西川善司の大画面☆マニア

第235回:

一番“欲しい”有機ELテレビはこれ!! ソニーBRAVIA「KJ-55A1」

 日本勢有機ELテレビの御三家となる東芝「REGZA X910」、パナソニック「VIERA EZ950/EZ1000」、ソニー「BRAVIA A1」の全てが発売され、今期の4Kテレビの憧れ対象は液晶から有機ELになった。本連載でも、東芝とパナソニックの製品は紹介済みだが、今回は、ソニーのBRAVIA A1シリーズを取り上げる。

BRAVIA KJ-55A1

 A1シリーズは画面サイズが55型、65型、77型の3サイズ展開だが、今回は55型の「KJ-55A1」を評価した。実勢価格は約48万円。ちなみに65型のKJ-65A1は約86万円、77型のKJ-77A1は約270万円で、画面サイズ単価では、一番お買い得? なのが、55型である。

設置性チェック~画面を振動板にする新サウンドシステムの音質に驚く

 今期の日本メーカーの有機ELテレビの中で、最も攻めたデザインを採用しているのがA1シリーズだろう。表示面をスピーカーの振動板「アコースティックサーフェイス」のアイディアも奇抜だが、なにより設置の仕方が特異である。

 KJ-55A1は、フォトフレームや卓上カレンダーのように脚部を開いて設置するのだ。

 ディスプレイ部とスタンド部は最初から合体しているが、梱包箱に収納されている状態では、スタンド部はディスプレイ背に閉じる。そのまま梱包箱から取り出して台上に設置できるのかと思いきや、スタンド部の下部に取り付けるおもり兼接地部を合体させる必要があり、この組み立てがなかなか難しい。

 というのも、このおもり部にはスチール製のつっかえ棒的なフレームを合体させ、これをスタンド部を開脚させた状態ではめ込む必要があるのだが、これがなかなか難しい。

スタンド(写真右側)の部分に映像エンジンなどが組み入れられている

 ディスプレイ部の重量は約25kgで、これは画面サイズから連想される通りの重さだが、おもり部は小さいながら約3.6kgもある。今回の評価では筆者宅2階のホームシアターに設置したが、なんとか一人でできなくもないが、特に前述の「おもり部の合体」は一人では厳しかった。基本的には2名以上で設置すべきだ。

 実はスタンド部を開脚すると、かなり設置には奥行きが必要になる。奥行き長は約34cm。

スタンド込みの寸法は幅122.8×33.9×71.0mm(幅×奥行き×高さ)

 また、フォトフレーム的な設置となるので、ディスプレイ部の下部がそのまま台上に接地する。最近の薄型テレビは表示下部の低重心化傾向が強いが、55A1の場合は距離ゼロなので、一般的な設置台に設置すると、画面が妙に下という印象となる。

設置台に画面が着地するような設置スタイルとなるので映像下辺は相当下に来ることを想定しなければならない

 設置時の奥行きが30cmを超えるテレビはなかなかないので、設置シミュレーションは事前に念入りに行ないたい。ちなみに「スタンドの占有奥行きが約34cm」、「ディスプレイのゼロ距離接地」は65型のKJ-65A1も共通だ(77型のKJ-77A1は奥行きが約40cmに拡大)。

フォトフレーム的な設置状態となるので、やや画面は上向き気味。その意味では低い位置に設置されても見下ろすように見ることにはなるが、視聴上の違和感は少ないかも知れない

 設置して映像を映して感じたのは、ベゼルの狭さだ。実測してみると上辺、左右辺は約9mmで、下辺も約19mmと圧倒的な狭さ。パッと見た感じではベゼルレスという印象を持つほど。画面はグレア系処理されており、室内情景の映り込みは多少あるものの気になるほどではない。

暗めの映像を映すと若干周囲の情景が映り込むがそれほど気にならない
ベゼルは狭く、ディスプレイ部も際だって薄いのがA1シリーズの特徴

 今年1月のCESでも話題になった有機ELパネルを振動板として音を鳴らす「アコースティックサーフェイス」のサウンドを、改めて自宅で聞いたが、やはり音質は良好だ。

 平面振動板スピーカーは分割振動と呼ばれる現象が発生しやすく、高音質に鳴らすことが難しいと言われているが、そんな不安を微塵も感じさせないフラットな再生特性になっていた。

左右に伸びるフレームのような部位の左右の端にそれぞれ2個ずつのアクチュエーターが実装されていて、これが音を鳴らす。低音はスタンド部に内蔵されたサブウーハーが担当

 ハイハットやライドシンバルの高周波数音域もかなりしっかり出ているし、ストリングス系楽器の繊細な響きまでもがはっきりとした輪郭で奏でられている。

 本機のサウンドシステムは、サウンドを発生させるボイスコイル(本機ではアクチュエーターと呼称)は、左右に2基ずつ(10W×2+10W×2)、合計4基、開脚しているスタンド部に重低音を再生するサブウーファ(10W)がレイアウトされた2.1chサウンドシステムとなっており、総出力は50W。音量を上げてもビビリ音はない。画面に指を触れると確かに振動していることは分かるが、映像がぶれて見える事はないので安心されたし。

 現在の薄型テレビの主流となっている「画面下部に下向き内蔵させたスピーカー」による再生システムでは、音像定位操作で無理矢理画面中央に定位させている。これは正面に相対した場所で聞く分にはいいのだが、そこからずれると、その定位操作が理想通りに働かないこと多い。

 55A1の場合は、本当に画面から音が鳴っているので、どういう姿勢でどういう角度から見ても音像が画面から鳴ってくれる。音質もさることながら、この「画面から本当に音が鳴っている」という「シンプルなありがたみ」が心地よかった。

 消費電力は定格370W。年間消費電力量は226kWh/年。これらの値は同画面サイズの液晶テレビと比較すると約1.5倍だが、他社の有機ELほぼ同等だ。これは白色有機ELパネルペースのテレビなので致し方ない。

 有機ELテレビの課題といえる「焼き付き問題」については、取扱説明書においても、その特性についての注意点のページがちゃんとある。焼き付きやすい映像の事例や、それらの映像を長時間表示させないこと、など細かく書かれており、分かりやすい。

「高度なパネル設定」メニュー階層下には焼き付き対策関連の機能が列ぶ

 他の有機ELテレビと同様に、焼き付きを低減させるために映像を1ピクセル単位でゆっくりシフトさせる「ピクセルシフト」や、画面内の画素の輝度を自動調整する「パネルリフレッシュ」機能なども搭載されている。

接続性チェック~スタンド部の下部に接続端子

 接続端子は、開脚するスタンド背面下部に下向きにレイアウトされる。このスタンドの側面側にはB-CASカードスロットはあるが接続端子はない。頻繁に脱着する場合、A1シリーズは使いづらいと思う。使い勝手の面からいえば、HDMIの1系統くらいは側面にあった方が良いように思う。

接続端子パネルはスタンド部の下部にある。端子群は下向きにレイアウトされているので脱着はしづらい
背面カバーを付ければすっきりとした見た目にできる

 HDMI入力は4系統あり、端子ごとに機能差がある。HDMI2/3はHDMI 2.0のフルスペック対応で、4K/60HzのYUV444、YUV422、RGB888や、各種HDRフォーマットを入力できる18Gbpsモード対応。HDMI11/4は、4K映像の表示に制限が生じる。Ultra HD Blu-ray(UHD BD)、PS4 ProやPCなどの4Kフルスペック出力対応機器はHDMI 2/3に接続する必要がある。ARC(オーディオリターンチャンネル)はHDMI2が対応する。

接続端子。アンテナ端子は、地デジ、BS/110度CSの他、スカパー!プレミアムも備えている。SDカードスロットはなし

 3D立体視には対応しない。アナログビデオ入力は、4極ミニジャック端子で対応し、別売の変換ケーブルを用いることでコンポジットビデオ入力端子とアナログ音声入力端子が可能になる。音声出力端子は光デジタル端子とステレオミニジャック。ミニジャックはヘッドフォン端子も兼ねているが、前述したようにアクセス性が悪いので、頻繁に抜き差しは難しい。

 USB端子はUSB1、2、3の3系統を装備。USB3のみが録画用HDDの接続に対応する。ハイエンドクラスの製品にしては録画機能が限定的で、2番組同時録画には対応しない。ここは有機ELのライバルに及ばない部分である。

 Windows PC(NVIDIA GeForce GTX 1080)を用いて、4K/60HzのRGB888表示をHDMI2/3端子に接続して試してみたが、正しく表示された。

 ただし、事前に[設定]-[外部入力設定]-[HDMI信号フォーマット]にて設定を[拡張フォーマット]に設定する必要がある。この「拡張フォーマット」が18Gbpsモードに相当するので、UHD BDやPS4 Proなどの4Kゲーム機、PCを接続した際にはこの設定は必ず行ないたい。

HDMI2,3は18Gbps伝送に対応。ただし、この性能を有効化するためには「HDMI信号フォーマット」を「拡張フォーマット」に設定する必要がある
HDMI階調レベルは手動設定も可能

操作性チェック~リモコンは音声検索対応。表示遅延はゲームモードで2フレーム

 リモコンは最近のBRAVIA採用されているコンパクトなバー状のもの。妙に肌触りのいいツルツルとした触り心地なのがユニークである。

音声入力対応のリモコン。[NETFLIX]ボタンの他、[Google Play]ボタンが実装されているのが特徴

 電源オン操作から地デジ放送の映像が出るまでの所要時間は約5.0秒。最近のテレビ製品としては標準的な早さだ。

 地デジチャンネルの切換所要時間は約2.5秒。こちらも標準的。HDMIから別系統へのHDMI切換速度は約4.0秒。これは最近の機種としてはやや遅め。

 55A1のメニュー回りを使ってみると、Android TVということもあってか、一般的なテレビ製品とは構成がだいぶ異なっている事に気づかされる。

 [ホーム]ボタンを押すとメインメニューが開くが、いわゆる「設定」メニューは一番下にあり、しかもカーソル移動ももっさりしているのでアクセス性はよくない。[設定]ボタンで一気に飛べるボタンが欲しかったところ。

 [視聴中メニュー]ボタンを押すと、抜粋された設定メニューにアクセスできるので、基本的な画質調整はこちらを利用した方がよい。

「詳細設定」-「映像オプション」の階層下にはHDRのEOTF設定や色空間設定の項目が列ぶ
色空間」はBT.2020を選択可能。
「HDRモード」はEOTFとしてハイブリッドログガンマ(HLG)が選択できる

 リモコンは音声入力に対応する。リモコン最上部のマイクボタンを押して「YouTubeで○○を検索」といった感じの検索できるのはかなり便利である。ただ、この音声入力機能は全ての映像サービスに対応しているわけではない。

 たとえばAmazonプライム・ビデオでは、音声入力は使えなかった。おそらく、映像サービスごとに対応可否がバラバラなのだとは思うが、これは改善を望みたい。各映像サービスで同じように使えないと不便だし、どのサービスで使えるかをユーザーが学習しなければいけないのもおかしな話だ。

音声入力はYouTubeには対応しているが、Amazonプライム・ビデオには対応していない。機能のばらつきが気になる

 電子番組表は、最近のテレビ製品、しかも4Kテレビのわりには表示が荒い。現在は、一番細かい表示にしても4時間分しか番組が表示されず、一覧性が芳しくない。番組予約計画を練るのにはパナソニックや東芝のように6~9時間分の表示は欲しい。また、フォントをもう少し細かくして、あと二段階くらいは一覧性に配慮した表示が欲しい。[ホーム]ボタンを押して開かれるアプリ一覧は既に相当細かい表示になっているため、それと比較するとデザイン上のアンバランスさを感じる。

 表示遅延については、例によって公称遅延値約3ms、60Hz(60fps)時0.2フレーム遅延の東芝REGZA「26ZP2」との比較計測を実施。

 画調モード「スタンダード」では60fps時、約5.0フレーム、約82msの遅延が観測された。

 一方、「ゲーム」モードでは多少短縮され、60fps時は約2.0フレーム、約32msの遅延が観測された。

 他の有機ELテレビがゲームモードで約16ms(60fps時約1.0フレーム)の遅延で収まっていることを考えると、やや残念な結果だ。プレイステーションを有するソニーファミリーだけにもう少し頑張って欲しい。

画調モード「スタンダード」時は約82msの遅延
画調モード「ゲーム」時は約32msの遅延

画質チェック~HDRだけでなくSDR映像も美しい。黒背景のレトロゲームもグッド!

 KJ-55A1の映像パネルは、LGディスプレイ製のRGBW式。ソニーは公言していないが、現状他の選択肢はなく、映像パネルをデジタル顕微鏡で撮影しても、他社の機ELテレビと画素構造が全く同じで、間違いない。

 画素は緑赤白青(GRWB)の順番のサブピクセル構造になっていて、シャープのクアトロンパネルの4原色サブピクセル構造とよく似ている。また、駆動回路のレイアウトの関係がやや波打った配列になっているのも、この有機ELパネルの特徴である。

50倍光学ズームでの撮影
300倍光学ズームでの撮影

 様々な映像を表示し、観察した限りでは、輝度を稼ぐためなのか白色サブピクセルの駆動頻度が高い。ただ、純色の発色は良好で、白に振れた感じはなく、自然である。このあたりはさすがによくチューニングされている。

 デジタル顕微鏡写真を見てもらうと分かるように、画素を区切る黒格子筋が最近の4K液晶テレビと比較すると太い。これは各画素の開口率が低いことを表している。ただ、4K解像度にもなると、表示映像を見る限りでは、ここから粒状感を感じることはない。

 東芝、パナソニックの有機ELテレビの評価時にも言及しているが、評価軸には「明るさ」「暗部階調性」「発色」が重要。今回も同様の評価ポイントで見ていくことにする。

 「明るさ」は、液晶と比較すれば暗いことは否めないが、暗部の沈み込みが優秀なために、コントラスト感は素晴らしい。UHD BDのHDR映像はもちろんなのだが、普通のSDR映像としてのYouTubeの4K映像や、デジカメのスチル写真なども、液晶モニターで見ているのとは異なる次元のコントラスト感で表示され、リアリティが凄い。たまたま再生してみた筆者の友人が野菜ジュースを作る4K動画において、まな板に置かれている野菜とフルーツが妙に立体的に見えて驚かされた。

 それと最近は、80年代後期から90年代中盤くらいまでの昔の2Dグラフィックスベースの横スクロール系シューティングゲームの映像のYouTubeをよく見るのだが、この頃のゲームの映像は漆黒の宇宙を背景に、無数の星々や障害物を流した背景グラフィックスの作品が多い。この漆黒表現が有機ELとめちゃくちゃ相性が良く、当時ブラウン管で見た映像よりも格段に美しく、背景の奥行きが感じられて「おお」と声を上げてしまったほどに素晴らしい。

 筆者はR-TYPEシリーズ、グラディウスシリーズなどを見てみたが、なかでも「パルスター」の映像が美しいと感じる。30代中盤以上のゲームセンター世代は是非一度見てみると面白いと思う。

 「暗部階調性」も他社の有機ELに全く見劣りしないレベルに仕上がっている。

 今回の評価ではUHD BD版の「ラ・ラ・ランド」を視聴したが、同作はライブハウスや劇場などの暗がりのシーンや、夜のシーンが多く、有機ELの暗部階調の実力を見るにはおあつらえ向きの作品だ。

 チャプター9、チャプター11の2つのライブシーンは漆黒の背景に佇む登場人物達にスポットライトが当たる状況が多いが、焚かれたスモークの陰影、暗闇から立ち上がる黒人の肌の質感などは、実にアナログチック。自発光が不得意とする「暗く光らせて作る暗部階調」の負い目を感じさせない。

 鋭い高輝度階調表現は映画ではなかなかお目にかかれないので、このあたりについてはPS4 Proで4K/HDR映像対応の「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」をプレイして確認。同作の「チャプター18:ニューデポン」のエイブリーの屋敷のシーンは屋根まで朽ち果てた廃墟の豪邸においては、陽光が所々屋内に差し込んできて、レリーフの彫り込まれた柱を目映く照らすのだが、SDRでは白飛びして味気ない表現なのに対し、HDRでは、明るく照らされたレリーフの凹凸がちゃんと描き出されているのがわかった。

SDR時
HDR時

 暗部だけでなく高階調の領域も正しく表現できているようだ。

 発色は、パナソニックのEZ1000やEZ950と比べると若干派手目な印象があるが、違和感はない。

 カラーボリュームにおける暗部から明部に渡っての色再現の安定性はBRAVIAの液晶モデルにおいても上手にチューニングがなされているが、本機もそのあたりは不満なし。白色サブピクセルを組み合わせての安定した色表現は難しいはずだが、前出の「ラ・ラ・ランド」などでも暗がりから明るいところに、演者が飛び出して来たりするようなシーンでも肌色が変な色に化けることはない。

 鮮烈な色彩表現を楽しもうと「君の名は。」のUHD BDも試聴。アニメらしい記憶色主体で描かれる色使いは、本機のやや派手目な発色との相性は抜群だ。アニメは、画調の傾向からして輝度の高い液晶でも十分楽しめるのだが、有機ELの55A1では、艶やかな発色に加えて、輪郭線の黒が液晶では表現し得ない締まりを見せるため、文字通り「動く絵(画)」を見ているような気分になる。最近のアニメは手書き作画であってもデジタルなCGフレームなのだが、それがキャンバスの上にポスターカラーと細ペンで描いたように見えるのは発見であった。

 各画調モードのスペクトラムを計測してみたが、青色の強度が強く、概ね他の他社の有機ELテレビと似たような傾向だ。

「スタンダード」。輝度が優先されるモード
「アニメ」。スタンダードとよく似た傾向
「シネマプロ」。青を絞って相対的に赤緑のバランスを引き上げている。映画はこれ
「ゲーム」。意外に発色が良い

 シネマ系の画調モードの「シネマプロ」では、青を押さえることで、相対的に緑と赤を持ち上げる色調になっているがその分、輝度は下がる。ただ、映画などは、暗室にしてこのモードで楽しむのが安泰である。

 テレビ放送などは輝度が高まる「スタンダード」でもいいだろう。

 それと、発色とは直接関係ないが、本機も、ユニフォミティ(輝度均一性)が秀逸だったことを付け加えておく。画面外周から中央までが輝度ムラ一切なしというのはこれまた液晶ではあまりない見られない表現力なので、ここにも有機ELのありがたみはある。

 今回の評価で1つだけ気になったのは、地デジ放送の映像が、他社の有機ELテレビと比較するとあまり芳しくなかったことだ。「スタンダード」画質でバラエティやニュース、高校野球などを見ていたが、MPEG系のモスキートノイズが結構見え、またアップのタレントの髪のようなディテールをボカす方向で表示され、4K超解像の恩恵があまり得られていない印象。手元にあった他社の40型と55型の4K液晶テレビと比較してもそういう印象だ。このあたりは一層のチューニングを望みたいところ。

これが一番“欲しい”有機ELテレビ

 KJ-55A1の評価で、競合に対して優位でないと思われるポイントは、「テレビの録画機能」、「表示遅延」、「地デジ画質」なとが挙げられる。しかし、これらはA1シリーズを「映像鑑賞用の高画質モニター」として見なせる人であれば気にならないはずだ。

 かくいう筆者も、既に録画機器は持っているし、ゲームをプレイする際のゲームモニターもあるし、地デジは地デジが綺麗なテレビがある。だから、「欲しい有機ELテレビ」としては、このBRAVIA A1シリーズがナンバーワンだ。

 一般のユーザーが、有機ELテレビに対し「液晶とは違うテレビ」という期待感を持って店頭にやってきたとすれば、もっともその期待に応えてくれそうなのは、BRAVIA A1シリーズといえるかもしれない。

 クセはあるが、設置スタイルはインテリアとしてカッコがいいし、来客に披露する際に「4K」「有機EL」という2つのキーワードに加えて、もう一個「スピーカーがどこにもなく画面から音が出る」という特徴も自慢できる。「オーナーシップをかき立てる」という意味において、魅力溢れる商品になっている。

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KJ-55A1

トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。3Dグラフィックスのアーキテクチャや3Dゲームのテクノロジーを常に追い続け、映像機器については技術視点から高画質の秘密を読み解く。3D立体視支持者。ブログはこちら