ミニレビュー

バッテリー持ち超強化。ソニー「ZV-E10 II」は旅カメラとして“使いやすさ”が魅力

ZV-E10 II

8月2日に発売された、ソニーのVLOGCAM「ZV-E10 II」。前機種から変わらないコンパクトボディに、αフルサイズ機と同じZバッテリー「NP-FZ100」が使えるようになり、スタミナ性能が向上。画像処理エンジンも待望の「BIONZ XR」が採用され、AF性能は「α7 IV」相当になったという注目の機種だ。

店頭予想価格はボディのみで153,000円前後、パワーズームレンズキットで164,000円前後、ダブルズームレンズキットで186,000円前後。ZV-E10登場時はパワーズームレンズキットで10万円を切る価格で衝撃を受けた人も少なくなかったと思うが、今回はグレード自体がZV-E10の1つ上の立ち位置。ちなみに、キットのパワーズームレンズも2世代目となる「E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS II」となっている。

なお、ZV-E10は併売となるが、8月1日からの値上げの対象となり、現在の実売価格はボディのみで108,900円、パワーズームレンズキットが119,900円、ダブルズームレンズキットが141,900円。ZV-E10 IIとの価格差は45,000円程度だ。

既報の通り、スペック面では大きく進化していることがわかるが、実際の使用感はどうなのか。今回、ZV-E10 IIを借りて、現在もZV-E10を愛用している小山葵と、以前ZV-E10を使用していた編集部野澤で試してみた。

最大の懸念点“バッテリー持ち”が改善されて最高(小山葵)

昨年、イタリア旅行をキッカケに前機種であるZV-E10を購入し、今もバリバリ使っているのだが、今回、借りたZV-E10 IIを実際に使ってみて、まず感激したのが、バッテリー持ちの良さ。体感で前機種と比べて2倍くらいだろうか。フルサイズ機とZバッテリー「NP-FZ100」が採用されたことが大きい。

今回、大洗の水族館「アクアワールド茨城県大洗水族館」を撮影しながらぐるっと一周回ってみたのだが、館内から出てきた時のバッテリー残量は80%。必要に応じて電源をON/OFFしていたが、前機種ではおそらくこの時点で30%程になっているだろう。

というのも、この水族館、国内トップクラスの規模を誇っているだけでなく、サメが有名でドデカイ水槽が多いため、撮影したいポイントが多い。少し急ぎ足ではあったが、2時間くらいガッツリ撮影してもまだまだバッテリーに余裕があるのは頼もしい。写真だけであれば予備のバッテリーは必要ないかもしれない(私用での撮影だったため、記事には写真が掲載できず残念だ)。

前述したイタリア旅行では、予備のバッテリーを用意して写真と動画を撮影していたのだが、バッテリー残量を気にしながら撮影していたのにも関わらず、夕方にはバッテリーが2本とも空になってしまい、撮り切れなかったこともあった。だが、ZV-E10 IIほどの余裕があればもっと満足に撮影できただろう。友人にもソニーのフルサイズ機ユーザーが多いので、同じバッテリーをシェアできるのも良い。

このコンパクトボディにこの大きさのバッテリーが入る。ありがたい

バッテリーが大きくなって、見た目も少しゴツくなっているのだが、実際に触ってみると、驚くほど軽い。バッテリーとSDカードを含んだ重量は、前機種から34g増えてはいるのだが、グリップ感が増したことでむしろ体感ではこちらの方が軽く感じる。手にフィットして安定感もアップしたので、カメラを構えた時のブレも少ない。

バッテリー周りで付け加えるなら、前機種ではバッテリーのすぐ隣りにあったSDカードの差込口が本体横に移動した点も個人的に嬉しいポイントだ。以前はバッテリーを落としそうになったり、どちらか抜けてないかと少し心配になる配置で心配性の筆者にとって不安要素の1つだったが、別々の場所になったことで管理がしやすくなったのは有難い。

カードが横なのも嬉しい。取り出しやすい

使いやすさの要素でいうと、撮影モードの変更がスライドスイッチになったことも外せない。前機種は押しボタンだったため、連打してしまって思った撮影モードに変更できなかったりもしたのだが、スライドになったことで、狙った機能にバッチリ切り替えられるようになった。現在の撮影モードが何か一目でわかるようになったのも良い点だ。

これのおかげでモードの切り替えが超スムーズになった

デジタルズームで撮影しても綺麗な写真に仕上がるのも、今回感激したポイントだ。これは、2世代目となったキットレンズ「E 55-210mm F4.5-6.3 OSS II」の恩恵もあると思う。

筆者は写真=作品ではなく、イラストを描く時の参考資料として撮ることが多いので、コンパクトなレンズでデジタルズームも多用している。前機種では細部まで綺麗に撮影できなかったため、デジタルズームで撮影したものは全体の雰囲気などを掴む資料として使っていたのだが、ZV-E10 IIは水槽の中の魚の鱗まできっちり映してくれるので、細部を見る資料の撮影までできてしまう。

デジタルズームで撮った写真

細部を撮る資料の撮影では、ダブルズームレンズキットに付属している「E 55-210mm F4.5-6.3 OSS」を持ち出すことが多かったのだが、もうE 55-210mm F4.5-6.3 OSS IIだけで十分かもしれないと思うくらいだ。

意図した場所に素早くピントが合ってくれるのも嬉しい。AFについては、フルサイズ機の「α7 IV」と同等なのだとか。30万円台のカメラと同じ精度でピントが合うと言われるとちょっともう何を言って良いのかわからないが、すごいことだけは理解できる。レンズも進化しているので、より快適になっているのだろう。

撮影して快適だったポイントはメニュー画面にもある。カラム表示で視覚的にとても見やすくなって、目当ての機能がだいぶ探しやすくなった。これは助かる!!

アイコンもわかりやすいし、次の次の階層まで見えるの本当に助かる

以前は目的の機能を探すのに、毎回項目を選択して二層目三層目を確認して、「無いなぁ、ここにも無い」と探し回ったあげく、また次に同じ項目の設定を変えたいときに「あれ? どこだったっけ?」と項目を行ったり来たりすることが多かった。

ZV-E10 IIはそんな筆者でも、教えてもらった項目の場所をすぐに見つけることができ、機械強々になった気分だ。

撮影した写真をPCで確認してみると、「あれ? なんか思ってたよりも盛れてる!?」と思う写真が多かった。前機種では背面モニターで確認したそのままの絵が大きな画面に映っている感覚だった。そういった意味では、ZV-E10 IIの背面モニターは、カメラの性能に追いついていないのかもしれない。

しかも、ZV-E10 IIで撮影したものは、カメラ任せのオート撮影でも肉眼で見ていたときのイメージとの差が少なくなっており、イラストの資料としても、撮影時の構図やイメージ、雰囲気など、その時に得たインスピレーションなどの情報ごと、出力されてくるようで「こんなに思ったように撮れてるの!?」と正直驚いた。

あとで確認したときに綺麗に撮れていて驚いた海の写真

ZV-E10 IIは前機種からの長所はもちろんのこと、ちょっとした不満なポイントの数々ところが改善され、使用感がかなり良くなったと感じた。

価格は値上がりした無印より4万円程高くなってはいるが、それを考慮しても筆者個人としては、乗り換えやこれから前機種とどちらを購入しようか悩んでいるのであれば、ZV-E10 IIを是非ともオススメしたい。

コンパクトさはそのまま正当進化。真夏の外撮影もへっちゃら(編集部:野澤)

大半の要素を小山葵氏がまとめてくれたので、こちらではシューティンググリップ「GP-VPT2BT」を使って実際に動画を撮影してみた使用感をレポートする。レンズはパワーズームレンズキットに付属する「E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS II」を使っている。

シューティンググリップを装着した際の使用感も、正直ほとんど前機種と変わらない。バッテリー側に少し重さが傾きそうな見た目をしているものの、そのようなことはなく、楽にまっすぐ持つことができる。

シューティンググリップを付けた様子

手ブレ補正アクティブで撮影で手持ちで撮影した動画をカット編集したものがこちらだ。

ZV-E10 IIで撮影した動画

このとき、真夏の強い日差しの下で10分以上回しっぱなしにしていたのだが、「自動電源OFF温度:高」設定で、途中で熱停止することなく撮影がつづけられていた。その前後にも短いカットではあるが動画撮影をしながら3時間程度過ごしたが、ここでは一度も停止することなく撮り続けることができた。夏場はカメラの熱停止の前に自身の熱中症に気をつけた方が良さそうだ。

1つ気になった点は、デジタルズームでの動作。ズームインの場合は、光学ズーム領域からデジタルズーム領域に入るタイミングもスムーズなのだが、ズームアウトの場合は、デジタルズーム領域から光学ズーム領域に入る際に一瞬止まって、映像もカクッとなってしまう。

前機種ではズームイン時にもカクッとなっていたので、改善されたポイントではあるのだが、動画撮影時には注意したい。デジタルズームを使わないという人は、デジタルズームを使用しない設定にすれば事故も防げるだろう。

そのほかの点については、筆者も小山葵氏が挙げた点でほぼ同感。とくにバッテリー持ちとスライドスイッチについては、編集記者の仕事で使っていて、イベント取材中にバッテリーが物足りなかったり、動画と静止画を素早く切り替えるのにボタンプッシュでの使い勝手に不満があり、「もういっそフルサイズ機にしちゃおう」と「α7C II」に買い換えた過去があるのだが、ZV-E10 IIの使用感だったら今も使っていたかもな、と思ったところ。

価格差約45,000円以上の価値がZV-E10 IIにはあると感じるので、新しくどちらかを購入しようと思っているのであれば、ZV-E10 IIをオススメしたい。

一方で、ZV-E10から買い換えるべきかと悩んでいる人は、とくにチェックしてほしい点が3つある。それは、

  • 現状のバッテリー持ちで日頃の撮影に支障が出ているか
  • 制止画/動画/S&Qの切替を頻繁に行なうか
  • VLOGCAMの機能をよく使うか

この中でもとくにバッテリー持ちに満足しているのであれば、無理に買い換える必要はないと思う。さらにシューティンググリップを使っている場合は、使用感もほぼ変わらない。とくに即決ではなく、悩んでいるのであればなおさらだ。

もちろん、今回の新機種登場を待ち望んでいて、予算にも余裕があるという人は買い換えれば使い心地の面で感激するポイントが多いだろう。若干グリップが大きくなっているとはいえ、小さなバッグに滑り込ませて、気軽に撮影できるという前機種の利点はそのままなので、その魅力を十分に感じられると思う。

野澤佳悟
小山葵

“こわさび”と呼ばれている、関東の隅っこに生息する兼業イラストレーター。ひょんなことからライター業も始めたが普段は飲食店勤務。最近の趣味は10年ぶりくらいに再熱した某カードゲーム。