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マランツ史上最高グレード、15.4ch AVプリ「AV 10」16chパワー「AMP 10」

15.4ch AVプリアンプ「AV 10」

マランツは、同社AVアンプ史上最高グレードとなるハイエンドAVセパレートアンプとして、15.4ch AVプリアンプ「AV 10」、16chパワーアンプ「AMP 10」を3月下旬に発売する。価格は各110万円。カラーはどちらもブラック。

16chパワーアンプ「AMP 10」

同社はAVアンプのラインアップを再構築し、新しいホームシアター用アンプの製品群として「CINEMAシリーズ」を2022年9月に発表。9.4ch AVアンプ「CINEMA 50」、7.2chスリムAVアンプ「CINEMA 70s」を発売しているが、このCINEMAシリーズの頂点に位置付けたモデルがAV 10、AMP 10。従来のマランツのホームシアター用アンプのラインアップには存在しなかったハイエンド・セパレートAVアンプで、チャンネル数、回路構成、パーツグレードは過去最高のものになっている。

どちらの製品も、新世代のマランツを象徴する筐体デザインを採用。シンメトリーやポートホールに代表されるマランツの伝統的なデザインエレメントの継承しつつ、現代的な解釈で再構築。様々なスタイルのインテリアに調和する普遍性も追求した。

15.4ch AVプリアンプ「AV 10」

AVプリアンプ「AV 10」

プリアンプ回路には、マランツがHi-Fiコンポで培ってきたワイドレンジ、ハイスピードを実現する回路設計のノウハウを投入。同社AV市場初めて、超ハイスルーレートのオリジナルのディスクリート高速アンプモジュール「HDAM-SA3」を採用した。

これまでのAVプリにはHDAM-SA2型が主に採用されてきたが、AV 10では歪を限界まで抑え、さらに精度の高い増幅を行うために定電流回路とカスコードブートストラップ回路を備えるHDAM-SA3を採用。この結果、回路規模はAV8805Aと較べて倍以上となり、トランジスタの数は1chあたり20個から40個、全チャンネル合計で300個から760個へと増えている。

HDAM-SA3に使用するパーツにもこだわり、低ノイズな面実装型バイポーラ・ジャンクション・トランジスターや高精密薄膜メルフ抵抗など、Hi-Fiコンポと同様のハイグレードパーツを採用。広帯域にわたるフラットな周波数特性とハイスルーレートを実現している。

15.4chのHDAM-SA3回路は全て独立した基板で構成しており、チャンネル間のクロストークを排除。「明確に定位する等身大の厚みを備えた音像、一切の制約を感じさせない広大さと立体感に満ちた空間表現力を実現した」という。内部の基板は、理想的な部品配置を実現するため4レイヤー基板とした。

独立した基板のHDAM-SA3が大量に内蔵されているのがわかる

15.4ch信号のデコードやレンダリング、音場補正、4系統のサブウーファーに対するバスマネジメントといった重い処理をこなすために、1基で2,000MIPS、AV8805A比125%の処理能力を持つアナログ・デバイセズの最新デュアルコアDSP「Griffin Lite XP」を搭載。

D/A変換回路は、HDMIなどのデジタル回路からもアナログオーディオ回路からも独立した専用基板にレイアウト。回路間の干渉の最小化し、理想的なパーツの配置、そして信号経路の最適化を実現した。

15.4ch分のD/A変換をするため、10個の2ch DACチップを搭載。チャンネル間の相互干渉を防ぐために、電流出力型のDACチップを採用し、アクティブ方式のI/V変換をしている。

クロック発振器はフラッグシップSACDプレーヤー「SA-10」と同グレード品を採用。さらに、通常のAVアンプの1/1,000にまでジッターを抑えたというクロック・ファンアウトバッファーを用いて、ジッターを増やさないようにしながら分岐、クロック回路から各DACまでの距離差に起因するタイミングのずれをインピーダンスマッチングにより補正している。

Dolby Atmos、DTS:Xに対応。最大15.4chのプロセッシングに対応し、9.4.6chまでのシステム構築が可能。17.4chプリアウトも備え、再生するフォーマットに合わせて使用するハイトスピーカーを切り替えられる。

Dolby AtmosとAuro-3Dの両方を最適なスピーカーレイアウトで楽しめるほか、ソースがハイトスピーカー信号を含まない場合でも、Dolby SurroundやNeural:Xで3Dサウンドにアップミックスして再生できる。

「IMAX Enhanced認定製品」でもあり、IMAX Enhancedコンテンツの再生に最適化されたサウンドモード「IMAX DTS」、「IMAX DTS:X」が使用可能。

Auro-3Dデコーダーも搭載。通常の7.1chシステムにフロントハイト(FHL+FHR)、センターハイト(CH)、サラウンドハイト(SHL+SHR)、トップサラウンド(TS)スピーカーを加えた13.1chシステムを構築できる。Auro-Maticアルゴリズムによって、モノラル、ステレオおよび5.1chや7.1chなどのサラウンドコンテンツを自然な3Dサウンドにアップミックスすることも可能。360 Reality Audioにも対応し、HDMI端子から入力・再生できる。

新4K/8K衛星放送で使用されている音声フォーマット、MPEG-4 AAC(ステレオ、5.1ch)に対応。バーチャル3Dサラウンドの「Dolby Atmos Height Virtualizer」、「DTS Virtual:X」にも対応し、ハイトスピーカーやサラウンドスピーカーを設置していないステレオ、5.1ch、7.1chなどの環境でも、高さ方向を含むバーチャルサラウンド再生が行なえる。

AV 10の内部

電源回路にも、Hi-Fiコンポに匹敵する高音質パーツを贅沢に使用。アナログオーディオ回路用には専用の電源トランスとディスクリート構成の整流回路/平滑回路を搭載し、デジタル回路との相互干渉を排除している。

アナログオーディオ基板やHDAM回路など、回路ごとにトランスの巻き線を分け、回路間の干渉を排除。ブロックコンデンサーにはAV 10専用に開発された10,000μF×4個のカスタムコンデンサーを搭載。電源トランスには、OFC巻き線のトロイダルトランスを採用し、アルミ製のケースとボトムプレートを追加することで、高品位かつ余裕のある電源供給を可能にした。

DSPやネットワーク、USBなどのデジタル回路への電源供給には専用のトランスを使用し、アナログ回路との相互干渉を排除。デジタル電源回路の動作周波数を通常の約3倍に高速化してスイッチングノイズを再生音に影響の及ばない可聴帯域外へシフトさせている。

内部構造としては、アナログ回路デジタル回路を基板ごと、ブロックごとに完全に分け、シールドを追加することで回路間のノイズの飛び込みを抑えている。電源ラインに流入するノイズはデカップリングコンデンサーを用いて除去。コンデンサーの品種や定数は、サウンドマスターによる試聴を繰り返し、最適なものを選定したという。

基板やシャーシを固定するビスやワッシャーの種類を使用する箇所に応じて変更しグラウンドインピーダンスを最適化するなど、様々なノウハウを用いて音質をまとめ上げている。

17.4chすべての出力端子を同一グレードとし、チャンネル間のクオリティ差を排除。アンバランス出力にはHi-Fiコンポにも使用されている真鍮削り出しの高品位なRCA端子を採用。バランス出力とアンバランス出力のクオリティ差も無くしたという。

独立した4系統のサブウーファープリアウトを装備。出力端子はバランスとアンバランスの両方があり、4台の音量レベルとリスニングポジションまでの距離は個別に設定できる。

Audyssey Sub EQ HTによる自動設定が可能。4台のサブウーファーすべてから同じ音を再生する「スタンダード」と、各サブウーハーの近くにある「小」に設定されたスピーカーの低音を再生する「指向性」の2モードから選択できる。

CD用の入力端子にはプリアウトに用いられているものと同じ真鍮削り出しのRCA端子を採用。ステレオのバランス入力も1系統装備し、バランス出力を持つCDプレーヤーやネットワークオーディオプレーヤーなどを接続できる。

専用マイクによるオートセットアップ機能「Audyssey MultEQ XT32」を搭載。下位グレードであるAudyssey MultEQ XTに対して、32倍のフィルター解像度で補正。映画館における補正に用いられるAudyssey MultEQ Proと同じフィルター解像度で、ホームシアターにおいても極めて高い精度で音場補正できる。

「Audyssey MultEQ Editor」アプリを使えば、AVアンプ単体では設定できない詳細な調整も可能。さらに、周波数特性だけでなく、部屋内の反射やスピーカーの位置のずれに起因する音の遅延についても測定・補正する「Dirac Live」にアップデートで対応予定(有償)。

HDMIは入力7系統、出力2系統が8K/60Hz、4K/120Hzのパススルーに対応。ゾーン出力を含む7入力/3出力すべてのHDMI端子が、HDCP 2.3に対応する。HDR映像のパススルーにも対応し、HDR10、Dolby Vision、HLG、HDR10+、Dynamic HDRをサポートする。

ARCに加え、eARC(Enhanced ARC)もサポート。eARCでは、テレビからAVアンプへの5.1chや7.1chのリニアPCM信号やDolby TrueHD/DTS-HD Master Audioなどのロスレスオーディオ、Dolby Atmos/DTS:Xなどのオブジェクトオーディオの伝送が可能。

HDMI 2.1の新機能、ALLM、VRR、QFTに対応。入力されたHDMI映像信号を、8Kや4KなどにアップスケーリングしてHDMI出力することも可能。

「HEOS」Built-inで、ネットワークオーディオ機能も搭載。音楽ストリーミングサービスやインターネットラジオ、LAN内のNASやパソコンに保存した音楽ファイル、USBメモリーの音楽ファイルも再生可能。配信サービスはAmazon Music HDをはじめ、AWA、Spotify、SoundCloudなどに対応する。

ハイレゾファイルは192kHz/24bitまでのPCMや、DSD 5.6MHzまでの再生が可能。AirPlay 2やBluetoothもサポートし、スマホなどのサウンドをワイヤレスでAVアンプから再生できる。Bluetooth送信機能も搭載し、再生中の音声をBluetoothヘッドフォンで聴く事もできる。

2.4/5GHzデュアルバンドWi-Fiに対応。MMカートリッジ対応のPhono入力も備える。

スマホやタブレットから本体を操作するための「Marantz AVR Remote」アプリも用意する。

以前から評価されているセットアップメニューは、テキストや画像の表示解像度を上げ、テキストの読みやすさや画像の視認性を高めた。デザインもより洗練され、現代的なものへと生まれ変わっている。

HDMI以外の端子は、音声入力がバランス(XLR×1、アンバランス(RCA)×6、Phono(MM)×1、光デジタル×2、同軸デジタル×2。音声出力端子は17.4chバランス(XLR)プリアウト×1、17.4chアンバランス(RCA)プリアウト×1、ゾーンプリアウト×2、ヘッドフォン×1を搭載。

消費電力は100W。アンテナを寝かせた状態の外形寸法は442×503×189mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は16.8kg。

AV 10の背面

16chパワーアンプ「AMP 10」

16chパワーアンプ「AMP 10」

1つの筐体の中に定格出力200W(8Ω)/400W(4Ω)のパワーアンプ回路を16ch分搭載。15.4chプロセッシングに対応するAV 10と組み合わせると、15.4chのシステムを構築できる。従来のアナログアンプでは困難であった大出力、多チャンネル、高音質なパワーアンプを設置しやすいサイズの筐体に収めるために、AMP 10ではClass D方式のパワーアンプを採用した。

このClass Dアンプモジュールは、ICEpowerのものをベースとしているが、マランツ側で基板から創り、使用するパーツの品種や定数、回路構成まで独自にカスタマイズ。“ほぼ別物”と言える専用設計のアンプモジュールになっている。独自のディスクリート高速アンプ「HDAM-SA2」も各所に採用。

Class Dアンプモジュール。左がベースとなるICEpowerのもの、右がAMP 10のモジュール。全体のレイアウトは同じだが、採用しているパーツなどがまったく違う
HDAM-SA2

部品の選定は、サウンドマスターと音質担当エンジニアによる試作・試聴を繰り返して決定。パフォーマンスを最大限に引き出せるようメルフ抵抗や薄膜抵抗、コイル、コンデンサーなど、多くの高品位なパーツが厳選された。

マランツのホームシアター向けのマルチチャンネルパワーアンプにClass Dアンプが採用されるのは初めてだが、「PM-10」や「MODEL 30」などのステレオプリメインアンプでは既にClass D方式のアンプを採用しており、その回路設計や音質チューニングのノウハウも活かされている。

Class Dアンプモジュールが並んだ内部

AMP 10では、パワーアンプへの電源の入力および、パワーアンプの出力からスピーカー端子までの経路にワイヤーを使わず、真鍮製のバスバーを採用。大電流をハイスピードに伝え、組み立て精度のばらつきによって起こるチャンネル間の僅かな音色の差異も排除した。

ワイヤーを使わず、真鍮製のバスバーで接続している

このパワーアンプモジュールは、日本国内の自社工場・白河オーディオワークスで、基板へのパーツの実装から製品への組み込みまでを一貫して作る事で、優れた品質と安定したパフォーマンスを実現したという。

パワーアンプ回路は2chごとにモジュール化されており、すべてのモジュールが同一構成、同一クオリティ。チャンネルごとの音色、特性のばらつきがなく、シームレスで立体的なサラウンド空間を描けるという。

モジュールごとに、リアパネルのスイッチでノーマル/バイアンプ/BTLのモード切り替えが可能。接続するスピーカーの構成に応じて柔軟な設定ができる。

モジュールごとに、リアパネルのスイッチでノーマル/バイアンプ/BTLのモード切り替えが可能

バイアンプ接続では、バイアンプ対応スピーカーの中高域用端子と低域用端子に、別々のアンプを接続。これによりウーファーの逆起電力がミッドレンジやツイーターに流れ込んで中高域の音質に影響を及ぼさなくなる。

BTL接続では、2chのパワーアンプを使用して1つのスピーカーを駆動。1つの入力信号から生成した互いに逆位相の信号を、2chのパワーアンプを使って出力することで、ノーマル接続よりも大きな出力が可能となる。BTLモードでは1ch当たり400W(8Ω)の出力が可能、すべてのモジュールをBTLに設定した場合は8chのパワーアンプとして使用できる。

スピーカー駆動のために大電流が必要なClass Dアンプ回路と、小信号を扱う入力段のそれぞれに専用の電源回路を用意することで、スピード、パワー、クオリティを追求。

安定度が高く、スピードと効率に優れたスイッチング電源回路を使用。オーディオ帯域外の高い周波数で高速にスイッチングを行ない、音声信号に影響するノイズを抑えている。入念な音質検討も実施しており、高品位な電解コンデンサーなどグレードの高いパーツを投入している。

入力段への電源供給にはアルミ製のケースに封入されたOFC巻き線トロイダルトランスやショットキーバリアダイオード、カスタム仕様のブロックコンデンサーなどハイグレードなパーツを用いた電源回路を使用。入力段のHDAM-SA2への電源供給は、パワーアンプモジュール内に設けたディスクリート電源回路によって行ない、クリーンかつ高品位な電源供給を実現している。

バランス、アンバランス入力端子には、HDAM-SA2によるインプットバッファー回路を搭載。入力信号を低インピーダンス化し、ノイズの影響を最小化している。

16chすべてが同一グレードの、バランス&アンバランス入力端子。アンバランス入力にはHi-Fiコンポにも使用されている真鍮削り出しの高品位なRCA端子を採用し、バランス出力とアンバランス出力のクオリティ差を無くしたという。

スピーカー出力にはマランツオリジナルのスピーカーターミナル「SPKT-1+」を装備。プリメインアンプの「MODEL 40n」にも使用されているもので、コア部は真鍮の無垢材から削り出し。表面処理はリスニングテストの結果、従来のニッケル下地+金メッキの2層ではなく、厚みのある1層のニッケルメッキとしている。

消費電力は500W。外形寸法は442×488×189mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は19.8kg。

AMP 10の背面