【レビュー】小型筐体でも抜群の臨場感。フルHD+GPS「CONTOUR+」
-スマホでスポーツ撮影の画角調整も簡単
CONTOUR+ |
'11年12月20日に美貴本から国内販売が開始された「CONTOUR+」。世界初のウェアラブルHDビデオカメラを謳いデビューした「Contour HD/Contour HD 1080p」の後継として、機能・性能を大幅にアップさせた最新モデルだ。
2GBのmicroSDカードや2種類のマウントパーツなどが付属し、価格は59,800円となる。今回はこの「CONTOUR+」をお借りすることができたので、自転車とオートバイの実走映像を交えてレビューしたい。
■高いビデオ性能だけでなく、GPS機能にも注目
シルバーの円筒形が目を引く「CONTOUR+」のカメラ本体は、34×98×58mm(幅×奥行き×高さ)の手のひらサイズで、重さは約150g。体に装着しても影響の少ないサイズ、重量になっているだけでなく、固定部から本体重心までの距離がわずかのため、遠心力の影響を受けにくい設計といえる。その円筒形の下部にくっついている黒い部分は本体の一部であり、取り外すことはできない。この両サイドにあるレール状のスリットで各種マウントに連結して固定することになる。
サイドにあるスリットを用いてマウントと連結する |
搭載するレンズはF2.8、最大視野角170度で、イメージセンサーは500万画素。ズーム機能はなく、ホワイトバランスと露出、コントラスト、シャープネスの調整はオートもしくは手動設定が可能だ。
動画の撮影モードは大きく分けて4種類用意され、Full HD(1080p 約12.5Mbps/1,920×1,080ドット/30fps/視野角125度)、Tall HD(960p 約10Mbps/1,280×960ドット/30fps/視野角170度)、Action HD(720p 約12.5~13Mbps/1,280×720ドット/60fps/視野角170度)、Contour HD(720p 約10Mbps/1,280×720ドット/30fps/視野角170度)から選択可能(ビットレートはいずれも最高画質時)。画質(圧縮率)はどのモードでも3段階から選べるが、視野角はそれぞれで固定となる。
最もファイルサイズの大きくなる撮影モードは“Action HD (720p)”だ。装着可能な最大メモリ容量のmicroSDHC 32GBでは、同撮影モードで最高画質時におよそ224分相当の動画を記録できる計算になる。ただし、バッテリー持続時間は約2~2.5時間のため、通常一度に録画できる時間はそれ以下になるだろう。動画の出力フォーマットはMOVのMPEG-4 AVC/H.264、音声はAACで48kHz/128kbps VBRのステレオ。また、2,592×1,944ドットの静止画像を3~60秒ごとに連続撮影するモード(5MP STILL)も備えている。
撮影モード | サイズ | フレームレート |
Full HD(1080p) | 1,920×1,080 | 25/30fps |
Tall HD(960p) | 1,280×960 | 25/30fps |
Action HD(720p) | 1,280×720 | 50/60fps |
Contour HD(720p) | 1,280×720 | 25/30fps |
5MP STILL | 2,592×1,944 | 1 photo per 3、5、10、30、60秒 |
静止画像だけでなく、動画ファイルにGPS情報を埋め込むことができるのもポイント。最大4Hz(1秒間に4回の頻度)で位置情報を取得し、動画とともにリアルタイムに記録する。GPSの精度は高く、歩道を移動しているときと歩道に沿って車道を移動しているときのわずか2~3mほどの差もはっきり判別できるほどだ。
動画に埋め込まれたGPS情報は付属のPCアプリケーション「Contour Storyteller」で活用可能。「Contour Storyteller」で動画再生する際、同時に位置情報の軌跡を重ねた地図も表示し、動画の再生に合わせてその時点の正確な位置をアニメーションで再現。移動速度と高度も表示されるため、簡易的なデータロガーとしての利用も考えられる。
「Contour Storyteller」の動画一覧画面と再生画面 |
■ 本体を視認できない状態での使用も考慮
電源ボタンのある本体背面はカバーになっており、背面全体を上方向へずらすと下端を軸にして開くようになっている。中にはバッテリとmicroSDカードを挿入するスロットがあるほか、PCと接続するためのUSBミニ、映像のライブ再生のために外部モニターと接続する際に利用するHDMIミニ、さらに設定切替スイッチが所狭しと配置されている。
この設定切替スイッチは2パターンの撮影モードを切り替えるためのもので、撮影モードの設定には「Contour Storyteller」やスマートフォンアプリを使用する(詳しくは後述)。なお、背面カバーを閉じた状態でもミニUSBとHDMIミニにはアクセス可能だ。
背面を閉じた状態と開いた状態 |
本体上面には、前後にスライドさせてオン・オフする大きな長方形の録画スイッチと、Bluetooth通信のためのボタンが設けられている。本体の電源を入れ、この録画スイッチを前方向にスライドさせれば録画が開始し、元に戻せば録画が終了する。
ヘッドマウントカメラとして使用するときなど、カメラ本体を直接視認できない場合、手探りで操作する必要があるため、このスライド式の大きなスイッチは利便性が高い。見えなくても操作が手応えでわかり、録画中かどうかを確認したいときも手で触れるだけで把握できる。もちろんグローブ越しでも全く問題ない。ちなみに、Bluetooth通信のボタンは後述の撮影モードの設定や映像プレビューを行なう際にペアリングに用いるものだ。
待機時のスイッチ位置 | 録画時のスイッチ位置 |
先端のレンズ部は手で回せるようになっており、カメラのピントを合わせるような要領で映像の角度を変えられる。-90度から180度まで計270度の範囲で無段階調整できるため、取り付け場所の都合で本体が微妙に傾いてしまう場合でも心配無用だ。音声の録音は標準では内蔵マイクを使用するが、底面のマイク端子に外部マイクを接続することも可能になっている。
回転するレンズ部には角度を示すガイドが表示されている | 外部マイク接続用端子 |
ウォータープルーフケース |
「CONTOUR+」本体は耐水・耐衝撃素材を採用しているものの、防水構造ではなく、オプションの“ウォータープルーフケース”を用いることで防水に対応する。ウォータースポーツなど水際での撮影が中心になるときは、「CONTOUR+」とほぼ同等のカメラ性能でIPX7に準拠したモデル「ContourROAM」を選ぶのもよいだろう。
本製品に同梱されているマウントは、“プロファイルマウント”と“回転式フラットサーフェイスマウント”の2種類。この二つのマウントは、いずれも粘着パッドにより平面や曲面に強固に接着するタイプだ。その他にオプションとして“自転車ヘルメット用マウント”や、カメラの三脚にそのまま取り付けるために用いる“ユニバーサルマウントアダプター”、巨大な吸盤で固定する“サクションカップマウント”など、多様なマウントが用意されている。
これらのマウントにカメラ本体側のスリットを合わせてスライドさせるように連結するだけなので、カメラ本体の取り付け・取り外しに手間はかからない。ただし、脱落したり振動が発生しないようタイトに連結されるため、着脱の際はかなり力を込める必要がある。
プロファイルマウントと回転式フラットサーフェイスマウント | 自転車ヘルメット用マウント |
ユニバーサルマウントアダプター | サクションカップマウント |
■ スマートフォンを使った撮影モード設定、映像プレビューが可能に
この「CONTOUR+」からは、iPhoneとAndroid端末に対応した専用の「Contour」アプリを使って、撮影モード設定や映像のプレビューを行なえるようになった。カメラ本体とスマートフォンとの通信はBluetoothで行なうため、プレビュー画質は粗いものの、撮影前の位置調整や視野角の確認には十分だ。
iPhoneアプリでの映像プレビュー画面 |
従来機種の「Contour HD/Contour HD 1080p」では、撮影前の映像プレビューを行なうすべがなかったことから、本体の固定位置や角度などを念入りにチェックしたのち、テスト撮影で録画した動画ファイルを確認しながら調整するという手間がかかった。同製品と似た性能をもちながらGPS情報の記録にも対応する「ContourGPS」では、以前からオプションの装着によって「CONTOUR+」と同様に撮影モードの設定と映像プレビューが行なえたが、スタンドアロンでの対応は「CONTOUR+」が初となる。
その他Contourアプリでできることは、バッテリとメモリの残量確認、録音ボリュームの設定、ホワイトバランスやコントラストといった画質の調整、GPS機能のオン・オフなど。同時に2つ保持できる撮影モードの各設定を変更することも可能だ。この2つの設定は本体背面のスイッチで切り替えられるため、スマートフォンなどを使わなくてもワンタッチで撮影モードを変更できる。
撮影モードの設定画面 | ホワイトバランスやコントラスト、シャープネスなども手動設定できる |
