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ケンウッド、初のハイレゾ再生対応カーナビ「タイプZ」
AKM製32bit DACとK2搭載。CD/圧縮音源も32bit変換再生
(2015/2/4 11:05)
JVCケンウッドは、ケンウッドブランドのカーナビ「彩速ナビ」の新機種として、業界初となるハイレゾ再生対応モデル「MDV-Z702」と「MDV-Z702W」を2月下旬より発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格はいずれも14万円前後。Z702Wは200mmワイドコンソール用モデルで、本体デザインなどを除く主な仕様は両機種共通。
「彩速ナビ」最上位機であるタイプZの新モデル。特徴は、最高192kHz/24bitハイレゾ音源の再生にも対応したこと。ケンウッドはカーナビにおいても早い段階からFLAC形式にも対応していたが、新たにハイレゾもサポートした。SD/USB経由でハイレゾのWAV/FLACを再生できるほか、サンプリングコンバーターも搭載し、音楽CDやAACなどの圧縮音源も、192kHz/32bitにアップコンバートして再生可能。新たに、旭化成エレクトロニクス(AKM)の32bit DACも搭載している。さらに、アップコンバートした音源などの高音質化を図る「K2テクノロジー」も搭載する。
4日発表のカーナビ新モデルとしては、タイプZのほか、ハイレゾ再生が96kHz/24bitまでのタイプXとして、「MDV-X702」と「MDV-X702W」、シリーズ初の8型ディスプレイモデル「MDV-X802L」を用意。2月中旬より順次発売する。また、Bluetooth搭載の2DINカーオーディオ「DPX-U720BT」と「DPX-U520」を、3月上旬より発売する。タイプXや、カーオーディオについては、別記事で掲載している。
音楽だけでなく地デジやラジオもハイレゾ音声に変換して高音質に
「MDV-Z702」と「MDV-Z702W」は、7型/800×480ドットのTN液晶を備え、地上デジタル放送のフルセグ/ワンセグ受信や、DVD/CD/SD/USB再生に対応。別売ケーブルを使ってiPhone/iPodも接続できる。CDから本体メモリや別売SDカードへの4倍速ダイレクト録音や、録音しながらの追いかけ再生も可能で、録音時の音質は標準に加え高音質モードも用意する。
AKM製の32bit DACを搭載。ノイズ耐性の高い設計の「VELVET SOUND」技術により開発された高分解能DACにより、ハイレゾ音源を忠実に再現するという。アンプの最大出力は50W×4ch。
CDやMP3などの音楽だけでなく、地デジやDVD、AM/FMラジオを含む非ハイレゾ音源を全て192kHz/32bitのデジタルデータに自動でアップコンバートして再生。動画再生もより高音質で楽しめる。アップサンプリングや音質調整などのオーディオ信号処理を高速に行なうため、AKM製のトリプルコア浮動小数点演算DSPを採用。高音質を維持したまま、正確かつ効率的にデータ処理ができるという。
USB/SD再生できる音楽ファイルは、ハイレゾがWAVとFLACのみで、その他はMP3/WMA/AAC/Vorbisに対応。動画はMPEG-4とMPEG-4 AVC/H.264、WMVを再生できる。DVD部は、DVDビデオや音楽CDのほか、DVDやCDに記録したMP3/WMA/AAC/WAVに対応する。
Bluetoothを搭載し、スマートフォンの音楽をナビでワイヤレスで受信して車のスピーカーで聴くことが可能。プロファイルはA2DP/AVRCP/HFP/OPP/PBAP/SPP/HIDに対応。コーデックはSBCのほか、AAC/aptXもサポートする。
ジッターレス信号処理システムも搭載し、192kHz/24bitのハイレゾ音源など再生時にもジッターを排除し、純度の高い信号伝送を可能にしたという。さらに、音質劣化の原因となる、車特有の電源の揺れに対応し、安定した信号伝達を実現するという新・独立中点回路システムも採用。
ナビ部とオーディオ部をシャーシ段階で完全に分離した無干渉セパレートシャーシ構造を採用。強固なセパレートシャーシ構造によりグランディングも強化され、ナビ部からのノイズの影響を抑えている。筐体の天板部分にはクロス構造を採用。振動によるナビ筐体の共振を抑え、音質向上を図っている。
音質補正の新機能として、リスナーの正面にアーティストがいて演奏しているかのように、音像イメージをリスナー正面に設定できるという「フロントフォーカス」を搭載。また、従来から利用できる6つのプリセットモードと13バンドグラフィックイコライザーに加え、2種類のイコライザーカーブが選べる「ノーマルEQ」「ナチュラルEQ」を搭載。そのほか、リスニングポジションまでの距離が等しくなるように仮想スピーカー位置を調整する「リスニングポジション設定」を搭載する。
走行時に発生するロードノイズを補正する「Drive Equalizer+」も搭載。従来はON/OFFのみだったが、新たに9段階の補正レベル調整が可能になり、車種によって遮音性が違う場合も調整可能とした。また、低域を補正する「ミュージックバスブースト」も改善し、楽器の低音のみ持ち上げてボーカルは持ち上げないといった細かい補正が可能。効果は3段階で調整できる。
「ミュージックラウドネス」機能は、'03年に国際規格として承認された「等ラウドネス曲線」に準じ、小音量時に不足する低音と高音を補正。独自のチューニングにより、より自然で聴きやすい音質にしたという。車内でホールのような音場効果を擬似的に作るホールシミュレーションも搭載し、「チャーチ」、「ライブアリーナ」など6種類から選べる。
独自の高音質化技術「K2テクノロジー」により、ビット拡張や周波数帯域拡張、波形補正を行ない、録音時に失われた信号成分を補完。CDやMP3などの非ハイレゾ音源や、ハイレゾ音源もより高音質化してマスター音源のクオリティに近づけるとしている。なお、K2は好みに応じてON/OFFの切り替えができる。
