藤本健のDigital Audio Laboratory

第999回

PC→スマホへ直接出力! USB-C×3系統インターフェイス「CONNECT 6」が便利

オーストリアのLEWITT(ルーイット)から、ユニークなオーディオインターフェイス「CONNECT 6」(42,900円)が発売された。USB Type-C端子を3系統備え、1つはWindows/MacなどのPC用、1つはiPhone/iPad/Androidなどモバイル機器用、そして残り1つが電源用で、PCとモバイル機器を同時に接続できるのが特徴だ。つまり、PCの音を劣化なくモバイル機器に送出したり、反対にモバイル機器の音をそのままPCに取り込むことができる。

もちろん、双方向でのやりとりだけでなく、普通のオーディオインターフェイスと同様に、マイクやオーディオ機器からのレコーディングもできるし、モニタースピーカーやヘッドフォンにも出力可能で、AUX入力も装備している。

今回はCONNECT 6を使ってどのような使い方ができるのか、そしてオーディオ性能的にどうなのかなどをチェックしてみた。

USB-C×3など、豊富な入出力を装備

LEWITTは、これまでマイクメーカーとして、プロ用のレコーディングマイクからライブ用マイク、コンデンサマイク、ダイナミックマイク、真空管マイクなど、ユニークな製品を次々と生み出してきた実績がある。そのマイクメーカーが突如として打ち出してきたのが、見た目も少しユニークなオーディオインターフェイス、CONNECT 6なのだ。

以前同社はLEWITT DGTシリーズというUSB接続のデジタルマイクも出していたので、ある意味オーディオインターフェイスの実績があったと言えなくもないが、今回のCONNECT 6自体にはマイク機能はなく、純粋なオーディオインターフェイス。ただCONNECT 6は、数多くのメーカーがUSBオーディオインターフェイスを手掛ける中、他社にはない非常に独自色を持った製品になっている。

本体重量は395gと軽量

手のひらに乗せても、軽く感じるCONNECT 6は395gとオーディオインターフェイスとしては超軽量。まず、その入出力端子から見ていくと、フロントには3.5mmのステレオミニのヘッドフォンジャックと6.3mm標準のヘッドフォンジャック。それぞれ独立した形でモニターできるようになっている。

モニタリング用のステレオミニと標準ジャック

リアを見ると、端子がズラリと並んでいる。右から見ていくと、Input 1とInput 2と書かれたコンボジャックが2つあり、ここにはマイクおよびライン信号を入力できるようになっていて、+48Vのファンタム電源もそれぞれ別に設定できる。

背面部
Input1/2のコンボジャックが2つ

Inputの隣にあるLとRは、TRSのメイン出力。ここにはモニタースピーカーを接続する。さらにその左にはステレオミニでのライン出力があるが、これはメイン出力と同じ信号となっている。

そして、本機の最大の特徴ともいえるのが左半分だ。

見るとわかる通り、USB Type-Cが3つ並んでいる。一番右のMobileはモバイル機器用で、iPhone/iPadやAndroidに接続する。実はこれ、MFI認証をとった製品であるため、iPhone/iPadとの接続において、Lighting-USBアダプタなどは必要なく、USB-C to Lightningケーブルで接続できるようになっている。

USB-Cポートが3つ

ただし、このMobile端子を使う際は、左側にあるPower端子にUSB-C PD 27W以上の外部電源を接続することが必要だ。この電源を接続しないと、接続したiPhoneなどを認識しないようになっている。

最初試した際、このPowerに普段愛用しているAnkerのUSB電源アダプタ「Power Port 4」から電源供給していたのだが、iPhoneを認識せず、「どこか故障しているのでは?」と思ったのだが、問題はこの電源供給にあった模様。試しに、MacBook Pro用のACアダプタに交換してみたところ、うまく接続できた。

