藤本健のDigital Audio Laboratory

第989回

「foobar2000 バージョン2」でDSDネイティブ再生する方法。続報

音楽プレーヤー「foobar2000」

前回の記事で、音楽プレーヤー「foobar2000」が12年ぶりとなるメジャーバージョンアップを図り、v2.0になったことを紹介した。その中で、WASAPI排他モードが標準状態で使えるようになったことや、従来通りコンポーネントを組み込むことでASIOドライバが組み込めること、そして、VSTプラグインを利用するためのコンポーネントが新たに登場していたこと、などをレポートした。

さらに、DSD再生が可能であることも記載したが、“ネイティブ再生”を試みたもののうまくいかなかったことを書いたところ、複数の方から「v2.0でも動作している」という報告とその方法に関する情報が寄せられた。どうやら、筆者の設定手順に問題があったことが原因であって、正しい手順を踏めばDSDネイティブ再生も可能であることが分かった。

当初は先週の記事に追記する形でその内容を記載するつもりだったのだが、セッティングがやや複雑でもあったので、今回改めてfoobar2000 v2.0でのDSDネイティブ再生の方法について紹介していきたい。

Mac/iOS/Android版もあるが、Windows版が万能

DSDネイティブ再生の話に入る前に、foobar2000の動作環境について少し触れておこう。

前回の記事で、「foobar2000はWindowsのフリーウェアとして定番の音楽プレーヤー」と紹介したが、「Mac版もiOS版も、Android版もあるぞ!」という指摘もいただいた。

実際、Mac版はv2.5というバージョン番号になっており、Windows版より“先を行く”バージョンのようにも見える。

Mac版のfoobar2000
バージョンナンバーは2.5になっている

がしかし。実際のMac版は、Windows版とはだいぶ異なり、よりシンプルな内容になっている。チェックしてみると、確かにさまざまなファイルフォーマットの再生に対応しているし、各種オーディオ機器への出力も可能だ。

ただし、コンポーネントを使った拡張機能などが存在しない。多くのユーザーはFLACが再生できるフリーのプレーヤーソフトとして利用しているようだ。あくまでもMac版としての進化の過程で“v2.5”というナンバリングになっているが、Windows版のv2.0とは意味合いが異なるようだ。また、iOS版やAndroid版も本家のWindows版foobar2000と比較すると、だいぶ簡易的なアプリとなっている。

iOS版

というわけで、本題のDSDネイティブ再生について。

前回はSOURCEFORGEにある「Super Audio CD Decorder」をダウンロードして、コンポーネントをインストールする、ということを行なった。

具体的には最新版のfoo_input_sacd-1.5.4.zipをダウンロードし、ここに入っている「foo_input_sacd.fb2k-component」、「foo_dsd_processor.fb2k-component」という2つのコンポーネントをそれぞれインストールしたわけだ。

その結果、DSDのファイル形式であるDSFファイルの再生はできるようになり、一般的なUSB-DACやオーディオインターフェイスでも聴くことができるようになった。

が、DSDに対応したDACを使っても、なぜかPCMで再生される形になってしまい、DSDネイティブでの再生ができなかった。具体的には、筆者の手元にあるKORGのUSB-DAC「DS-DAC-100」を使ったのだが、DSD64=2.8MHzのデータでも、DSD128=5.6MHzのデータでも結果は同じ……。何か手順を間違えているか、インストールしたコンポーネントが足りないのが原因のように思いつつも、よく分からずに時間切れとなっていた。

が、記事を掲載したのち、複数の方から連絡をいただき、具体的な手順を教えてもらうことができた。方法は何種類かあるようだが、実際に試して動作確認できたのは2つの方法だ。では、順にみていこう。

方法①「dsd_transcoder」をインストール

まずは、AV Watchでも記事を書いている橋爪徹さんからTwitterで教えてもらった方法だ。

やはり、前述の「foo_input_sacd.fb2k-component」、「foo_dsd_processor.fb2k-component」の2つのコンポーネントのインストールでは足りないようで、もう一つ、SOURCEFORGEのSuper Audio CD Decoder Filesにある「dsd_transcoder」をインストールする必要があった。

現在の最新バージョンは1.2.0というものだが、これをダウンロードして起動すると、「WndowsによってPCが保護されました」というメッセージが表示されるが、そのまま実行するとインストーラが起動する。

保護されたというメッセージが
そのまま実行してインストールする

インストール先が「C:ProgramFiles(x86)DSDTranscoder」となっているので、foobar2000 v2.0のような64bitアプリではなく32bitアプリのようだが、とりあえず、このままインストールする。

