギザギザ感)やジャダー(ブレ)などが生じず、クリアな映像が表示されるというもの。「正確な色再現」は、“ハリウッドと同じ”(オリジナルのソースに忠実)、自然な色再現ができているかをテストするもの。項目の詳細について一般公開はしていないが、400を超えるテスト項目がある(プロジェクタを含めると最大600項目)という。これらの項目をクリアした画質が、THXディスプレイモードに切り替えることで利用可能になる。映画視聴向けのモードには、暗室用と明るい部屋用の2種類を用意。暗室用は、ホームシアターなど暗い部屋での映像再現に特化したもの。一方、明るい部屋用のモードは、暗室モードに比べてガンマなどを調整、カーテンや窓を開けた状態(200ルクス前後)での視聴でも、暗い部屋と同様に視聴を楽しめるという設定。4K対応テレビ向けのTHX 4Kディスプレイ認証も用意。
このテストは全メーカー/全機種に対して行なっているわけではないが、メーカー側が認証を受ける意向を持っていない場合でも、THXが自主的にトップモデルに対しテストを実施。その結果、市場全体の中で合格した機種は10%にも満たないという。シャープも認証を取得するまでに何度もテストと再チューニングを繰り返したという。製品が量産体制に入った後も、実際の製品がサンプル機と同様の性能をクリアしているかどうかテストを行なう。テスト項目は、4Kなど新技術の登場に合わせて、その都度見直されている。
AQUOS XL10/UD1シリーズなどのTHXディスプレイ認証機種は、上記のテスト項目をクリアした性能を発揮する「THXモード」を搭載。なお、XL10は「クアトロン プロ」により“4K相当”の高解像度表現を可能にするという点が特徴だが、パネルはフルHDのため、4KではなくフルHD向けの認証を受けている。
実際に、60型液晶テレビでTHX認証機とそれ以外の機種の映像を比較視聴した。クアトロン プロ搭載の「LC-60XL10」と、4Kパネル搭載の「LC-60UD1」、現行の同社製フルHDテレビでTHX認証を取得していないモデルを並べてBlu-rayの映画などを再生。分かりやすい所では、背景が白壁のシーンで、60XL10と60UD1は平面であることを表現できているのに対し、THX認証ではないモデルは輝度にムラがあり、実際には無い凹凸のように表示されていた。これが「監督の意図しない映像」だ。このほかにも、奥行きのあるシーンでは手前が明るく、奥に向かってだんだん暗くなるという自然な表現が、THX認証テレビで正しく行なわれていることも確認できた。
輝度の均一性は、パネルそのものの実力が顕著に表れ、ソフトウェア処理などで補正するのは難しいため、THX認証で最もクリアが難しい項目だという。UD1/XL10ともに、直下型ではなくエッジ型バックライトで均一性を保っているのも大きな特徴。フレームのシャーシも均一にして、面で見て歪みが出ない構造や、LEDバックライトの画面に対する距離を数ミクロン単位で配置したことも、輝度の均一性に寄与。シャープのデジタル情報家電事業本部 AVシステム開発センターでAQUOS画質開発グループのチーフを務める小池晃氏は「日本生産のパネルだからできる技術」と自信を表した。