藤本健のDigital Audio Laboratory

第988回

「foobar2000」がバージョン2に。ASIOやDSD再生どうなった?

今年4月末にWindowsのフリーウェアとして定番の音楽プレーヤー「foobar2000」がv2.0にアップデートした。2002年に誕生したfoobar 2000だが、2010年にv1.0になって以来、実に12年ぶりとなるメジャーバージョンアップとなる。

動作が軽く、数多くのファイル形式をサポートするとともに、コンポーネントを追加することで、さまざまな形に機能拡張できるのが特徴のプレーヤーだったが、今回のバージョンアップでは、x64、ARMにネイティブ対応するとともに、さまざまなパフォーマンス改善が行なわれたという。実際どのような内容になっているのか、試してみた。

音質と多彩な機能で注目を集めた「foobar2000」

foobar2000といえば、「Winamp」を押しのけるようにして普及していったWindowsの音楽プレーヤーで、特にオーディオファンにとってはデファクトスタンダード的なソフトだ。

Windows標準のメディアプレーヤーが、いまだにカーネルミキサー(正式にはオーディオエンジン)を通す仕様になっているため、それが結果的に音質劣化を起こす。またAppleのiTunesもiPhoneユーザーが多いことからWindowsでも普及しているが、同様にカーネルミキサーを経由する仕様であるため、オーディオファンには好まれていない。

今回取り上げるfoobar2000も、標準においては、MMEドライバを使うためカーネルミキサーを通る形だが、ASIOドライバ用のコンポーネントを組み込むことで、ASIOドライバが使ってカーネルドライバを回避できる。加えて、WASAPI排他モード用コンポーネントも用意されているため、WASAPIを使ってカーネルドライバを回避することも可能。

さらに、コンポーネントを追加することでDSDデータをネイティブ再生することもできる。とにかく多彩なことができるのがfoobar2000であり、だからこそ人気を博してきた、というわけだ。

そのfoobar2000がメジャーバージョンアップしたとなれば、やはり誰もが期待するところだろう。

冒頭でも示した通り、今回の目玉はx64とARMへの対応。まあ、これまでx86の32bitだったのが古臭く、さすがに今の時代にマッチしないと思っていたが、ようやくの64bit対応は歓迎したい。

実はv2.0でもx86版が残っているが、こちらはレガシー扱いとなっている。でも、x64版で、これまでの拡張機能が使えるのかがちょっと心配なところ。この辺も少しチェックしてみた。

v2.0でもx86版は残っている

ダークモードに対応。日本語化は(まだ?)難しそう

というわけで、さっそくfoobar2000 v2.0の64bit版をインストールする。

もちろんいままで通り無料であり、とくに問題もなくあっさりと完了。ちなみに昨年10月に復活したWinampを記事で取り上げた際、fooba2000 v2.0βの64bit版が動作することだけは検証していたが、そこから半年間、じっくり動作検証を行ない、満を持してのリリースだったようだ。

インストール画面

起動すると、今までのv1.xと、ほとんど変わらないシンプルなプレーヤー画面が登場する。

ここに音楽ファイルが入ったフォルダをドラッグ&ドロップすれば、ライブラリが構築されていくのも従来通りだ。

フォルダのドラッグ&ドロップで音楽ライブラリを構築

実は標準でサポートするファイル形式が増えており、これまでオプション扱いだったTAK、APE(Monkey's Audio)、AC3、DTSも標準搭載されている。搭載されているデコーダーの一覧を下表に示した。これを見れば、ほとんどのファイル形式に標準対応していることがわかるだろう。

デコーダー一覧

foobar2000 v2.0の新機能として、Windows 10/11のダークモードに対応したことが大きく取り上げられていたのでこちらも確認。もともと各種配色に対応していたし、筆者自身、普段ダークモードを使うことはないので、個人的にはあまり興味がないところだが、Windowsをダークモードに変更すると、それに対応するようになっていた。

Windowsをダークモードに変更すると…
foobar2000もダークモードに

日本語化ができるのかも試してみた。

foobar2000本体は英語版のソフトであり、日本語メニューなどには対応していない。ファイル名や曲名などは漢字やひらがな、カナカナなどが使えるので、あまり気にならないところではあるが、foobar2000 Wikiというサイトを運営するtnetsixenon氏が、日本語化パッチを作成して配布している。これが使えるのかを試してみたわけだ。

最新版が「foobar2000 localization patch (v1.6)」となっているので、難しいのかな…と思いつつインストール。

デフォルトでは「C:Program Files(x86)」にインストールしにくので、これを「C:Program Files」に書き換えてインストールしようとしたが、やはり対象外ということでエラーとなってしまった。現在のところ、最新バーションの日本語化はあきらめるしかなさそうだ。

現状、最新バージョンでの日本語化は難しそう?

