藤本健のDigital Audio Laboratory

第651回:28台のスピーカーが並ぶ毎日放送の「3Dサラウンド」制作現場を訪ねた

第651回:28台のスピーカーが並ぶ毎日放送の「3Dサラウンド」制作現場を訪ねた

 大阪の放送局である毎日放送(MBS)の一室に、ちょっと変わった雰囲気の部屋がある。結構大きな部屋の中には鉄骨が組まれ、数えてみると計28個ものスピーカーが配置されているのだ。ここは仮設の実験室で、その中央で機器の操作をしているのが同社のエンジニアである入交英雄(いりじまりひでお)氏。入交氏は、ここで3Dサラウンドというシステムを使った作品に取り組んでおり、そのために、これだけ数多くのスピーカーを並べている。

28個のスピーカーが置かれた毎日放送の一室
人を取り囲むようにスピーカーを配置
入交英雄氏

 3Dサラウンドとは、単に平面に設置するサラウンドシステムとは異なり、ハイトスピーカーと呼ばれる高い位置にもスピーカーを設置するシステム。NHKがスーパーハイビジョン映像用の音声として提唱する22.2chのシステムやDolby Atmos、DTS:X、Auro-3Dなど、最近になっていくつかの3Dサラウンドのシステムが登場するようになり、にわかに注目されるようになってきたが、そうしたものに対応したコンテンツを作っている一人が入交氏だ。そこで3Dサラウンドとはどんな意味を持つものなのか? 一般ユーザーが現実的に使えるものなのか、実際どんな取り組みをしているのかうかがった。

天井近くにハイトスピーカーも設置

3Dサラウンド制作を始めた理由。平面サラウンドとどう違う?

――3Dサラウンドの話に入る前に、まず入交さんのプロフィールからお伺いしたいのですが、入交さんがサラウンドの世界に入ったキッカケなどについて教えてください。

入交:中学校時代に遡りますが、冨田勲さんの「月の光」を聴いたのがそもそものスタートでした。このレコードをスピーカーマトリックスという方式で聴くと、まさに4chで音が作られたかのように、前後左右に音が動くことに感激したのを覚えています。スピーカーマトリックスの仕組みはとっても単純で、位相差を利用して再生するシステム。スピーカーのステレオ信号に抵抗ブリッジを使った簡単な結線を加えることで4ch信号を取り出せるのです。確か、最初は「初歩のラジオ」か何かで読んで知ったんです。そのころから音の出るものに興味があって、面白かったですね。

 高校時代には音楽家になるという夢を持ったこともありましたが、「トランジスタ技術」の記事で「機械のことも音楽のことも理解する必要がある“録音”という仕事がある。そのためには九州芸術工科大学(現在は九州大学に統合)がいい」ことを知り、この大学に入り、立体音響、空間音響の研究に携わっていました。

――そんな昔からサラウンド一筋だったんですね。会社に入ってからも、ずっとサラウンド関係に携わっているのですか?

入交:実は会社に入ってからは、人事異動もいろいろあり、カメラに携わったり、映像や放送技術に携わったりと、サラウンドに関してはあくまでも個人的な趣味となっていました。もっとも入社6年目の1987年ごろに、音声の部署に異動したことがあり、ここでちょっとサラウンドに携わったことはありましたね。上司がサラウンド好きな人で、ちょうどドルビーサラウンドが映画の世界で花開いていたころ。過去の経験から逆相成分を足すとサラウンドが実現できることを知っていたので上司に提案すると、やってみよう、ということになり、高校野球の放送で実現させました。日本初のサラウンド放送ですね。その後、NHKやABCなど他局も追随してきましたよ。その後もいろいろな部署を回りましたが、2003年からの地上デジタル放送の準備ということで2000年にはデジタルマスターの部署に行きました。ここでは音の現場からは完全に外れましたが、デジタルの難しさ、大変さが身に染みてわかりましたね。