インストール先が「C:ProgramFiles(x86)DSDTranscoder」となっている

実はこのDSD Transcoderは、仮想的なASIOドライバとなっているようで、foober2000のPreferencesからOutputを選ぶと、ASIOドライバの一つとして見えるようになっている。そう、この手のものがないと、DoP=DSD over PCM再生ができないわけで、先週は「おかしいなぁ」と思ったままになっていた……。

ASIOドライバの一つとして見える

さっそく、PreferenceのOutputを選び、DeviceからDSD Transcoder(DoP/Native)を選択。さらにDSD TranscoderのコントロールパネルでASIO DeviceをKORG USB-DAC ASIOに設定した上でDSDファイルを再生してみると…、“シャー”というノイズが流れてしまって、やっぱりダメ。

橋爪さんからのメッセージを落ち着いて最後までしっかり読まずに、すぐ実行してしまうのが筆者の悪いところ。ほかにも設定項目があったのだ。

ASIO DeviceをKORG USB-DAC ASIOに設定しても音が出ない

まず、PreferenceのSACD項目において、OutputのTypeをDSDに設定し、DSD ProcessorはNoneに設定するとのこと。

さらに先ほど設定したDSD Transcoderの設定画面において、44.1kHz系も48kHz系もすべてDSDに設定する必要がある。

すべてDSDに設定する

デフォルトではDoP 64やDoP 128がDSDになっていなかったので、これを設定すれば完了なはず。改めて、再生してみると…、今度はちゃんと再生することができた。

ついに再生できた!

KORG「DS-DAC-100」のコントロールパネルもDSDの表示が出ているし、DS-DAC-100のインジケータも2.8MHzや5.6MHzのLEDが点灯しているので、正しくネイティブ再生できているようだ。前回、DSDのネイティブ再生がうまくいかない…と書いてしまったが、しっかりできることが確認できた。

KORG「DS-DAC-100」のコントロールパネルもDSDの表示
インジケータも2.8MHzや5.6MHzのLEDが点灯した

せっかくなので、TEACのDSD対応USB-DAC「UD-301」も引っ張り出して試してみた。このUD-301用の最新ドライバをインストールの上、改めてfoobar2000 v2.0を起動。今度はDSD TranscoderのASIO DeviceをUD-301のドライバであるTEAC ASIO USB DRIVERを設定。

すると、さっきDSDに設定し直した項目がDoPに戻っていたので、改めてDSDに設定しなおした結果……今度はしっかりネイティブ再生することができ、本体のインジケータも2.8MHzや5.6MHzが点灯することを確認することができた。

TEAC「UD-301」でもDSD再生を確認

方法②「foo_out_asio+dsd」をインストール

さて、ほかにも編集部経由で読者の方から連絡をいただいた。こちらに書かれていたのは、橋爪さんからの情報とはまた少し異なる方法。「foobar2000 v2.0を使ってDSDネイティブ再生するには何種類かの方法があるが、これがもっとも簡単」とのことなので、さっそく試してみた。

これは、先週インストールしていた「foo_input_sacd.fb2k-component」、「foo_dsd_processor.fb2k-component」の2つのコンポーネントが入っている上で、やはりSOURCEFORGEのSuper Audio CD Decoder Filesにある「foo_out_asio+dsd」をインストールするという方法。こちらは、現在0.3.6というバージョンのようだが、コンポーネントなので、ダブルクリックして、foobar2000側でApplyすればインストールは完了する。

その後、先ほどのDSD Transcoderのときと同様、SACDの項目はOutput TypeはDSDに、DSD ProcessorはNoneに設定した上で、Outputの設定を見ると、「ASIO+DSD:」という項目が追加されていることに気づく。ここに各オーディオインターフェイスが並んでいるのだ。

ここで「ASIO+DSD:KORG USB Audio Device Driver」を選べば、DSD-DAC-100の設定が完了し、「ASIO+DSD:TEAC ASIO USB DRIVER」を選択すればUD-301の設定が完了する。PCMのデータも鳴らせるし、DSDもネイティブ再生できるとのこと。

実際試してみると……確かにPCMもDSDもしっかりネイティブ再生でき、DSD Transcoderを使うより、少し簡単なようだった。

今回取り上げたどちらの方法も、foobar2000のサイトのコンポーネント一覧からダウンロードできないのが、分かり難いところではあるが、手順としては、このASIO+DSDを使うのがもっとも簡単なので、DSDをネイティブ再生したい、という人にはお勧めだ。

藤本健

リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto