ミニレビュー
128GBも登場。半日使った新iPod touchの魅力と期待
音質は良好。ポータブルアンプ市場を加速?
(2015/7/24 19:52)
第6世代iPod touchが発売された。2012年9月発売の第5世代touch以来、ほぼ3年ぶりの新モデルだが、液晶ディスプレイは4型/1,136×640ドットと第5世代とほぼ共通、外形寸法は123.4×58.6×6.1mm(縦×横×厚み)、重量88gと、こちらも第5世代touchとほぼ同じだ。
強化点は、新64bitプロセッサの「A8」を搭載し、パフォーマンスを大幅に向上したことと、8メガピクセルカメラなどのカメラ機能強化。最新iOS対応などにおいても、本体のパフォーマンス向上は重要。カメラもスペック上は最新のiPhone 6/6Plus相当で、バーストモードやスロー撮影などにも対応した。
そしてもう一点は、iPod touchとして初めて128GBモデルが用意されたこと。特に音楽プレーヤーとして利用する場合は、ストレージ容量は重要だ。iPod touchでは本体のみではハイレゾ再生できないが、外部DACとの組み合わせではハイレゾ出力が行なえる。ポータブルアンプを利用している人にとっては魅力的な強化点だろう。
また、カラーバリエーションの変更や、無線LANの最新規格であるIEEE 802.11 ac対応、ストラップ(iPod touch loop)の廃止なども第6世代iPod touchの変更点といえる。
Apple Store価格は24,800円(16GB)、29,800円(32GB)、36,800円(64GB)、48,800円(128GB)。ただし、128GBモデルはApple Store限定となる。
本来であれば、ここできちんとレビューをしたいところだが、実は本日(24日)午前に入手したばかり。今回は、音楽プレーヤーとしての新iPod touchへの個人的な期待と、簡単なファーストインプレッションをお届けしたい。
新touchはiPhoneへの個人的な不満を解消するか?
個人的なiPod touchへの期待は「音楽専用プレーヤー」として使えること。現在iPhone 5sを持ち歩いているほか、AK120IIを音楽専用プレーヤーとして利用している。iTunesで購入した楽曲やApple MusicなどのストリーミングサービスはiPhone 5sで、ハイレゾはAK120IIと使い分けているのだが、その使い分けに、ややストレスを感じることがある。
会社や自宅などではさほど問題はないのだが、電車内でiPhoneで音楽を聞いていて、次聞きたい曲がハイレゾなのでAK120IIに入っているとなると、わざわざプレーヤーを取り出して、イヤフォンを接続しなおす、といった作業が面倒。最近Apple Musicを本格的に使うようになり、iPhoneの稼働率が上がったこともあり、AK120IIの利用頻度がかなり下がってきた。
そこで浮かんでくる疑問は、「音楽プレーヤーをiPhoneに集約すればいいのでは?」。まあ、そのとおりなのだが、筆者のiPhone 5sのストレージ容量は32GB。1アルバムで数GBも珍しくないハイレゾの転送には心許ない容量だが、回線契約など考えると次期モデルまで買い替えるのも難しい。その点、128GBモデルも選べる新iPod touchは魅力的だ。
iPod touchなどiOSデバイスでは、本体で直接ハイレゾ再生はできないが、「ONKYO HF Player」や「iAudioGate」などのプレーヤーアプリを使えば、ダウンコンバートとなるが、ハイレゾ再生は可能だ。さらにDACを組み合わせれば、ハイレゾのままのデジタル出力も可能となる。
だがハイレゾ楽曲は、iTunesなどから[ミュージック]に楽曲を転送できず、それぞれのアプリの管理領域に楽曲を転送する必要がある。そのため、HF PlayerやiAudioGateなどプレーヤーアプリごとに、それぞれのアプリ管理領域に曲を転送する必要があり、これもiPhone上のストレージ容量を食ってしまう要因となっている。
そもそも、iPhoneは、通話やメッセージなどのコミュニケーションのライフラインかつ、ソーシャルメディアや、カメラ、カレンダー、Webなど様々なサービス/アプリなど、まさに生活の中心ともいえるデバイス。それらのサービスで使うためにも容量には余裕を持っておきたい。
筆者は取材用のボイスレコーダとしてもiPhoneを使っているが、楽曲がストレージ容量を圧迫して、取材音声が途中で切れているなど、実際の業務に支障をきたしたこともあり、その辺りは慎重に運用したい。また最近は、Apple MusicやLINE MUSICのオフライン再生用キャッシュも数百MBの容量を使うので、その際にストレージ容量が足りない旨の警告が表示されることもある。
つまり、ライフライン的な重要度を持つスマホとは別の音楽プレーヤーを持ちたい。ただ、AK120IIのような音質だけを重視したものだけでなく、よりカジュアルで、それでいて各種サービスやアプリも使える製品として、新iPod touchに注目したわけだ。
音質も良好。ポタアン市場を加速する?
