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ポータブルオーディオ試聴イベント「ポタ研」開催

バランス/真空管など試作多数。ハイレゾ再生アプリも

 東京・中野にあるAV機器の専門店フジヤエービックのデジタルスタイルショップが主催する「ポータブルオーディオ研究会(ポタ研) 2013冬」が、2月9日の土曜日に中野サンプラザで開催された。入場は無料。

 ポータブルアンプやポータブルプレーヤーを中心に、機器の比較試聴ができるイベント。アンプやプレーヤーだけでなく、ポータブルヘッドフォンやイヤフォンメーカーも参加。ユーザーが出展するコーナーなども設けられている。

会場の中野サンプラザ
会場の様子

 ここでは各社の参考出品を中心にレポートする。

ミックスウェーブ

 米CEntranceのDAC内蔵ポータブルアンプ「HiFi-M8」を参考展示している。4月頃発売予定で、価格は未定だが9万円程度を予定。PCと接続してUSBオーディオとして動作するほか、iPhoneなどとUSBでデジタル接続し、「HiFi-M8」側でアナログ変換・増幅することもできる。DAC機能は24bit/192kHzまで対応する。

 豊富な出力端子バリエーションをラインナップするのが特徴で、XLRのアンバランス出力を備えたモデルや、アンバランスのヘッドフォン出力とシングルバランス出力端子を備えたモデルなどのバリエーション展開を予定。本体と共に、出力プレート部のみも展示している。

CEntranceのDAC内蔵ポータブルアンプ「HiFi-M8」
これら3バリエーションも予定されている

 ALO Audioの新製品としては、ポータブル真空管アンプとして発売している「The Continental V2」の後継機種となる「The Continental V3」を参考展示。今月末から来月頃の発売を予定しており、価格は8万円程度を予定。搭載する真空管をフランス製のものに変更しているのが特徴となる。

The Continental V3

 さらにALO Audioから、コンパクトなDAC内蔵ヘッドフォンアンプ「The International」も登場。24bit/96kHz対応DACを搭載。USB入力に加え、シングルバランス入力とアンバランス入力(ステレオミニ)も搭載。出力もシングルバランスとアンバランス(ステレオミニ)を搭載する。短めの筐体になっており、iriverのハイレゾ対応ポータブルプレーヤー「Astell&Kern AK100」との組み合わせも想定したサイズだという。価格は8万円台後半を予定。

コンパクトなDAC内蔵ヘッドフォンアンプ「The International」
1964Earsのカスタムイヤーモニター。写真は6個のバランスド・アーマチュアユニットを内蔵したタイプ

 また、1964Earsのカスタムイヤーモニターも参考展示。来月頃の発売を予定しており、バランスド・アーマチュアユニットを内蔵。ユニット数は2、3、4、6個をラインナップしており、価格は5万円~8万円と、カスタムイヤーモニターとしてはかなり低価格に抑えられているのが特徴だ。

フルテック

 昨年末から発売しているADL(ALPHA DESIGN LABS)ブランドのポータブルヘッドフォンアンプ兼USB DAC「STRIDE II」(21,840円)や、各種接続ケーブルを展示している。その中に、参考出品として、iPhoneなどとのデジタル接続にも対応する「X1」というアンプを展示している。

 4月頃に発売を予定しているDAC内蔵ヘッドフォンアンプで、iPhoneなどとデジタル接続し、16bit/48kHzまでのデータを変換・増幅可能。PC接続にも対応しており、24bit/192kHzまで対応。ヘッドフォン出力が光デジタル出力兼用になっており、デジタル出力もサポートする。

 ユニークな点として、マイク&リモコン付きケーブルのイヤフォンやヘッドフォンを接続した時用に、アンプを介しても、それらの制御も使えるようにする機能を搭載。ソニー製品とアップル製品の切り替えスイッチも備えている。

参考展示されたDAC内蔵ポータブルアンプ「X1」

 また、同じくADLブランドのヘッドフォンも参考展示。「H118」というモデルで、40mm径のダイナミック型ドライバを搭載。磁気回路にはネオジウムマグネットを使い、再生周波数帯域は20Hz~20kHz。密閉型だが、適度に空気の流れを作るハウジング形状になっているため、広がりのある再生ができるという。耳に合わせた独特のハウジング形状になっているのも特徴。最大許容入力は200mW。インピーダンスは68Ω。ケーブルは着脱式で、端子はMini XLRを採用。片出しで、長さは3m。価格は23,100円。4月頃の発売を予定している。

 さらに、iPhone 5などとポータブル機器の接続に使用するLightning - USB Aケーブルも参考展示。価格や発売時期は未定。実際の製品は紫色のケーブルになる予定。

