ミニレビュー

映像配信最大の課題“作品を見つけられない”を解消? 「JustWatch」を試す

 映像配信サービスは本当に便利だ。だが、多くの人が疑問も感じているはずだ。「どのサービスで、どの作品が見られるの?」と。

 HuluやNetflixの“オリジナル作品”はすぐわかる。だが、海外ドラマは? 映画は? 見逃し配信配信は? あのアニメは? となると、もはやさっぱりわからない。定額制見放題のSVODはもちろんだが、単品でのレンタルや販売(EST)まで含めると、全容を把握している人などまずいない。

 私(西田宗千佳)は、日頃記事の中で「コンテンツがないのではない。『見つからない』のだ。」といった主張をしているが、まあ、なんのことはない、自分だって見つけられてなんていないのだ。数日ごとに配信アプリをひらき、「なにが入ったかな?」とチェックする習慣がついているが、これだってめんどくさいことに変わりはない。

サービス横断で「配信された作品」が一目瞭然!

 そんな時、いいサービスを見つけた。ドイツ生まれの「JustWatch」だ。

JustWatchのメイン画面。最近のいつ、どのサービスに作品が追加されたかをひとめでチェック可能

 まあとにかく、次の画面を見て欲しい。上から順に、新しく追加されたコンテンツが並んでいるのだが、左端には「そのコンテンツが配信されているサービス」のアイコンがある。もうこれでお分かりかと思う。「各サービスにどんな作品が追加されたかが、時系列で並んでいる」わけだ。作品をタップすれば、その作品の内容などのほか、「配信されているサービス」の一覧も表示される。ここではテレビ番組だけを抽出したが、「映画だけ」「特定のジャンルの作品だけ」「特定の年代の作品だけ」「自分が知りたいサービスだけ」といった絞り込みもできる。

配信サービスやコンテンツの種別を絞った検索もできる。画面は「SVODで配信された映画」に絞った例

 作品をタップすれば、そこから詳細を見ることもできる。詳細からは、「その作品がどこで配信されているか」「単品配信ならばいくらで配信されているか」がわかるし、各サービスの作品ページに直接ジャンプして、視聴することもできる。とにかく簡単だ。

 JustWatchには「割引があった作品」の一覧もある。こちらは、単品のレンタルや購入に便利だ。

割引配信が行なわれた作品だけをピックアップ。お得に見られるものがすぐわかる

 実は先日も、劇場で見る機会を逸していた「デッドプール」が割引されているのを見つけたので、ここからアマゾンへアクセスして視聴した。劇場公開時には見る気まんまんでも、何かの巡り合わせで見にいけなかった作品、は誰にでもあるはず。そして、そういうものに限って、そのうち忘れてしまってディスクの販売日などはチェックせず、なにかのきっかけがないと思い出さない。こういうサービスがあると発見の機会ができて助かる。作品は、予想通り下品で、とても満足した。

作品の単体ページ。どのサービスで配信されているか、いくらで配信されているか、といった情報に加え、映画のキャスト情報や評価もわかる
スマホ版の画面。「視聴リスト」機能を使えば、あとから見たい作品をまとめてチェックできる

 JustWatchにはウェブ版だけでなく、各種スマートフォンアプリもある。だから、移動中にスマホで見たい作品をチェックして「視聴リスト」に入れておき、あとからPCやタブレットで視聴、というパターンも採れる。

 残念ながらSTBやテレビ向けのアプリはないが、そういう場合には、いったんスマホで「ちょっと再生してすぐ止める」という動作をし、その後テレビ側で「再生履歴から再生する」ことである程度カバーできる。

情報は不完全、「公式」データを使った同種のサービスが欲しい

 もちろん不満もある。日本語化はかなり不完全だ。各サービスから公式にデータを取得しているわけでもないようで、実際には見られるのにJustWatchからは見つからない、という作品も少なくない。

 できれば、各配信事業者が情報を公式に出して、この種のサービスが複数立ち上がることが望ましい。そうしないと、VODの抱える「見つかりにくさ」は解決しない。そうしたサービスが普通になった世界を想像する意味でも、JustWatchは使ってみる価値がある。なんてったって、「無料」なんだから。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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