早速iPod touchを開封し、音楽を聞いてみた。[ミュージック]で、Apple Musicやライブラリ内の楽曲を再生してみたが、普段使っているiPhone 5sとの差は感じられず。
ヘッドフォンにソニーの「MDR-1A」を使って、テイラー・スウィフト「1989」(44.1kHz/24bit WAV)で、第6世代touchとiPhone 5sを比較してみたところ、iPod touchのほうがやや音場が広めで、中低域が強くでているように感じられる。また、シンバルのアタック感などがややiPod touchのほうが強く、印象的だ。ただしその差は小さく、作業しながら聞いていて、どちらのデバイスを使っているかを意識することはなかった。
iPod touch本体だけではハイレゾ再生できないが、「HF Player」や「iAudioGate」などのプレーヤーアプリを使えば、本体で48kHzダウンコンバート再生ができる。また、対応の外部DACを用意すれば、DACへのハイレゾ出力も可能だ。この点もiPod touchに期待するポイントだ。
HF Playerを使ってハイレゾ楽曲をヘッドフォン出力(48kHzダウンコンバート出力)でも聞いてみた。基本的にはiPhone 5sと同傾向だが、例えば、かなり激しいパンニングが行なわれている、コーネリアス「Fit song」(96kHz/24bit FLAC)では、iPod touchのほうが広い空間で音が移動していくように感じられた。音質傾向は近いものの、どちらかを選ぶなら新iPod touchという印象だ。
もう一点、ポータブルアンプとの接続も試してみた。ラトックシステムの「REX-KEB03」にLightning接続したところ、192kHz/24bitや96kHz/24bitのFLAC、WAV、さらに2.8MHzのDSDもハイレゾ出力が行なえた。
AKシリーズやウォークマンなど、ハイレゾ対応のポータブルプレーヤーは、本体だけで操作/再生を完結できるという魅力はあるが、5万円超の高価な製品が多い。24,800円~のiPod touchと安価なポータブルアンプを組み合わせたポータブル環境の構築というのも面白そうだし、新touchを前提としたポータブルアンプやDACの新製品も登場しそうだ。
“気軽さ”が魅力のiPod touch
まだ半日使っただけだが、ストレージ容量などを気にせず「音楽専用」として使えること、毎月の通信回線費用などは不要なことなど、スマホにはない“気軽さ”がiPod touchの魅力と感じる。それでいて、カメラ機能や豊富なアプリなどは、iPhoneと同等のものが用意されているので、音楽だけでなく様々な用途で活用できるはずだ。
音楽専用機としては、本体でハイレゾ再生できれば手っ取り早いとは思うが、そこはAppleの対応次第。ただし、HF Playerのようなアプリ側の選択肢や、豊富な周辺機器/エコシステムが利用でき、活用の幅はユーザー次第。また、本体サイズなどは第5世代からほぼ変わっていないので、従来のアクセサリが使いまわせるというのも地味ながら嬉しいポイントだ。
デザインや基本機能は踏襲しながら中身を一新した第6世代iPod touch。モデルチェンジまで、3年近い年月を要したわけだが、その間オーディオプレーヤーを取り巻く周辺環境は激変した。Apple Musicのようなストリーミングミュージックの台頭もその一環だろう。もう少し使ってみて、2015年ならではのiPod touchの使い方を後日レポートしたい。