キヤノン、レンズ交換式ミラーレス「EOS M」発表

-APS-C/新マウントEF-M。「最後発だが追いつける」


  キヤノンは、ミラーレスのレンズ交換式デジカメ「EOS M」を9月中旬に発売する。価格はオープンプライス。直販サイトでの販売予定価格は、ボディのみが69,800円。新しいEF-Mマウントを採用しており、対応レンズとして「EF-M22mm F2 STM」と「EF-M18-55mm F3 5-5 6 IS STM」も9月中旬に発売予定。

 レンズの価格は、「EF-M22mm」が31,500円、「EF-M18-55mm」が36,750円。レンズキットも用意しており、価格はオープン。直販予定価格は、「EF-M22mm」とボディのキットが79,800円、「EF-M18-55mm」のキットが84,800円。「ダブルレンズキット」として、「EF-M22mm」と「EF-M18-55mm」、EFレンズのマウントアダプタ「EF-EOS M」、スピードライト「90EX」のセットも、直販109,800円で発売する。


ブラックモデルに「EF-M18-55mm F3 5-5 6 IS STM」を取り付けたところ

 EOSシステムの新ラインナップとして発売されるもので、ミラーレス構造を採用。レンズ交換が可能。撮像素子はAPS-CサイズのCMOS(22.3×14.9mm)で、EOS 7DやKissなどと同じサイズ。有効1,800万画素となる。

 CMOSセンサーの上に位相差AFを搭載。レンズの駆動量と駆動方向を検出し、素早いAF動作が可能。さらに、コントラストAF機能も搭載。スピードは位相差より劣るものの、高精度なAFが可能なことから、互いの弱点を補い合うような形で組み合わせた「ハイブリッドCMOS AF」としている。なお、位相差AF用の画素を差し引いても、有効1,800万画素を確保している。


撮像素子はAPS-CサイズのCMOS筺体は非常にコンパクト

 筐体はコンパクトで、外形寸法は108.6×32.3×66.5mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約262g。


レッドモデルシルバーモデルの背面。液晶はタッチパネル。右側に動画撮影用ボタンを備えているホワイトモデルを上部から見たところ。アクセサリーシューは従来のEOSと共通。ステレオマイクを備え、右側の撮影モードダイヤルで、「シーンインテリジェントオート」、「静止画撮影モード」、「動画撮影モード」を切り替える
上から見たところ。液晶ビューファインダーなどは備えていない天面の内側寄りの部分に電源ボタンを、右端に動画撮影ボタンを備えている液晶メニュー画面

 ISO感度は100~12800で、最高25600まで拡張できる。動画撮影時はISO 100~6400。画像処理エンジンはDIGIC 5。好感度撮影時のノイズ低減や、長時間露光時のノイズを低減。レンズ光学補正も行なう。連写性能は秒間4.3コマ(AF固定時)。

 動画撮影機能「EOS MOVIE」も備え、フルHD動画の撮影が可能。本体にステレオマイクを備え、音割れを低減するアッテネーター機能も搭載。マニュアル時64段階でレベル調整もでき、ウインドカット機能も備えている。

 動画の撮影フォーマットはMPEG-4 AVC/H.264で、1,920×1,080ドット、30p/25p/24pで撮影が可能。さらに1,280×720ドット、60p/50p、640×480ドット、30p/25pでの撮影も可能。ファイル形式はMOVとなる。音声はリニアPCM。

レッドモデルに「EF-M22mm F2 STM」を取り付けたところ

 動画サーボAF機能を備え、被写体が近づいて来たり、遠ざかったりしても、常にピントを合わせ続ける事が可能。顔優先+追尾AF機能を用い、画面でタッチした被写体にAFフレームをあわせて追尾する事もできる。

 なお、同時発表された2本のEF-Mマウントレンズは、いずれもステッピングモーターを採用し、高速かつ静音性の高いAFを実現。特に「EF-M18-55mm F3 5-5 6 IS STM」と組み合わせると、動画撮影時のフォーカス音が録音されにくくなるという。

 撮影補助機能として「EOSシーン解析システム」を搭載。カメラが様々な情報をもとに、撮影シーンを特定。最適な設定にしてくれるもの。後述する「シーンインテリジェントオート」機能にも関連している。

 背面の液晶モニタは3型104万画素のタッチパネルタイプ。操作ダイヤルやボタンは、従来のEOSシリーズと比べると少なく、シンプルな操作系になっているが、EOSと同等の機能に対応しているという。新しい撮影モードダイヤルで、「シーンインテリジェントオート」、「静止画撮影モード」、「動画撮影モード」を切り替え可能。タッチパネルも組み合わせることで、操作性を向上させている。

 シーンインテリジェントオート機能は、シーンを解析し、自動的に最適な設定を適用した上で撮影できるというもの。被写体が明るいか、逆光か、青空を含むか、夕焼けか、スポットライトか、三脚が使われているかなどをカメラが判断。29シーンから当てはめ、設定を適用する。

ボディーカラーはブラック、シルバー、ホワイト、レッドの4色発表会に用意された分解展示

 レリーズタイムラグは約0.048秒。手持ち夜景撮影も可能で、1回のレリーズで手振れしにくい速度で4コマを連続撮影し、合成。人物がいる時は一コマ目のみストロボが発光する。ハイダイナミックレンジ(HDR)逆光補正も可能。撮影画像から油彩風、水彩風、トイカメラ風、ジオラマ風などの画像を作り出す、フィルタ加工機能「クリエイティブフィルター」も用意する。

 センサークリーニング機能搭載。アクセサリーシューはEOSシリーズと共通で、スピードライトやGPSユニットなどのEOSと同じものが使える。記録メディアはSD/SDHC/SDXC対応。標準バッテリでの撮影可能枚数は230枚、動画の撮影可能時間は約1時間30分。

カラーはブラック、シルバー、ホワイト、レッドの4色別売のスピードライト「90EX」を取り付けたところ



■マウントアダプタも発売

 EFレンズを、EF-MマウントのEOS Mで利用するためのマウントアダプタ「EF-EOS M」も9月中旬に発売される。EFレンズの機能がそのままEOS Mでも利用できるアダプタになっており、IS(手ぶれ補正機能)や、オートフォーカスも利用可能。

EF-Mマウントレンズの後部発表会場には多数のEFレンズを装着したEOS Mが展示された
マウントアダプタ「EF-EOS M」マウントアダプタを使い、EFマウントのレンズをつけたところ
EF-Mマウントのレンズ、左が「EF-M18-55mm F3 5-5 6 IS STM」、右が「EF-M22mm F2 STM」



■「最後発だが、まだまだ追いつける」

 キヤノンマーケティングジャパンの川崎正己社長は、2012年上半期、ミラーレスを含めたレンズ交換式デジカメ市場で同社がナンバーワンの支持を得ている事、交換レンズ市場においてもナンバーワンの支持を得ている事を説明。「トップブランドとしてのイメージは不動のものになったと言って差し支えない」とした上で、「誕生から25年を迎えたEOSブランドに、新しい製品が登場する。EOSのアイデンティティを持ったミラーレスカメラ」としてEOS Mを紹介。このミラーレス新製品が、EOSシリーズのカメラである事を強調した。

 川崎社長は、EOS Mを新しいエントリー層向けのカメラと説明。「写真の世界に新たに入ってきたお客様に、写真の楽しさを体験してもらう事が重要。そして、ステップアップを喚起させる事で、EOSシステムのさらなる強化にも繋がる。専用交換レンズは2本用意されているが、マウントアダプタを介してすべてのEFレンズを装着できる。そのため、1つ上にステップアップしたい時も、お手持ちの(EF)レンズはそのままに、新しい世界に入っていける」と語り、ミラーレスだけで終わらず、一眼レフへのステップアップを誘うモデルであり、そのステップアップも容易に行なえる事がEOS Mの特徴であるとした。

 想定ユーザー像は20~30代の「カメラ・写真に目覚めたエントリー層」と定めているほか、EFレンズが共用できる事から、写真にこだわるEOSユーザーのサブカメラとしても訴求していくという。

キヤノンマーケティングジャパンの川崎正己社長カメラの位置付け図キヤノンマーケティングジャパン 取締役専務執行役員 イメージングシステムカンパニープレジデントの佐々木統氏

 ミラーレスモデルの投入が、他社と比べて遅くなったことについては「国内ではミラーレス市場が40%強まで来ているので、早い時期に投入したいという気持ちはあった。しかし、どうせ出すならば、良いものを出したいと思っていたので、最後発になってしまった。しかし、まだまだ追いつけると思っている。一眼レフと両方伸ばしていきたいというのが本音で、最終的には一眼レフの世界に来ていただきたいと思っている」(キヤノンマーケティングジャパン 取締役専務執行役員 イメージングシステムカンパニープレジデントの佐々木統氏)という。

 なお、エントリー層に向けては、写真の知識や技術向上を補佐する取り組みも重要となる。キヤノンでは「EOS学園」や「キヤノンフォトサークル」などを既に実施しているが、これらの写真教室的なものは、初心者には入りにくい面もある。そこで、Webとリアルをからめた新しい取り組み「Hello,ミラーレスEOSスクール」を展開するという。また、これに合わせ、新製品のメッセージも「Hello,ミラーレスEOS」と発表された。



■妻夫木聡さんと新垣結衣さんをCMに起用

左から新垣結衣さん、妻夫木聡さん

 コミュニケーションパートナーは、俳優の妻夫木聡さんと、女優の新垣結衣さんが起用され、CM撮影も実施。発表会には両名がゲストとして招かれた。

 趣味で写真を撮る事も多いものの、デジタルカメラはあまり使ってこなかったという妻夫木さんは、EOS Mが様々な仕上げモードを備えている事に注目。「これまで写真はその時を切り取るものだと思っていましたが、思い出をより美しく表現できるカメラだと感じた」という。


CM撮影の思い出を語る2人

 新垣さんは、コンパクトで持ち運びしやすいボディが気に入った様子。CM撮影の中で、実際に自分で撮影した写真を披露した。

CM撮影の中で撮影した写真も披露。左が新垣さんの写真、右が妻夫木さんの写真

(2012年 7月 23日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]