レビュー

キャリアフリー化した「dビデオ」を試す

作品数と低価格が魅力の“誰でも使える”ビデオ配信

キャリアフリー化により「誰でも使える」サービスに

 2014年4月1日、dビデオが当初から予告していたキャリアフリー化を実施した。これまでドコモユーザー向けのサービスとなっていたdビデオだが、キャリアフリー化により、多くのユーザーに開かれた定額制動画配信(SVOD)サービスとなった。

 dビデオは、NTTドコモがエイベックス通信放送とともに2011年11月から開始した動画配信サービス。月額540円(税抜500円)で映画やビデオなどが見放題となる定額制が特徴で、NTTドコモではアニメに特化した定額制の動画配信サービス「dアニメストア」も月額432円(税抜400円)で展開している。

 サービス開始当初、dビデオおよびdアニメストアはNTTドコモの回線を契約しているユーザーのみ利用できるサービスであり、対応端末もNTTドコモ製のスマートフォンやタブレットに限られていた。

 しかし、2013年5月には、NTTドコモの回線契約が条件ではあるものの、2台目以降の端末としてNTTドコモ以外のタブレットであるNexus 7とNexus 10やパソコンでの視聴に対応。

 同10月にはdビデオとdアニメストアの利用に必要な認証用ID「docomo ID」のキャリアフリー化を発表。電子書籍「dブック」、オンラインショッピング「dショッピング」といったサービスが次々キャリアフリー化され、最後の大物とも言うべきdビデオとdアニメストアも4月1日よりキャリアフリーとなった。

 キャリアフリーというと堅苦しいかもしれないが、要はNTTドコモの回線を契約したユーザー限定のサービスから「誰でも使える」サービスになったということ。dビデオやdアニメストアの月額料金は必要になるが、docomo IDを無料で取得すれば契約キャリアを問わず、好きな端末で視聴できるようになる。キャリアフリーに生まれ変わったdビデオを体験した。

月額540円で2万タイトルが視聴可能。アニメ専門の「dアニメストア」も

 dビデオとdアニメストアについてはこれまでもAV Watchのレビューで何度か触れてきたが、dビデオは2万タイトル約92,000本、dアニメストアは約900作品約14,000話もの作品を、それぞれ500円程度で視聴できるという点で、非常にコストパフォーマンスが高いサービスだ。配信作品が異なるため一概に比較はできないものの、同じ定額配信であるHuluが月額1,007円(税抜き933円)、バンダイチャンネルのアニメ・特撮見放題プランが月額1,080円(同1,000円)であることを考えると、価格面では圧倒的な優位性を持っていると言える。

Huluとdビデオの人気海外ドラマシリーズ比較

 配信作品のラインアップも充実している。右の表は、海外ドラマに強いHuluのトップページから、映画とドラマの人気作品を表示されている順にピックアップし、同じ作品がdビデオで配信されているかどうかを確認したもの。一部dビデオで配信されていない作品はあるものの、海外ドラマに関してはdビデオも充実しており、「デスパレートな妻たち」に関しては配信シーズン数はdビデオがHuluを上回っている。

 一方、国内の映画作品についてはdビデオに強みがある。Huluで映画一覧から地域を「日本」に絞り込んだ際の一覧表示数は約350本程度だが、dビデオは倍近い687本をラインアップ。国内のテレビ番組については日テレオンデマンドの作品を新規に取り扱うなどHuluのラインアップも充実しつつあるが、海外作品だけでなく国内作品も定額で視聴できるという点で、dビデオのラインアップは非常に強力だ。

 なにより、これまでNTTドコモ以外のユーザーにとって、映画やドラマの定額制動画配信といえば、ほぼHulu一択と言える状況だった中に、ほぼ同等かそれを上回るコンテンツの定額制動画配信が選択肢に追加されたというのは大きい。ドコモ以外のユーザーにも、今回のキャリアフリーを機にぜひ注目して欲しいサービスだ。

最大5台まで端末を登録可能。同時視聴は1台まで

 NTTドコモのユーザーにとっては4月1日以降もあまり変わりはないが、その他のキャリアを契約しているユーザーにとっては新規サービスとも言える存在だけに、サービスの内容も確認しておこう。

 dビデオで視聴できる作品数は前述の通り2万タイトル約92,000本で、基本的には過去の映画やドラマ、アニメなどが中心となる。新作についても2013年12月からレンタル配信を開始。月額料金とは別に作品ごと料金を支払うことで、「ゼロ・グラビティ」「エリジウム」「キャプテン・フィリップス」といった新作映画のほか、「三匹のおっさん」「私の嫌いな探偵」「明日、ママがいない」といったテレビドラマの追っかけ視聴が可能だ。

