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次世代4K/8K伝送「J.382」や、ネット連携のCATV視聴。「ケーブル技術ショー」

 ケーブルテレビ(CATV)関連の新製品や技術、サービスなどを紹介する「ケーブル技術ショー 2015」が東京国際フォーラムにて6月10日から11日まで開催されている。入場は無料(登録制)。STBなどのハードウェアメーカーや、CATVサービス関連の事業者らが出展。'16年の衛星8K試験放送などに合わせて、4K/8K関連の技術も数多く展示されている。

ケーブル技術ショー 2015会場の東京国際フォーラム

次世代伝送方式「J.382」を使った世界初の4K放送受信デモ

 CATVでの8K/4K放送に向けた取り組みとしての注目は、8K映像を1つのTSで伝送できる新しい国際標準の伝送方式で、次世代ケーブル放送伝送路符号化として規格が完成した「J.382」。日本CATV技術連盟や、各メーカーらが集まっているコーナー「New Challenge of CATVゾーン」では、世界初という12MHz帯域でのJ.382信号を使った4K受信デモなどが行なわれている。

12MHz帯域でのJ.382信号を使った4K受信デモ

 現行方式の「J.83 Annex C」では、変調方式が64/256QAMであるのに対し、J.382は16/64/256/1024/4096QAMに対応。変調の効率は3割アップしたという。1チャンネル6MHzあたり、最大59.3Mbpsの伝送が行なえ、複数チャンネルの連結で大容量の伝送を行なえる。これによって、様々な番組を柔軟にチャンネルへ割り当て可能となる。

 広帯域衛星デジタル放送では、1つのトランスポンダ(トラポン)に3本の4K番組を伝送するため、CATV再送信では現行の2ch分(12MHz)に3本の4K番組を伝送できるという点を今回の展示で紹介している。

 実際のサービスとして放送するには、J.382に対応した送信側の設備と受信機(STBなど)が必要。同ブースには、ソニーが開発しているJ.382対応のテレビ試作機や、ローデ・シュワルツのJ.382変調器などが展示されている。

J.382方式による4K/8K再送信のイメージ
送信側の設備など
J.382受信モジュール
CATV業界が放送の高度化などに向けて取り組む「チャレンジ40」ロードマップ

4K STBや、ハード/ソフトウェアエンコーダ

 今後のCATV 4K放送開始を見据え、4K対応STBの開発も進められている。パイオニアは、日本ケーブルラボが定める第3世代(3G)の4K STBに準拠したモデルを2017年春提供開始を目指している。しかし、これは'16年のBS 17chでの4K/8K試験放送には間に合わないため、それに先駆けて、既存の第2世代STBに追加することで4Kが視聴可能になるアダプタを、'15年秋~年末を目標として開発中。第3世代STBには、4K放送とHybridcast、リモート視聴への対応が必須機能とされているが、その全てに対応していなくても、とにかく早い段階で4K受信に対応するための方法として、4Kアダプタや、同アダプタと既存STBを一体化したモデルの製品化を計画しているという。

4K対応アダプタ試作機(写真下)。既存のSTB(上)からTS出力した映像を、4KアダプタでデコードしてHDMI接続したテレビに4K出力
4K対応の一体型STB試作機
パイオニアの製品開発ロードマップ

 パナソニックは、BSから再送信されるCATV 4K放送のシステムとして、現在のTS受信に加え、多重化方式のMMTにも対応可能な点をアピールしている。MMTは、放送だけでなく通信も含めた複数の伝送路で情報を提供できるため、サービスの高度化が可能だが、送受信には新しい設備/機器が必要となる。一方で、現行のTS方式では、サービスとしては現行のHD放送の延長となるが、設備投資は抑えられる。現時点では業界全体としてどちらの方式が標準化されるかは決まっていないが、パナソニックとしては、どちらが採用されても対応可能という柔軟性をアピールしている。

ケーブルテレビの4K放送に関するパナソニックの展示
送信側のTS/MMT対応機器
パナソニックのSTBラインナップ。ハイエンドからエントリーまで幅広く用意
住友電工の4K IP/RF両対応ハイブリッドSTB
4K IP STBも

 富士通ネットワークソリューションズのブースでは、4K/60p HEVC対応のリアルタイムエンコーダ/デコーダを参考出展。来年以降に製品化予定としている。本体のサイズは1Uハーフラックサイズ。

 NECが出展したのは、現在評価中という4K/60p HEVC対応のソフトウェアエンコーダ。VOD配信や放送、デジタルシネマなどの用途に、時間がかかってもより高画質で変換したいというニーズに適しているという。プロファイルはMain10 Profile@Level 6.2[High tier]に対応。NVIDIAのGPU「TESLA K20」2セットを併用することで、4K/60pの高速エンコードが可能になるという。ソフト単体のほか、EDIUSやPremiereのプラグインとしての提供についても、顧客からの問い合わせに応じて検討するという。価格は100万円だが、数量によっては数十万円といった価格になるという。

富士通ネットワークソリューションズが参考展示した4K/60p HEVC対応のリアルタイムエンコーダ/デコーダ
NECの4K/60p HEVC対応ソフトウェアエンコーダ
パナソニックは、NABで出展され、日本での発売も期待される4K/60pカムコーダ「AG-DVX200」を展示
パイオニアの8K映像上映デモ
アストロデザインは、8K/4Kクロスコンバータなどを展示している

CATV局が作る「オールケーブル4Kチャンネル」開設へ

 JDS(日本デジタル配信)のブースで紹介しているのは、ケーブルテレビ連盟に選定されたJDSが主体となって行なう予定の4K放送「オールケーブル4Kチャンネル(仮称)」。各地のCATV局が作った4K番組を集めて編成し、各局の新しいチャンネルとして放送可能にするもの。開始時期は12月を予定しており、編成などは今後JDS内に新設される部署が担当する。

オールケーブル4Kチャンネル(仮称)の概要

 地域密着のCATVならではの特色を活かし、番組は各地の名所やグルメ、祭りといったコンテンツが中心になる見込み。JDSブース内には、パナソニックやパイオニア、住友電工が、同チャンネルに対応予定の4K STBを出展している。

オールケーブル4Kチャンネル対応予定のSTBが各社から

ネット活用で、視聴方法がさらに多様化

 パイオニアは、既存のSTBと通信を活用して使って、他社連携によるVODやクラウドゲームといった、様々なサービスを提案。CATV事業者らに向けて、番組視聴やサービス利用機会の拡大につながる仕組みを紹介している。

 「次世代タイムシフトサービス」は、過去の番組も加えたEPGの提案。これは、リアルタイムの放送に加え、放送済みの番組をVODサービスで配信するというもので、JDSと協力。全録レコーダのように、EPG内で過去の日付から観たい番組を選ぶと、その番組を視聴可能。VODのため、巻き戻しなどのトリックプレイも行なえる。

次世代タイムシフトサービス
EPGから、放送済みの番組もVODで観られる

 また、クラウドゲームのG-clusterとの協力により、STBとテレビからクラウドサーバー上のゲームをプレイするというデモも行なっている。セカンドスクリーンとしてタブレットも連携できる例として、「ZOIDS Material Hunters」というゲームを紹介。ゾイドのキャラクターを育てて遊べるというゲームで、家ではテレビを観ながらタブレットで操作して楽しめるほか、外出先ではタブレット単体でも遊べる(同じキャラを育成できる)点などが特徴。

クラウドゲームサービスのデモ
テレビ画面で観ながら、タブレットでコントロール
タブレットだけでもプレイ可能

 このほかにも、紙媒体で番組情報誌を提供しているCATV事業者向けの新しい提案として、タブレット上におすすめ情報を配信するという仕組みを、日宣との協力でデモ。ジャンルで分けられた番組のなかから観たいものが見つかった場合は、その番組目をタップするとテレビですぐ観られるのが特徴。応用例として、ユーザーの視聴履歴に応じたおすすめ番組を教えてくれるといったサービスも検討しているという。

番組情報を紹介するアプリの画面イメージ

 パナソニックは、CATVで放送した番組を、直後にVOD番組として配信可能になるIP動画配信システムを展示。放送番組の切り替わり点(最初と最後)を自動判別して切り出し、MPEG-DASHなどの配信用形式にエンコードするというもので、CATV事業者があらかじめ「この番組をVODでも配信したい」と指定すると、見逃しサービスと同様の使い方ができる。VOD向けにファイル化された番組はEPG上で表示されるため、番組を見逃したり、開始時間に間に合わなかったときでもEPGからの操作で冒頭から視聴可能となる。今後は、このVOD番組とローカルの録画済み番組をまとめて1つのEPGで確認できるようにすることも計画しているという。

パナソニックのIP動画配信システム
視聴済みの番組を★マークで評価すると、EPGにも反映。他の人が視聴するかどうかの参考になる
パナソニックが提案する、コンテンツによる地域活性化の取り組み。有名タレントを起用して地域の名物などを紹介する「全日本ジモLOVEマップ」を放送中で、全国41局400万世帯で視聴可能

(中林暁)