スピーカー設定機能は、使用するスピーカーの口径や位置などの構成のほか、フロント/リアスピーカーのハイパスとサブウーファーのローパスを設定できる「クロスオーバー調整」も可能。サブウーファの位相変更や、ツイータのレベル調整も行なえる。車のタイプを入力するだけで最適なサウンド設定が適用される「車両設定」機能も装備。
USB Wi-Fiアダプタが付属し、スマートフォン(テザリング)やモバイルルーターを無線LANアクセスポイントとして利用可能。Wi-Fi DMS(デジタルメディアサーバー)機器からナビにワイヤレス接続でき、それぞれの機器に収録されている音楽/動画の再生と、スキップ/サーチなどの操作も行なえる。なお、スマートフォン接続には、DMS対応アプリが必要。ハイレゾファイルのストリーミング再生には対応しない。
ナビ関連では、傾きを検知して道の勾配を把握する高精度3Dジャイロセンサーによる「高測3Dジャイロ3」により測位精度を向上。インクリメントPの最新版「全国主要道高低差データ」をベースに、日本全国を網羅した約140万箇所の傾斜データと3Dジャイロセンサーを高度にマッチングさせることで高精度な自車位置測位を可能にしたという。準天頂衛星「みちびき」にも対応している。
その他にも、先の交差点や分岐点を手軽に確認できる「案内先読みガイド」、交差点や分岐点までの残距離と進行方向を知らせる「ここです案内」表示、500mスケールにも対応した「ランドマークアイコン表示」、地図の拡大/縮小操作用の「拡大・縮小スライダーバー」を新たに搭載した。
ナビとスマートフォンをWi-Fiテザリングで接続することにより、インターネット上のコンテンツと連携する「KENWOOD Drive Info.」が使用可能。開通予定道路情報データや、オービスデータのダウンロード機能(有料会員向け)などにも対応する。
Androidスマートフォンの操作をナビ画面で可能にする新アプリ「KENWOOD Smartphone Control」も用意。ナビ本体とスマホをBluetoothとHDMIケーブル、またはMHLケーブルで接続することにより、スマホ画面をナビ画面に表示して、楽曲再生やアプリ起動などをナビ画面で行なえる。音声発話による文字入力支援アプリ「VOIPUT」も利用できる。
Androidスマホに収録した音楽や動画をナビで再生する無償アプリ「KENWOOD Music Control」にも対応。再生可能なオーディオファイル形式はMP3/AAC/WAVで、ビデオはH.263、MPEG-4 AVC/H.264、MPEG-4。USBマスストレージ接続時に再生可能なビデオはMPEG-4 AVC/H.264とMPEG-4。
フルHDドライブレコーダ「KNA-DR500」も
別売でフルHD録画対応のドライブレコーダ「KNA-DR500」も3月上旬に発売。251万画素のCMOSセンサーを備え、1,920×1,080ドット/30fpsのMPEG-4 AVC/H.264(MP4)でSDカードに記録。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は3万円前後。
ナビ新機種のタイプZやタイプXとの連携機能を備えるのが特徴で、ナビ本体の正確な自車位置情報をドライブレコーダに記録できるほか、ナビのモニターでドライブレコーダのタッチ操作や映像の再生が行なえる。画角は上下77度/左右135度。録画モードは常時録画/手動録画/衝撃録画/駐車録画に対応する。振動時のブレ補正機能も装備。また、地デジ受信時への干渉を低減する設計となっている。
ハイレゾをいつでも楽しめる商品群を実現。CarPlay/Android Auto対応は未定
JVCケンウッド 執行役員常務 カーエレクトロニクスセグメント長の宮本昌俊氏は、国内カーナビ市場の'15年出荷台数について、消費税増税後に落ち込んだ'14年度と同等の5,200万台('13年度は5,817万台)との見通しであることを示し、出荷台数は同規模ながら、メーカー/ディーラーオプションの増加により、市販市場の割合が減少すると予測。
そうした中で、10~15万円の高価格帯モデルは比較的堅調に推移すると見ており、新モデルのタイプZ/Xはこのゾーンをターゲットとしたモデルとして発売。「数量は多くないが、堅実であり、よく勉強してから買われる商品。それに応えられる商品を作った」と製品の仕上がりに自信を見せた。
ハイレゾ楽曲に対応したことについては、既にホームオーディオにおいて、コンポの「Kシリーズ」などで対応を進めていた点に触れ、「家でも車でも、ライフスタイルに合わせていつでもハイレゾを聴いていただける商品群ができた」とした。
ビクタースタジオ長の秋元秀之氏も登壇し、JVCケンウッドとしてのハイレゾへの取り組みや、こだわりについて説明。ビクタースタジオは、'14年2月からハイレゾ音源の配信サービス「VICTOR STUDIO HD-Music.」においてハイレゾの“産地直送”を手掛けていることなどを紹介。日本の住宅環境はスペースが限られているため、今後は車内空間もリスニング環境としてより多く活用されていくことに期待を寄せた。
なお、今回の新モデルでは、iPhone/Androidスマホとの様々な連携を実現しているが、主に海外で対応が始まっているアップル「CarPlay」や、Googleの「Android Auto」の国内モデルでの対応については明らかにしていない。米国で1月に行なわれた「2015 International CES」では、同社を含む複数のメーカーがCarPlay/Android Auto対応機種をアピールしていたが、米国などではDVDナビなどが未だに多いことから、スマホで簡単にナビ機能を強化できるCarPlayやAndroid Autoが注目されているためだという。日本では既に高機能なナビが普及していることから、現時点では対応時期などは未定としている。