――でもデジタル放送になると5.1chでのサラウンドが正式にできるようになりましたよね。

入交:そうですね。私自身、それほど5.1chサラウンドの放送制作には携われなかったのですが、たまたま知人に大阪市音楽団の団長がいて、「演奏を録音してくれないか? 」と頼まれたのです。これはあくまでも個人での活動であり、会社の仕事とは別だったのですが、ここで5.1chサラウンドを試す機会に恵まれ、いろいろな知識、経験を身に着けました。個人所有のProToolsを使ってマルチチャンネルレコーディングをしたのですが、標準のIOだと音がよくない。これをAPOGEEのものにすると、結構いい音になるし、セッティングも工夫することで、かなりキレイに録れるとか……。最終的には、ファイルの形にして渡し、レコード会社がマスタリングした上で、2chのCDとしてリリースされましたよ。当初は24chでのレコーディングをしていましたが、その後48chにまで拡張したりね……。最後の数作品は96kHz/24bitで収録しました。ただ、これをやっていたのは2007年ごろまででした。

――経歴をうかがっているだけでも、興味深い話ばかりで、何時間も経ってしまいそうですが、本日の主題は3Dサラウンドです。上にスピーカーを取り付ける3Dサラウンドはいつごろから手掛けていたのでしょうか?

入交:やはり社外活動の一つとして、AES (Audio Engineering Society Inc.)でもサラウンドの実験や発表なども行なうようになりました。そのころから、元NHKのエンジニアであるミックさん(沢口真生氏)とも交流を持つようになったのですが、そうした中、AESウィーンカンファレンスで発表しているとき、隣で3Dサラウンドをデモしていたチームがいたのですが、それが衝撃だったんですよ。9つのスピーカーがあって、ハイトスピーカーを入り切りして音の違いを聴くというものだったのです。

 ブルックナーという作曲家が、「私の交響曲に時々現れる全休止は、その瞬間に残響が舞い昇っていく様子を聴くためだ」と言っているのですが、最初はその意味が理解できませんでした。AESウィーンのとき、ウィーン・コンツェルトハウスに行って、音楽を聴いたのですが、残響の聞こえ方が日本とまるで違ったんです。日本では前から生音が、後ろから残響が……という聴こえ方なのに対し、ここでは雲のように目の前に残響が聴こえ、それが上に昇っていく。このとき、はじめて、ブルックナーの言っていること、なぜAESの隣チームの人たちが上にスピーカーをつけたがるのかが理解できましたよ。それで俄然、3Dサラウンドに興味を持つようになったのですが、これは従来からの録音における大きな問題を解決する糸口にもなりました。

――録音の問題というのはどういうことですか?

入交:私の考える理想の録音は、明瞭度を上げつつ、残響もしっかり捉えて、その場の空気感、臨場感を収録することです。ところが、音には「方向性マスキング」という現象があります。これは同じ方向から音が来ると、大きい音に小さい音がマスキングされて聞こえなくなってしまうことです。つまり音の明瞭度を上げると小さな残響が聴こえにくくなるのです。反対に残響を上げていくと、明瞭度が落ちてしまう。これは二律背反する関係にあるのです。ところが直接音と残響音を別のスピーカーから出すと、マスキング効果がなくなります。最初はこれを5chのスピーカーでテストしていて、前はメインマイクだけ、後ろは残響マイクだけといった構成にしていたものの、あまりにも前後の音が違うため、融合しにくいのです。ところが前の上のほうにも残響成分を再生するスピーカーを設置すると、うまく融合してくるのです。今はいろいろと実験した結果、30度の角度を持つ高さで設置していますが、たとえ5度でもいい。これによって明瞭度と残響が両立するんですね。

――なるほど、3Dサラウンドとは単に上から音が出るということだけでなく、そんな意味合いもあったのですね。実際、入交さん自身、3Dサラウンドでのレコーディングはいつごろから行なっているのでしょうか?

入交:2008年ごろから、いろいろ実験は繰り返していましたが、ようやく、まずまずと満足いく録音ができたのは、2013年に名倉誠人さんのマリンバの演奏を録ったときのものですね。これは16本のマイクでレコーディングし、そのうち4本を上のレイヤーに設置していました。実は以前から名倉さんの演奏を録らせてもらっており、2011年に京都の北白川教会で3Dサラウンドで録ったものが、アメリカのグラミーで、グラミーバロットというノミネート候補にもなったんですよ。その音を、シンタックス・ジャパンの村井清二社長に聴いていただくと感激されて、「これは現場にいるみたいだ! ぜひ世の中に出すべきだ」ってことになり、その後、村井さんといっしょにデジタルマイクを使うレコーディングを試したりするようになったのです。

――グラミーのノミネート候補ですか……。それも会社の仕事としてではなく、社外活動としてなんですよね!?

入交:その辺の切り分けがなかなか難しいところなのですが、2014年には冨田勲さんが座間市のハーモニーホールで「源氏物語交響絵巻」のレコーディングを行なったこともあったんですよ。当初は冨田さんから「聴きに来てください」と誘われただけだったのですが、そのうち「録音できたらいいですね」、「じゃあ録音してくれますか」って(笑)。ロイヤルメトロポリタン管弦楽団による演奏で、80人くらいの編成だったんですが、これを3Dサラウンドでレコーディングしたわけです。さすがにそこまで大規模になってくると、ただ個人でというわけにもいかないですし、会社に対しても新規事業としてハイレゾでのサラウンドのレコーディングをやってみては、という提案をするようになり、いまでは会社の中に録音を請け負える仕組みができました。

“1万人の第九”を3Dサラウンドでライブビューイング

――ほかにも、3Dサラウンドでのレコーディングに取り組んでいるのですか?

入交:いわゆるレコーディングとはちょっと違うのですが、その冨田さんのレコーディングのすぐ後に、ピーター・バラカンさんがオーガナイズする「Peter Barakan’s LIVE MAGIC!」という音楽フェスティバルが恵比寿ザ・ガーデンホール/ザ・ガーデンルームで開催されました。ここでライブビューイングという面白い実験的プロジェクトが行なわれたのですが、そこに参加させてもらいました。

 これはガーデンホールでのコンサートの雰囲気を、16chのルームマイクで拾い、そこにPAの2ch出力をミックスする形で、ガーデンルーム側で音を再生するというもの。実際に試してみた結果、ライブの熱気がそのまま隣に伝わるんですよね。さらに弊社のイベントである「サントリー1万人の第九」においても、この規模感が再現できるか実験してみようということになりました。まさに私がやっていることが、新規事業として成り立つのかのトライアルとして、昨年12月に大阪城ホールにおいて3Dサラウンドで収録を行ないました。これは観客が3,000人、合唱団が10,000人という、ほかに類を見ないイベントなのですが、現場にいくと、1万人が歌うとこんなすごいことになるのか、というのが実感できます。でも、それを表現することは、放送では難しかったんですよね。以前、1万人の第九を普通のサラウンドで放送したことはありましたが、とても1万人が歌っている感じは出せませんでした。

 そこで、今回は高い位置でのマイクを含め、計50chに及ぶマイクによってレコーディングしたのです。通常の5chのサラウンドと、平面7.1chの上に2層の4chを加えた15chの3Dサラウンドで聴き比べができるようにしてみたので、ぜひ聴いてみてください。

再生はPro Toolsのマルチトラック再生によって行なわれ、オーディオインターフェイスはMADIfaceXT、DAコンバータとしてRMEのM-32DAが使われていた

――(再生した音を聴いて)これは、凄いですね。本当に驚きました。平面の5chサラウンドでの音と、3Dサラウンドの音では、まったく規模感が違います。言葉で1万人と言われてもピンと来ないですが、これが1万人の合唱なんだ…って。感覚的にいうと、平面5chでも数百人はいるんだろうな……というのは分かるけれど、ハイト・チャンネルを追加すると、わぁ、1万人いるんだ……って。

入交:レコーディングと3Dサラウンドの受託制作を事業化しようという社内での交渉が、ちょうど、このころから佳境に入ったのですが、この1万人の第九での効果もあって、今年6月から正式に業務を開始しました。将来的には各家庭に、3Dサラウンドのシステムが導入されると最高ですが、実際に家庭への普及が始まるのもまだ先のことでしょうから、当面はライブビューイングが中心になると思います。Dolby Atmosのリアルタイム・エンコーダーといったものも近いうちにできるでしょうから、それが実現すると全国のDolby Atmos対応映画館でライブビューイングが実現可能になります。ライブ会場の熱気をそのまま全国の映画館に送れるようになったら、楽しいでしょうね。

――さて、ここの部屋のスピーカーについて、もう少しお話しを伺いたいのですが、普段、ここにあるスピーカーすべてを使って音を鳴らしているのですか?

入交:ここには28個のスピーカーがあり、そのうち2つはサブウーファです。これらをすべて同時に使うわけではなく、これだけあれば、一通りすべてのフォーマットの再生が可能ということで28個置いているのです。NHKの22.2chにDolby Atmos Homeを足した数ですね。Dolby Atmos Homeにはいくつかの設置法がありますが、一般家庭向けで一番スピーカーが多いのは7.1.4chというもの。7が平面スピーカー、1がサブウーファー、4がハイトスピーカーを意味しているのですが、このハイトスピーカーの設置の仕方が22.2chとは異なるので、28個になっているわけですね。ちなみに、22.2chは、まだ音源がないので、これで再生したことがありませんが……。

フロントスピーカーの下に設置されている2台がサブウーファ

実際に聴ける3Dサラウンド作品はいつ登場する?

――この設置されているスピーカーを見てみると、結構いろいろなものが混じってますよね。共通のスピーカーにしなくて大丈夫なんですか?

入交:予算がないので、各部署で余っているスピーカーをかき集めた結果こうなっているんですよ。すべてパワードのアクティブスピーカーになっていますが、必ずしも全部を同じスピーカに揃えなくても十分効果が得られることも、3Dサラウンドのシステムのいいところです。もちろん、左右バランスをとるためにペアとなるスピーカーは揃えていく必要がありますが、これなら比較的簡単に設置できるし、小さなスピーカーでも十分に意味を成すんですよ。そうした中、どんなスピーカーの設置なら、この3Dサラウンドの臨場感がC/P高く得られるのか、いろいろと実験をして見出したのがフロントハイト7.1chというものです。

様々なモデルのスピーカーが混在している

――具体的にはどのような設置なのですか?

入交:22.2chほど大規模でなくても、まずまずの環境を得るのには9chあれば充分と思います。つまり平面での5chに加え、フロントの左右、リアの左右の上の位置にハイト・スピーカーを設置するというものです。ただ、ここからリアのハイト・スピーカーを外しても、かなりの効果が得られるんですよ。シンタックス・ジャパンの村井さんなどとも試聴を繰り返し、この7ch再生をFLAC7と名付けよう、と。フロントの上の位置だけなら、日本の家庭でも設置はそこそこ可能だと思うのです。あとは、音源があれば、というところですが、そもそもDolby AtmosもAura-3Dも、音楽作品に限定すれば、まだ音源がほとんど無い状態(編集部注:一部クラシック音楽BDなどでは販売されている)。だったら、我々で率先して音源を作っていくのも手だろう、と。とくに新しいデコーダーが必要になるわけではなく、単に7chが再生できるだけで、実現可能ですから、ぜひ多くの人にこの面白さを味わっていただけるといいな、と思っています。

――実際、FLAC7などの3Dサラウンド作品はすぐに聴ける商品があったりするのでしょうか?

