小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1222回

カメラ、ドローン、ロボット掃除機。なんでもありのDJI本社ってどんなとこ?
2026年6月17日 13:38
深圳の名門企業となったDJI
DJIの名前が映像業界で知られるようになったのは2014年頃、ドローンの「Phantom 2」が出たあたりからではないだろうか。当時は空撮用クワッドコプターという立ち位置で、底部にGoProを搭載するための機体であった。
それがやがてジンバル一体型カメラも自社開発するようになり、そのカメラ部を取り外して手持ち撮影できるようになり……といった形で、今となっては中判カメラの名門ハッセルブラッドの親会社になったのだから、その急成長ぶりには目を見張るものがある。
今年2月のCP+では、ロボット掃除機事業への参入も発表されるなど、自社技術の応用に貪欲な姿勢を見せたところも記憶に新しいところである。
そんなDJIの本社が見学できるという機会を得たので、6月8日から10日という日程で中国・深圳にある本社を訪問した。
実はそれ以外にも新製品2つの説明会も兼ねていたのだが、まだ日本国内では情報解禁前ということで、そちらの話はまた後日詳しくお伝えする予定だ。
テクノロジーとアルゴリズムの極み
DJIの本社ビルは、深圳市南山区にある。「大疆天空之城」と呼ばれているが、日本語で言えば「DJI天空城」ということになる。天空城はもちろん、ジブリのアレのことである。
ビル自体が非常に変わったデザインで、金属の四角い柱に6つのガラスのボックスがくっついたような造形になっている。それが2棟あり、間を細い空中歩道で繋ぐという設計である。
このビルをデザインしたのは、Apple本社の円形キャンパスApple Parkをデザインした英国の建築設計事務所「Foster + Partners」だ。ただ設計の細かい部分に関してはDJIのエンジニアも参加したという。それもあって、竣工までに6年を要した。完成したのは2022年である。
2本のビルはそれぞれT1、T2と呼ばれており、T1はおもにセールスやマーケティングなどの部門、T2は設計・開発などの部門が集まっている。T1はある程度撮影可能だが、T2は限られたエリア以外は、撮影も録音も不可となっている。この本社ビル内には、約6,000人の社員が在籍している。
ビルのエントランスには、日本庭園を模した、いわゆる枯山水が設置されている。これは無機的になりがちな金属とガラス張りのビル内に、自然との調和をもたらすための工夫であるという。
1階にはDJIオフィシャルショップがある。市内には他にもショップはあるが、Tシャツやバッグなどのノベルティが購入できるのはここだけだ。筆者はリュックを購入したが、199元(約4,700円)であった。
エスカレータで地下に降りると、社員食堂になっている。地下ではT1とT2が繋がっているので、食堂もかなり広い。ただメニューはベジタリアン料理となっている。周辺にはいくらでも食べ物屋があり、デリバリーでも注文できるが、案外ベジタリアン向けの食事を取れるところがないことから、こうなったのだという。
ビルの昇降にはエレベータを使うわけだが、このエレベータも変わっている。ビルの中心部にある金属の柱部分にエレベータがあるわけだが、スペース効率を稼ぐために、ゴンドラが縦に2段積みになっている。これが数列並ぶという格好だ。
ゴンドラ内部には、階数を指示するボタンがない。乗る前に、壁にあるタッチパネルで行きたい階数を入力すると、最も早くその階に行けるエレベータが示される。それに乗るというわけだ。
乗り間違えたら、中からは行き先を変更できないので、どこかの階で降りて、そこで乗り直しである。なおエレベータは専用アプリからでも呼ぶことができる。
複数個あるガラス張りのボックスが、実際のオフィス空間になるわけだが、それぞれの屋上には空中庭園的なスペースが広がっている。現在は中階層のスペースのみオープンしており、上階のエリアは構築中だという。
T1とT2を繋ぐ細い歩道橋は、実際に歩いて渡ることができる。もちろん安全設計はしっかりしているのだが、下から見上げた時の細さを知っていると、なんでわざわざここを繋ぐかなと疑問に思う。ここがないとデザインにパンチがないということだろうか。
我々のような見学者は面白がって渡るわけだが、実際にここで働く社員は日常的に渡っているという感じでもなかった。T1とT2では役割が違うので、社員が頻繁に往復しなければならない用事はそれほどないようだ。
今回はT2内のラボも見学させてもらったが、情報公開不可ということで、筆者の心の中だけにそっとしまっておく。
印象的だったのは、どの技術者もかなり若いということだ。おそらく20代後半から30代半ばといった人たちが主力である。
決まりのユニフォームなどもなく、暑い深圳ゆえに、ポロシャツに短パン、クロックスみたいな人も多く見かけた。ただ思いのほかDJIに忠誠心が強いのか、DJIロゴの入ったTシャツを着ている人も多かった。
オフィスの各席には、簡易ベッドもあるという。中国には昼寝の習慣があるので、お昼を手早く済ませて昼寝する人も多いのだそうだ。それもあって、ラフな服装が好まれるのだろう。
DJIフラッグシップストアに見るDJIの歴史
深圳市の南側、湾岸に近いあたりのエリアに、DJIのフラッグシップストアがある。DJI製品が一堂に集められているだけでなく、ハッセルブラッドの博物館的な役割も備えている。4階には小さなホールがあり、DJIの歩みが紹介された。
DJIの創業は2006年で、ドローン用の安定制御用パーツの提供から始まった。当時のドローンは、ほとんどが自作である。DJIの安定制御装置やGPS受信装置などは、自作ユーザーに人気が高かった。
コンシューマ・ドローンへの正式な参入は2011年である。前段にも述べたように、当時は機体とカメラが別々だった。2013年に初代Phantomが登場し、ようやく一体型空撮ドローンが誕生したことになる。Phantomはアーム部が固定で今のように折りたたみ式ではないため、運搬はかなり大きな箱が必要だった。
ドローンがペットボトルぐらいのサイズだったらもっと使ってもらえるのではないかと考えたDJIのエンジニアが、アーム部を折りたためるよう設計したのが、2016年のMavic Proである。以降DJIのコンシューマドローンは、ほとんどが折りたたみ式となった。
話が前後するが、デジタルシネマカメラ用のジンバル、Roninの初号機は、2014年にリリースされている。2013年にNABでFreefly Systemsの「MōVI M10」が発表されると、多くのスタジオが採用した。
それまで撮影用スタビライザーといえば、物理的なカウンターウェイトでバランスをとるSteadicamとその類似商品しかなかったのだが、ここで電動ジンバルという新しい技術が投入されたのである。DJIはMōVI M10にぶつける形で早くも翌年にRoninを投入し、業界を驚かせた。
また2014年には、プロ用空撮機「Inspire 1」が発売されている。そして翌年のCESには、Inspire 1のカメラ部を独立させて手持ち撮影できるようにした「DJI Osmo」が発表された。
我々がよく知るOsmo Pocketの初号機は2018年、Osmo Actionの初号機は2019年にリリースされている。今年ロボット掃除機にも参入したが、これはドローンで開発した物体検知技術を転用したものである。
2017年には産業応用部門が開設され、航空機と映像技術を別の産業分野に拡大することになった。ドローンによる農薬散布や、山地からの集荷運搬では、1日の運搬量が数トン〜数10トンまで拡大するなど、人手不足や労力削減に大きく貢献している。
また高地への物資輸送テストでは、標高約6,000mのエベレストベースキャンプへの酸素ボンベ輸送、ゴミを麓へ運搬するなど、従来は人力で6〜8時間かかっていた業務をわずか5分に短縮。効率と安全性が大幅に向上することを実証した。
野生動物保護の面では、草むらに隠れた小鹿を赤外線技術によって発見救助、南極でのペンギン個体数調査や気候変動研究支援といったことにドローンが使われている。
総論
今やカメラメーカーとして、週間・月間売上トップも珍しくなくなったDJIだが、これまで開発者への直接取材などもできなかったため、遠く離れたハイテク謎企業といった見え方だった。
しかし今回の取材で、一見多岐にわたる製品ラインナップ展開のように見えて、実は展開のシナリオが非常に論理的であることが見て取れる。ドローンを基盤としながら、映像撮影、姿勢制御、通信、音響、ロボティクス、障害物検知といった技術を積み上げ、それぞれを軸にして新しい製品を展開している。
昨今はドローン搭載カメラにも徐々にハッセルブラッドの技術を取り入れ、静止画の品質を向上させているところだが、まだDJIの地上用(?)のカメラには応用されていない。中国メーカーは、著名レンズ・カメラブランドとの協業を好むが、DJIは自社開発による技術向上の方に関心があるようだ。
今回の見学ツアーでは、取材用に「Osmo Pocket 4P」が提供された。撮影の写真はほぼこれで撮影したものである。深圳でテスト撮影も行なったので、スペックや性能、その他に関しては公式発表後に改めてお伝えしたい。
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— DJI JAPAN (@DJIJAPAN)June 15, 2026
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