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ソニー、2014年度の連結業績見通しを営業利益200億円の黒字へ上方修正
(2015/2/4 15:42)
ソニーは4日、2014年度第3四半期(10~12月)の連結業績の見通しを発表した。売上高は、前年同期比6.1%増の2兆5,578億円。営業利益は同100.6%増の約1,783億円、税引前利益は同86.6%増の1,647億円。純損益は約890億円の黒字。第1~3四半期の累計(4~12月)は、売上高が前年同期比6.3%増の6兆2,692億円、営業利益が同8%増の1,625億円、税引前利益が同3.1%増の1,432億円、純損益は201億円の赤字。
比較的堅調な第3四半期の業績を踏まえ、2014年度の連結業績見通しを、昨年10月時点の見通しから上方修正。売上高を7兆8,000億円から8兆円、営業利益を400億円の赤字から、200億円の黒字へと修正した。税引前利益も500億円の赤字を50億円に縮小、純利益は2,300億円の赤字から、1,700億円の赤字へと修正した。
吉田 憲一郎 代表執行役 EVP CFOはこの上方修正について、「過去7年間に合計15回の業績下方修正をしている。私自身もCFOに就任して1年経っていないが、2回の下方修正をしている。それも踏まえ、通期の見通しを保守的に作成したものだ」と説明。
さらに吉田CFOは、第1~3四半期の累計での営業利益が1,625億円と、約2,000億円の損益改善見通しになった事について、「やりきる構造改革が進捗してきており、その効果が2,000億円の損益改善の3割強を占めていると分析している」と説明。「構造改革の効果もあり、エレクトロニクス全般で、モバイルを除いて業績が改善傾向にあると認識している」と語った。
なお、同社連結子会社のSony Pictures Entertainment(SPE)において、第三者からのサイバー攻撃による大規模なネットワーク・ITシステム障害が発生した事で、SPEの2014年度第3四半期の決算業務が完了していない。そのため、連結と、映画分野についてはサイバー攻撃が業績に与える影響(見込み)を含めた業績見通しが発表されている。2014年度第3四半期の実績は、3月31日までに公表される予定。
また、2月18日には平井一夫 社長 兼 CEOが登壇する、経営方針説明会を開催する事も明らかになった。
モバイルで追加の人員削減。テレビは「黒字化の確度は高まった」
為替の好影響や、スマートフォンの販売台数増加によりモバイル・コミュニケーション(MC)分野が大幅に増収。イメージセンサーが好調なデバイス分野、PlayStation 4が好調なゲーム&ネットワークサービス分野(G&NS分野)の大幅な増収も、売上高や営業収入の増加に寄与した。PC事業が収束したその他分野、映画製作及びテレビ番組制作が減収となった映画分野の売上高は、大幅に減少する見込み。
営業利益は、前年同期比894億円増加し、1,783億円。主に、デバイス分野、ホームエンタテインメント&サウンド(HE&S分野)、G&NS分野、イメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)分野の大幅な損益改善が寄与した。なお、この営業利益には、PlayStation VitaやPlayStation TV用の部品に対する評価減112億円が含まれている。
第3四半期の構造改革費用は、前年同期に比べ46億円減少の90億円。PC事業収束にともなう費用は、前年同期に比べ61億円減少した49億円(構造改革費用は14億円)になる。
MC分野の売上高は、スマートフォンの販売台数が増加したことや製品ミックスの改善、為替の好影響などで、前年同期比28.7%増加の4,290億円。営業利益は、29億円増加の93億円。コストの米ドル建て比率が高いため、米ドル高の悪影響があったが、製品ミックスの改善やスマホの販売台数増加などで分野全体では増益を達成した。
構造改革も推進。昨年9月に発表した約1,000人に加え、新たに約1,100人を追加し、計2,100人の人員削減を2015年度末までに実施すると発表した。それに要する構造改革費用は約300億円となり、'14年度には70億円程度を計上。2016年度以降の経営費削減効果は、2014年度比で年間900億円以上を見込んでいる。
同時に、MC分野における2017年度の経営数値目標として、売上高9,000億円~1兆1,000億円(2014年度の見通し:1兆3,200億円)、営業利益率3%~5%(同:マイナス16.3/営業損失2,150億円)を掲げた。
HE&S分野の売上高は、前年同期比2.3%増の4,133億円。オーディオ・ビデオは減収だが、為替の好影響及びテレビが大幅な増収となり、分野全体でも増収。液晶テレビの販売台数は、中南米において大幅に減少したが、北米や欧州では大幅に増加し、全体でも増加した。
営業利益は、前年同期比189億円増の253億円。コストの米ドル建て比率が高いことによる米ドル高の悪影響があったものの、コスト削減により、分野全体で増益を達成した。
テレビの売上高が10.1%増加の2,806億円と増収で、為替の好影響によるもの。「黒字化の確度は高まったと考えているが、例えば昨年度は第4四半期だけで166億円の損失になるなどしているので、楽観はしていない」(吉田CFO)という。液晶テレビの販売台数は、第3四半期で470万台、2014年度通期では1,450万台を見込んでいる。
また、テレビ事業部門をソニービジュアルプロダクツとして分社化した効果については、「分社化による意識の高まりによる固定費削減と、欧米だけにとどまらない高付加価値モデルの好調といったミックスの改善効果が出ている」(神戸司郎 執行役 EVP)とし、引き続き、数を追わない、高付加価値モデルの投入に注力する姿勢を強調した。
PC事業からの撤退は社内のマインドセットを変えた
G&NS分野は、売上高が前年同期比16.8%増加し、5,315億円。PlayStation 3のハード/ソフトは減収したが、PlayStation 4のハード販売台数が増加、為替の好影響、ネットワークサービス収入の大幅な増収により、分野全体で増収となった。営業利益は、152億円増加の276億円。PS4とPS3の第3四半期の販売台数は750万台で、内PS4は640万台。2014年度通期ではPS4/PS3/PS2の合計で1,750万台を見込んでいる。
IP&S分野の売上高は、デジタルカメラの販売台数が大幅に減少したものの、為替の好影響で前年同期比1.5%増の2,010億円。営業利益は、109億円増加した230億円。販売費や一般管理費の削減、為替の好影響などで大幅な増益となっている。
デバイス分野の売上高は、前年同期比38.6%増加の2,929億円。主に、モバイル機器向けの需要増加によるイメージセンサーの大幅な増収、為替の好影響、カメラモジュールの大幅な増収が寄与。営業損益は、前年同期の235億円の損失に対し、545億円の利益となった。前年同期に電池事業において321億円の長期性資産の減損を計上したこと、イメージセンサーの増収などが効いている。
堅調な第3四半期の業績を踏まえ、今後のV字回復への手応えや、社内の雰囲気の変化を質問された吉田CFOは、「一昨年の12月から、平井の方から“構造改革をやりきる”、特に本社や販社で、聖域無くやると申し上げている。それなりに時間はかかっているが、その成果が出てきたところはあると思う」と説明。
さらに、個人的な印象と前置きした上で、「結果として良い判断だったかどうかは簡単には検証できないが、PC事業からの撤退、まとまった事業からの撤退という判断を経営が行なったという事も、社内のマインドセットを変えるという意味では大きなイベントだったと思っている。また、社内ではアカウンタビリティという言い方をしているが、我々(のビジネス)は外と接している。例えば。平井が申し上げている“感動”は、我々が感じるものではなく、お客様が感じるもの。株主価値も株主の皆様が感じるもの。外の人にどう説明していくのか、という考え方が、少しずつ(社内に)浸透してきているのではないか」と語った。
なお、来年度の役員報酬について神戸EVPは、「方針はまだ固まっていない。昨年度から代表執行役、執行役員に関しては、ボーナスを全て返上するという施策をとっているが、さらに施策を行なうのかについては、今後検討していく」と語った。