ミニレビュー

飛行機で寝返りがうてる! ボーズのノイズキャンセルイヤホン「QC 20」

 飛行機のエンジン音はうるさい。機内では多少軽減されるとはいえ、うるさいことには変わらない。ゴーっという音は目的地までのお供とは割り切れない。映画を見たり音楽を聴いたりするために国際線では個人用のモニターやリモコンが取り付けられているが、備え付けのヘッドホンでは遮音性は低く、音量を上げざるを得ない。長時間のフライトでの大音量は耳の疲れを感じる。そんなこともあり、ファーストクラスやビジネスクラスでは、ノイズキャンセル(NC)ヘッドホンが提供されていることが多い。

 NCヘッドホンの基本的な仕組みはシンプルだ。外の音をマイクで拾い、それとは逆位相の音を音楽などと一緒に出すことで、騒音を軽減する。要は、外の音が小さくなるヘッドホンだ。もともと飛行機のファーストクラスで使用するために開発されたという話も聞く。

ボーズ QuietComfort 20」

 とはいえ、そうそうビジネスクラスに乗れるわけもなく、自前のノイズキャンセルヘッドホンを飛行機に持ち込んで使っている。

 過去には、

  • ゼンハイザー PXC250
  • ボーズ QuietComfort2
  • ボーズ QuietComfort15
  • ソニー MDR-NC300D

といったノイズキャンセルヘッドホン/イヤホンを購入しているが、どれも一長一短。エンジン音は軽減されるが、飛行機で使うには不満を感じていた。

 そこで、ゴールデンウィークに友人の住むロサンゼルスに行くのに合わせ、購入したのがボーズの「QuietComfort 20」(QC20)。ヨドバシカメラの通販で3万2,400円。ポイント10%つくので、実質約3万円だ。

十分なノイズキャンセル性能と元気の良い低音

iPhone 5sでの利用例。コントロールモジュールは薄型だ

 QC20は、耳の穴に突っ込むカナル型のノイズキャンセルイヤホンだ。ねじられた白と黒のケーブルの模様がボーズのイヤホンらしい。

 バッテリーが内蔵されたコントロールモジュールと、スマートフォンで通話ができるマイク付のリモコン、イヤホン部で構成されている。耳に装着するチップはS/M/Lの3種類が同梱されている。

 なお、iPhone用にリモコン部に3つのボタンがあり、「音量調整」「通話切替」「再生コントロール」「音声アプリケーション起動」ができるQuietComfort 20iもあり、価格は同じ。

パッケージ
付属のソフトケースはコントロールモジュールがギリギリ入るくらいの大きさ

 ボーズのノイズキャンセル性能は定評があり、QC 20ではさらに「ボーズ史上最高の静寂がついに耳の中に」という触れ込みだが、決して嘘ではないようだ。同じボーズでもオーバーヘッドのQuietComfort 15と比べても、静かになる印象だ。カナル型ということもあり、遮音性が高まっているのかもしれない。

StayHear+チップは大きさの違いで3種類付属する

 装着感もいい。実のところカナル型は耳の穴が圧迫される感じがして好きではないのだが、QC20は奥まで突っ込まずに装着できるので、さほど気にならない。そのぶん外れやすいのではと思ったが、新しくなったStayHear+チップは、耳に突っ込む部分とは別に髭の生えたようになっていて、耳にしっかり固定される。

 ノイズキャンセリングイヤフォンのため、音質については、同価格帯(約3万円)のイヤフォンには及ばない。とはいえ、貧相な音というわけではなく、イヤホンにしては低音がズンと出てくる。イヤホンに穴をあけ空気質量を調整するという「TriPortテクノロジー」や、イコライザーによる調整によるもののようだ。

 低音が強いからといって、高音域までのバランスは悪くなく自然。個人的にはもう少し抑えてもよかったと思うが、低音好きな人には最適イヤホンとなりえるかもしれない。

 また、耳の近くで音が鳴っている明瞭感はあるが、若干中域で音がつながったように感じることもあった。

飛行機に持ち込んで……寝返りがうてる!

