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パナソニック、第3四半期は営業利益3,202億円。中国の景気低迷で通期予想を下方修正

 パナソニックは3日、2015年度第3四半期累計(2015年4月~12月)の連結業績を発表した。売上高は前年同期比0.8%減の5兆6,713億円、営業利益は10.3%増の3,202億円、税引前利益は22.3%増の2,544億円、当期純利益は14.1%増の1,602億円となった。

河井英明代表取締役専務

 一方、今回の業績を受けて、2105年度通期見通しを下方修正。2015年4月公表値に対して、売上高は4,500億円減の7兆5,500億円、営業利益は200億円減の4,100億円、税引前利益は200億円減の2,800億円、当期純利益は据え置き1,800億円とした。

 パナソニックの河井英明代表取締役専務は、「日本やアジアにおける白物家電やソリューション事業は堅調であるものの、国内ソーラー事業や2次電池などのICT関連事業の減販により減収となった。また、営業利益は、収益体質の強化や合理化、成長事業の増販により増益となった。だが、市場環境の悪化による大幅な減販、マレーシアやブラジルなどの新興国通貨安により、2015年度の通期売上高、営業利益ともに下方修正した」と語った。

 営業利益の200億円の下方修正のうち、約100億円が為替の悪化影響によるものだとしている。

連結決算概要
連結決算概要(累計)
2015年度 年間業績見通しを修正した

新興国の景気低迷で経営環境悪化

 中国をはじめとする新興国の景気低迷による経営環境が悪化。特に、中国においては、エアコンやデバイスが、下期に入っても回復しなかったこと、国内では想定以上にソーラー事業が落ち込んだこと、国内住宅市況の回復が緩やかであったことなどが影響しているという。

 同社では、2018年度には売上高10兆円を目指しているが、今回の下方修正の影響については、「2018年度の目標については、3月に発表予定の事業方針説明の場で説明したい。2015年度が8兆円を切るということであれば、2016年度の計画にも、その点を盛り込むことを検討していくことになる」などと述べた。10兆円の目標達成に向けてイエローシグナルが灯ろうとしている状況だ。

 さらに河井代表取締役専務は、「収益を伴った売上げ成長を目指してきたが、下期以降の事業環境の変化により、通期計画を見直した。だが、経営体質の改善が進み、収益力もついている。将来に向けた受注も獲得しており、それにあわせた投資も進めている。個々の事業において環境が変わってきたこと、市場環境の不透明性が高い部分も影響しており、事業をしっかりと管理していかなくてはならない。だが、事業の足腰が悪くなっているわけではない。対策をしっかりと取り、成長に向けた取り組みを加速したい」などとした。

地域別の売上高

 2015年度第3四半期累計での地域別売上高は、円ベース換算では、国内が前年同期比2%減の2兆6,196億円。海外では、米州が3%増の9,350億円、欧州が1%減の5,432億円、中国が3%減の7,637億円、アジアが2%増の8,098億円。海外全体では前年並の3兆517億円となった。

 「国内では、白物家電、自動車関連事業が好調だったが、住宅設備やソーラーが減少。米州では液晶テレビおよび堅牢型ノートPCが低迷した。欧州では液晶テレビが減収となったものの、家庭用エアコンが伸張。中国ではエアコンおよびデバイス関連が低迷した」という。

 セグメント別では、アプライアンスの第3四半期累計の売上高が前年同期比3%減の1兆7,772億円、営業利益は21%増の703億円となった。また、第3四半期の売上高は5%減の6,053億円、営業利益は46%増の268億円となった。

 「日本およびアジアでの白物家電事業が好調。白物家電の全事業が増収増益になり、国内における白物家電全体のシェアは過去最高となっている。テレビ事業は、販売減により減収となっているが、収益は大幅に改善している」とした。

セグメントと別の実績

「テレビ事業の体質が確実に強まっている」

 テレビ事業の第3四半期売上高は、前年同期比23%減の1,146億円、営業利益は前年同期の54億円の赤字から7億円の黒字に転換した。

 「テレビ事業は、米国および中国で計画的に販売数量を絞り込んだこともあり全体で減収。だが日本とアジアでは増収となっている。日本では高付加価値モデルにシフトしており、国内4Kテレビのシェアはナンバーワンとなっている。為替の影響はあるものの、合理化やプレミアム化が増益につながっている。最大の商戦機である第3四半期に、テレビ事業で黒字を確保できたことは、テレビ事業の体質が確実に強まっていることの証」と強調した。

 通期の下方修正においては、テレビ事業の売上高見通しは109億円下方修正して、3,500億円としたが、営業利益については据え置き、3億円の黒字。テレビ事業の黒字化の旗は下ろさなかった。

アプライアンス(製販連結) 個別事業の実績

 エアコン事業は、売上高が前年同期比4%増の946億円、営業利益が10億円増の14億円。アジアでは、ルームエアコン、大型空調ともに好調であり、中国の低迷をカバーした。

 AVCネットワークスの売上高は、前年同期比3%増の8,541億円、営業利益は134%増の506億円。エコソリューションズは、売上高が3%減の1兆1,822億円、営業利益が27%減の556億円。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高が1%減の2兆632億円、営業利益は5%減の845億円となった。

 AVCネットワークスでは、北米における堅牢型ノートPCの販売が低迷し、モビリティ事業が厳しい状況に陥ったほか、固定電話が米国および中国で落ち込み、全体で減収。だが、バーティカルソリューション事業での増販と構造改革効果により増益となった。

AVCネットワークスの実績

 エコソリューションズは、ソーラーの国内需要の低迷、ハウジングシステム事業における普及価格帯製品の減販、国内および中国における空気清浄機の販売低迷が、減収減益の要因となった。

 また、オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、車載カメラをはじめとする車載システムの販売は好調であるものの、ノートPC向けの2次電池などのICT関連ビジネスが低調に推移。さらに、成長分野であるオートモーティブ分野における将来に向けた開発投資の増加、エナジー、インダストリアル事業の減販影響により減収減益となった。

 なお、国内白物家電事業の再編が進みつつあることに対しては、「当社の白物家電事業は好調であり、私どもの事業をしっかりやっていきたい。なにかを意図したり、なにかに興味があったりするわけではない」とした。

 また、電気機会器具の販売、修理を行なっている連結子会社のパナソニック コンシューマーマーケティングを、簡易株式交換により、完全子会社化する事も発表された。予定日は3月31日。より効率的な連結経営体制を確立し、グループ内経営資源を活用した持続的成長を目指すという。

(大河原 克行)