【レビュー】約1万円のShure「SE215 Special Edition」を聴く

低音強化した特別モデル。ロックやポップス向けに


トランスルーセントブルーとダークグレーのケーブルを採用した「SE215 Special Edition」。どことなく初音ミクを連想させるカラーリングだ

 Shure Japanから発売される、カナル型(耳栓型)イヤフォンの新モデル「SE215 Special Edition」。同社の人気モデルである「SE215」と比べ、ハウジングのカラーがトランスルーセントブルーになったほか、音質面でもSpecial Edition向けに特別なチューニングが施されているという。通常モデルと聴き比べる機会に恵まれたので、音質の違いをレポートする。

 なお、「SE215 Special Edition」(以下SE215 SE)の概要は既報の通り。発売日は11月下旬とアナウンスされていたが、出荷に遅れが出る可能性があり、最新のステータスでは「11月下旬~12月上旬になる」(Shure Japan)とのこと。

 価格はオープンプライスで、店頭予想価格は1万円前後。通常のSE215もオープンで、実売は8,000~9,000円程度なので、価格差はあまり大きくない。SE215 SE登場後も、通常モデルは併売される。なお、SE215 SEはアジアとアメリカの一部で発売されるが、期間限定ではなく、継続して販売されるバリエーションモデルという位置付けだ。




■SE215とSE215 SEの違い

 筐体のサイズや形状、内蔵しているドライバユニットなど、基本的な仕様に違いは無い。搭載ユニットはダイナミック型×1基となる(上位モデルの315/425/535はバランスド・アーマチュア採用)。

イヤーピースを外したところケーブルは着脱可能

 まず目をひくのがハウジングのカラーだ。通常モデルはクリアーとトランスルーセントブラックの2色だが、SE215 SEはトランスルーセントブルーになっている。透明感のあるカラーで、内部のユニットが透けて見える。

左が通常のSE215トランスルーセントブラックモデル。右がSE215 SESE535と並べたところ

 内部パーツの特徴として、SE215では、ダイナミック型ユニットの背面に音響抵抗スクリーンを配置。バックキャビティへのエアフローを最適化し、低域の周波数レスポンスレベルを調節している。

 SE215 SEでは、この音響抵抗スクリーンの抵抗値をチューニング。低域のレスポンスがより向上したという。これが、SE215とSE215 SEの音質面での違いとなる。その結果、低域部分において、SE215 SEは全体的に2dB程度持ち上がっている。また、再生周波数帯域も、SE215は22Hz~17.5kHzだが、SE215 SEは21Hz~17.5kHzと、わずかに低域が伸びている。感度は107dB。インピーダンスは20Ω。

ドライバの背面にあるスクリーンをチューニングした緑色のラインがSE215 SE、赤が通常モデル。20Hz~1kHzあたりの特性を比較したものSE215とSE215 SEの仕様比較

 低域をアップさせた理由は、SE215のユーザー向けに実施したアンケートにおいて、「聴かれている音楽のジャンルでポップスやロックが多かったため」だという。そうした音楽にマッチさせるため、低域を強くし、ヴォーカルを引き立たせるようなチューニングが行なわれた。また、トランスルーセントブルーのカラーも、そうした楽曲に合わせ、「あまり暗い色ではなく、かといって外しすぎず、親しみやすいカラーを、ユーザー層も意識して選択した」とのこと。

 なお、本体以外でも違いがあり、SE215を含めた従来のSEシリーズと比べ、ケーブルが116cmと短くなっている。ケーブルは着脱可能で、他のSEシリーズと同様に360度回転するスナップ・ロック式の金メッキMMCXコネクタを採用している。



■実際に聴き比べてみる

 試聴には「iBasso HDP-R10」を使用した。

比較試聴の様子

 通常のSE215は、ダイナミック型ユニットを採用しながらも、どちらかと言うと高域寄りのバランスで、スッキリしたサウンドになっている。「藤田恵美/camomile Best Audio」から「Best of My Love」を再生しても、アコースティックベースの張り出しは控えめで、ヴォーカルやギターの中高域が見やすく、抜けの良いサウンド。だが、腰高であるため、音像が薄く聴こえる傾向がある。

 SE215 SEを装着すると、低域の量感がグッと向上。ベースの張り出しも強くなり、力強い低音の塊が吹き付けてくるような感覚になる。そのため、全体を見てもドッシリと腰が座り、再生音に安定感が出ている。ヴォーカルの、声の低い部分も厚みが増し、音像が立体的に感じられる。打ち込み系の楽曲や、ドラムが目立つロックなど、キレが良くてエネルギッシュな楽曲には、確かにSE215 SEの方がマッチしそうだ。

 ただ、すべての面でSE215 SEの方が優れているというわけでもない。モニターライクに、中高域の抜けの良さ、見通しの良さを軸に聴き込むと、ノーマルモデルの方が正確でクリアに感じられる。SE215 SEでは、低域の強さが影響し、ナローとまではいかないが、若干高域の明瞭度が低下しているように聴こえる。SE215はマニアックに、音楽を分析的に楽しみたい時に、SE215 SEは、音楽を心地よく、迫力タップリに聴きたい人に向いている。おそらく、多くの人に好まれそうなサウンドは、SE215 SEの方だろう。

 また、315/425/535へと続くSEシリーズ上位機種を含めて考えてみると、唯一のダイナミック型ユニット採用モデルとして、低域の厚みや力強さの面で、“ダイナミック型らしい音”を聴かせてくれるのがSE215 SEと言う事もできる。SE215 SEの登場で、音質面で、より幅広いニーズに応えられるラインナップに拡充されたと言えそうだ。


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SE215 Special Edition
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SE215

(2012年 11月 7日)

[ Reported by 山崎健太郎 ]