西田宗千佳のRandomTracking
第651回
UIも起動も高速化、実は大きなアップデートだった「Fire TV Stick HD」
2026年4月15日 22:00
Amazonがストリーミングプレイヤーの「Fire TV Stick HD」を刷新した。
都内では発表イベントも行なわれたが、その開催に合わせ、米AmazonでFire TVを担当するバイスプレジデントであるジョシュア・ダノヴィッツ氏が来日した。
今回の製品がどういう位置付けなのか、現在のFire TVがどう進化しているのかなどを、ダノヴィッツ氏と、アマゾンジャパン合同会社AmazonデバイスFire TV事業部 事業部長の西端明彦氏に話を聞くことができた。
「まだ今のFire TV Stickが使えるからいいや」と思っている方、今回の製品は、見えづらいところが色々変わった製品でもある。
彼らのコメントから、その辺の状況を見ていこう。
もっとも安価な製品がリニューアル。UIも新
まず、新しいFire TV Stick HDについて説明しておこう。
現状、Fire TVには5つの製品がある。そのうち4K対応が4つ、2K対応が1つ。もっとも安価な製品が2K対応のFire TV Stick HDであり、価格も6,980円とかなり安い。
Fire TVも日本市場参入から10年以上が経過し、かなり定着してきた印象が強いが、今回は低価格モデルを刷新し、普及を狙う。
今回出る新製品は、このFire TV Stick HDの最新モデル。2K対応であることは変わらないが、サイズがさらに小さくなり、HDMIのコネクターに近い横幅になっている。シンプルな話として、横幅が狭くなったことで隣のHDMI端子と干渉しにくくなったのはプラスだ。結果として、HDMI端子を延長するケーブルは付属しなくなった。
また今回は、OSを含めたソフトウェアも大幅に刷新されている。実は、この部分がもっとも大きな変化ではある。
Fire TVのユーザーインターフェースは何度か変更が加えられているが、今回は過去の変更と比べても、かなり大規模なものだったようだ。発表自体は今年1月のCESに合わせて行なわれているものの、そこから開発と検証が続けられていた。
ダノヴィッツ氏は新ユーザーインターフェースについて、「今回の新製品から、日本では正式な導入が開始される。その後、現行の製品に対して順次アップデートされていく」と話す。
なお、すでに販売ラインナップから外れている製品については、ユーザーインターフェースアップデートを行うかは「決まっていない」(西端氏)という。パナソニックなどからFire TVブランドのテレビが出ているが、こちらについては、テレビメーカー側と動作確認をしつつ、順次アップデートされていくことになる。
日本の事情に特化した「アニメタブ」、でも実はアニメだけじゃない
新インターフェースは「わかりやすくなった」「軽量になった」という2点が特徴になる。
上部に「検索」「ホーム」「映画」「テレビ番組」などのタブが用意され、それらを選ぶことで、より簡単にコンテンツを見つけられる。
特に日本向けの変化として大きいのは「アニメ」タブができたことだ。このタブでは、Fire TVで視聴できるコンテンツの中からアニメだけを抽出して表示する。
ダノヴィッツ氏(以下敬称略):日本のお客様は、非常にアニメに対する関心が高いんです。データをご紹介しますと、現在カタログに入っている作品の中でも、アニメは非常に数が多いんです。平均的な視聴時間の利用者がアニメ「だけ」をご覧になったとしても、90年近い分のコンテンツがあります。
そのくらい、日本人がたくさんアニメを見ているということなのだろう。「海外でも導入の可能性はある」(ダノヴィッツ氏)とのことだが、まずは日本独自の展開としての「アニメタブ」導入ということになる。
ただ実のところ、アニメタブには逆の役割も存在する。
日本ではアニメの人気が高い。一方で、アニメは「全く見ない」という人も確実にいる。だが、アニメが人気の日本では、レコメンドやランキングにアニメが入ってきてしまう。
そういう人々の使い方と両立するには、「アニメに確実にリーチできるタブ」と「アニメ以外に確実にリーチできるタブ(映画、テレビ番組)」を別々にするのがベストだった……ということでもあるようだ。
そしてもう一つ、面白いことがある。
ダノヴィッツ:タブについては、市場に応じた特別なフィーチャーを作れるようになっています。
例えばアメリカだと、スーパーボウルのシーズン中には、右側に「スーパーボウル」のタブが出ます。
国によって適切なコンテンツがありますし、タイミング的なこともあります。今後も適切なフィーチャーを提供しようと考えています。
すなわち、タブという機能はかなり自由度が高い存在、ということなのだろう。スーパーボウルの例が出たように、スポーツイベントとの相性が良さそうだ。Amazon Prime Videoも多くのスポーツイベントを配信するようになっているが、それらをまとめてくれればわかりやすくなる。
UIとOSの変化で動作がサクサクに
新インターフェースの導入には、他にも重要な要素がある。
それは「動作が速くなる」ことだ。
Amazon側の説明によれば、新ユーザーインターフェースの導入は単にデザインが変わるだけにとどまらない。内部的なソフトウェアも同時に書き換えが行なわれており、その結果として動作が「よりサクサクになる」そうなのだ。
どのくらい速くなるかはデバイスによっても異なるが、3割近く改善することもあるという。
特に、今回の新製品であるFire TV Stick HDの場合、機能性自体に大きな変化をもたらした。
というのは、過去のFire TV Stick HDと新しいFire TV Stick HDでは、動作しているOSが異なるからだ。
新Fire TV Stick HDと、昨年秋に発売された「Fire TV Stick 4K Select」では、Amazonが独自に開発した、Linuxベースの軽量OS「Vega OS」が使われている。
Fire TV系列の製品は、これまではAndroidをベースにした「Fire OS」を使っていた。しかし安価な2機種については、OSの切り替えが密かに行なわれている。
Vega OSについては昨年秋、ニューヨークで開催された発表イベントのレポートでも触れているので、そちらも併読願いたい。
OSが異なるのでアプリケーションの互換性はないが、映像配信を中心に、主要なアプリについてはVega OS版もある。特定の「このアプリがない」ということで困る可能性もあるので確認は必要だ。
ダノヴィッツ氏も「現状ですべてのアプリがVega OSで動く、というわけではないものの、主要なものはすでに用意できている」と話す。
現状では、PCゲームをストリーミングで動かす「Steam Link」や、DLNAベースのテレビ録画機器を再生する「DiXiM Play Amazon Fire TV版」などが、主な非対応アプリになる。
(Fire TV版)新製品 Amazon Fire TV Stick 4K Select でのご利用に関する重要なお知らせ
タブレットと異なり、Fire TVの場合にはアプリの利用も映像配信が中心。映像配信以外の特定アプリを選ぶのでない限り、OSの違いを意識することも少ないだろう。
なおAmazonによれば、パナソニックなどが発売している「テレビ」では、今後もVega OSではなくFire OSが使われる予定だという。理由は、テレビ向けの多彩な機能があり、それらは現状、AndroidベースであるFire OS向けに作られているためだ。基本的に映像配信向けであるFire TV Stickとは、その点が異なる。
起動高速化と「USB給電」の関係とは
ただ、今回の新Fire TV Stick HDの場合、OSの違いがより大きな結果をもたらす。
Amazonによれば、新Fire TV Stick HDは「起動がかなり速くなった」という。場合によっては、過去のモデルの数倍と感じられるほどだ。
これはなぜか?
西端氏は「電源の問題」を指摘する。
西端:今回のFire TV Stick HDから、オフィシャルに「USBを使って、テレビから給電ができる」とアナウンスしています。
以前から可能ではあったんですが、ここには、今回起動が速くなったことが関係してきます。
通常のコンセントにACアダプターをつけてつないでいる状態の場合、Fire TV Stick HDには、常に電源が供給されている状態でした。
しかし、USBケーブルを使ってテレビから給電した場合、電源はテレビに連動することになります。テレビの電源を切るとテレビから一旦給電がなくなり、毎回起動からになります。
ですから起動スピードがある程度速くないと、お客様にとっては大きなストレスになります。
しかし今回の新製品では、起動が非常に速くなりましたので、「USBを使って、テレビから給電ができる」としているのです。
販売中の4機種を含む以前のFire TVでも、電源はUSBケーブルを介して供給していた。だが西端氏のコメントにあるように、Fire TVの起動という問題があるので、「付属のACアダプターにつないで、常に給電された状態で使う」ことが前提だったわけだ。
それが今回、OSとユーザーインターフェース双方の改善によって起動速度が高速化したので、テレビから給電して「毎回再起動する」状態でも問題なく使えるようになる。
もしかするとこの点に気づかず、「テレビのUSBから給電していて、Fire TVの起動が遅い」と感じていた人もいるのではないか。だとすれば、Fire TV Stick HDは、大きな不満を解消するデバイスになる可能性もある。
なお、既存製品もアップデートで高速化するものの、Fire TV Stick HDほど大きなメリットが出るかどうかは確認できていない。ただ少なくとも、起動以外の部分、例えば「メニューのサクサク感」などは、一定の効果が見込めるようである。
「マイFire TV Stick」を旅行で持ち歩くこと推進
起動が速くなったこと、コンパクトになったことの合わせ技として、Amazonはこれから、Fire TV Stick HDについて「旅行などでの持ち運び利用」も推進していくという。
西端:旅行先のホテルのテレビにストリーミングの機能がある場合も増えていますが、自分のアカウントを入力するのが躊躇われる……という方もいらっしゃいます。
今回、軽量・小型になったので、旅行先でも使っていただけます。これまでもそういう使い方をしていた方々もいらっしゃったようですが、改めてアピールしたいと考えています。
AV面での機能を考えた場合には、上位モデルは4K対応なのが大きい。しかも、Fire TV Stick 4K SelectとFire TV Stick HDは、価格が1000円しか違わない。自宅のテレビに据えつけるなら、4Kモデルの方がなにかとプラスではある。
しかし、手軽に持ち出すなら、2Kでもいいだろうし、小さく・軽く、少しでも安い方がいい。
そういう意味で、Fire TV Stick HDは、以前のモデルからは少し立ち位置が変わってきた印象も受ける。
なお、給電のための端子も、これまでのFire TV Stick HDは「micro USB(USB 2.0 Micro-B)」だったが、今回の新製品から(やっと)「USB Type-C」になる。このことも、持ち運びには間違いなくプラスになる。
















