ジョブズCEOがiPhoneへのFlash非搭載について声明

-AppleはWeb標準を重視。「Flashこそがクローズド」


4月29日発表(現地時間)


1月のプレスイベントで、「iPad」を発表した、スティーブ・ジョブズCEO
 米Appleのスティーブ・ジョブズCEOは29日(現地時間)、iPhoneやiPad、iPodでAdobeのFlash技術を搭載しない理由について声明を発表した。

 Webサイトなどで広く導入されているFlashだが、AppleのiPhone、iPad、iPod touchなどのモバイル製品では、Flashをサポートしていない。そのためAdobeは、「Adobe Creative Suite 5」(CS5)に「Packager for iPhone」と呼ばれるコンパイルツールを用意。Flashのプログラミング言語である ActionScriptを使って、iPhone向けアプリを提供可能としていた。しかし、AppleはiPhone OSの最新版となる、iPhone OS 4.0(SDK)のβ版提供に伴い、従来の規約を変更。Packager for iPhoneのようなツールが事実上使えないことになったことから、AdobeはiPhone向けFlash開発の打ち切りを表明している。

 ジョブズCEOは、かつてのAdobeとの緊密な関係を強調した上で、「なぜ、iPhone、iPad、iPodでFlashに対応しないのか書き留めておきたい」として、「Abobeは、AppleがApp Storeを守るというビジネス上の判断と主張しているが、それは違う。技術的な問題である。AdobeはAppleがクローズドで、Flashがオープンと主張するが、その逆が事実だ」と反論している。

 まず1点目として、Adobeの“オープン”という主張について、「Flash技術は100%プロプラエタリな技術で、Adobeにしか供給しえないものだ。将来の拡張性、価格設定についてもすべて彼らがコントロールできる。Flashが広く普及しているからといって、それは“オープン”を意味しない。Adobeが完全にコントロールし、Adobeからしか提供されない技術。Flashは決してオープンではない」と批判する。

 加えて「AppleもiPhone OS、Mac OSなどはプロプラエタリな技術を持つ。しかし、われわれはWebはオープンであるべきとの信念を持っている。Appleは、HTML5、CSS、JavaScriptなどのオープン規格を採用し、ハイパワーで、低消費電力なAppleのモバイル製品はこれらの技術に対応し、Googleや多くのWeb開発者もこれらの技術を使っている」と強調。さらに、ブラウザ用のレンダリングエンジンWebkitがSafariを始め、GoogleのAndroid端末や、Palm、Nokia、RIMなどに使われていることも言及し、Appleのオープン技術へのこだわりを訴えている。

 2点目は「フルWeb」という点について、「Adobeは、Webのビデオの75%がFlashだからと、Apple製品が“フルWeb”アクセスできないと主張する。しかし、彼らはそのほとんどがH.264で、iPhoneやiPadで見られるとは語らない。YouTubeもVimeoもNetflixなども見られる」と説明する。

 一方で、Adobeが主張するFlashゲームがプレイできないという点については、「それは確かに事実だ」と認めるが、「5万以上のゲームがApp Storeに登録されており、多くは無料である。iPhone、iPad、iPod以上のタイトルを有するゲームプラットフォームは存在しない」と主張する。

 3点目は「信頼性」について。「Macのクラッシュの一番の原因はFlashだ。我々はFlashを加えることで、iPhone、iPad、iPodの信頼性やセキュリティを損なうことはしたくない」と主張。加えて、モバイルデバイスにおけるFlashの完成度の低さについても苦言を呈している。

 4点目は、「バッテリ駆動時間」について。「モバイルデバイスで長時間のバッテリ駆動を実現するためには、ハードウェアデコーダが必要だ。多くのモバイルデバイスはH.264のデコーダを持っている。FlashはH.264をサポートしているにも関わらず、FlashのWebサイトは古いデコーダを使うためにソフトウェアでデコードする。iPhoneを例にとれば、H.264で10時間再生できるところが、ソフトウェアデコードでは5時間以内にバッテリを使い果たしてしまう」とする。

 5点目は「タッチ」。「FlashはPCを前提としており、タッチスクリーン操作を考慮していない。Flashで書かれたサイトはタッチベースのデバイスをサポートするために、作り直す必要がある」と主張する。

 6点目は最大の問題として、「Flashを使ってiPhoneアプリを作らせている点」を挙げる。「Flashはクロスプラットフォームの開発ツールであり、iPhoneに最適化されたアプリを作ることが目的になっていない」とする。

 これらを踏まえジョブズCEOは、「我々は開発者にもっとも先進的でイノベーティブなプラットフォームを提供し、最高のappsを創造したい。最高のappsと顧客を持ち、多くのデバイスを売ることで、ユーザーに豊富かつ優れたアプリを選んでもらえるプラットフォームにしたい」と説明。さらに「FlashはPC時代に作られて、成功したビジネスになった。そこをモバイルにも広げたいというAdobeの意志は理解できる。しかし、モバイル時代には省電力でタッチスクリーン操作で、オープンなWeb規格に則ったものが必要だ。新しいモバイル時代に向けて作られたHTML5のようなオープン規格がモバイルデバイスの勝者になる。AdobeもHTML5ツールにフォーカスするべきだ」と語っている。


(2010年 4月 30日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]