ミニレビュー
TCLのサングラス型ディスプレイ「RayNeo Air 2s」を試す
2024年8月13日 08:00
TCL RayNeoは、新しいサングラス型ディスプレイ「RayNeo Air 2s」を8月15日より販売する。
日本での価格は6万4,499円。ただしAmazonでの販売については、8月15日からしばらくの間、3,000円の割引クーポンが設定されるという。
同社は以前よりこの種の製品を販売しており、RayNeo Air 2sは、「RayNeo Air 2」の後継にあたる。
商品評価用機材が同社より届いたので、レビューをお送りする。
構造は他社製品と同様、デザインは独特
サングラス型ディスプレイについては、中国系メーカーが争うように商品を発売している。本製品もその1つ。デザインは異なっているが、構造自体は各社かなり似ている。
DisplayPort-AltモードによるUSB Type-C接続で使用するもので、多くのスマートフォンやPCにケーブル1本で接続して使える気軽さが特徴だ。ただし、ゲーム機やAV機器などとのHDMI接続、Nintendo Switchとの接続には別途アダプターなどが必要。ここも、どの製品にも共通するところである。
機能・デザインには相違点がいくつもある。
デザインは見てお分かりのように、他に比べてちょっと派手目、というか目立ちやすい感じ。フロントに大きめのシェードがついたような形状。これは過去機種とほぼ同じテイストと言っていい。
ケーブルはUSB Type-Cをツルの後ろに直結するような構造。ただし、個体差なのは、汎用のケーブルだとギュッと差し込まないと落ちやすい感じがしたので、付属のケーブルを使った方が安全だ。
ツルの部分を持って三段階に傾けられるようになっていて、これで顔へのフィット感を高められる。同様の仕組みは他の製品でも採用されていて、これもまた標準的な仕組みと言っていい。
ディスプレイとしてはソニーセミコンダクタソリューションズ製の0.55インチ・マイクロOLEDを左右に2つ採用。これも、昨今の製品では一般的なものだ。かなり明るく、ドット感もなく画像がスッキリ見える。他社製品(XREAL Air 2 Pro、VITURE Pro)と比較してみたが、画質などに劇的な差があるようには見受けられなかった。だが逆にいえば、「どれも同じように快適な画質である」と言える。
視力補正は専用・別売のインサートレンズを使う構成だ。他の製品と互換性はなく、過去のRayNeo Airとも違うインサートレンズになる。
サングラス型ディスプレイを快適に使うには、視力に合わせた補正が重要になる。VITUREは近視向けの視力補正機能を内蔵しているため有利だが、画像の鮮明さや機器の薄さを維持するにはインサートレンズ式の方が良い部分もある。ここは良し悪しだ。
なお、今回比較した他社製品はどちらも「外界がどこまで透過するか」をコントロールする機能があるが、RayNeo Air 2sにはない。
各種調節はディスプレイに搭載のボタンで
左右にはコントロール用のボタンが複数用意されている。左手側が音量の操作ボタン、右側がディスプレイの輝度変更だ。明るさ・音量のオンスクリーン表示もある。
またこれら左右のボタンを同時に押すと、表示が「2D」「3D」で切り替わる。これはスマホに同社の「RayNeo XR」というアプリを入れて使うもの。iPhoneの場合、RayNeo Air 2sを3Dモードにしてつなぐと「空間ビデオ」をこのアプリから「3Dで再生」できるようになる。なお、同様のモードを持つ他社アプリもあるが、RayNeo Air 2sの3Dモードからは使えないようだ。
もう一つ、他にはないボタンに「メニューモードボタン」がある。左手側の音量よりも後ろに用意されている。
これを押すと、ディスプレイの内部には専用メニューが表示され、いくつか細かい設定変更ができる。
変更できるのは、オーディオの聞こえ方を変える「Whisper Mode」のオンオフ、リフレッシュレートの切り替え(60Hzか120Hzか)、ディスプレイカラーモードの切り替え(Standard・Vibrant・Soft)だ。この種の設定が用意されている製品は珍しい。
特に効果的なのは、Whisper Modeとカラーの切り替えだ。
前者は音を「少し外に聞こえづらくする」もの。音量が大きくなると効果は薄れるが、小さい音量で聞く場合には、外への音漏れを軽減できる。
そもそも、RayNeo Air 2sの音質はかなり良い。音の広がりを楽しむにはとても向いている。他のサングラス型ディスプレイと比較して「劇的に違う」とまでは言えないが、それでも、聞き比べるとトップクラスだとは思う。特に、Whisper Modeはオフの時の方が好ましい。
ただ、これは機器の特性だと思うが、スマホにつないだとき、音声コントロールが「ヘッドフォン扱いではない」。微妙な話だが、iPhoneだとスマホ本体側から音量コントロールができず、Androidでは可能。一方で、「音声コントロールがヘッドフォン扱い」な他機種は、どちらも問題なく操作できる。この辺の作りに少し違いも感じるところだ。
カラーモードはスタンダードがおすすめであり、無理に変える必要はないと思うが、「白が明るく眩しい」と感じる場合には、Softなどに変えると効果的だろう。
ケースはケーブルなどの収納に配慮
他社製品とちょっと違っていて、これはプラスだと思ったのが「ケース」だ。
ケースは他社のものに比べ少し大きい。その関係からか、商品パッケージ自体も大きめだ。
ケースが大きいのは一見マイナスなのだが、実際には、併用するケーブルやインナーレンズなどの収納が必要でもあるため、「ちょっと余裕がある」方が使いやすい。仕切りの存在など、VITUREも気を使っているのだが、シンプルで使いやすいという意味ではRayNeoのものも良い。
性能的にはそれぞれ似通ったところがあり、サングラス型ディスプレイを選ぶのは難しい部分があるのだが、ケースなども1つの差別化要因ではあるだろう。
なお、今回の試用機材には、Androidをベースとした「Google TV」を採用したコンパクトな専用端末もセットになっていた。これ自体は、別メーカーである「HOMATICS」の「Pocket TV」という製品。サングラス型ディスプレイとつないで映像を楽しめる。機能としては特筆すべきところではないし、価格などの購入諸情報も不明なので細かい言及は省く。
サングラス型ディスプレイはスマホとつなぐのが一般的かと思うが、Pocket TVのような製品も増えてきており、他の企業は自社ブランドで用意する例もある。中国を中心に、サングラス型ディスプレイ+専用デバイスのセットでの市場が広がっている証左でもある。