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ヤマハ、ユニットをアンプの一部として扱ったHi-Fiアクティブスピーカー「NX-70A」。試聴レビュー付き
2026年6月25日 13:00
ヤマハは、Hi-Fi向けのアクティブスピーカーで、自動音場補正の「YPAO」や、新開発の「シナジスティックドライブ」などを搭載した「NX-70A」を8月下旬に発売する。価格はペアで385,000円。カラーはブラックとホワイト。専用のスピーカースタンド「SPS-70A」もペア88,000円で発売する。
独自の振動板であるハーモニアスダイアフラムをウーファーとツイーターの両方に採用。そのスピーカーユニットとアンプを、一体としてとらえて動作させるシナジスティックドライブ機能を搭載。YPAOによる音場補正も可能。 Spotify、Google Cast、AirPlay 2、Bluetoothなどに対応するほか、今後のアップデートでQobuz Connectもサポートする。音楽ファイルはMP3、WMA、MPEG-4 AAC、WAV、FLAC、ALAC、AIFF、DSDの再生に対応。
ユニットの特徴
13cmのウーファーと、3cmのツイーターを搭載した2ウェイのリアバスレフ・ブックシェルフスピーカー。
ユニットの振動板はどちらも、ハーモニアスダイアフラムを採用している。これは、ヤマハのHi-Fiスピーカー最上位モデルの振動板に使われているZYLON(ザイロン)と、グランドピアノの響板にも使われているスプルース材などを混ぜ合わせて作られている。音速と内部損失のバランスに優れるZYLONを細く切り、ピアノの響板に使用するスプルース剤の端材を細かくしたものと混ぜ、さらに自然素材を加え、紙のように抄いている。
なお、NS-800A/600Aなど、ハーモニアスダイアフラムを採用したスピーカーは既に存在するが、これらに使われている振動板と同じものではなく、NX-70A専用として、サイズ的にメリットが出るような比率で混ぜ合わせたユニットを新たに作っている。
ツイーターとウーファーのどちらにもハーモニアスダイアフラムを使うことで、全体域の音色を統一。楽器の音や人の声をありのままに、自然かつ音楽性豊かな音を実現したという。
シナジスティックドライブ
アンプを内蔵したアクティブスピーカーのために作られた、新開発の歪低減技術「シナジスティックドライブ」を搭載した。
従来のオーディオシステムでは、アンプとスピーカーが独立しており、アンプの出力は、その周波数特性がフラットになるよう設計されてきた。スピーカー側は、フラットなアンプの出力を受けて、所望の味付けがされた音響出力特性になるよう設計されている。
このアンプとスピーカーを一体化した場合、アンプ前段に配置したDSPで、スピーカーの周波数特性を調整する程度の対応にとどまってきた。それに対して、シナジスティックドライブでは、最終的なスピーカー音響出力の高音質化を、アンプとスピーカーの協調動作によって実現した。
スピーカーシステムの歪の要因は、大きく2つある。1つは、振動板やスパイダーなどの駆動系部品が、非線形な挙動をすることで発生する「機械的な要因による歪」。もう1つは、ボイスコイルに電流が流れ、新たな磁束が発生、それが時期材料を貫通する事で、磁気材料内部で渦電流が発生、それが電流波形を歪ませ、出力される音響波形も歪む「渦電流による損失」。
こうした問題に対し、アンプとスピーカーを協調動作させることで、渦電流による損失の影響を最小限に抑え、ユニットに歪の抑制された、理想的な電流波形を供給できるという。
さらに、出力方式にも注目。駆動原理から考えると、駆動力が電流と比例するスピーカーは、電流出力方式で駆動するのが最適だというが、一般的なパワーアンプでは電圧出力方式となっている。
これは、パワーアンプがどのような負荷特性を持つスピーカーを繋いでも、同じ安定度で動作できる汎用性を求められているため。電圧出力方式は負荷に依存せず、電圧を一定にできる。しかし、この方式では電圧は一定になるが、電流は負荷に依存して決まるため、電流性歪にあるように負荷に非線形な要素があると、電流が歪んでしまう。
シナジスティックドライブでは、アンプとスピーカーを協調動作させる回路技術により、スピーカーの駆動原理に則った電流出力方式を実現。磁気材料由来の電流出力歪を、広帯域で低減。スピーカーユニットを、アンプの電気回路の一部として扱うことで、流れる電流を正確に制御でき、歪を最大20dB低減という効果を実現したという。スピーカーとアンプの両方を手掛けるヤマハならではの技術となる。
YPAOも搭載
AVアンプなどでお馴染みの自動音場補正機能のYPAOも搭載。ステレオ再生の音質で重要となる、初期反射音を積極的に制御する「YPAO-R.S.C.」に加え、イコライジング処理も64bit精度で演算し、音質を向上。これらの測定結果を反映させることで、ラウドネスコントロールの効果をより高め、小音量再生時に自然な音質補正効果が得られる「YPAO Volume」も利用できる。