 対応端末はAndroidおよびiOS搭載のスマートフォン/タブレット、Windows XP以降またはMac OS Xのパソコン。NTTドコモ以外のスマートフォン/タブレットではGoogleのNexusシリーズに加え、今回のキャリアフリー化によってNTTドコモ以外のスマートフォン、タブレットでも視聴可能になった。また、HDMI端子を搭載したスティック型端末「dstick」を利用することでテレビでの視聴も可能だ。

 なお、端末によっては視聴できるコンテンツに違いがある。大きく分けるとiPhoneおよび非ドコモ契約ユーザー、パソコン、dstickそれぞれに視聴できないコンテンツがあり、iPhoneおよび非ドコモ契約ユーザーは映画作品の一部が、パソコンとdstickは映画作品に加えてテレビ作品、dビデオオリジナルの「BeeTV」作品の一部が視聴できない。

 視聴できない作品は、映画で100作品程度、テレビ作品で50作品程度と総数からすれば大きい数ではないが、パソコンとdstickで、「LOST」「デスパレートな妻たち」など人気の海外ドラマが対象外となっているのは、海外ドラマファンには残念かもしれない。

・ドコモ非契約者やdstick、パソコンなどの非対応番組一覧
http://pc.video.dmkt-sp.jp/title-list/unsupport-title

 端末は1アカウントにつき5台まで登録でき、6台目以降を追加したい場合はすでに追加されている端末の登録解除が必要。また、同時に視聴できるのは1台までで、ストリーミングの場合は他の端末で再生されている場合視聴できない。また、ダウンロードの場合は再生から48時間後にライセンスの再取得のための通信が発生するが、複数の端末を登録している場合はこの期間が3時間以内と短縮される。

無料のdocomo IDを取得。非ドコモユーザーの決済はクレジットカードのみ

 dビデオおよびdアニメストアを利用するには、docomo IDの取得に加え、それぞれのサービスを利用するためのユーザー登録が必要だ。docomo IDを取得すればすぐにdビデオ、dアニメストアを視聴できるわけではない点に注意しよう。

 docomo IDは専用のポータルサイトから無料で取得可能。ポータルサイトはPCとスマートフォンどちらからもアクセスできるが、入力項目も少ないのでスマートフォンからの登録もさほど苦ではない。空メールを送信し、メールに記載されたURLにアクセスすることで、メールアドレスがユーザーIDとして登録される。あとはパスワードの設定に加えて性別と生年月日を入力し、画像に表示された文字を入力すれば登録は完了だ。

docomo IDのポータル
ドコモの回線契約者以外は空メールから登録
受信したメールにID発行用のURLが記載
メールを受信したメールアドレスがユーザーIDとして登録される
パスワードに加えて性別と生年月日、画像に表示された数字を入力
入力内容の確認

 なお、初期登録の状態ではユーザーIDにメールアドレスを入力することになるが、メールアドレスが長くて入力が面倒という場合は、docomo IDのサイトから好きなIDに変更することもできる。docomo IDはアクセスのたびに入力する機会が多いため、普段から自分で使っているIDや、文字数の少ないIDを設定しておくと便利だ。

docomo IDのメニュー画面
ユーザーIDをメールアドレスから任意の文字列に変更できる
dビデオのiOSアプリ

 docomo IDの登録が終わったら、dビデオやdアニメストアなど視聴したいサービスのアプリをインストールして起動し、新規会員登録を選んでdocomo IDでログイン。契約内容を確認した上で決済用のクレジットカードを登録すれば視聴の準備は完了。NTTドコモの回線契約者は電話料金と一括して支払えるが、NTTドコモの回線非契約者はクレジットカードのみが決済手段となる。

dビデオのアプリから「新規会員登録」を選択。「docomo IDでログイン」を選んでもdビデオの登録が済んでいないため視聴できない
dビデオの利用登録
月額料金と利用規約を確認
料金の支払いに必要なクレジットカードを登録

他キャリアの端末で視聴可能。iPod touchなどキャリア以外の端末は対象外

 スマートフォンやタブレットからの視聴は、iOSとAndroidで多少インターフェイスが異なるものの、基本的な機能はほぼ共通。Androidの場合は画面下部の左から「検索」「ホーム」「マイリスト」アイコンが並ぶのに対し、iOSの場合は中央のアイコンが「メニュー」になっており、映画やドラマ、アニメといった動画のカテゴリを直接選択できる。気になる作品は蜂の巣のマークを選択するとお気に入り登録され、後からマイリストで一覧表示することが可能だ。

Androidアプリのトップ画面
iOSアプリのトップ画面
iOSはメニューアイコンから動画のカテゴリを選択できる
動画の再生画面。「あとで見る」からマイリストに登録できる

