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世界初テスラ技術搭載イヤフォン「AK T8iE」、10月下旬発売で約15万円。AKとbeyerコラボ

 iriverのAstell&Kernブランドは15日、beyerdynamicとコラボレーションしてテスラテクノロジーを採用したイヤフォン「AK T8iE ブラック」(AK-T8IE-BLK)の日本での発表会を開催。アユートから10月下旬に発売予定で、価格はオープンプライス。店頭予想価格は15万円前後(税込)。

テスラテクノロジーを導入した世界初のカナル型イヤフォン「AK T8iE」

 製品の概要はドイツで開催された「IFA 2015」に合わせて公開されていたが、日本での発売日や価格が初めてアナウンスされた。

 beyerdynamicは、1テスラ(=10,000ガウス)を超える強力な磁束密度を生み出すテスラテクノロジーを搭載したヘッドフォンとして、「T1」や「T5」、コンパクトな「T51i」などを手がけている。その技術をイヤフォンに投入したのが「T8iE」となる。テスラテクノロジーを導入したカナル型イヤフォンは世界初。

 テスラヘッドフォンの特徴であるリング型マグネットをイヤフォンにも投入しているが、そのサイズはリファレンスモデル「T1」の約1/16に小型化している。しかし、サイズを考慮するとT1/T5よりも強力な磁力を備えているという。インピーダンスは16Ω、音圧レベルは109dB。許容入力は10mW。

 ダイナミック型で、口径は11mm。振動板は1/100mmと可動コイルが透けて見えるほど薄く加工されており、髪の毛の1/5の薄さ。高効率と高い再現力を備え、引き締まった豊潤な低音を再生できるとする。再生周波数帯域は8Hz~48kHz。

ユニット部分。振動板は1/100mmと薄い
内部構造

 音の傾向としては、「小さなスペースにテスラ技術を導入することにより、全ての帯域においてニュートラルで正確なサウンドを実現。多くのイヤフォンで難しいとされる、厚みのある低域再生と洗練された高域再生も可能にした」とする。

 ドイツのハイルブロンで開発・生産されており、このモデルのために製造機械まで自社で制作。熟練のスタッフによるハンドメイドで生産されており、細かな部品が多いため、デジタルマイクロスコープを使い、機械式時計のような精密な作業で作られているという。

このモデルのために製造機械まで自社で制作
ハウジングを水に沈めて密度をチェック
デジタルマイクロスコープを使って組み立てている

 品質にもこだわっており、ハウジングを水の中にいれて空気が漏れないかなどの密度検査を行なっているほか、左右の音のマッチングも1台1台細かく検査。筐体の形状は、数千のイヤーシェイプデータを元に開発されており、従業員の耳でも何百回とテストし、7つのプロトタイプを抜粋、その中の1つに決定したという。

 表面は銅とクロム、そして企業秘密の素材を使った3層コーティング。滑らかで、傷に対しても強いとする。冬場に利用しても、冷たくないという。

 AKとのコラボモデルとして開発されているため、AKシリーズにテスラテクノロジーを最適化。サウンドチューニングには、ハイエンドポータブルプレーヤーの「AK380」がリファレンスとして使われている。

ハイエンドポータブルプレーヤーの「AK380」と組み合わせたところ
AKシリーズ向けに2.5mm/4極のバランスケーブルも同梱

 ケーブルも通常の3.5mmステレオミニに加え、AKシリーズ向けに2.5mm/4極のバランスケーブルも同梱する。ケーブルは着脱が可能で、MMCX端子を採用。音にこだわった端子になっているという。長さはどちらも1.3m。なお、バランス接続でのチューニング時には、iriverのチームも参加したという。

 ケーブルはケブラー素材で強化され、4万回の屈曲を想定。プラグ部分も、10万回の屈曲テストを行なっている。TPEによるタッチノイズ低減も図られている。

 イヤーピースにもこだわっており、シリコンイヤーピースは通常の丸い形ではなく、楕円形になっている。世界中の人々の外耳道を計測してフィットするよう考案された形状で、黒い帽子のようにも見える事からbeyerdynamicでは「ダースベイダーハット」と呼ばれているという。サイズはXL/L/M/S/XSの5種類を用意。コンプライフォームタイプもS/M/Lの3サイズ同梱する。

