ミニレビュー

新iMacの「AV性能」をチェック! 4K + 空間オーディオの実力は?

新iMac。使ったのはグリーンの上位モデル

5月末に発売となる新iMac(154,800円~)の製品実機をじっくりと試す機会に恵まれた。

M1搭載のデスクトップ型Macであり、久々の「カラバリiMac」だから注目している、という人もいるだろう。

だが、このメディアはAV Watch。ゲームだったりビジネスネタだったりと、AV Watch筆者の中でも「それAVか?」という脱線ネタを書くことが多い筆者といえど、やっぱりそこは空気を読んでいる。

というわけで、シンプルに「新iMacのAV性能はいかに」というあたりを論評してみたいと思う。なお、製品は5月21日より順次購入者の元に届く予定だという。

豊富なカラーバリエーションを用意している

4.5Kで配信コンテンツを楽しめる「目の前の大画面」

まずiMacのスペックをおさらいしておきたい。

プロセッサーはアップルオリジナルの「M1」。MacBook Air/MacBook Pro/Mac miniに続き、Macとしては4機種目の採用。さらに、同時期に発売が予定されている新iPad Proでも採用されている。省電力高性能な、ノートPC向けとしてはとても優れたプロセッサーなのだが、十分な性能があるので薄いデスクトップ型を作るにもピッタリ、ということのようだ。実際使ってみても、普段筆者が使っているM1版MacBook Proと速度はほぼ変わらず、デスクトップでも快適、といって間違いではない。(もちろん、プロ向けだったらパフォーマンスはあればあるほどいいのだろうが、iMacはちょっと位置付けが異なる)

特徴はやはり、24インチ・4,480×2,520ドット(4.5K)のディスプレイ一体型、ということだろう。市販のPC用ディスプレイでも24型クラスは一般的なものになっているが、やはりサイズ的には「目の前にあると広い」感じで、色々な作業をしやすい構造だ。

ただ、なによりもAV的にいえば「横4.5K」ということが大きい。一般的な4Kテレビよりもドット数がわずかに大きく、「24型の4Kテレビ」的に使える。

Macで4Kコンテンツを楽しむといえば、やっぱりiTunes Storeで購入・レンタルできる4K対応の映画や、Apple TV+にNetflixといった「4K対応配信」。これらが自然に、「目の前の大画面」として楽しめるのは、やはり一体型デスクトップの利点と言える。

画面サイズのイメージ。4Kの16:9の映画と21:9の映画を表示してみると、上下にはこのくらいの黒帯が出る。だが、近い距離で4Kを見ているので解像感は良い

また、スピーカーも6つ搭載されている。フロントグリルに正面を向けて搭載する形ではなく、薄型テレビではよくある、本体下方向に向けてスピーカーをつけ、机面での反射を生かした、いわゆる「ヒドゥンスピーカー」構成になっている。アップルによれば、このスピーカーシステムはDolby Atmosに対応、「空間オーディオの再生」を想定して作られている、という。

フロントグリル部にはスピーカー穴はない。音は本体下へ出る「ヒドゥンスピーカー」構成だ

空間オーディオの効果は「ディスプレイからの距離」でかなり変わる

4K + 空間オーディオで映画が楽しめるとなれば、やっぱりAV的に気になってくるだろう。

結論からいえば、「映像はベストではないがベターな構成」、「空間オーディオは諸条件あれど効果的」、「同様に、液晶での映画視聴にも一点の条件がある」という感じだろうか。

今回は、主にiTunes Storeで購入した「4K」「HDR」「Dolby Vision」などに対応した映画を見てチェックした。

まず気がついたのは「音がいい」こと。Atmos対応タイトルでは、音の広がりや方向性などを非常にしっかりと感じられる。低音なども意外なほど豊かだ。ヒドゥンスピーカーのテレビと比較しても、音の厚み・空気感はずっといい、と思える。

ただ、どうも「画面からの距離」にはかなりセンシティブであるようだ。

机にiMacを置き、作業するような姿勢で映画を見ているときには良いのだが、そのまま椅子を少し倒し、踏ん反ってリラックスした体制になると、立体感に乏しくなる。

これは筆者の感想だが、画面から60cmくらいの距離ならちょうどいいが、1.2mくらいまで遠くなると効果が薄れるようである。

この辺は、「机の上に置いて椅子にしっかり座って使う」機器と、テレビのように「楽な姿勢で画面から離れて使う」機器の設計の違いから来ているように思える。

なお、音楽については、どの距離からでもあまり変わらない。ステレオ感よりも広がりを重視した音作り、という印象だ。すなわち、「作業をしながら音楽を部屋に満たす」ような使い方に向いている、ということだろうか。

解像感は十分だが「PC的」な液晶ディスプレイ

では画質はどうか。

こちらは「解像感はあるが、それ以外はAV機器並とは言い難い」感じである。4.5Kの解像感は良好で、4K映像を楽しむにも良い環境なのだが、これもまた「距離」による課題とHDR感の薄さが気にかかる。

音の項で「60cmくらいの距離ならいい」という話をした。実際にはもうちょっと近づいた方が「音で包まれる感じ」は強くなる。だが、60cmを大きく超えて頭を近づけると、画面の端の方が少し変色して見える。要はこれ、液晶の視野角による色変化なのだが、iMacのディスプレイの品質が悪い、というよりも、「想定よりも近づいてみると画質には悪影響が出ている」といったほうが正しい。

画面から60、70cmという適切な距離で視聴する限りは、解像感も発色も満足できる範囲と言える。

ただ、HDRコンテンツの「HDRらしい表現」には弱い。パネルがまさに「ストレートな液晶」だからだろう。輝度突き上げによる眩しい夕焼けの表現などはマイルドな感じに落ち着いてしまうし、コントラスト感も「PCディスプレイとしては一般的」なレベルかと思う。

そういう意味でも、iMacの価値を最大限に活かすには、

・ディスプレイから目までの距離は60~80cmくらい

を想定して使うと、良いAV体験が得られるだろう。パソコンとして使いながら楽しむと最大の効果を得られる、という感じだろうか。まあ、当たり前といえば当たり前の結論なのだが。

西田宗千佳