CONTOUR+とPCをUSB接続すれば、Contour Storytellerでも撮影モードの設定は行なえる。それに、一度設定すれば頻繁に変えることはあまりないだろう。ただ、映像プレビューについては、スマートフォンを所有していない場合は実際に録画したファイルをPCなどで再生するか、あるいはHDMIを備えたモニターと接続する必要がある。手間やセッティング効率を考えれば、スマートフォンが圧倒的に便利だ。CONTOUR+をフルに使いこなすためにはスマートフォンが必須ともいえる。
■ 自転車走行時は“撮影している”という意識も必要
「CONTOUR+」に対応したマウントパーツは豊富に用意されているが、ウェアラブルカメラということもあり、今回は基本的にカメラを体に装着した状態で撮影を行なうこととした。
自転車の走行映像を撮影するにあたっては、自転車の乗り入れが可能な公園を使用している。以前「GoProHD HERO2」をレビューしたときと全く同じコースなので、気になる方は同記事にある映像と比較してみていただきたい。
カメラの固定には“自転車ヘルメット用マウント”を使用した。マウントベースの左右から伸びる2本のベルトをヘルメットに空いている穴などに通し、バックルに挟んで固定するタイプだ。筆者が所有している自転車用ヘルメットはいわゆるBMX系で穴の少ないものだったが、問題なく装着できた。より穴の多いロード系のヘルメットであれば、固定位置の自由度はより高くなる。
マウントのみ取り付けた状態 | カメラを取り付けた状態 | ヘルメット内側から見たとき |
マウントとヘルメットの曲面が合わないことがあり、しっかり固定できないことも |
ただし、ベルトをかなりきつく引っ張って取り付けたつもりでも、カメラが揺れないように固定するのは難しい場合がある。マウントとヘルメットの曲面が合わずに点で支える形になってしまうと、ちょっとした段差でカメラがバウンドしたり前後左右にずれてしまうようだ。しっかり固定したいときは、マウントとヘルメットの間にクッションなどを挟み込むか、粘着パッドで固定するタイプのマウントを使った方がよいだろう。
実際の撮影でも、路面にギャップのあるコース中盤から後半にかけてカメラ本体が弾み、映像が乱れることがあった。とはいえ、他の場面では全般的に揺れの少ない状態で撮影できている。細かい凹凸は体が吸収するため、振動がカメラまで伝わりにくいということもあるだろう。コース中盤の暗所部分や逆光でも、見にくく感じるところはほとんどない。
1080p/30fps (56.4MB) | 720p/60fps (65.3MB) | 720p/30fps (46.7MB) | 960p/30fps (45.3MB) |
撮影にあたって気をつけたいのは、頭部に固定しているため、当然ではあるが撮影者のちょっとした動きでカメラの方向が変わってしまうこと。無意識のうちにあちこちへ視線を向けることが多く、それにともなって自然と頭の向きも変わってしまう。安全確認のためにはやむを得ないが、ある程度は撮影しているという意識をもっていないと左右へ頻繁にぶれる映像ができあがってしまうかもしれない。
ヘッドバンドマウント |
また、自転車用ヘルメットは軽量なため、150gとはいえCONTOUR+を装着すると若干の重みと重心の変化を感じざるを得ない。ヘルメットのサイズが頭に合っていなかったり、あごひもをきっちり締めていなかったりすると、不意にヘルメット自体がずれて視界の妨げになる可能性もある。深刻な事故につながってしまわないよう、十分に注意して取り付ける必要がある。
なお、今回使用した“自転車ヘルメット用マウント”以外にも、直接頭部に巻き付けて使う“ヘッドバンドマウント”や、帽子に取り付けられる“ハットマウント”なども用意されている。サイクリングだけでなく、ウォーキングやジョギングといったカジュアルな場面でも、カメラの取り付けに困ることはなさそうだ。
■ オートバイのヘルメットでは粘着パッドによる固定位置は熟慮したい
オートバイにおいても、自転車と同様にヘルメットに装着して撮影を行なった。「GoProHD HERO2」のレビュー時と同様、競技用の車両を用い、いわゆるジムカーナのルールに則った形で走行している。コースは変更し、パイロンを設置するだけでなく、90度のコーナーが続くクランクなども取り入れた。
ヘルメットへの装着には、標準付属品の“回転式フラットサーフェイスマウント”を使用。マウントベースが湾曲しているため、ヘルメットの曲面に沿って接着しやすくなっている。正しい接着方法は、ヘルメットの装着箇所の汚れを入念に拭き取ったあと、マウントを強く押しつけて接着し、一晩寝かせる、ということになっている。時間の都合上今回はその場で接着し、直後にカメラを固定して撮影することになってしまったが、結果的には十分な接着力を発揮した。
オートバイ用ヘルメットへの取り付け |
マウントは360度回転できるようになっており、角度を決めたらLOCKボタンを押し込んで固定する |
しかしながら、強固な接着力ゆえにあらかじめ注意しておきたい点もある。今回の撮影ではヘルメットの右側にあるシールドホルダーに固定したが、この部分はヘルメットのメンテナンスのために取り外せるようになっているパーツでもある。マウントをヘルメットから取り除くとき、マウントと一緒にホルダーごとはがしてしまい、場合によっては無理な力がかかってホルダーを留めている小さなツメなどを折ってしまう可能性もある。取り外し可能なパーツには接着しないようにするか、マウントをはがすときは慎重に、接着部分だけに力を加えるようにしたい。
映像では、さすがにヘルメットにがっちり固定されていることもあって、カメラ本体が振動することによる乱れはない。路面の凹凸の影響や、進行方向に合わせて頭ごと視線を移動するために、上下左右への動きは多いものの、それでも全体を鮮明に映し出している。実は今回も数回転倒してしまったが、転倒の瞬間であっても不思議と衝撃を感じられない安定した映像になっていたのは印象的だった。
1080p/30fps (52.4MB) | 720p/60fps (56.3MB) | 720p/30fps (43.6MB) | 960p/30fps (42.2MB) |
さらに、「CONTOUR+」の小さな筐体を活かし、特別にフロントタイヤ付近が視界に入るアングルでの撮影も行ってみた。使用したマウントは“XLバイクマウント”というものだが、残念ながら現在は販売終了となっている模様。オートバイのハンドルなどパイプ部分に取り付けたい場合は、代わりに“フレックスストラップマウント”を使うとよさそうだ。
XLバイクマウント | バンパーの内側に取り付けた状態 |
“XLバイクマウント”を使用した撮影では、車両に取り付けている転倒時のダメージ軽減用のバンパー内側にカメラを固定している。通常の転倒であればカメラを損傷する可能性が低いであろう位置だ。一般的な車両に取り付ける場合、今回のようなアングルで撮影しようとするとカメラがむき出しになり、万一の転倒時には確実にカメラを下敷きにするため、ご注意いただきたい。
1080p/30fps (52.6MB) | 720p/60fps (55MB) |
■ 意外に多い960pの使いどころ
視野角125度の1080pと、同170度の720pとでは、横方向の視野角の違いで見渡せる範囲がかなり異なることがわかる。しかし、それ以上に960pの縦方向の広さに注目したい。横方向に視界が広ければ人間の視野に近い臨場感は得られるかもしれないが、スポーツによっては縦方向の視界のほうが重要になることもあるからだ。
たとえばスキーやダウンヒル競技など斜面を駆け下りるシーンでは、進行方向となる谷側や足元など、できる限り下方向が見えたほうが面白い映像になる。オートバイレースやカーレースにおいては、他車との駆け引きも見どころとなるため、どちらかというと横長画面の方が都合が良いかもしれない。しかし、手元の操作も見えるようにしたいときや、大きなジャンプのあるモトクロスのように激しい起伏と上下運動が発生するシーンは、960pを使いたくなるときもある。
解像度重視なら1080pを、細かい動きまで見たいときは720pの60fpsを、縦方向の視界を確保したいときは960pを、それぞれ適切に使い分けて活用したくなる絶妙の撮影モードが用意されていると言える。撮影モードは二つ保持できるものの、これらの使い分けを考えたときには不足してしまう。どういった用途が多いか考えたうえで撮影モードの設定を検討する必要はあるが、やはりスマートフォンを使ってすぐに設定変更できるように環境を整えておくのがよさそうだ。
■ 抜群の臨場感を得たいなら迷わず購入したい
防水対応ではないので、雨天時の使用がはばかられるのが唯一残念なところ。ただし、脱着の手軽さや装着したままでも邪魔にならないマウントパーツによって、突然の降雨などにも対処はしやすい。どうしても不安なときは、オプションの“ウォータープルーフケース”を併用するか、取り付けスペースの都合によっては姉妹製品の「ContourROAM」(27,800円)をスタンバイしておくのも手だ。共通マウントのためすぐに入れ替えて装着できるというメリットもあり、どんな状況にもフレキシブルに対応できるはずだ。
小型・軽量で狭い場所にも固定でき、取り付け位置を工夫しやすい構造になっている本製品は、容易に撮影時の臨場感とリアリティを再現できるという点でも非常に貴重な存在と言える。スマートフォンとの連携によってセッティングの手間が軽減され、使い勝手が大幅に向上した「CONTOUR+」は、今やスポーツシーンでの使用やウェアラブル用途には間違いなくベストマッチの製品と言えるだろう。
Amazonで購入 |
CONTOUR+ |
(2012年 2月 16日)
[ Reported by 日沼諭史 ]