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ヤマハ、全ユニットハーモニアスダイアフラムの小型スピーカー「NS-800A/600A」
2023年12月21日 13:00
ヤマハは、独自のハーモニアスダイアフラムを全てのユニットに採用することで音色を統一したブックシェルフスピーカー2機種を2024年2月中旬に発売する。1台の価格は「NS-800A」が275,000円、「NS-600A」が198,000円。どちらのモデルでも使えるスピーカースタンド「SPS-800A」も1台66,000円で発売する。予約開始日は2024年1月11日の予定。
既発売のフロア型「NS-2000A」に使われたユニットや技術を多く取り入れたブックシェルフスピーカー。どちらも2ウェイのリアバスレフ。ヤマハがこだわる「TRUE SOUND」の核となる“音色”や“サウンドイメージ”、“ダイナミクス”の再現を徹底して追求。NS-600Aでは「音の定位感と正確な音場再現やサイズを超えた低音再生、音のスピード感」にこだわり、NS-800Aでは「ひとクラスゆとりのあるキャビネットが生み出す豊かな音場で、アーティストが表現する唯一無二の音、演奏を目の前で聴いているような深い音楽体験」が楽しめるという。
2機種に共通する特徴として、ツイーターとウーファーのどちらにもハーモニアスダイアフラムを採用している。より上位のモデルは、ユニットの振動板に「ZYLON(ザイロン)」を使っているのが、高価な素材であるため、ZYLONのような利点を備えつつ、コストを抑えたのがハーモニアスダイアフラム。
音速と内部損失のバランスに優れるZYLONを細く切り、ピアノの響板に使用するスプルース剤の端材を細かくしたものと混ぜ、さらに自然素材を加え、紙のように抄いて作ったもの。
ZYLONは繊維の厚さが決まっているが、ハーモニアスダイアフラムでは、部分的に厚くするなど、厚さのコントロールができ、振動板毎に求められる特性を最適化できるという利点もある。ツイーターは3cm径で共通。ウーファーは、NS-800Aは16cm、NS-600Aは13cm。
NS-2000Aで採用しているユニットとまったく同じではない。いずれも2ウェイで、クロスオーバー周波数はNS-2000Aとは異なる2.6kHzで繋いでおり、ツイーターはより低い帯域まで再生できるように磁性流体を最適化している。
ウーファーもエッジ部分を最適化する事で、2ウェイのウーファーとして最適な制動性が得られるように改善している。
スピーカーターミナルはどちらもシングルワイヤリング。自然な聴き心地にこだわったという。真鍮削り出しのオリジナルパーツを採用。内部ネットワークには、独ムンドフル製のコンデンサーであるMCap SUPREME Classicをはじめ、業務用音響機器でも実績のある専用パーツを投入。内部配線にはPC-Triple Cを使っている。
ツイーターのバックチャンバーには、不要な管共鳴を抑制する特許技術「R.S.チャンバー」を採用。
エンクロージャーの開発では、レーザー光線を照射し、エンクロージャーが共振していると、ドップラー効果で戻ってくる光の波長が変わる事を利用したFEM解析を活用。最適な補強や構造を実現したという。
エンクロージャーをラウンド形状にする事で横方向の定在波を発生しにくくしているほか、前後と縦の定在波への対策として、独自の共鳴管アコースティックアブソーバーをコの字にしたものを内部に配置。狙った周波数の定在波を除去している。これにより、吸音材を極力使わず、「失われがちだった音楽本来の臨場感を活き活きと再現する」という。
背面のバスレフポートは、捻りながら広がる形状にする事で、ポート部分に生じる空気の渦を拡散させる、独自の「ツイステッドフレアポート」を採用。ポート端でのノイズを低減している。
ポートの内側にも工夫があり、終端を斜めにカットする事で、特定の周波数に集中するピークを抑え、より歯切れの良い低域再生を可能にしたという。
楽器メーカーでもあるヤマハとしてこだわり抜いたピアノフィニッシュ仕上げで、グランドピアノと同じ専用塗料と下地材、研磨工程を採用している。背面からもネジが見えないデザインにもこだわった。
再生周波数帯域は、NS-600Aが47Hz~65kHz(-10dB)、NS-800Aが40Hz~65kHz(-10dB)。インピーダンスは6Ω、出力音圧はNS-600Aが85.5dB/2.83V,1m、NS-800Aが86.5dB/2.83V,1m。
外形寸法と重量は、NS-600Aが207×329×383mm(幅×奥行き×高さ)で9.9kg、NS-800Aが231×358×420mm(同)で13kg。
スピーカースタンドのSPS-800Aは、なめらかな曲線を持つ支柱を採用。音の反射による影響を最小限に抑えている。また、ベース部分には高密度のMDFを42mmの厚さで張り合わせた3層構造を採用。底部の中央部分にスチール製の重りを装着する事で、低重心化し、安定性を高めている。着脱と高さの微調整が可能なスパイクも付属する。
音を聴いてみる
ジャズピアノの「アーマッド・ジャマル/Sometimes I Feel Like A Motherless Child」や、女性ボーカル「Dave's True Story/Marisa」などでNS-600AとNS-800Aを聴き比べた。
どちらのスピーカーも、ヤマハらしい色付けの少ない、クリアで素直な中高域だ。どちらもブックシェルフの利点を活かし、広大な音場に、ボーカルなどの音像がシャープに定位する。
フロア型のNS-2000Aを聴いた時は、おだやかで、空間に溶け込むようなサウンドだと感じたが、今回のブックシェルフ2モデルは、どちらも切り込むようなシャープさ、鮮烈さを備えており、そういった意味で「NS-2000Aを小さくしたモデル」という印象ではない。ブックシェルフならではの魅力を追求したモデルと言えそうだ。
定位の明瞭さで比較すると、より小型なNS-600Aの方が上だが、NS-800Aはスケール感が豊かで、音圧もパワフル。クラシックのオーケストラなどを再生すると、よりフロア型に近いダイナミックなサウンドも楽しめる。価格としては上位モデルと下位モデルではあるが、どこを重視するか、どんな部屋に設置するかなどの用途で選びたい2機種だ。
2機種に共通するポイントとして、どちらもバスレフ型だが、低域が良い意味で「バスレフっぽくない」。ボワボワと肥大化したり、一部が盛り上がったりする低域ではなく、適度な量感と音圧を出しつつ、さらに下の音は無理に追求せず、スッと素直に落ちている印象。これも、クリアなサウンドを実現している秘訣の1つだろう。