 ハードレザーキャリケースやケーブルクリップも同梱する。

楕円形のイヤーピースと、コンプライフォームタイプを同梱

手作りでクオリティにこだわる

 アユート 営業部 マーケティンググループの藤川真人氏は開発の経緯について、「妥協のないハイエンドサウンドを追求するというフィロソフィーが、beyerdynamicとAstell&Kernで共通しており、それがお互いを結びつけ、2013年にコラボレーションしたポータブルアンプの『A200P』(※日本未発売)を生み出した。そこからヘッドフォンのAK T5pを経て、第3弾として出てきたのが今回のモデル」と説明。

 beyerdynamicのHead of Business Development Audio Productsを務めるTomas Halbgewachs氏は、老舗ヘッドフォンメーカーであるbeyerdynamicの歴史を、ビデオを交えて紹介。革新的な技術を搭載してきた事や、クオリティにこだわり手作りの姿勢を現在まで貫いている事、重量配分やデザインにもこだわり装着しやすさなどの使い勝手も追求している事をアピールした。

左がiriverのVice President James Lee氏、右がbeyerdynamicのHead of Business Development Audio Productsを務めるTomas Halbgewachs氏

ダイナミック型とは思えないハイスピードな高解像度サウンド

 発表会場で、ハイレゾ楽曲の「μ's/僕らは今のなかで」、「マイケル・ジャクソン/スリラー」、「イーグルス/ホテルカリフォルニア」などを試聴した。

 ハイレゾプレーヤーのAK240と、アンバランスの3.5mmステレオミニで接続。音を出した瞬間に驚くのは、非常に高い分解能と、トランジェントの良いハイスピードな音の出方だ。振動板が軽く、それが非常に俊敏に駆動されているのが良くわかる。ダイナミック型ユニット特有の“もったり”した感じがまったくなく、バランスド・アーマチュア(BA)のマルチウェイイヤフォンを聴いているかのような感覚で、思わず「ダイナミック型だよな?」と仕様表をもう一度確認してしまう。

 これまでのダイナミック型ともBAとも異なるサウンドだ。一番近いのは、T1など、テスラテクノロジーを搭載した同社のヘッドフォンで、聴いた事がある人はわかると思うが、あの軽やかな反応の良いサウンドが、イヤフォンでもキッチリ再現されている。

 AK240とのアンバランス接続では、若干高域寄りのバランスに聴こえたが、2.5mmのバランス接続に変更すると、低域の量感や沈み込みがグッとアップし、バランスが良くなる。AKの対応モデルと組み合わせる際は、バランス接続がオススメだ。

AK240と組み合わせたところ
AK380との相性はバッチリ

 よりアンプの駆動力が高いAK380に切り替えると、さらに低域の再生能力がアップ。量感も増えるが、分解能の高さは低域まで一貫しており、ベースの弦の動きなどは明瞭に見える。つい中高域の描写にばかり注意が向いてしまうが、ドライブするアンプによって低域の再現能力もガラリと変わり、ポテンシャルの高さを伺わせる。リファレンスとして使われただけあり、AK380でバランス駆動すると、ダイナミック型イヤフォンの新時代を予感させるサウンドが楽しめた。

AK Jrと組み合わせたところ

 一方、低価格な「AK Jr」でドライブすると、中低域の密度感のある張り出しが心地よいAK Jrのサウンドと、中高域の分解能の高さが特に印象深いAK T8iEの音が組み合わさり、量感と抜けの良さがどちらも味わえるサウンドになる。これはこれで、相性が良いと感じた。

 なお、会場には9月18日発売の、AK380向けのジャケット型外部アンプ「Astell&Kern AK380 アンプ メテオリックチタン(AK380-AMP-MT)」(オープンプライス/直販99,800円前後/税込)も用意された。

 駆動力の高いアンプを内蔵しているAK380に、さらに接続する外部アンプとして気になる製品だが、実際にAK380-AMP-MTを通して聴いてみると、AK380直接接続よりも低域の重心がさらに低くなり、安定感と迫力が増す。AK T8iEではその違いもキッチリと描写できており、量感の中にもしっかりと芯の低域が再現されていて驚いた。低域の再生能力の高さや、中高域とのつながりの良さ、量感の自然さなどは、ダイナミック型ならではの利点と言えそうだ。

AK380向けのジャケット型外部アンプ「Astell&Kern AK380 アンプ メテオリックチタン(AK380-AMP-MT)」
AK380と組み合わせたところ
AK380と外部アンプを組み合わせた状態の、上部
横から見たところ
下部。バランス出力端子も備えている

(山崎健太郎)