【レビュー】iPadをテレビ化する無線LANルータ「Wi-Fi TV」

15,000円でiPadがTVに。SBのチューナと比較も


Wi-Fi TV(WN-G300TVGR)

 アイ・オー・データ機器の「Wi-Fi TV(WN-G300TVGR)」は、iPhoneやiPadなどで地上デジタル放送が視聴できるようになる無線LANルータの新製品だ。価格は16,485円。

 iPhoneやiPadで地上デジタルを見る、という点ではソフトバンクが「デジタルTVチューナー」を販売している(直販価格15,800円)が、デジタルTVチューナーの場合インターネット接続には別途ルータが必要。Wi-Fi TVはIEEE 802.11b/g/n準拠の無線LANルータ機能を搭載しているため、ルータとチューナの役割を1台で済ませられる。

 また、デジタルTVチューナーはiOS機器のみだが、Wi-Fi TVはWindows搭載PCでも視聴できる。ただし、デジタルTVチューナーは、BS/110度CSデジタル放送に対応しているという、Wi-Fi TVにはない特徴もある。

 地デジチューナ内蔵無線LANルータという変わった提案の「Wi-Fi TV」を競合製品といえる「デジタルTVチューナ」と比較しながらテストした。


Wi-Fi TVとiPad 2。iPadをテレビ替わりに利用できるソフトバンクのデジタルチューナー(右)と比較

【Wi-Fi TVとデジタルTVチューナーの主な仕様】

製品名Wi-Fi TV
(WN-G300TVGR)
デジタルTVチューナー
販売アイ・オー・データソフトバンクBB
無線LANルータ-
地デジチューナ
BS/110度CS
チューナ
-
対応端末
iOS
Windows
iOS
価格
実売価格
16,485円(14,500円前後)オープンプライス
(15,800円)

■ 見た目は普通の無線LANルータ

横置きに対応

 本体のデザインは、同社の無線LANルータ「WN-AG450DGR」と同型で、外形寸法も34×150×223mm(幅×奥行き×高さ)と同じサイズだが、重量はWN-AG450DGRよりも10g重い430g。背面には地上デジタル入力とミニB-CASカードスロットのほか、ルータとアクセスポイントの切り替えスイッチ、WANポート×1、LANポート×3を搭載。テレビ関連の機能を搭載しているためか、LANポートはWN-AG450DGRよりも1ポート少なくなっている。専用スタンドにより縦置きできるほか、横置きにも対応する。


側面背面。LANポートや切り替えスイッチなどルータにミニB-CASカードを挿入
専用アプリ「QRコネクト」。QRコードから無線LAN設定が可能自動的に無線LAN設定のプロファイルが追加される

 利用の際はミニB-CASカード、アンテナ、LANケーブルを装着してから電源を投入すれば本体側の準備は完了。iPhoneやiPadからは、専用アプリ「QRコネクト」をインストールし、同梱されたQRコードからSSIDや暗号キーの設定が可能だ。SSIDなどは本体背面に記載されているため手動でも設定できるほか、WPSでの設定にも対応している。

 視聴する際は、さらに専用アプリ「テレキングmobile」のインストールが必要。対応端末はiPad/iPad 2/第3世代iPad、iPhone 3GS/4/4S、第4世代iPod touch。

 無線LANの接続先をWi-Fi TVに切り替えた上でテレキングmobileを起動するとネットワーク上のチューナーを自動的に検出する。初回起動のみ視聴できるチャンネルのスキャンに5分程度かかるが、待ち時間の間に操作説明や機能紹介が表示されるので、この時間に一通りの機能を理解できる。

 テレキングmobileの対応OSはWindows XP/Vista/7で、7は64bitにも対応する。


アプリ起動画面初回のみスキャンに5分程度かかるスキャン中は操作ガイドが表示される

■ 画質は良好。チャンネル切り替えのレスポンスもまずまず

横画面再生時

 スキャンが完了すればあとは地上デジタルを視聴するだけ。起動の際は前回見ていたチャンネルが自動的に表示されるが、画面をタップするとチャンネル切り替えやボリューム調整が、ダブルタップすると画面のズームが可能。チャンネルは右左での切り替えに加え、チャンネル一覧からも選択できる。

 Wi-Fi TVではチューナで受信した地デジ放送をトランスコードし、iPadやiPhoneにネットワーク経由で伝送する。そのため、通常のテレビのようなレスポンスを期待するのは難しいが、アプリの起動は30秒超、チャンネル切り替えは約7秒程度だった。アプリの起動はやや遅いものの、チャンネル切り替えはあまりストレスを感じずに利用できた。


縦画面再生時画面タップでメニュー表示チャンネル名をタップすると放送局を一覧表示
画質設定画面

 画質は帯域に合わせて「高画質」、「標準画質」、「低画質」の3段階から選択できるが、おおむね画質は良好。「低画質」では若干ブロックノイズが目立つものの、それでもワンセグとは比べものにならない高画質で、情報番組の文字もしっかり読める。音もよく、手元でテレビとしてみるには十分なボリュームだ。ポータブルテレビとしての画質、音質面は十分と感じた。

 アプリ内にブラウザを内蔵しているため、テレビを見ながらWebサイトを閲覧することも可能。EPG(電子番組表)を持たないため、番組表を見たいときもブラウザを利用することになる。ブラウザのエリアはドラッグ操作で自由に切り替えが可能で、ブラウザを最大表示した場合はテレビの映像が右上に小さく表示される。ブラウザをメインに使いつつテレビも音で確認したい、という時に便利だ。


ブラウザ起動画面。初期設定ではテレビ王国が表示されるブラウザ横表示
縦画面でブラウザを最大表示横画面でブラウザを最大表示

 ブラウザは、ソフトバンクのデジタルTVチューナーにも搭載されているが、デジタルTVチューナーは縦画面の時のみ画面の1/2サイズのブラウザが固定で表示されるのに対し、Wi-Fi TVは縦画面でも横画面でもブラウザが利用でき、サイズも自由に変えられる。

 ただしWi-Fi TVはURLでのアクセスができず検索経由で利用することになるが、デジタルTVチューナーはURLを直接入力してアクセスできる。URLをコピーしてペーストするという使い方をする際にはデジタルTVチューナーのほうが便利だ。

ソフトバンクのデジタルTVチューナーデジタルTVチューナーのブラウザはサイズ固定

 前述のとおり、アプリの起動速度は、初回起動からテレビ表示までが33秒、チャンネル切り替えが7秒程度だ。なお、デジタルTVチューナーはアプリ起動からテレビ表示までが13秒、チャンネル切り替えが6秒。チャンネル切り替えは同程度だが、アプリ起動は倍以上の早さだ。とはいえ、実際に使っていると初回起動時の時間差は数字ほどは気にならなかった。

 ただし、アプリでテレビを再生できるのはアプリ起動時のみに限られ、一度ホーム画面に戻ったり、マルチタスクで他のアプリを使ったりするとテレビの再生は停止し、再度アプリの起動時間が必要になるため、他のアプリを使いたい時など「ながら」利用できないのは不便。使用時はテレビとして割り切り、ブラウザ併用にとどめるのがいいだろう。

【Wi-FI TV起動】
【デジタルTVチューナー起動】
【Wi-FI TVチャンネル切替】
【デジタルTVチューナーチャンネル切替】
Windows版「テレキングmobile

 なお、Wi-Fi TVはWindows用クライアントも提供されているため、iPhoneやiPad以外でも視聴できるという点で、デジタルTVチューナーに対する大きなメリットがある。

 視聴できるのは1端末に限られるため、iPhoneとWindowsで同時に視聴することはできないが、こちらはテレビを再生しながら通常通りWindowsが利用できるため、ながら視聴には便利だ。



■ iPad/iPhoneをセカンドテレビに。Windows対応がポイント

 画質も音質も非常に高く、宅内でテレビを自由に持ち運べるのは便利。先行するデジタルTVチューナーと比べると起動時の時間が多少遅いが、Windowsにも対応し、ルータとしても利用できる点はメリットだ。価格もさほど変わらないので、ルータの置き換えを考えている人や、パソコンでもテレビを見たい、という人にはWi-Fi TVがおすすめ、といえる。

 また、iPadやiPhoneのユーザーにとっても、15,000円程度の追加投資で、それらが「テレビ」になる、というのは魅力的だろう。テレビはそれほど使わないが、時々は見たい番組がある、といった人や、リビングのテレビが家族で占有されている場合の退避用セカンドテレビを考えている人にはリーズナブルな選択肢になりそうだ。

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Wi-Fi TV

(2012年 4月 26日)

[ Reported by 甲斐祐樹 ]