レビュー
1万円を切る、Ankerスポーツイヤフォン「Soundcore Sport X20」を試す。普段使いもできる?
2024年8月20日 08:00
ここ数年、異常気象かと思うほどに暑い夏が続いている。それに輪をかけて、今年は連日30度超えを連発しており、外を歩けば汗が止まらない。さらにゲリラ豪雨も頻発しているから、完全ワイヤレスイヤフォンにも防水性能を求めざるを得なくなった。
これまではあまりそうした目線で完全ワイヤレスイヤフォンを選んでこなかったのだが、とにかくIPXXの性能で数字の高いものを探した際に目についたのが、Ankerが展開するオーディオブランドSoundcoreから発売された「Soundcore Sport X20」だ。
名前の通りスポーツ向けモデルだろうが、それはつまりフィット感が高いということだし、Soundcoreブランドから考えれば9,990円という価格は高過ぎず安過ぎずで、完全ワイヤレスイヤフォンとしての性能にも期待がおける。ということで、早速実機をお借りして触ってみた。
とても柔らかなイヤーフック、フィット感の差は人によって大きい?
まずデザインを見ていこう。本体形状はカナル型で、イヤーフックを耳にかけることで安定性を高めるスタイルだ。触ると分かるのだが、このイヤーフックがとにかく柔らかい。同じAnkerのながら聴き完全ワイヤレスイヤフォン「AeroFit」や他社モデルのイヤーフックと比べてみたが、Soundcore Sport X20の方が細く、短く、柔らかかった。
またこのイヤーフックは4mm幅で伸縮でき、角度も30度まで動くため、ある程度の耳のサイズの違いにも対応している。筆者はメガネを使用しているが、その状態でSoundcore Sport X20を装着しても違和感がなく、長時間の使用で耳の上あたりが痛くなることもなかった。
その一方で、イヤフォン本体のフィット感については、個人的に他ブランドの同価格以上のモデルに対してあまり良いとは思えなかった。もちろん個々人の耳の形状によるだろうが、どうも筆者の耳にはハウジングが干渉してしっかりハマりきらず、浮いた感じが残った。実際、スマートフォンのSoundcoreアプリでは正しく装着されているかテストできるのだが、正しく装着されたと判断されるまで何度も調整を繰り返す必要があった。イヤーピースの耳への入り込み具合は、インナーイヤー型とカナル型の中間くらいに思える。
それも相まってか、つけ心地は軽い。重さを測ってみたところ、イヤフォン片側あたり約6.5gあった(イヤーフック含む)のだが、それを感じさせずフワッとしている。パッシブの遮音性もそれほど高くないのだが、外音が自然に聴こえるということでもあるので、このあたりがスポーツ向けらしい部分なのかもしれない。
また本体の操作ボタンがイヤーフックの根元付近にあるのだが、これが押しづらい。イヤーフックに指が当たってしまうので、もう少し離れた位置か、下側につけるなどされていると嬉しかった。スポーツ時にはスマートフォンから操作することは難しいだろうから、本体操作のしやすさは追求してもらいたい。
本モデルを気にするきっかけとなった防塵・防水性能については、IP68と高水準でなんの問題もない。装着したまま外に出るとたちまち汗だくになったが、まったく構わなくてよいのは気が楽だ。試しにジョギングに連れ出してみたところ、筆者の場合は上述のようにハウジングに浮いた感じがあるものの、それでもイヤーフックで固定されているためこの程度の運動で落ちるようなことはなさそうだ。しっかりハウジングもハマる方であれば、よりフィット感が得られるだろう。
それ以外に色々と搭載されている機能については、主にSoundcoreアプリから設定する。
先ほど遮音性について触れたが、ノイズキャンセリングをオンにすることでだいぶ外音がカットされる。このノイズキャンセリングは弱/中/強の3段階で切り替えられるほか、周囲の騒音レベルにあわせた自動調整も可能だ。なお、ノイズキャンセリングが音質に与える影響は大きく、低音がブーストされたようになる。
外音取り込みモードも備えているが、こちらは元々の遮音性もあるが効果は控えめで、音質への影響もそれほど気にならない。逆にそれほど使うシーンもなさそうに思う。
サウンドモードはベースブースター/ベースリデューサー、トレブルブースター/トレブルリデューサーや、アコースティックにクラシック、ダンス、ピアノ、R&Bなど全22種類とかなりの数が揃っている。後述するが、この豊富さはある意味で必須とも言える要素だ。
珍しいのは「呼吸」機能で、アプリの指示にあわせて息を吸ったり吐いたりすることで、呼吸によるエクササイズができるというサポート機能になっている。使用頻度は人によるだろうが、取り組みとしては面白く思える。
ほか、バッテリー持続時間はイヤフォン本体のみで最大12時間、充電ケース併用で最大48時間と十分。急速充電も約5分で最大2時間の再生が可能と心強い。マルチポイント対応なのも、いまや当たり前のようだがやはりありがたい。
サウンド調整機能を活用することで化ける
それでは音を聴いていこう。バランスとしてはシャリ強めのドンシャリといったイメージで、解像感はそこそこ。そのため全体的に少しガチャガチャっとした鳴り方をすることから、細かい部分が埋もれがちなところがある。勢いのあるロックやポップスなどが相性が良いように思う。
Mrs.GREEN APPLE「青と夏」では、ボーカルとギターの音色が軽やかで、楽曲の爽快感を高めているように感じる。ELLEGARDEN「風の日」でもギターのカッティングが小気味よく、サビで一気に加わる伴奏がボーカルと一体になって押し寄せるのが楽しい。
というように書いてきたが、実は試聴を進める間しばらく、カナル型のスポーツ向けモデルとしては低域が想像よりも控えめに感じていた。ただ、これは筆者にSoundcore Sport X20がフィットしていないことが原因のようで、指でイヤフォンをベストと思われるポジションに固定すると一気にパワーアップした。自然にこの状態をキープできる方であれば、その点で不足を感じることはなさそうだ。
では筆者のようなタイプはどうすればよいのか。Soundcore Sport X20ではアプリを通じて、使用者に最適化する「HearIDサウンド」機能が利用できる。試してみたところ、明らかに低域~中域が持ち上がったバランスに設定された。この状態で聴いたところ、打って変わってパワフルなサウンドに生まれ変わった。
Ado「唱」のノリを形作るのに大切な唸るようなベース成分が耳に届くようになり、ボーカルも前に進み出たかのごとく存在感を増す。Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」でほぼずっと流れている「ブーーーン」という低音が3倍くらいに厚くなり、重心がグッと下がる。
誰しもがこの変化になるわけではないと思うが、もしそれで物足りなさを感じる場合は豊富に用意されたサウンドモードから低域や中域をアップさせるチューニングを選ぶといいだろう。「HearIDサウンド」もサウンドモードも、ともにカスタマイズできるのでより好みに追い込むこともできる。
これはスポーツ時にも同様で、ジョギングをしながら聴いてみたが、デフォルト状態だといよいよ低域が聴こえにくくなり気分が盛り上がらない。「HearIDサウンド」を適用させることで、低域が身体に響く足音にかき消されないようになる。先述した、勢いのあるロックやポップスとの相性の良さが活きて、ノリのよい音楽が身体を前に前にと進めるためのエールに聴こえてくる。
こういったサウンドに関する機能は「好みに応じて」というふうに紹介することがほとんどだが、筆者としてはSoundcore Sport X20においてはぜひ積極的に使うことをオススメしたい。
またSoundcore Sport X20では「3Dオーディオ」の機能も利用できる。これをオンにすると、音場がグッと広がり、立体的とは言えないものの臨場感がアップする。わざとらしさもあるが、そのくらいの方が効果を感じやすいので、これはこれでアリに思う。
スポーツ向けを謳うだけはあるイヤフォン
普段使い用として考えると、Soundcore Sport X20は天気を気にせずパッと手にとって持ち出すにはよいが、いわゆる高音質系イヤフォンではないので、音質重視で選ぶなら価格的には他に選択肢がある。
外音もオープンイヤー型ほどではないがちゃんと聴こえて、用意された機能を活用することで骨伝導イヤフォンよりも低域が感じられる。Soundcore Sport X20はやはり軽くでも身体を動かす方に向いているモデルだと思う。