ASIOドライバには、コンポーネントのインストールが必要

さて、一番気になるのはASIOドライバへの対応なのだが、まずPreferenceのOutputのDevicesを見て驚いたことがある。実は、デフォルトでWASAPI排他モードをサポートしているようなのだ。

本当にこれでカーネルミキサーをパススルーしているのか、検証はしていないが、[exclusive]と書かれたデバイスを選べば、非劣化な高音質再生が可能になっているようだ。

デフォルトでWASAPI排他モードをサポートしていた

この状態ではASIOドライバには対応していないので、ASIOドライバ用のコンポーネントをfoobar2000サイトから検索。すると、ASIO Outputというものがあった。

ASIO Output

昨年9月のリリースではあるものの、foobar2000 v2.0の64bit版をサポート済みと記載されているので、うまくいきそう。実際にダウンロードし、それをダブルクリックすると、コンポーネントとしてインストール。最後にApplyをクリックすれば完了する。

コンポーネントのインストール画面
最後にApplyをクリックすれば完了

foobar2000を再起動後、PreferenceのOutputを見てみると、しっかりASIOドライバが使えるようになっている。これだけで十分foobar2000は使えるソフトといえそうだ。

ASIOドライバが使用できるように

いくつかファイルを再生して試してみたが、サンプリングレートも各ファイルに合わせて変化しており、問題はなさそうだ。

サンプリングレートも各ファイルに合わせて変化してくれる

DSDのPCM変換再生はOK。ネイティブ再生はNG、、、と思ったら??

続いて試してみたのが、DSDファイルの再生だ。

DSD再生のためのコンポーネントはfoobar2000サイトにはなく、SOURCEFORGEにある「Super Audio CD Decorder」をダウンロードして使う必要がある。

最新版はfoo_input_sacd-1.5.4.zipというものだったので、これをダウンロード後、展開してみると「foo_input_sacd.fb2k-component」、「foo_dsd_processor.fb2k-component」という2つのコンポーネントが入っていたので、それぞれをインストールした。

インストール画面

するとDSDファイルをデコードして、PCMに変換した形で再生ができるようにはなった。

しかし、やはり試してみたいのは“DSDでのネイティブ再生”。そこで、ASIO 2.1を使ったDoPに対応している手元にあるちょっと古い機材、KORGのDS-DAC-100を引っ張り出して接続してみたのだが、どうもうまくいかない。DSDファイルを読み込み、DSDでストリーミングできるところまでは確認できたのだが、肝心のDSD用のASIOドライバを割り当てることができなかった。

この辺はfoobar2000 v2.0の問題というより、組み込むべきコンポーネントが入っていないためなのでは? とも思うが、今回の取材では、いろいろ試してもうまく行かなかった。

ただ、DSDのネイティブ再生に関して「できる」との指摘を各方面からもらっており、現在鋭意検証中だ。この顛末は次週の連載で記したい。

【追記】‟DSDのネイティブ再生”に関する文章を追記しました(6月12日20時)

一方、このコンポーネントを検索している中でふと見つけたのがVSTプラグインを組み込むためのコンポーネントだ。foobar2000にも標準でグラフィックイコライザなどを装備はしているが、あまり使えるものではない。

foobar2000のグラフィックイコライザ

しかし、VSTプラグインが利用できるとなると、その可能性は一気に広がる。

VSTプラグインのコンポーネントの存在を筆者はまったく知らなかったのだが、調べてみると最初に公開されたのは2022年11月。その時点ではVST 2およびVST 3に対応していたようで、コンポーネントの名称も「VST 2.x/3.x Adapter」となっている。

64bit版に対応しているようだったので、ダウンロード後にダブルクリックして組み込んでみると、無事にインストールされた。

どうやって使うのだろう…と見てみると、PreferenceのPlaybackにあるDSP ManagerにVST 2.x/3.x Adapterなるものが入っていた。さらに開くとエフェクトの選択画面が現れ、現在組み込まれているプラグインがプルダウンで表示され、選択できるようになった。

選択すると、VSTプラグインの画面が現れ、リアルタイムに効くようになる。もし複数のエフェクトを使いたい場合は、VST 2.x/3.x Adapterを複数アクティブにして設定していけばいい。フリーウェアでここまでできるのは、かなり嬉しいところだ。

VSTプラグイン

このように、既存のコンポーネントがそのままfoobar2000 v2.0のx64版に組み込むことができたが、これらがうまくいったのは、どれも比較的新しいコンポーネントだったため。画面表示系などでちょっと古いコンポーネントだと、エラーになって組み込むことはできなかった。

古いコンポーネントを組み込もうとすると、エラーが表示された

更新はされないけど、古いままずっと使ってきたコンポーネントがある、という方は諦めなけれないけないが、サウンド面においてはDSDのネイティブ再生以外は問題なく動作しそう。

今後は、このx64版が広く使われていることになるだろう。

藤本健

リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto