レビュー
ゲゲ郎と水木が耳元で……「ゲゲゲの謎」コラボイヤフォンをひと足先に使ってみた
2024年8月19日 08:00
皆さん、2023年末に公開された映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」はご覧になっただろうか。水木しげるの漫画「墓場鬼太郎」「ゲゲゲの鬼太郎」を原作とした長編アニメで、特に女性層を中心にSNSで評判が広がり、年をまたいでロングヒット。Prime Videoでも見放題配信されている。
ネット上では「ゲ謎」の略称で愛され、今でも関連イベントが開催されるほどだ。作品の舞台が戦後の村であることにちなみ、本作にハマって何度も映画館に足を運ぶことを「入村する」と表現するネットミームも誕生した。
そんな中、おなじみのオンキヨーから、ゲ謎とコラボしたスリープイヤフォンが発売されたという。2024年明けから村に軽く足を突っ込んでいた筆者としては、黙っていられない。
製品は、オンキヨーの完全ワイヤレスイヤフォン「CP-TWS01C」をベースにしたコラボレーションモデルで、「鬼太郎の父モデル」と「水木モデル」の全2機種をラインナップ。それぞれ価格は15,000円(送料込)で、2024年8月30日15時まで直販サイトのONKYO DIRECTで受注販売中だ。
ちなみに、ベースモデルのCP-TWS01Cは、すでに他の様々なアニメ作品ともコラボしていて、イヤフォンとしては普通に既存製品である。だが、ここで大事なのはそんなことではない。
そう、この手のアニメコラボイヤフォンの醍醐味と言えば、登場人物を演じた声優さんの音声ガイダンスが収録されていること。しかも今回は、「鬼太郎の父」と「水木」、2人の声が録り下ろしで収録されてるって……? ちょっともうこれは聴くしかないでしょ聴かせろいやぜひ聴かせてくださいどうかお願いします……! ということで、オンキヨーさんから半ば強引に実機をお借りした(本当にありがとうございます)。ひと足先にレビューをお届けしよう。
ゲゲゲの謎とオレ
ここまで読んで、「君、なんでそんなに熱くなってるの?」と思う人もいるかもしれないので、イヤフォンレビューの前に「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」(以下、ゲ謎)という作品の魅力を軽く紹介させてほしい。
まず、映画のあらすじはこうだ。
廃墟となっているかつての哭倉村(なぐらむら)に足を踏み入れた鬼太郎と目玉おやじ。目玉おやじは、70年前にこの村で起こった出来事を想い出していた。あの男との出会い、そして二人が立ち向かった運命について……
昭和31年―日本の政財界を裏で牛耳る龍賀(りゅうが)一族によって支配されていた哭倉村。血液銀行に勤める水木は当主・時貞の死の弔いを建前に野心と密命を背負い、また鬼太郎の父は妻を探すために、それぞれ村へと足を踏み入れた。
龍賀一族では、時貞の跡継ぎについて醜い争いが始まっていた。そんな中、村の神社にて一族の一人が惨殺される。それは恐ろしい怪奇の連鎖の本当の始まりだった。
鬼太郎の父たちの出会いと運命、圧倒的絶望の中で二人が見たものは——。
(映画公式サイトより引用:https://www.kitaro-tanjo.com/)
そう、本作は単なる「ゲゲゲの鬼太郎」リメイクではなく、ストーリーとして完全新作。舞台となる昭和31年にまだ鬼太郎は生まれておらず、代わりに登場するのは、若かりし頃の鬼太郎の父=目玉おやじと、兵隊上がりのサラリーマン・水木(苗字は一緒だが作者の水木しげるとは別人キャラ)。のちに生まれる鬼太郎にとって、目玉おやじは実父、水木は育ての親となる。そんな“鬼太郎の父たち”2人の出会いの物語である。
つまりは“鬼太郎誕生前夜”という、これまで語られなかったエピソードゼロが描かれた作品なのだが、何がすごいって、“子ども向け妖怪アニメ”という一般的なイメージを超えて、PG12指定された大人向けのアクションミステリーとして作られているのだ。
閉塞的な村を舞台とした惨殺事件と、血の因習を巡る人間ドラマが動く中、「呪術廻戦」ばりの戦闘も勃発し、血の流れるグロいシーンやエグいエピソードも満載。横溝正史「金田一耕助」シリーズへのオマージュも匂う陰鬱な空気感が作品全体を覆っている。この辺の演出をファミリー向けに妥協しなかったのは、明らかに大きな成功要因だと思う。
完全新作のエピソードゼロながら、最後は原作の鬼太郎第一話に繋がるようになっているし、水木しげるの作品「のんのんばあとオレ」「総員玉砕せよ!」へのリスペクトが漂う演出・展開もありと、流れが本当に見事なのだ。
そして、今回のコラボイヤフォンに採用された2人の主人公、鬼太郎の父と水木のキャラデザが秀逸であること。これもかなり大きい。簡単に言うと、イケメン男性2人のバディものとして、主に女性目線で沼れる要素が多々ある。
ちなみに鬼太郎の父に関しては、最後まで本名が明かされないのだが、作中では「ゲゲ郎」という通称で呼ばれる。なので本記事内でも、便宜的にゲゲ郎と記載させていただく。
なお、女性目線で沼るというのも、別に腐女子的なことだけを言っているのではない。「白髪・着流し・人外のイケメン(=ゲゲ郎)」と、「咥えタバコ・顔に古傷・スーツのイケメン(=水木)」が手を組むバディものと聞けば、筆者のようなオタク女に刺さるのはお分かりいただけるのではないか。ちなみにゲゲ郎、公式には「イケメンではないが色気のある男」とされているらしいが、普通にイケメンだよな……?