測定用のマイクも同梱する。これらにより、シビアなセッテイングや調整をしなくても、専用のオーディオルームで聴いているような音場を、リビングで手軽に楽しめるとのこと。
その他の特徴
エンクロージャーはラウンドフォルムを採用し、平行面を無くすことで内部の定在波を抑制。天面に無垢のアルミを使うことで、質感を高めている。
また、天面と底板に5mmのアルミニウム板を使い、ネジ止めして一体化。余計な共振を抑え、バッフル面の合成も高めている。
放熱部分やエンブレムなど、各所にコッパー色をアクセントとしてあしらった。
メインスピーカーとサブスピーカーで構成するが、アンプはどちらのスピーカーにも内蔵。メインとサブを有線接続(LANケーブル)できるほか、ワイヤレス接続も可能。スピーカケーブルの制約から放たれ、設置の自由度が増すが、2つのスピーカーそれぞれに電源ケーブルの接続は必要。
スピーカーの左右は固定されておらず、アプリで入れ替える事もできるため、プライマリーとセカンダリーという扱いとなる。伝送データとしては、有線接続の場合は192kHz/24bitだが、ワイヤレス接続では96kHz/24bitとなる。
筐体下部の前面に、ディスプレイを搭載。ボリュームの値や、音楽配信サービスで現在再生している曲名などの情報を表示できる。設定などはアプリで行なえるが、リモコンも付属する。
HDMI eARC/ARCも搭載し、テレビとHDMIケーブル1本で接続し、映画などのサウンドを再生する事もできる。
入力端子はステレオミニ×1、光デジタル×1、HDMI eARC×1、Ethernet×1、USB-A(音楽再生/ファームウェアアップデート)、YPAOマイク入力×1。サブウーファープリアウトも備える。これとは別に、プライマリーとセカンダリーの両方に有線接続用LAN端子を搭載する。
外形寸法は、189×234×333mm(幅×奥行き×高さ)、重量はプライマリーが5.7kg、セカンダリーが5.4kg
音を聴いてみる
今後のアップデートでの対応となるが、開発中のファームウェアを使ってQobuz Connectから試聴。「サマラ・ジョイ/ラヴバードの蘇生」や「チョ・ソンジン/ラヴェル: ソロ・ピアノ作品全集」から「Ravel: 組曲 《鏡》 M. 43: 第4曲: 道化師の朝の歌」などを聴いた。
音が出た瞬間にわかるのは、恐ろしいほどのSN感の良さだ。無音部分がまったく無音で、その何もない空間から、スッと音楽が鮮烈に立ち上がる。
定位の良さもバツグンだ。サマラ・ジョイが、まるで本当に目の前に立っているようなリアリティがあり、音像の輪郭も極めてシャープだ。これはラウンドフォルムの筐体の採用や、アルミニウム板での補強で余分な振動で音が濁らない効果もあると思うが、それだけでなく、シナジスティックドライブによる歪の少なさ、クリアさによって、音の情報量が極めて多い事も寄与していると思われる。
輪郭に余分な膨らみやにじみがなく、音の1つ1つが鮮明に聴き取れる。輪郭がキツく強調されている音ではなく、ナチュラルさがありながら、細かな音が聴き取れる。シナジスティックドライブの効果を実感する部分だ。
さらに、低域と高域の繋がりの良さも、この音像のリアルさをサポートしているとも感じる。聴きながら目を閉じると、ユニット間の“繋がり”を意識するような部分がまったくなく、まるでフルレンジユニット1基のブックシェルフを聴いているかのような気分になる。
ブックシェルフのため、地面を振動させるような重低音は出ないが、透明度の高い中高域に負けない、高い解像感のある低音を聴かせてくれる。チョ・ソンジンのピアノも、左手の動きが良く見える。リアバスレフだが、バスレフで増強される低域も、過度に膨らませてはおらず、迫力を加えながら、タイトさを維持している。とにかく低域の情報量も多いため、聴いていても、低音の不足感はない。
フルオーケストラとして、フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮によるバレエ音楽「ダフニスとクロエ」も聴いたが、ブックシェルフらしい広大な音場に、オーケストラの各楽器がビシッと定位し、どの楽器から、どの音が出ているかというのが克明にわかる。
各楽器の音が重なり、うねるように押し寄せるパートでも、カスタネットの鋭い音は埋もれず、シャープに定位。激しい音楽を再生している時でも、明瞭度や情報量が低下しないのが見事だ。
ペアで385,000円と、ブックシェルフのアクティブスピーカーとして、それなりに高価なモデルだが、例えば、10万円の2chアンプと30万円のブックシェルフスピーカーを個別に用意し、組み合わせてこのサウンドが出せるかというと恐らく難しいと思われる。アンプをスピーカーに内蔵し、スピーカーユニットをアンプの電気回路の一部として扱うことで到達できる、新しいスピーカーの世界を見せてくれるモデルだ。





