入交:すぐに提供できるものはないのですが、現在準備中です。先日、東京文京区のカトリック関口教会東京カテドラル聖マリア大聖堂で行なわれたコンサートを3Dサラウンドでレコーディングしたのですが、その作品である「コントラポントのヴェスプロ」が8月25日によりe-onkyo musicなどで配信がスタートし、9月25日にはOTTAVA recordsからCDがリリースされました。2ch、5ch、7ch、HPL11、そしてDolby Atmosと各種フォーマットは用意していますが、現時点で配信されているのは2chと5chのみ。それ以外の配信ができないか、現在e-onkyo musicと交渉中です。

 ちなみにHPLはハイト・チャンネルを入れた11chで、これが世界初のHPL11となる予定です。ちなみにHLP9は、先日ミックさんが出していますね(UNAMAS FUGUE QUINTET/The ART of FUGUE BWV-1080)。ぜひ、今後も、さまざまな3Dサラウンドの作品作りに取り組んでいきたいと思っています。

――ありがとうございました。ぜひ、今後のご活躍、そしてさまざまな3Dサラウンド作品のリリースを期待しております。

 言葉だけでは、なかなか実感できないハイトサラウンドなので、取材終了後、入交氏にお願いしたところ、まだ公開されていない7chの楽曲データをいただくことができた。また、この楽曲データについて入交氏からのコメントもいただいているので、合わせてご覧いただきたい。

音声サンプル
入交氏によるWAV 7ch楽曲データ
bachbeat2sample.wav(375MB)
※編集部注:編集部ではファイル再生の保証はいたしかねます。
 再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

再生ノート 入交英雄

本ファイルは、名倉誠人編曲マリンバ演奏によるアルバム「バッハビート2」から一部分を3Dサラウンド試聴用の7.1chファイルとして抜粋したものです。
ファイル形式は48kHz にダウンサンプルした24bit 7.1ch FLACサラウンド・フォーマット(チャンネル構成=L、R、C、LFE、Lss、Rss、Lsr、Rsr)信号で、その枠組みを利用した3Dサラウンド信号となります。(ただしLFEは無音となっています)
ファイルの中身は、チャンネル確認信号、バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」抜粋、バッハ無伴奏バイオリンのためのパルティータ3番から1楽章、となっています。

さて、注意していただきたいのは、7.1ch以上のサラウンドファイルでは、チャンネル並びが機器によって異なって再生される場合が有るなど、ややこしい点が有ることです。Dolbyの説明書から考えますと、ITU-R準拠の出力アサインでは、物理チャンネルの1chから順に、L、R、C、LFE、Lss、Rss、Lsr、Rsrがアサインされることになり、HDMIの中も同様になっているはずですが、PC再生環境ではLss-RssとLsr-Rsrとがひっくり返っているパターンを確認しています。
本ファイルの先頭にチャンネル確認用の信号には、「フロント・レフト」、「フロント・ライト」、「フロント・センター」、「バック・レフト」、「バック・ライト」、「オグジャリー・レフト」、「オグジャリー・ライト」とアナウンスが入っています。バックがLsr-Rsrに相当し、オグジャリーがLss-Rssに相当しますので、皆様の7.1chスピーカ環境で左右寄りのサラウンドスピーカから「オグジャリー・レフト」、「オグジャリー・ライト」と聴こえれば、ITU-R配置準拠となっていると考えて良いでしょう。
本ファイルではオグジャリーにハイトチャンネルを割り当てています。制作時にはハイトチャンネルが前方の天井近辺にスピーカを設置されることを想定してミキシングしていますが、ハイトチャンネルは、前方、後方いずれに有っても効果を発揮します。従いまして、チャンネル確認信号でオグジャリーとアナウンスされたチャンネルを出来るだけ高い位置に設置して聞いてみて下さい。設置位置は高い方(仰角45度程度)が効果的ですが、例え50cm程度しか上方に設置できなくても、ハイトチャンネルの効果は確認できるものと思います。ドルビーAtmosのイネーブルドスピーカの様に、オグジャリーチャンネルのスピーカを天井に向けるのも良いかもしれません。
是非、皆様も7チャンネル再生にトライされ、ハイトチャンネルの有用性をお確かめいただければ幸いです。
なお、本ファイルの頒布は現在、配信会社と交渉中です。近い将来192kHz24bitの7chファイルとして頒布できるものと思います。

藤本健

 リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。  著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。EPUBマガジン「MAGon」で、「藤本健のDigital Audio Laboratory's Journal」を配信中。Twitterは@kenfujimoto