 再生はストリーミングとダウンロードの2種類に対応しており、ダウンロードは「普通」「きれい」「すごくきれい」の3種類から画質選択が可能。ストリーミングはiOSの場合1種類のみ、Androidではダウンロードと同様3種類の画質から選択できる点が細かな違いになっている。

iOSはストリーミングが1種類、ダウンロードが3種類
Androidはストリーミングも3種類
Androidの再生画面。別アプリ「メディアプレーヤー」での再生となる

 ダウンロードした作品はマイリストの「ダウンロードリスト」から再生が可能。なお、前述の通り、複数端末を登録している場合は再生から3時間経過すると再度認証が必要だ。通退勤の往復で長時間の番組を視聴しようという場合、退勤時には再度認証を行なうことになる。

 視聴時は再生/一時停止に加え、10秒単位での早送りと早戻し、シークバーを利用した再生位置の指定といった操作が可能。iOSとAndroidで画面インターフェイスこそ異なるが非常にシンプルな機能のみのため、使い方がわからないということもないだろう。

iPad 2 Wi-Fiモデルでも問題なく再生できた

 キャリアフリーということでNTTドコモ以外の端末で試してみたところ、au回線のiPhone 5sはもちろんのこと、SIMフリーのiPad 2やiPad 2のWi-Fiモデル、Nexus 7(2012)などで視聴できた。

 ただし、第5世代iPod touchでは「サービス非対応デバイス/ブラウザ」と表示され視聴できなかった。iOSの対応はiPhone/iPadのみとなる。また、イオシスが販売するAndroidタブレット「ioPad7 Patina」は、「Android OSが不正変更(root化など)されている」との表示がされ、利用できなかった。

SIMフリーのiPad 2では問題なく動画を視聴できる
iPod touchは非対応
ioPad Patinaは「不正変更」端末と表示された

 キャリアフリーの意義は、auやソフトバンクモバイルといったNTTドコモ以外のタブレット/スマートフォンで見られるようになっただけではない。パソコンや専用端末を介したテレビ視聴などマルチデバイス視聴に対応したdビデオであれば、スマートフォンやタブレットを使わずに視聴することもできるからだ。

 携帯電話がフィーチャーフォンで、スマートフォンやタブレットは所有していない人や、スマートフォンやタブレットでは画面が小さくて見る気がしないという人でも、docomo IDを取得すればパソコンでdビデオを視聴できる。また、専用端末の「dstick」を用意すれば、大画面テレビでより迫力ある動画を楽しむことも可能だ。

最大5台まで端末を登録できる

 パソコンで視聴する場合、対応OSはWindows XP以降またはMac OS Xと幅広いだけでなく、ブラウザ上で再生するため余計なソフトも必要ない。表示ウィンドウを小さくしておけば作業中に“ながら見”するという使い方もできる。なお、PCでの視聴登録はブラウザ単位で行なう仕組みになっているため、同一のPCでもChromeとFirefoxはそれぞれ1台分など、ブラウザ単位で台数カウントされる。

 マルチデバイス対応は動画の続き視聴にも対応しているため、他の端末で視聴した動画の続きを別の端末で視聴することもできる。通勤中はスマートフォンで視聴し、作業中はパソコン、家に帰ったらテレビというように、端末が異なっても、違和感なく動画を続きから再生できる。これもマルチデバイス対応ならではの魅力と言えるだろう。

パソコンでdビデオを再生
視聴中の番組。続きを別のデバイスで再生できる

幅広いラインアップと低価格が魅力。定額動画配信市場の活性化に期待

 4月1日のキャリアフリー化は、すでにdビデオを利用しているユーザーとしては何の変わりもないが、ドコモ契約者以外が、国内最大規模の定額制動画配信サービスが新たに利用できるようになったのは大きい。レンタルビデオ店で数本レンタルする程度の金額で何万もの作品が見放題となるコストパフォーマンスの高さを待ち望んでいたドコモの非契約者も多いだろう。

 競合となるHuluと比較すると、ラインアップは一長一短ありつつほぼ互角かそれ以上。端末に関してはスマートフォンやタブレット、パソコンだけでなくゲーム機やテレビにも幅広く対応するHuluに比べると、スマートフォン/タブレット、パソコンが中心となるdビデオはやや劣るものの、500円という半値近い価格は魅力的だ。

 Huluも日本テレビが買収し、4月1日から日テレ作品が追加されるなど、コンテンツ強化が図られているが、dビデオのキャリアフリー化により、定額制動画配信市場でのさらなる競争や、サービス拡充が期待できそうだ。

甲斐祐樹