まあとにかく、本作が公開されて以降筆者は「私はゲゲ郎派なのか、水木派なのか」と、それこそ反町派? 竹野内派? (古い)みたいなノリで何回か脳内会議をしたが、結局2人とも好きでどちらか1人なんて選べなかった。←なんかハーレム系少年漫画の主人公みたいなことを口走ってしまったが、まとめると「大人向けに妥協しないストーリー」と「秀逸なキャラデザ」、双方を両立した時点で、ゲ謎のヒットは確約されていたのだと思う。
ちなみに筆者、幼少期(1980年代後半)に物心ついて初めてハマったアニメが「ゲゲゲの鬼太郎」(3期)と「悪魔くん」(埋れ木真吾版)だったので、水木コンテンツへの思い入れがわりと深いのもある。「悪魔くん」に至っては、おもちゃのタロットカードとソロモンの笛セットまで持っていた。
振り返れば、1960年代の「ゲゲゲの鬼太郎」アニメ化に端を発した妖怪ブームに始まり、近年では2010年の朝ドラ「ゲゲゲの女房」と、水木コンテンツは昭和から平成にかけて定期的にヒットしてきた。そして今、そのラインナップに追加されたのがゲ謎だ。
本作のヒットを皮切りに、令和の世にも水木しげるの血が脈々と受け継がれていくのだな……と、手元に届いた今回のゲ謎コラボイヤフォンを見て、感慨にふけっている。
描き下ろしパッケージと、ゲゲ郎&水木を象徴するイヤフォン意匠
ではいよいよ、そのコラボイヤフォンの紹介に入ろう。とにもかくにもファン心をくすぐるのは、新規描き下ろしイラストが採用されたパッケージ、そしてゲゲ郎と水木それぞれをイメージしたイヤフォン本体の意匠だろう。以下、写真を交えながら詳細をお伝えしていく。
続いてイヤフォン本体を見ていこう。「鬼太郎の父モデル」、つまりゲゲ郎をイメージしたモデルの方は、左ハウジングにお酒、右ハウジングに下駄が描かれている。下駄と一緒に描かれている黄色い紐は、おそらく幽霊族に先祖代々伝わる霊毛組紐であろう。昔から鬼太郎と言えばリモコン下駄は有名だが、そこに本作の大事なアイテムである霊毛組紐が添えられているのが小粋な演出だ。
一方、「水木モデル」の方は、左ハウジングにたばこ、右ハウジングに新薬「M」の小瓶が描かれている。愛煙家である水木を象徴するアイテムとしてたばこはわかりやすいが、個人的には物語のキーとなる「M」が右ハウジングに描かれているのが熱い。この「M」のイラストで、水木モデルを選ぶ人が増えるような気もする。
そういえば、どちらも左ハウジング側にそれぞれの愛用品(お酒とたばこ)が描かれているという共通点がある。ゲゲ郎と水木が夜半に喫煙しながら酒を酌み交わす姿は、永遠に見ていたい癒しシーンであった。
装着したまま寝オチできるスリープイヤフォン仕様
続いて、イヤフォンとしての基本仕様にも触れておこう。上述の通り、本機はオンキヨーのCP-TWS01Cという完全ワイヤレスモデルをベースにしている。こちら、“スリープイヤフォン”と呼ばれるオンキヨーの2024年度新機種だ。近年はやりの“寝ホン”という部類のイヤフォンで、「睡眠時の着用に最適」と謳われる。
Bluetoothのバージョンは5.3で、コーデックはAAC/SBCに対応。ノイズキャンセリング機能には非対応だが、通話用のマイクは搭載し、今どきの完全ワイヤレスイヤフォンとして必要最低限の機能は押さえている。再生周波数帯域は20Hz〜20kHzで、感度は103±3dB、インピーダンスは16Ω±15%。内部のドライバー仕様等は非公開のようだ。
ちなみに寝ホンの中には、睡眠導入用の音楽が流れるものもあるが、本機はそのパターンではない。シンプルに“寝ながら使いやすいイヤフォン”の位置付けで、コンパクトな本体の質量は約3.5gと軽量。肌触りの良いイヤーチップとイヤーウィング付きで、耳へのフィット性が高く、長時間装着しても圧迫感が少ないのが特徴だ。
実際に日常生活の中で使ってみたが、本当に軽くて圧迫感がなく、本機を装着したまま横向きで寝ても、耳が痛くなりにくかった。就寝前に、布団の中に寝転がってスマホでYouTube動画を観たり、音楽を聴きながらゲームアプリをする時なんかにとても良い。“最悪、このまま寝オチしても良いや”と思える気軽さがありがたい。
音質としては、全体的にクリアで、リズムのキック感が軽快でありつつしなやかさもある。そもそも寝ホンなので、迫力ガンガン系の音じゃないのは予想通りだが、その“スリープイヤフォン”という立ち位置の中で、オンキヨーサウンドの軸はしっかり保っているという感じ。確かに、就寝前にゆったりコンテンツを楽しむのにちょうど良い。
ゲゲ郎と水木の声が耳元で……
そして、触れなきゃいけないのがコレ。ゲゲ郎と水木の音声ガイダンスである。本機に収録されたゲゲ郎と水木のボイスは、本編にあるセリフも流用しながら、録り下ろしもされているらしい。
ゲゲ郎を演じた声優は、関俊彦さん。大ベテランすぎて演じた代表作・キャラは枚挙にいとまがないが、近年だと「鬼滅の刃」の鬼舞辻無惨役を挙げる人が多いだろうか。ちなみに筆者的には、関さんと言えば「らんま1/2」のムースと「忍たま乱太郎」の土井先生である。
ゲゲ郎モデルを装着すると、早速、「お主… 死相が出ておるぞ……」とゲゲ郎のセリフが聴こえてくる。そう、本編でゲゲ郎と水木が出会ったシーンの象徴的なセリフだ。どちらかと言えば水木派の皆さんも、電源ON時にこのセリフを聴きたくてゲゲ郎モデルを買うか迷うのではないだろうか。
というか、めちゃめちゃ良い声だ(知ってる)。ゆったりと含みを持たせる飄々とした喋り方には、時間の流れ方が異なる世界から来た人のような浮世離れ感がある。それでいて人間と心を通い合わせることができる、“人型の人外”という特徴がすごく出ていて、まあひとことで言うと耳元でこれが聴こえてくるのはたまらない。
ちなみにデバイスとの接続に成功すると毎回「お主が生きる未来 この目で見てみとうなった」のセリフを言ってくれるので、スマホと接続するたびにクライマックス感溢れてジーンとしてしまうのが少々困りどころ。友よ……。
そして、その“友”=水木を演じた声優は木内秀信さん。こちらもベテランで、特に有名なのは「テニスの王子様」の忍足侑士役になるだろうが、個人的にはこの場を借りて「魔人探偵脳噛ネウロ」の笛吹直大役を推させて欲しい。原作でめちゃくちゃ良いキャラなのだ笛吹は……。
水木モデルを装着すると、早速「お前 何者だ?」、そこから接続に成功すると「俺と手を組まないか」と、こちらもゲゲ郎と水木の関係が動くシーンの重要なセリフを連発してくれてアガる。
しかし、水木も良い声だ。太平洋戦争中は兵隊に取られて負傷し、復員後は自嘲気味になりつつも、職場での出世を狙うサラリーマンという人物像。しかし情を捨てきれない性格が、その渋く実直な喋り方によく表れている。イチ社会人の身として、水木の人間らしい葛藤には感情移入してしまうんだよな……。ペアリングモード時に流れるハスキーな「行こうぜ」も、そんな実直さがあって好きだ。
というか、この原稿を書いていて気づいたが、今回の音声ガイダンスで本編から流用されたセリフは全部、ゲゲ郎と水木がお互いに向けて発した言葉ではないか? 何なら電源OFF時の双方のセリフ、「約束しろ 絶対に生きて戻ってくると」(水木モデル)に対して「ああ、また会おう」(鬼太郎の父モデル)は、完全に対になっている。何これエモい……。
なお余談だが、いちゲ謎ファンとしての勝手な希望を言うと、長田モデル(CV:石田彰)を追加でラインナップしてくれてもウェルカム。もちろん電源ONした時の音声ガイダンスは「唵(おん)」でお願いしたい。
ゲ謎の公開1周年を、コラボイヤフォンと共に迎えよう
というわけで、少々長くなってしまったが結論を言うと、オンキヨーの完全ワイヤレスイヤフォンCP-TWS01Cとゲ謎のコラボモデルには、いちファンとしてしっかり萌えることができた。2機種とも、2024年8月30日15時まで直販サイトのONKYO DIRECTで受注販売中だ。締め切りまで残り1カ月を切っているので、購入希望でまだ予約していない方はお早めに。
製品は10月下旬から11月上旬にかけて順次発送予定とのことで、ちょうどゲ謎の公開1周年に間に合うようになっている。そんな記念すべき日を、ゲ謎コラボイヤフォンと共に迎えてみては? スマホで本作をカジュアル視聴する時に、このコラボイヤフォンを使うのもオツだと思う。