【CEATEC 2010】ヤマハが“喋る”VOCALOIDを活用

-音の出るポスターとINFOSOUNDでサウンドサイネージ


ヤマハブースには初音ミクのコスプレコンパニオンも登場

 10月5日~9日までの日程で、幕張メッセで開催されている「CEATEC JAPAN 2010」。ここではヤマハブースをレポートする。

 ヤマハブースでは3つの技術を紹介するとともに、それらを組み合わせて広告媒体で「サウンドサイネージ」として活用する提案を行なっている。

 1つ目の技術はVOCALOIDの新しい展開として、“喋り”を実現する技術「VOCALOID-flex」。歌声に比べて音の微細な変化が要求される“喋り”を可能にする技術で、音韻(音素などの音の構成や長さ)や、韻律(音の高さ、強さ)の細かな編集を可能にしている。

 具体的には、これまで出来なかった母音の無声化(“北【ki ta】”の【i】)や、母音を発音しない脱落化(“~です【de su】”の【u】)が表現可能。また、子音の長さや音の高さ、弱さも細かく編集できるため、より人間に近い発話ができ、話声における細かいニュアンスや、表情豊かな方言などのアクセントやイントネーションも付けられるという。



 2つ目は、布のように柔らかく、遠くまで音が伝わる、薄型・軽量スピーカー「TLF-SP」。早稲田大学の山崎芳男教授の基本アイデアを元に開発したというもので、薄さ1.5mmの静電スピーカーとなっている。ポスターのように薄いのが特徴で、重さもA0サイズで約400gと軽量。巻いて持ち運べるほか、スピーカー全体をケーシング材が覆っており、そこに自由に印刷ができる。これにより、“音が出るポスター”として使用できる。

 出力する音にも特徴があり、近くで聴いてもうるさくなく、音が遠くまで明瞭に届く音響特性を持つとのこと。さらに、指向性が鋭く、ポスターのほぼ正面のみに音を届けることができ、「ポスターの前に立った人にだけ、説明音声を聞いてもらう」といった使い方ができる。


コンパニオンの左にあるのが薄型・軽量スピーカー「TLF-SP」。初音ミクがプリントされているこちらは“がくっぽいど”のスピーカー薄さ1.5mmの静電スピーカーで、外を覆うケーシング材に自由に印刷ができる

 3つ目の技術は「インフォサウンド(INFOSOUND) 」。デジタル情報を音響信号に変調して伝送する技術で、音楽や音声などにデジタル信号を混ぜて送信できるのが特徴。

 デジタル信号を広い帯域に拡散して送信する方式を採用しているため、人間の耳では(デジタル信号の音を)ほとんど聞き取れないという。帯域は通常のスピーカーで再生できる可聴帯域内の高域(約18kHz以上)を使用。伝送レートは最大約80bpsで、10m以上の領域にデータを伝送できるという。

 会場では、音響IDをデジタル信号として混ぜた音を出力。iPhoneのマイクで集音すると共に、iPhone用専用アプリで音響IDを抽出。サーバーでURL情報に変換し、iPhoneの画面で情報を確認するデモを実施。アプリを起動した状態で、iPhoneのマイクをスピーカーに近付けると、演奏されている音楽の情報がiPhoneの画面に表示される事が確認できた。

INFOSOUNDのiPohone用アプリ概念図
アプリを起動した状態でスピーカーに近付ける音響IDを取得。スピーカーから出力されている曲の情報ページが表示された

「TLF-SP」のポスタースピーカー使用イメージ

 利用イメージとしては、iPhoneなどの端末を持ったユーザーが、商店街のスピーカーから店舗の割引クーポンを受け取ったり、家電量販店の店内スピーカーからお買い得情報を受信したり、音の出る屋外広告や店頭POPからキャンペーンURLなどを入手。テレビから音響IDを流して番組連携サービスを実現するといった事も可能だという。

 会場では、この3つの技術を組み合わせた展示を実施。初音ミクやがくっぽいどを印刷した電子看板から、「VOCALOID-flex」を使った喋り声を出力。来場者がiPhoneでその声を集音してスタンプ集めていく「サウンドスタンプラリー」を展開している。


サウンドサイネージの使用イメージ

 


(2010年 10月 6日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]