ADLブランドのヘッドフォン「H118」
ケーブルは着脱式で、端子はMini XLRを採用
Lightning - USB Aケーブルも参考展示

フォステクス

 真空管を使ったポータブルヘッドフォンアンプ「HP-V1」を参考出品している。発売日は未定。価格も未定だが、同社のDAC内蔵ヘッドフォンアンプ「HP-P1(68,250円)よりは低価格になる予定」だという。

 真空管を採用し、徹底したピュアアナログ設計にこだわったというヘッドフォンアンプで、放熱効果に優れたフィン形状の筐体を採用している。ユーザーによる真空管の交換はできない。

 同社のスピーカーシステムのネットワーク技術を用いて作られた、オリジナルフィルムコンデンサを搭載しているのも特徴で、かなり音質に効いてくるパーツだという。入力はアナログのみのシンプルな仕様。ヘッドフォンアンプのゲイン切り替えスイッチ(High/Lo)も搭載している。

真空管を使ったポータブルヘッドフォンアンプ「HP-V1」

 さらに、8日に発表されたばかりの密閉型のヘッドフォン「TH600」も展示。2月25日発売で、価格は84,000円。最上位モデル「TH900」(157,500円)と同じ、バイオダイナの振動板を採用。ユニットサイズも50mmで同じだが、磁束密度は1.5テスラから1テスラに下がっている。TH90は水目桜に漆塗りのハウジングだが、TH600はマグネシウム・ダイキャスト。ケーブルはTH900の7Nグレードから、TH600では6Nグレードになっている。こうした違いはあるが、価格を半額近くに抑えている。

密閉型のヘッドフォン「TH600」

ラディウス

 2つの振動板を使ったイヤフォンのドブルベシリーズを展開しているラディウスだが、それに続く「Ne」(new ear)という新しいブランドを発表。その製品として、ヘッドフォンアンプの「HP-PAF11K」を参考展示している。

 800mAhのリチウムポリマーバッテリを内蔵したヘッドフォンアンプで、ステレオミニのアナログ入力と、ステレオミニのヘッドフォン出力(55mW×2ch/32オーム)を備えたシンプルなアンプ。特徴は、新日本無線と共同開発したというReBirth IC「NJM2707」を搭載している事。圧縮音楽再生時に、失われた情報を復元しながら再生できるという機能だ。アンプにも新日本無線の「NJU72801」を採用している。価格は14,800円程度を予定し、4月~5月頃の発売を予定している。

ヘッドフォンアンプ「HP-PAF11K」
アプリの「Ne AUDIO」

 Neブランドでは、アプリも提供予定。250円程度で2月中旬に発売予定のもので、名前は「Ne AUDIO」。iOS向けに提供される。

 スウェーデンの音響研究機関Diracとラディウスが共同で開発したもので、ラディウスのイヤフォン各モデルごとに最適化された音質で再生できるというアプリ。対応イヤフォンはアップデートで順次追加される予定。インパルス応答波形の乱れを補正することで、定位が明確になり、透明感のある音が得られるとする。

 このアプリにはDiracの「Dirac HD Sound」技術が使われており、BMWやロールス・ロイスなどの自動車でも使われている音響チューニング技術だという。

オヤイデ電気

 FiioのUSB DAC搭載ポータブルヘッドフォンアンプとして、1月18日に発売した新モデル「E07K」(オープンプライス/実売13,650円)を展示している。

 さらに、アナログ入力のみのシンプルなポータブルアンプの最上位モデル「E12」を参考展示。春頃の発売を予定しているもので、薄型筐体を採用。価格は1万円台半ばが予定されている。

 通常のアンプとして販売するほか、ユーザーが内部のオペアンプを自由に交換できるモデルにするかどうかが検討されており、「交換できるバージョンを、直販サイト限定モデルとして販売するといったことも考えている」とのこと。

1月18日に発売した新モデル「E07K」
ポータブルアンプの最上位モデル「E12」
ユーザーがオペアンプを交換可能にする可能性もあるという

 イヤフォン用交換ケーブルは、ZEPHONEの製品を多数展示しているほか、新たに取り扱いを予定しているという香港のメーカー、SONG'S AUDIOのケーブルを参考展示。ゼンハイザーのIE80用のケーブルで、15,000円程度になる見込み。

 ほかにも、ラトックシステムから発売されているバランス駆動対応USBヘッドフォンアンプ「RAL-DSDHA2」との組み合わせを想定した、ゼンハイザー「HD650」用と、「HD800」用のバランス接続ヘッドフォンケーブルも展示されている。

