西田宗千佳のRandomTracking
第642回
自動3D化機能搭載でエンタメ特化「XREAL 1S」を試す。特にゲームで効果的
2025年12月16日 08:00
XREALの新製品「XREAL 1S」と、「XREAL Neo」のレビューをお届けする。
今年、同社は多数の製品を発売した。正直多すぎると思うし、どれを買っていいかわかりづらいと思うほどだ。
そんな中で、XREAL 1Sは明確に「サングラス型ディスプレイとしてのスタンダード」を目指した製品、といっていい存在だ。「2D動画の3D化」という新しい要素を追加し、魅力を増している。
また、XREAL NeoはXREAL 1Sに電源を供給するモバイルバッテリーであり、Nintendo Switch/Switch 2をセットで使う場合のパートナーでもある。
価格はセットで7万6,560円(セール価格。本来は8万2,560円)、XREAL 1S単体では6万7,980円。
では、今までの製品とどう違うのか? 類似の機能を持つ製品とはどう違うのか?
その点を実機で確認していこう。
XREAL Oneをリファイン。基本機能はほぼ同等
XREAL 1Sに代表される製品はどんなものだろうか?
メーカーは「ARグラス」「XRグラス」と表現するが、これは内容を正しく表していない。筆者は記事中で「サングラス型ディスプレイ」と表現するようにしている。USB Type-Cを経由しDisplayPort規格で左右の目に映像を表示する「ディスプレイ」としての機能が軸であるからだ。アプリなどを介してAR(拡張現実)を体験することもできるが、「ケーブルでつながった機器からの映像を表示する」のがメインであり、それ自体が魅力だ。
広告で描かれるように数百インチの画面に感じられることはないが、30から40インチくらいの画面がちょっと先にある……くらいのイメージで楽しめる。
多くの製品では、グラスだけだと「ディスプレイ全体に映像が表示される」形態だ。だから、首を動かしても映像が目の前についてくる。
だが、今年XREALが発売した「XREAL One」シリーズでは、内蔵の「X1」プロセッサーを使い、映像を「目の前の空間に固定」することができるようになった。以下は、XREAL Oneのレビュー時に掲載した動画だが、空中に大きな画面が固定されて見えるのがわかるだろう。
「グラスだけでどの映像も空中に固定して見える」のは、現状XREALの特徴であり、XREAL Oneシリーズを選ぶ理由と言っても過言ではない。
XREAL 1Sも、この機能はそのまま搭載されている。表記こそOneから1になっているが、基本的な設計は同一であり、XREAL 1SはXREAL Oneの改良型、と言っていい。
色は少し青みがかった「ミッドナイトブルー」になったが、それ以外のデザインはXREAL Oneと同様。操作系も同じだ。視力補正用のインサートレンズも、XREAL Oneと同じものが使える。
一方、光学系はXREAL One Proとは異なるので、インサートレンズの設計も異なっている。
ではXREAL Oneとなにが変わったかと言えば、まずは使っているマイクロOLEDが変更になっているようだ。
具体的には、これまで片目それぞれ1,920×1,080ドットだったものが、1,920×1,200ドットになっている。
とはいえ、これはそこまで劇的な変化ではない。
前出のように、XREAL Oneシリーズは映像を「目の前の空間に固定」するので、入力された映像信号はディスプレイ表示の適切な位置に投影される。ドットバイドットで画面を出すならともかく、縦方向の拡大を体感するシーンは意外と少ない。多少視野が広く感じるくらいだろうか。
また、ディスプレイの明るさ・発色もXREAL Oneとほぼ同じと考えていい。
空間固定の機能はないが、ライバルであるVITUREの「VITURE Luma Ultra」の方が輝度は高く、映像の美しさだけならこちらが上だ。
ただし、映像の空間固定はやっぱり便利で見やすいものだし、PCと接続して作業に使うときには、特に「ワイド画面での空中固定」が非常に有用だ。
この辺の選択基準は、XREAL 1Sになっても変わらない。
あらゆる映像を「3D」に。特にゲームで効果的
ではXREAL 1Sは単なる色変えなのか……というとそうではない。
非常に大きな要素となるのが「2D-3D変換」だ。
XREAL 1Sでは、入力した映像をすべて自動的に「3Dに変換」する機能がある。