MacBook Pro用のACアダプタ。Power端子には27W以上が必要だ

また、この状態においては、単に接続されるだけでなく、iPhoneに給電できるのもポイント。モバイル機器で配信する場合、電源容量が大きな問題になるが、これなら安心して使えるというわけだ。

iPhoneへの給電も可能

そして一番左側のComputerと書かれたUSB Type-Cは、WindowsやMacと接続するための端子。PCと接続する場合は、Powerへ電源供給しなくてもUSBバスパワー供給で動作する。ただし、PCから給電しただけでは、モバイル機器との接続はできないので、やはりPowerへの電源供給は必須のようだ。

なお、USB-C端子の間にある3.5mmのAux端子はステレオミニ入力。前述したコンボジャックInput 1、Input 2とは独立した形でアナログ入力できるようになっている。

入出力を操作するソフト「LEWITT CONTROL CENTER」

これだけ豊富な入出力をどのように扱うのか。それを司るのが、LEWITTサイトからダウンロードできるWindows/Mac用のソフト「LEWITT CONTROL CENTER」だ。CONNECT 6が接続していない状態で立ち上げても真っ黒な状態だが、USB接続するとミキサーのような画面が立ち上がってくる。

未接続の場合
CONNECT 6を接続した場合

これがデフォルトの画面なのだが、パッと見からも分かるとおり、ここにはかなりの機能が盛り込まれているのがわかるだろう。まさにミキサーのようのような画面なわけだが、PC側からは“12in/6out”と見える。Cubaseからみた画面が下の写真だ。

もちろん12個も入力端子はないのだが、バーチャル的に12in/6outとなっていて、その間にミキサー機能が用意されているようだ。実際Input 1のMUTEを解除しマイクから信号を入力するとともに、PC側からOut 1/2に出力すると、下記画像のようにメーターが触れた。

が、ここでちょっと気になるのが、Aux InおよびMobile inがアイコン表示になっている点だ。

実は、この時点でモバイル機器もAux入力にも接続していなかったのでこのようなアイコンだったの。ここでiPhoneを接続するとレベルメーター、フェーダーが現れ、iPhoneで音を鳴らすとミキサーへ入力される。画面右下にはiPhoneへの出力も表示されており、そのレベルメーターも振れていた。

iPhoneで音を鳴らすとミキサーへ入力される

さらにAux入力にステレオミニのケーブルを指してオーディオ信号を入力してみると、今度はAux Inにレベルメーター、フェーダーが現れた。これにより外部入力がInput 1、Input 2に加え、モバイル機器入力のステレオ2ch、Aux入力のステレオ2chと計6chとなる。

Aux Inにレベルメーター、フェーダーが表示された

残り6chは、どうなっているのか? その前に、CONNECT 6のDSP機能とミキサーのMix A、Mix Bについて見ていこう。

LEWITT CONTROL CENTERの左側、Input 1、Input 2を見ると、いろいろなパラメータがある。このCONNECT 6内にはDSPが入っており、これで入力信号を細かく調整できるようになっている。具体的には、上のほうにあるノブで入力ゲインを調整し、必要に応じてローカットや位相反転を行なう仕組み。

さらにExpander、Compressor、Equalizerという3つのエフェクトで音を調整した上で、その音をフェーダーで調整する。とはいえ、初めてのユーザーだと何をどうしていいか分かり難いかもしれない。そのために一番上にAutosetupというボタンがあり、これを押せばすべて自動で調整してくれるようになっている。

Autosetupを押すと、まずコンデンサマイクに接続しているのか、ダイナミックマイクに接続しているのか、フォン端子でのライン入力をしているのかの選択肢が出てくるので、この中から選択。

さらにDSPを使った細かな調整まで行なうのか、ゲイン調整だけにするのか、が出てくるので、DSPを使ったAdvancedを選択。マイクの場合、それが歌なのかトークなのか、楽器の演奏なのかの選択肢が出てくるので、この中から選択した上で、実際にマイク入力をしていくと、入力音量をチェックした上で最適な設定にしてくれるようになっている。