香港のメーカー、SONG'S AUDIOの交換用ケーブル。まずはIE80用のケーブルから取り扱いを開始するという

トップウイング

 ロンドンのメーカーAbbingdon Music ResearchのブランドiFi Audioの製品を参考展示。Microシリーズというラインナップで、その名の通り、細身でコンパクトな筐体を採用しているのが特徴。

 USBオーディオパワーサプライの「iUSBPower」と、USB DACの「iDAC」、アナログヘッドフォンアンプの「iCAN」、MM/MC対応のPhonoプリアンプ「iPhono」を展示しており、価格はいずれも未定。

 「iUSBPower」は、USBバスパワー駆動のUSB DACなどと組合わせて使うモデルで、PCからノイズが乗ったUSB電源を使わず、音声信号のみを分離してUSBで出力。さらにもう1つUSB出力端子を備え、ACアダプタで入力したクリーンな電源をそこから出力。別売のUSB二股ケーブルを用いて統合しつつ、USB DACなどに接続するという製品。PCからのノイズの影響を受けず、高音質化ができるという。組み合わせるUSB 2.0対応の二股ケーブルの発売も予定されている。

左から「iUSBPower」、「iDAC」、「iCAN」、「iPhono」
「iDAC」と「iCAN」
iUSBPower
iPhonoの底面

 さらに、プロ用音響機材メーカーのJR SOUNDが試作したヘッドフォンアンプ「HPA-203」も参考出品。アンバランスとバランスの入力、出力はアンバランス×2系統を備えている。

 ヘッドフォンも展示。フランスの新鋭メーカー、AEDLEの第1弾製品「AEDLE VK-1」。シックなデザインが特徴で、ハウジングは航空機グレードのアルミブロックから削り出しで作られている。茶色の部分は本革。ほぼ手作りだという。価格は未定。

JR SOUNDが試作したヘッドフォンアンプ「HPA-203」
AEDLEのヘッドフォン「AEDLE VK-1」

そのほか

 オンキヨーのブースでは、2013 International CESでも参考展示していたヘッドフォン「ES-HF300」を展示。音を聴くこともできる。40mm径のチタニウムドライバを搭載。ハウジングはアルミニウム。デュアルチャンバー構造により低域再生能力を高めている。

 また、iOS向けに開発されているハイレゾオーディオ再生対応アプリも参考展示。FLACやDSDを再生でき、FLACでは最高192kHzまでのデータが再生可能。ハイレゾ配信サービス「e-onkyo music」の紹介も行なわれている。

ハイレゾオーディオ再生対応アプリ
オンキヨーのヘッドフォン「ES-HF300」
ケーブルが平型のエラストマーケーブルとなる「ES-FC300(V)」も
ポーカロ・ラインのブースでは、microsharの新しいUSB DAC機能搭載アンプを参考展示。24bit/96kHzまで対応している。日本でも発売するかどうか、会場での反響を踏まえて検討するという
光城精工では、1月28日より事前予約の受け付けを開始しているポータブルヘッドフォンアンプ「KM01-BRASS」を展示。真鍮の塊から削り出した高品位な重量級筐体を採用しているのが特徴で、ブースでは漆塗りの試作機(右写真)も参考展示していた
iriverのAK100は、カラーバリエーション展開を検討中。会場で来場者にどのカラーが良いか、意見を聞いていた
FitEar(須山歯研)もブースを出店。カスタムイヤーモニターでは昨年末の製品から採用されているという新しいプラグ部分が確認できる。アニメソングの再生に適したというモデル「萌音」(Monet)と、そのキャラクター、坂本萌音にも会える
音茶楽のブースでは、開発中のイヤフォン「DONGURI」など、様々な試作機が視聴できる。DONGURIは真鍮フロント部と、欅の赤み材から削り出したという木製のリア部を組み合わせたモデルだ(写真左)
テックウインドのブースでは、iPadのスタンドにもなる「Zooka Bluetoothスピーカー」などを紹介。既に販売されているものだ
ベンチャークラフトのブースでは、Go-Dap DD Socket1の全種類(OP275±6V/MUSES01+VUPTune±9V/MUSES02+VUPTune±9V/OPA627+VUPTune±9V)を用意。オペアンプによる音の違いが楽しめる。厳選パーツを使った特別モデルもイベント用に試作されている
eme audioのブースでは、発売予定のハイブリッドイヤフォンを参考展示。バランスド・アーマチュアとダイナミック型のハイブリッドで、BA×1+ダイナミック×1(2ウェイ)の「H-100」(写真中央)と、BA×2+ダイナミック×1(3ウェイ)の「H-200」(写真左)を用意。価格は未定だが、H-100が15,000円程度、ダイナミック型のみで約5,000円のモデル(写真右)も用意する

(山崎健太郎)