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オーテク、60周年MCカートリッジ「AT-MC2022」を改良した「AT-MCD1」。先端軽量化、新形状シバタ針

AT-MCD1

オーディオテクニカは、2022年に60周年記念モデルとして発売した、スタイラスチップ一体型ダイヤモンドカンチレバー採用のMCカートリッジ「AT-MC2022」に、さらなる改良を加えた「AT-MCD1」を6月12日に発売する。価格はオープン、市場想定価格は187万円。

アフターサービスとして、カンチレバー取替修理費用は税別102万円、性能検査サービスは税別2万円となる。

AT-MC2022は、数量限定で出荷され、世界中で即日完売となる人気となった。その後も、販売店や業界関係者から再販を希望する声が寄せられたため、AT-MC2022の性能と音質をさらに上回ることを目標に開発されたのがAT-MCD1となる。

左からAT-MC2022、AT-MCD1

レコードの音溝に、スタイラスチップが接触して音溝の動きを感知。ピックアップされた機械的振動は、カンチレバーと呼ばれる細長い棒状の部品を介して電気信号を生み出す発電コイルに伝えられる。

AT-MCD1の拡大模型

一般的にスタイラスチップはダイヤモンドで作られており、アルミニウムやボロンといった材料で作られるカンチレバーに接着固定されている。このように、技術的・コスト的な制約により、スタイラスチップとカンチレバーは2つの異なる素材の部品として作られている。

AT-MC2022やAT-MCD1は、この2つの部品をダイヤモンド一体型で、1ピースの部品として構成しているのが大きな特徴。スタイラスチップとカンチレバーの間に繋ぎ目が無いため、レコードの音溝の動きをより正確に発電コイルに伝えられ、「MCカートリッジにおける1つの音の方向性の極地を目指す」という。

新モデルのAT-MCD1は、AT-MC2022の基本構成をベースとしつつ、このスタイラスチップ一体型ダイヤモンドカンチレバーを軽量化することで、音質を向上。さらに、新規開発のシバタ針を採用している。

スタイラスチップ一体型ダイヤモンドカンチレバーを軽量化した理由は、レコードの音溝の動きを忠実にトレースするため。軽量化のための工夫として、先端の傾斜した部分の角度を、より深くした。これにより、高域の機械的共振のピークを抑制。高域再生における表現力がより向上したという。

スタイラスチップの先端。針先の反対側の、背中の部分に注目。かなり削られて、細くなっているのがわかる。この角度をAT-MC2022よりも深くしたことで、軽量化を実現した

スタイラスチップは、AT-MC2022ではマイクロリニア針を採用していたが、AT-MCD1ではオーディオテクニカで初採用となる新規形状のシバタ針を搭載。従来同社が採用していたシバタ針は、R2.7×r0.26milというサイズだったが、新たに開発したシバタ針はR2.7×r0.08milとなり、複雑に変位するレコードの音溝から、より精密に情報を拾い上げられることができる。

筐体は、最先端の5軸切削加工機を導入して作り上げたチタンハウジングを採用。剛性がありつつ、軽量に仕上げた。表面にはイオンプレーティング処理を施し、光沢感のある黒色に塗装。ベースにはアルミ、アンダーカバーにはエラストマーと、異種素材を組み合わせることで、各パーツの共振の分散を図っている。

さらに、AT-ART20で開発したフロントヨークの厚みをアップさせた、新磁気回路をAT-MCD1でも採用。磁束密度が強化され、従来の磁気回路搭載モデルより、出力電圧が約15%向上した。

ターミナル部分には、現行製品と比較して金メッキの厚みを約30倍にしたターミナルピンを採用。接触抵抗の低減と高音質化に寄与したという。

筐体はMC型で、再生周波数帯域は20Hz~50kHz、出力電圧は0.55mV(1kHz/5cm/sec)、針圧は1.7~1.9g(1.8g標準)。取り付けネジ穴はM2.6×2、重量は9.5g。外形寸法は17.7×26.7×17.3mm(幅×奥行き×高さ)。

カートリッジの保管用ケースは、ヘッドシェルも収納可能な新規設計で、天然無垢のチェリー材を採用。プラスチックを一切排除したケースになっている。

音を聴いてみる

前述の通り、AT-MC2022とAT-MCD1の大きな違いは、スタイラスチップ一体型ダイヤモンドカンチレバーの先端の角度を深くし、軽量化したこと。そして、新たな形状になったシバタ針を採用していることだ。

軽量化と言っても、先端の角度をより深くまで削るくらいなので、質量の変化は非常にわずかなものだ。しかし、開発にあたり、すべての条件を揃えて“従来の角度の先端”と“より角度を深くして軽量化した先端”を比較試聴すると、音はかなり変化したという。

実際に完成したAT-MCD1で、「荒井由実/ひこうき雲」を試聴すると、非常に解像度が高く、見通しの良いサウンドが展開する。音像の輪郭もシャープで、繊細な声の表現も豊かに聴き取れる。それでいて、線が細い弱々しい音にはなっておらず、力強さも備わっている。

「鈴木勲トリオ/Aqua Marine」で、AT-MC2022とAT-MCD1を比較試聴すると、違いは顕著だ。

AT-MC2022も、高解像度でワイドレンジ、音像にしっかりと厚みもある素晴らしい音だが、AT-MCD1に付け替えると、高域の描写がより丁寧になり、音像の輪郭もよりシャープになる。フォーカス感がアップしたことで、低域の分解能も向上したように聴こえ、低域から高域まで、全体のトランジェントが良くなったと感じる。

音像がシャープになっただけでなく、そこから広がる音の響きが、左右だけでなく、奥にも広がっていく様子がよりクリアに見通せるため、音場全体の立体感もアップしていた。