ニュース

12型4Kタブレット液晶や曲がる4K有機ELが登場。「FPD 2013」開催

会場のパシフィコ横浜

 フラットパネルディスプレイの総合展示イベント「FPD International 2013」が23日に開幕した。会場は神奈川県・横浜市のパシフィコ横浜。会期は10月23日から10月25日。入場料は2,000円で、事前登録者は無料。

 フラットパネルディスプレイ製品やモジュールなどのメーカーに加え、製造/検査/リペア装置や、部品/材料メーカーなども出展している。同時開催イベントとして、「OLED 2013」、「タッチパネル2013」、「プリンテッドエレクトロニクス2013」も行なわれている。

 ソニーと東芝、日立製作所の中小型液晶事業を統合して2012年4月に発足したジャパンディスプレイが12.1型の4Kタブレット向け液晶や車載向けの裸眼3D液晶など多くの試作機や製品を出展したほか、パナソニックが55型/31型4K液晶などを展示。また、半導体エネルギー研究所が、曲げられる13.5型4K有機ELディスプレイ試作機の様々なバリエーションを展示していた。

ジャパンディスプレイ

 ジャパンディスプレイは、初出展となった昨年に引き続き、スマートフォン/タブレット用や車載用、放送業務用など幅広い用途に応じた液晶パネルなどを出展している。

 FPD開幕の23日に合わせて発表されたのは、12.1型で4K/3,840×2,160ドットの液晶モジュール。タブレット用として世界最高クラスという精細度365ppiで、4Kテレビをモバイル環境で実現できるとしている。ノートPCなどの利用も想定する。

 低温ポリシリコン技術により、大容量・高精細表示だけでなく、薄型/狭額縁化や低消費電力化も実現。額縁は上と左右が各2mm、下6.8mm。モジュールの薄さは1.96mm。パネル部の消費電力は360mW(白500cd/m2時)。量産開始時期は未定だが、既に体制は整えているという。

ジャパンディスプレイのブースには体験待ちの列ができていた
12.1型で4K/3,840×2,160ドットの液晶
側面

 静電タッチ機能を液晶パネルに内蔵して薄型/高精度タッチパネルを実現する「Pixel Eyes」関連では、7型/1,200×1,920ドットに高精細化したものを出展。これを使って、指を触れずに画面に近づけるだけの「ホバー」操作や、スタイラスペンでの入力を体験できるようになっていた。

ホバー操作。指を近づけると赤いポインタが表示された
スタイラスペンでの操作
ヘッドトラッキングシステムのデモにに使われたディスプレイ

 同イベント内で多く来場者を集める同社ブースの中でも特に注目されていたのは、“イノベーションビークル”と呼ぶ最新技術を載せた試作機などを集めたコーナー。

 同コーナーには、車載用のディスプレイとして、人の頭部(顔)を認識する「ヘッドトラッキングシステム」と連動する裸眼3D液晶を参考展示。スピードメーターや車載カメラの映像を表示するインパネをイメージした画面となっており、運転者に向けたカメラでとらえた人の顔の位置に合わせて、視差バリアをコントロール。運転する人の顔の位置に合わせてメーターや外部映像を見やすく立体表示し、クロストークも抑制する。

 パネル解像度は2,560×1,440ドットで、3D表示の解像度は1,280×1,440ドットとなる。運転者以外は認識しないように、ヘッドトラッキングは1人分のみとなる。今回の試作機では、カメラから50cm~1m離れたところまで顔を認識できるという。

人の顔に画面が追従し、運転者に合わせた裸眼3D表示になる

 車のコンソールに合わせて形状を変えられる「曲面インセルタッチパネル」も参考展示。12型/2,560×1,440ドットで、前述のPixel Eyesによりタッチ操作を実現している。RGB画素だけでなくW(ホワイト)の画素を加えることで輝度向上/省電力化する「WhiteMagic」も搭載。

 車載向けに色域を拡大したという「高解像度・高演色液晶ディスプレイ」も出展。WhiteMagicのRGB+Wと、高開口画素により輝度を向上。カラーフィルタの改善など独自技術によりNTSC比102%(一般的な車載向けは70%)を実現した。車載向けディスプレイには、「警告を表す赤色をより鮮やかに表示したい」といった安全面からの高画質化が求められているとのことで、こうした要望に応えるものとして提案している。パネルはIPS NEOで、「明るさを下げずに濃い色を出せることが有機ELに比べたメリット」としている。

曲面インセルタッチパネル(左側の2面)
実際にタッチ操作も試せる
高解像度・高演色液晶ディスプレイ
左が従来の1,440×1,080ドット、右が新しい2,880×1,080ドットのもの

 他にも、車載向けには12.3型で2,880×1,080ドットまで高精細化した液晶を展示している。「アモルファスシリコンでLTPSに迫る精細度」としており、従来(1,440×540ドット)と同じ画面サイズで表示情報量を増やすことができた。また、スピードメーターなどの針を表示しても、ガタつき感がないという。

 「車載Cluster向け 穴あきLCD」は、同じくメーターなどを表示できるディスプレイだが、目盛りなど背景が液晶で、針の部分は実物を使用したもの。「液晶と針の組み合わせで、立体感/高級感を表現できる」としている。また、-30~40度などの低温地域において、液晶の針表示の追従性を心配する人にも勧めやすいという。穴の部分は後から開ける工程となっており、配線が重ならないような構造。製品化の時期は未定だが、仮にいま製品化が決まった場合は、2016年ごろには量産可能だという。

針の部分だけ実物となっている「穴あきLCD」
パネル部に穴が開いている

 「高画質反射型LCD」は、バックライト不要でフルカラー表示ができるという液晶ディスプレイ。展示されたのは7型/解像度1,920×1,200ドット(321ppi)で、動画表示も可能。消費電力の7割を占めるというバックライトを点灯せずに利用できる。薄さは0.8mm。ウェアラブルデバイスやデジカメなど、外光下で使う製品でも表示が見やすくなるという。色域はNTSC比30%、階調は6bit、コントラスト比は30:1。必要な時だけバックライトを点灯させることも可能だという。この反射型LCDに、IR方式のタッチパネルを組み合わせた試作機も展示していた。

高画質反射型LCD
外光を遮ると映像は見えない
反射型液晶に、IR式のタッチパネル機能を加えたもの
DCI準拠の30型4Kパネル

 IPSディスプレイの様々な用途提案も行なっている。DCI仕様に準拠した4K/4,096×2,160ドットの30型パネルは、放送用途向けに広色域化したことが特徴。バックライトはLED。17型フルHDの放送用カラー液晶パネルは、従来のCCFLからLEDにバックライトを変更し、モニターの薄型化や省電力化を可能にするという。応答速度は13ms。デジタルカメラ向けには、120Hz倍速駆動の3型/720×480ドットパネルも展示している。

 有機ELは、5.2型1,080×1,920ドット(423ppi)の試作機を展示。白色有機ELとカラーフィルタの組み合わせで、動画や静止画をクリアに表示できるとしている。WhiteMagicによる低消費電力化も行なっている。主にスマートフォンでの利用を想定している。

放送向けの17型フルHDパネル
上が120Hz、下が60Hzの3型液晶
5.2型でフルHDの有機EL

パナソニック

左が55型、右が31型の4K IPS液晶

 パナソニック液晶ディスプレイのブースでは、放送モニターやタブレット、ノートPC向けのIPS液晶などを展示している。

 展示の中で最大サイズの55型/4K(3,840×2,160ドット)ディスプレイはIPS光配向パネルでクラス最高とするコントラスト比1,500:1を実現。8.5世代工場の銅配線プロセスによる高開口率画素設計で大型でも高解像度を実現している。輝度は700cd/m2、色域はNTSC比72%。主な用途は医療など業務用。

 31型4Kのモデルは4,096×2,160ドットで、新開発のカラーフィルタとLEDバックライトにより、色域はDCI 97%。放送モニターなどでの利用を想定している。輝度は850cd/m2。

55型4Kパネル
DCI準拠の31型4Kパネル

 タブレット向けは、10.1型/2,560×1,440ドットのモデルを展示。モバイルで世界初というIPS光配向採用が特徴で、クラス最高とするコントラスト比1,400:1を実現した。色域はsRGB比100%。輝度は400cd/m2。そのほかにも、タブレット向けの8.9型/2,560×1,600ドットモデル、ノートPC向けではVAIO Duo 13にも搭載されている13.3型フルHDモデルなどを展示していた。

10.1型/2,560×1,440ドットのパネル
8.9型/2,560×1,600ドットのパネル
20型の4Kタブレット「タフパッド」も展示
13.3型フルHDパネルと、このパネルを搭載したVAIO Duo 13
液晶とカメラを組み合わせた「4K2Kリアルタイム撮影」のデモも

半導体エネルギー研究所

 シャープとIGZO液晶を共同開発したことでも知られる半導体エネルギー研究所は、今年のFPD展では有機ELディスプレイなどを中心に展示している。

 中でも注目されていたのは、13.5型/3,840×2,160ドットで曲面に対応する「フレキシブル OLEDディスプレイ」。白色有機ELにRGBのカラーフィルタを組み合わせたもので、昨年の展示はガラスを用いた平面だったが、今回はガラスレスで曲面に対応。車などのデザインに合わせた画面を作ることができるほか、軽くて割れにくいという点も特徴としてアピールしている。表示色は24bitで、色再現性はNTSC比90%以上。

13.5型で曲がる4K有機ELディスプレイ
曲面ディスプレイを横から見たところ
サイドロールの5.3型(左)と3.4型(右)

 曲面対応をさらに進化させ、スマホなどの側面や天面にも映像表示できるという「サイドロール/トップロールOLED」も出展。サイドロール型は表示サイズが3.4型(326ppi)と5.3型(302ppi)、トップロール型は3.4型(326ppi)。曲率半径は4mm。スマートフォンなどに搭載した場合、例えば側面にタッチ操作のアイコンを表示できる(試作機はタッチパネル非搭載)。また、トップロールの場合は、ポケットに入れたままで、着信などの通知を上から見られるという。

 同じく曲面対応の製品として、ウェアラブル機器用のリチウムイオン充電池も展示。腕時計型端末などのバッテリに利用でき、従来型のリチウムイオン充電池と同等の電池性能を持つという。曲率R40~R150相当の曲げに対応。

サイドロールの側面に操作アイコンを表示した例
トップロールの3.4型
“曲がる充電池”を内蔵した腕時計型デバイスの試作機

その他

 主催者企画の「次世代高画質パビリオン」では、シャープ、ソニー、東芝の4K対応テレビを展示。シャープの「LC-70UD1」や、ソニー「KD-55X9200A」、東芝「65Z5X」、「58Z8X」が用意されている。

「次世代高画質パビリオン」に展示されたシャープの「LC-70UD1」
ソニー「KD-55X9200A」
東芝「58Z8X」

 フィリップスは、シャープの8K(7,680×4,320ドット)ディスプレイ技術とドルビーの裸眼3D技術「ドルビー3D」を用いた、85型の裸眼3Dディスプレイ映像デモを行なっている。なお、この裸眼3Dディスプレイを商品化するかどうかについては未定だという。展示機の輝度は300cd/m2、表示は10bit、フレームレートは60Hz。

フィリップスのブースで展示された8Kパネル/ドルビー3D利用の裸眼3D上映
50型/4Kパネルを使った裸眼3D映像のデモも

 アストロデザインは、4K/120Hzや、8K/30Hzなどの伝送が可能なデジタルビデオ信号発生器「VG-876」や、3G/HD-SDIとHDMIの入出力とDisplayPort出力を持つ4Kインターフェイスコンバーター「SD-7070」などを展示していた。なお、前述したジャパンディスプレイの12.1型4Kディスプレイのデモには、アストロデザインの8K/4K対応SSDレコーダで再生した映像が使用されている。

アストロデザインのデジタルビデオ信号発生器「VG-876」を使ったデモ
4Kインターフェイスコンバーター「SD-7070」
キヤノントッキのブース。有機ELディスプレイ装置について解説
日東電工(Nitto)ブース。モバイルIPS用の薄型広視野角偏光板を展示。横から見ると、写真左側の偏光板無しのものは白浮きしているのが分かる
タッチパネル研究所のブースでは、光学式のマルチタッチテーブルを使って、イラストレーターが絵を描くデモ

(中林暁)