マイクの場合、それが歌なのかトークなのか、楽器の演奏なのかの選択肢が出てくる

詳細は省くが、Expander、Compressor、Equalizerはそれぞれ、リアルタイムに状況を表示してくれるようになっている。

Expander
Compressor
Equalizer

PCで完成させた音を劣化なく送り出すことができる

さて、ここで面白いのがこのInput 1、Input 2の下にフェーダーがAとBの2つがあること。実はこのミキサー、Mix AとMix Bという全く別の2種類のミックス結果を作ることができるようなっているのだ。

デフォルトではこのAとBのフェーダーが連結しているけれど、これを切り離せば別々にフェーダーの調整ができる。このことはInput 1、Input 2に限らず、PC側からのバーチャルのOut 1/2、3/4、5/6、さらにはMobile In、Aux Inにおいても共通。その最終ミックスにおいてMaximizerボタンをオンにすることで、それぞれでマキシマイズすることも可能になっている。

さて、そのようにミックスしたAとBをどう利用するのか?

まずはメイン出力のところのMix Aと書かれているボックスをクリックしてみると、選択肢が登場する。そう、モニタースピーカーに対しMix Aを出力するかMix Bを出力するかを選択できるだけでなく、各入力ソースそれぞれを個別の出力することもできるようになっているのだ。同様にステレオミニのヘッドホン出力1および標準端子のヘッドホン出力2も選択可能。

そしてLoopbackという項目もあるが、こちらもMix AかMix Bかなどを選択した上で、出力レベルを設定することが可能。つまり、ここで設定したものをループバックできるようになっているのだ。もしループバックしたくない場合はこのフェーダーを下げればOK。

以上、説明が長くなったが、Mix AとMix B、さらにLoopbackのステレオの計6chを含めて、12inというわけだったのだ。

ここでCONNECT 6最大の面白さといえるのが、画面右下のモバイル機器への送りだ。デフォルトではMix Bが送られる形となっているが、もちろんMix Aを送ることもできるし、PCからの出力のみを送ることも可能だ。

これの何がすごいのかというと、本来スマホでしか利用できないTikTokやTwitch、Pococha、17liveといった配信アプリや動画作成アプリにおいて、PCで作成した高音質な音をそのままスマホへ出力できるという点。

もちろん、従来のスマホ接続可能なオーディオインターフェイスでも高音質なマイク接続などは可能だが、CONNECT 6であればそれに加えて、PCで完成させた音を劣化なく送り出すことが可能になっているのだ。そんな使い方ができるのがCONNECT 6の魅力なのだ。

サンプリングレートとレイテンシーを測定

では、ここで恒例のオーディオ測定を行なってみよう。

今回はCONNECT 6のメイン出力とInput 1/2をループさせて、RMAA Proで測定。CONNECT 6では44.1kHz、48kHz、96kHzのサンプリングレートの設定が可能なので、それぞれで行なってみた。

CONNECT 6の測定結果
44.1kHzの場合
48kHzの場合
96kHzの場合

これらを見ると、若干高調波があるようだが、極めて良好という結果になっている。実際音を聴いても非常にクリアなサウンドだが、データ的にも安心して使えそうだ。

さらに、レイテンシーについても測定してみた。これも44.1kHz、48kHz、96kHzのそれぞれでバッファサイズを最初で測定し、44.1kHzのみは、ほかのオーディオインターフェイスとの比較できるようにするためバッファサイズ128 Sampleでも測定している。

CONNECT 6のレイテンシー
128 Samples/44.1kHzの結果
8 Samples/44.1kHzの結果
8 Samples/48kHzの結果
16 Samples/96kHzの結果

この結果を見ても、悪くはない値。いろいろな機能を搭載しながら、単独のオーディオインターフェイスとして見ても、しっかりした性能を発揮しているようだ。

以上、LEWITTのオーディオインターフェイス、CONNECT 6について見てきたがいかがだっただろうか? PCで音作りをしつつ、スマホで配信をしている人にとっては、これまでにない非常に便利なツールが誕生した、といえそうだ。

藤本健

リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto