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ゼンハイザー、密閉型モニター最上位「HD 480 PRO」。振動減衰システムでローエンド正確性向上
2026年4月24日 07:00
ゼンハイザージャパンは、モニターヘッドフォンのフラッグシップで、密閉型の「HD 480 PRO」を24日に発売する。付属ケースの違いで2種類あり、通常モデルにはプロヘッドフォンバッグが付属し、69,300円。専用トラベルケースが付属する「HD 480 PRO PLUS」は72,600円。
既発売の開放型モニターヘッドフォン「HD 490 PRO」は、プロの現場でも人気を集め、各国でアワードも受賞するなど、成功を収めた。その一方で、ユーザーアンケートの結果、スタジオではない場所で作業する時や、夜遅い作業、騒がしい場所での使用など、開放型では対応できない課題の克服を求める声もあったという。
そこで、HD 490 PROを密閉型にしたようなモデルを開発すべく、大規模なサーベイとユーザーテストをアメリカ、ヨーロッパ、東京を含めたアジアの主要都市で実施。多くのユーザーの意見を取り入れ、HD 490 PROと同じ特許技術も活用しつつ、密閉型として完成したのがHD 480 PROだという。
ダイナミック型ユニットを搭載。開発にあたっては、密閉型ヘッドフォンの長年の課題という「ローエンドの正確性」と「長時間の使用に耐えられる快適性」を追求した。
ヘッドフォンの音が濁ったり、低音が膨らんだり、細かな音が埋もれてしまう原因の多くは、ドライバーや筐体、内部構造に生じる不要な振動や反射にあるという。
そこでHD 480 PROでは、「Vibration Attenuation System(振動減衰システム)」を投入。これは、特定のパーツを指すものではなく、ヘッドフォン全体の仕組みとしての設計を意味しており、イヤーカップの内部をレーザースキャンで細かく測定。どの周波数帯域を再生した時に、内部の何処で振動や反射が起こっているかを可視化し、それらを減らす様々な工夫をしていった。
具体的には、振動が伝わりにくい接合部設計や、内部の反射音をしっかり処理。イヤーカップ自体を鳴らない構造にしている。これにより、反射と歪みが低減され、ゼンハイザーのミュージックインダストリー・カテゴリーマーケットマネージャーであるジミー・R・ランドリー氏は、「従来の密閉型とは一線を画す、非常にタイトで正確、かつリアルな低音を実現しました」という。
これ以外にも、HD 490 PROと同じ技術として、超軽量ボイスコイルとネオジム磁石を使い、ドライバーの動きを正確にコントロールし、トランジェントを向上させたり、振動板を耳に対して最適な角度に設置したり、耳に安定してフィットするイヤーパッドを採用するといった特徴もある。なお、イヤーパッドは洗濯機で洗える。
複数段階のパッシブ遮音構造も導入。信号の純粋性を維持し、優れた音質を実現するために、イヤーカップ内外部の構造的な密閉性を高めたほか、イヤーパッドには高密度のメモリーフォームとベロア素材を採用した。
ヘッドバンド部分は、様々な頭部形状に合わせて圧力を均一に分散できるという。イヤーパッドには点字ガイドを搭載しているほか、眼鏡の形状に合わせた溝を付けることで、眼鏡使用時でも圧迫されることなく、密閉性と快適さを両立したとのこと。
ケーブルの着脱が可能で、ミニXLR端子を採用。入力プラグは3.5mm。なお、HD 490 PROはストレートケーブルだが、HD 480 PROはカール仕様。ヘッドフォン近くのケーブルには、独自のコイル構造を設け、ケーブルがデスク等に触れた際に発生するハンドリングノイズを物理的に遮断している。なお、HD 490 PROのストレートケーブルと、既発売アクセサリーのバランスケーブルとは互換性がある。
周波数特性は3Hz~28.7kHz(-10dB)。感度は107dB SPL(1kHz/1Vrms)。インピーダンスは130Ω(1kHz)。重量は272g。
発表会にはゲストとして、作曲家であり、Dimension Cruise社長、さらにYouTuberとしても活動している和田貴史氏が登壇。和田氏は、「スタジオでの作業は基本的にモニタースピーカーを使っていますが、自宅や時間帯によってはヘッドフォンを、またミックスの時のチェックはヘッドフォンを使います。音質だけを求めると開放型になり、密閉型はどうしても“密閉型だから……”と、諦める部分があった」という。
現在は開放型のHD 490 PROを愛用中。「(それまで使っていた定番モニターヘッドフォンの音に)ある時から、歪感やにじむ感じが気になり始めて、もっと良いものがないかと、ゼンハイザーさんのHD 400 Pro、HD 300 Proも試して、HD 490 PROは登場した時にすぐ買いました。リスニング向けではない、開放型のモニターとして硬派なモデルが出たなと、当時は衝撃でした」と振り返る。
そんな和田氏は、HD 480 PROの第一印象として、「HD 490 PROの音で、密閉型になるなら良いなと思いました。一聴した時は、まずまずだなと感じる一方で、地味な印象も受けたのですが、自分のスタジオで、いつもの環境で聴いたら衝撃的で、音量上げたときにバランスがとても整っていて、高音もすごく気持ちが良い。低音が少し膨らんでいることで、騒音の中聴いた時にも、低音が薄くならないようにしているなど、どうしてこのヘッドフォンは、この音になっているのか(という狙いが)わかった。いろいろ聴いているうちに、なるほどと納得の連続で、“ヤバいぞこのヘッドフォンは”と鳥肌がたってきました」と魅力を語る。
さらに和田氏は、時間軸方向の精度が高く、トランジェントに優れている事や、密閉型ながら低音がタイトであり、それでいて密閉型らしい音量感も備えている事などを称賛。「(自分の)スタジオのヘッドフォンを全部HD 480 PROにしたいですね」と笑った。
聴いてみた
発表会場で短時間だが、HD 490 PROとHD 480 PROを比較試聴した。「ノラ・ジョーンズ/Come Away With Me」や「エリック・クラプトン/CHANGE THE WORLD」などで聴き比べた。
2モデルを聴いてまず感じるのは、音の方向性が非常に良く似ている事。どちらもトランジェントが良く、目が覚めるようなハイスピードなサウンドであり、そのスピード感が中高域だけでなく、低域まで貫かれており、ベースラインを細かくシャープに描写してくれる部分もソックリだ。
中高域に注目すると、HD 480 PROの方がややドライで、HD 490 PROの方が質感描写は丁寧だが、基本的にはよく似たサウンドであり、「HD 490 PROの密閉型が欲しいな」と思っていた人は、HD 480 PROを迷わず選ぶと良いだろう。
HD 480 PROで特筆すべき部分は、低域のスピード感、解像度の高さがありつつ、1つ1つの音に押し出しの強さ、パワー感がある。そのため、高精細でありつつ、しっかりと重さのある低音も味わえる。リスニング目的でHD 480 PROを選ぶのもアリだろう。
また、重量の数値はHD 480 PROの方が、HD 490 PROよりも重いのだが、実際にHD 480 PROを手にしてみると、密閉型ヘッドフォンとは思えないほど軽く感じる。イヤーパッドもソフトなため、装着時の負担も少ない印象だ。筆者はメガネを着用しているが、つるの部分で大きな隙間ができる事もなかった。
