装着例。チップの先にある羽根のような部分で耳に固定される

 今回QC20を購入した最大の理由は、これなら飛行機で使っても寝返りがうてそうだから。シートに座っていて寝返りというのは変な言い方かもしれないが、寝ているうちに首の向きを変えることは少なくない。映画を見ていても、首をかしげるように姿勢を変えたいことだってある。

 QuietComfort 15のようなオーバーヘッドのタイプではハウジングが邪魔になる。寝ているときにヘッドホンがずれて目が覚めることもある。カナル型でもソニーのMDR-NC300Dは、耳からでっぱるような形状をしているので、首を動かすときはどうしても耳とヘッドレストの位置を気にしなければならなかった。

 それがQC20では外耳への収まりがよく、ちょっと首を動かしたくらいではヘッドレストに当たらない。仮に当たっても、不快な感じはない。もちろん、イヤホンが若干ずれていたことはあったが、外れることはなかった。

 肝心のノイズキャンセルの効果も良好だ。完全な静寂になるわけではないが、電源を入れればゴーっというエンジン音がサーっとなる程度までに低減される。ちなみに、今回は日本航空を使い機内エンターテイメントはMAGIC-Vだったが、音量は最も小さいか1段上げたところで十分だった。機内で、直接聞き比べたわけではないが、QuietComfort 15より人の声が若干抑えられる印象だ。赤ん坊の泣き声も気にはならない程度にキャンセルされる。陸上で使っていて気になった低音も、ほどよい感じに抑えられていたのも嬉しい誤算だった。

 ケーブルに触れたときに発生するタッチノイズが少ないのもいい。マイク付のリモコンからコントロールモジュールの間であれば、ちょっと触れたくらいではほとんど気にならないのもいい。少々体を動かした程度では、気にならない。

 電源は、乾電池ではなく充電池ということもあり、コントロールモジュールは薄型。付属のソフトケースにしまえばシャツの胸ポケットに収まるほどの大きさでシートにも持ち込みやすい。充電はmicroUSB。使用しながらでも利用できるのも嬉しい。連続使用時間は公称で約16時間。今回のロサンゼルス往復には足りないが、シートにUSB端子があり特に困ることはなかった。ちなみに、充電時間は電源オフにした時の実測で1時間35分くらい。

 なお、QuietComfort 15などとは異なり、電源をオフにしても音は聞こえる。ただし、ゴワゴワとした、こもったような音で単に聞こえるレベルだから、緊急用といったところ。マイク付イヤホンの横にあるボタンを押せば「Awareモード」で音質はそのままにノイズキャンセルがオフになり、外の音が聞こえるようになる。とはいえ、機内でドリンクや食事などのサービスでキャビンアテンダントに話かけられるのは突然だし、イヤホンつけながら「ビールをください」と言うのも、どこか気恥ずかしく会話の際は基本的に外していた。屋外で外の音も聞きたいときは良いのだろう。

飛行機で使うための変換プラグは付属しないので別途用意する必要がある

 なお、飛行機のイヤホン端子の多くは、左右のチャンネルが分かれた2つの3.5mmのモノラルミニの端子が使われる。通常の3.5mmのステレオミニプラグを使用する場合、変換プラグアダプターが必要になる。QC20には付属しないので、別途用意する必要がある。今回は過去に購入したノイズキャンセルヘッドホンに付属していたものを携行していったが、専用の「機内用デュアルプラグアダプター」は、ボーズのオンラインストアで1,200円だ。

飛行機で使う定番ノイズキャンセルイヤホン

 また、少し電車の中でも使ってみたところ、ノイズキャンセルの効果は十分だと感じた。ただ、やはり日常使いには低音がきつく感じるため、個人的には、飛行機など騒音がキツイとき専用のイヤホンになりそうだ。

 こと飛行機の機内で使うのであれば、このQC20は完璧に近い。エンジン音が消えることも含めれば、音質に不満はない。繰り返しになるが、寝返りがうてるのは最高だ。

 国際線は年に数度しか乗らないが、それでも長時間のフライトでの騒音には悩まされていた。寝てしまうと割り切れば耳栓を使う手もあるが、やはりちょっとは新作の映画だって見たい。飛行機に乗るたびに、ヘッドホン・イヤホン選びには悩まされていただけに、この買い物は大正解だ。

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猪狩友則