具体的には、メニューから「3Dスペース」を選ぶと、入力映像を3Dに変換する旨の警告が表示され、「オン」を選ぶと映像が3Dになる。
内蔵されたX1プロセッサーを使って映像を3D変換し、目の前に表示する。
効果はかなりのものだ。ウェブでは実感してもらいづらいのがもったいないくらいだ。
とはいえ完璧な3D化ではない。本来とは違う部分が飛び出すことがあるし、水平方向にブレのようなものを感じやすい部分もある。
2D-3D変換自体は他のサングラス型ディプレイにもある機能だ。前出のVITURE Luma Ultraの場合、スマホ側に入れるアプリである「SpaceWalker」にその機能があって、YouTubeなど一部サービスの映像を3D化できる。スマホの方が処理に余裕があるためか、正直、3D変換の画質はXREAL 1Sより上だ。
だが、XREAL 1Sには「接続した機器の、すべての映像を3D化する」という特徴がある。スマホの映像はもちろん、スマホの画面のアイコンまで3D化される。ゲーム機やPCなどをつなげば、その映像が「どんなものでも3Dになる」というのが面白い。
その性質上、3D化の調整は「どのくらいの強度で立体に見せるか」というくらいしかできないが、その辺はトレードオフ、というところだろうか。
いろいろなコンテンツを3D化してみたが、効果ははっきりしており、正直楽しい。
中でも特に効果的だったのは、映画などの実写映像以上に「ゲーム」の画面だ。
ゲーム内のウインドウがちゃんと立体で重なって見えるし、風景にも立体感が生まれる。「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」も良かったが、個人的には「ドラゴンクエストI・II」の3D化が面白く、効果的だと感じた。3D化された背景とウインドウ、双方の3D化との相性が良く、非常に面白い効果だった。
同様に、「グラディウス」のような横スクロール・シューティングでの効果も面白い。背景と敵、自機がそれぞれ立体的に重なって、良い効果が生まれる。
映画も含め、2D-3D変換によってエンターテインメント性は大きく向上した。XREAL One Proが「PCなどで作業をするためのデバイス」としての進化だとすれば、XREAL 1Sは「エンターテイメント向けの進化」と言える。
なお、XREAL OneシリーズはすべてX1プロセッサーを搭載しているが、XREAL 1Sの2D-3D変換機能を搭載するかどうかは「検討中」であり、決まっていないという。
Switchを簡単につなぐのに便利な「XREAL Neo」
そして、「1Sがゲームと相性がいい」という点で注目なのがXREAL Neoだ。
XREAL 1Sなどのサングラス型ディスプレイの課題は「電源確保」だ。スマホとつないで使う場合、映像を再生しているとスマホの電力をかなり消費する。数時間連続して使うなら、スマホとサングラス型ディスプレイの両方に電力を供給する方法が必要になる。
分岐式のアダプターもあるが、XREAL Neoは「モバイルバッテリーであり電力供給アダプター」である。10,000mAhのバッテリーを搭載しているので、グラスとスマホなどの側に電力を供給しながら使える。
もう1つ大きいのは、Nintendo Switch/Switch 2を接続するのに使える、ということだ。
Nintendo SwitchシリーズにはUSB Type-Cのコネクターがあるものの、DisplayPort規格には対応していないので、ドックからのHDMI出力を使い、さらにHDMIからUSB Type-Cへの変換を行わないといけない。
そこでXREAL Neoでは、USB Type-CでSwitchシリーズを直接接続できるようになる。接続すると内部的にSwitchがTVモードになり、XREAL 1S側に映像を出力する。
同様のアダプターはVITUREなども発売していてある意味定番アクセサリーなのだが、コンパクトであること、マグネットでスマホなどの背面にくっつけられることが特徴だろうか。Switchを含むマグネット(MagSafe)のない製品向けには、くっつけやすくするリングアダプターも付属する。ただし、あくまでマグネットで固定されるだけであり、給電などはケーブルで行なうので誤解なきよう。
なお、XREAL 1S用として説明してきたが、XREAL OneやXREAL One Proでも動作した。
必須とは言わないが、ゲーム機などと組み合わせて長時間使うなら、持っていてもいい製品だろう。

























