西川善司の大画面☆マニア

第237回

AQUOS 4Kが画質もOSも一新! よくしゃべるAIoTテレビ「LC-50US5」

 シャープのAQUOS 4Kが生まれ変わった。4Kテレビの上位モデルAQUOS UH5/US5シリーズは、シャープ国内向けテレビでは初めてAndroid TVを採用したほか、独自のAIoTクラウドサービス「COCORO VISION」により、人の“好み”を学習するなど独自機能を搭載。さらにシステムLSIなども一新したという「フルモデルチェンジ」製品だ。

AQUOS 4K「LC-50US5」

 音にこだわったAQUOS UH5シリーズは、60型「LC-60UH5」と55型「LC-55UH5」の2サイズ、フロントスピーカーのAQUOS US5シリーズは、60型「LC-60US5」、55型「LC-55US5」、50型「LC-50US5」の3サイズで展開する。

 いつもならば、ハイエンドモデルのUH5を選んで評価する、のだが、大画面☆マニアでは、設置を一人でやることもあり、重いモデルは苦手(笑)。UH5だと55型でも30kg以上あるので、あえて売れ筋で軽量なUS5を評価することにした。シャープにもLC-60UH5をプッシュされたが、筆者のわがままを許してほしい(笑)。

 ちなみに、UH5シリーズはバックライトのエリア駆動に対応し、さらに60型は直下型のバックライトの画質的には4Kフラッグシップという位置づけになる。

 今回は、AQUOS US5シリーズの50型「LC-50US5」を取り上げることにした。実売価格は22万円前後。なお、55型は27万円前後、60型が33万円前後だ。

設置性チェック~50型で首振り機能あり。軽量。サウンド良好

 今回も例によって筆者宅で一人でセットアップした。製品はディスプレイ部とスタンド部が分解されて梱包されており、ディスプレイ部とスタンド部とを合体させる方式。

 スタンド部には金属製のフレームをネジ留めして,このフレームにディスプレイ部を引っ掛ける方式だが、一人で作業するのがけっこう難しかった。フレーム側に4つある爪をディスプレイ側にある穴に全て入れてからはめ込むのだが、フレームの下側の爪がやや引っ掛けにくく、コツがいる。二人だとかなり楽だと思うが、一人でできなくはない。

ディスプレイ部の重量は18kg。スタンド部は4kgで、両方合わせても22kg。全然体力に自信のない筆者でも一人で階上へ上げることができた
極薄モデルではないが設置時の前後の張り出し感はない。特に後方が短く、壁に寄せて設置が可能

 寸法はスタンド取り付け後で112.6×27.1×71.9cm(幅×奥行き×高さ)。スタンドは前に張り出しているが、後方への張り出しが少ない独特なデザインで、一般的な大画面テレビよりも、かなり壁に寄せて設置できる。ここは設置時のポイントになりそうだ。

スタンド部

 額縁は上側と左右が共に約11mm。下側は中央部が突起しているのでそこまでを計測すると約35mm。まずまずの狭額縁設計である。

 設置基準面からディスプレイ部下辺までの隙間の距離は約45mm。平均的なブルーレイパッケージを4本積み重ねた高さとほぼ同程度だ。表示画面の最下辺は設置基準面に対して約77mmあたりに来るので、画面がかなり下にくるイメージだ。視聴位置と設置台の高さの関係性を、念入りにシミュレーションしておきたい。

 スタンド部は左右±30°の範囲でスイーベル(回転)する構造。50型クラスでこの機能を搭載している製品は珍しいので、本機ならではの特徴の1点ということができる。

スタンドは左右に±30°回転する。最近の大型テレビでは珍しい機構だ

 表示面はハーフグレア加工相当の「N-Blackパネル」で、これもシャープAQUOSの独自技術になる。表示面に屈折率の異なる透明板を重ねた構造にすることで、表示面からの光を拡散させずに透過させ、かつディスプレイ面に相対する視聴位置付近からの外光は拡散させる。その効果を目で確認したい場合は、LED懐中電灯などを画面に設置させて斜め方向に照らしてみるといい。その鏡像が縦長にビヨーンと伸びて映ることが確認できるはずだ。室内の映り込みは皆無ではないが、一般的な同型テレビ製品と比較すれば少ない。ここも本機の面白い特徴である。

まずまずの狭額縁設計。N-BLACKパネルの採用で室内情景の映り込みは低減されている

 スピーカーシステムはこれもユニークな2.1chシステムを採用。オンキヨーとの共同開発で誕生したというこのサウンドシステムは3Way、5スピーカーシステムというゴージャス仕様。総出力は35W(10W×2ch+15W)。

 メインスピーカーは下向きながらも開口部を視聴者側に向けた前面開口設計。さらに高音再生用のツイーターはユニット自体を視聴者に直接向けている。サブウーファは比較的大型のものを背面側中央に設置する。

 実際の出音はテレビ視聴には十分だし、パソコンやスマホを繋いでのジュークボックス的な活用にも耐えうる音質になっている。少々気になった点と言えば、比較的画面から近い位置で視聴していると、音像がスピーカー開口部のある下側に定位しているような聴感になるところ。視聴距離を十分にとればいいのだが、4Kコンテンツは比較的近場で見ることが奨励されているため、少々気になった。

スピーカー。視聴距離によっては音像が下に感じられるが、音質は悪くない
背面。下部の膨らみはスピーカー部。中央にはサブウーファユニットを組み込んでいる

 消費電力は169W。年間消費電力量は148kWh/年。エッジ型バックライトシステム採用の4Kテレビとしてはスタンダードな消費電力だ。余談ながら、今年話題となった有機ELテレビと比較すると、ほぼ半分の値になる。

接続性チェック~アナログRGB温存。フルスペック4K入力は2系統

 接続端子群は正面向かって左側の側面側にレイアウトされる。左背面側にも一部配置されているものもあるが、メインは側面側だ。

側面側の接続端子群。こちらがメイン
背面側の接続端子群。アナログRGB入力端子に驚く!

 側面側にはHDMI入力が4系統あり、全てがHDCP 2.2対応となっている。ただし、フルスペックの4K(HDR、18Gbps HDMI対応など)はHDMI1/2のみである。

 なお、デフォルト設定では10.2Gbps相当だが、設定を変更することで18Gbps HDMIへ対応可能となる。実際に、筆者が試してみたところ、ちゃんとPCにおいて4KのYUV444、RGB888の60Hz伝送が行なえた。

HDMIの伝送速度を選択する設定。デフォルトは「互換モード」(10.2Gbps)。フルスペックの4K伝送を行なうならば「フルモード」(18Gbps)に設定すべし

 コンポジットビデオとアナログ音声の入力端子は、3.5mmの4極ミニプラグから変換して利用する方式。変換プラグは付属しておらず、市販のものを用意する必要がある。

 映像入力系では、アナログRGB入力端子(ミニD-Sub15ピン)を備えているのがユニークだ。現在発売されているパソコンでもほとんど省略されているが、シャープAQUOSでは、この端子を伝統的に大事にしている。

 側面側には、USB端子が2系統。USB1がUSB 3.0、USB2がUSB 2.0の端子で、テレビ録画用HDD接続にはUSB2を活用する。HDDによる録画機能は2番組までの同時録画に対応。しかも、録画番組とは別の番組を録画中に視聴できる。そう、チューナはトリプル仕様なのだ。テレビっ子にはありがたい。

 USB1はUSBメモリなどの接続を想定したもの。試しにUSBメモリをUSB1に接続してみたが、exFATのUSBメモリは対応対象外というメッセージが表示され利用できず。FAT32だとちゃんと認識するが、手持ちのH.264動画も「不明なファイル」として再生できず。以前のモデルよりもメディア再生適応力が低下したような印象だ。ちなみにFAT32までの対応だと、4GB以上のファイルサイズは再生できない。

 音声出力端子は、側面側にアナログ音声/ヘッドフォン出力の兼用端子、背面側には光デジタル音声を各1系統備えている。LAN端子は背面側に装備し、100BASE-TXまでの対応。IEEE 802.11ac対応の無線LANも内蔵する。

操作性チェック~AIエージェントをテレビで提供するCOCORO VISION

 リモコンは新デザインのもので、おしゃれな白と黒のツートンカラー仕様。上半分の黒いエリアは従来の「テレビリモコン然」としているが、白いエリアは「COCORO VISION」「COCORO VIDEO」「NETFLIX」「YouTube」といったネットワーク系の機能の呼び出しボタンが列ぶ。よく観察すれば放送種別の切り替えボタンの[地上][BS][CS]の並びに「+」があしらわれたテレビのようなアイコンが描かれているのだが、これもネット配信系サービスへの切り替えボタンになる。

 テレビという装置が、ネット連動機能を重視せざるを得ない状況になってきたことが、こんなところから垣間見られる。

新デザインのリモコン。白黒のツートンカラーでなかなかスタイリッシュだ
白い部分にはネット連動機能がレイアウトされている

 電源オンで地デジ放送画面が出るまでの所要時間は約6.0秒。「クイック起動」を活用しての値だ。最近は2秒台や3秒台のモデルもあるので、もう少し速いとよいのだが。

 地デジチャンネルの切換所要時間は約3.0秒。こちらは標準的な速度といったところ。HDMI→HDMIへの入力切換は約2.0秒。こちらはまずまずの早さ。

 LC-50US5はAndroid TVを搭載するため、[ホーム]ボタンで開かれるのは、映像配信サービスのアイコン画面になる。

[ホーム]ボタンを押して現れるメインメニュー

 「設定」メニューは、このメインメニューの一番下にあり、これを開くと、Androidベースのスマホやタブレット端末の「設定」画面とよく似たメニューが開かれる。メニュー自体のまとめ方は、Android端末ユーザーであれば取っつきやすいと思う。

 画質調整などは[ツール]ボタンからワンタッチで呼び出せる。メインメニューを探らなくて良いぶん、スピーディに調整できるのはありがたい。また、ここの[ツール]メニューの最下段には「基本設定」があり、ここを選ぶと、テレビ関連の調整をまとめたメニューが出現する。Android TVは、テレビ関連設定へのアクセス性が悪い機種が多いが、本機は洗練したメニュー設計となっていると思う。

「設定」メニューは[ホーム]からたどるとアイコン群の一番下にあってアクセス性はよくない
[ツール]ボタンはテレビ関連設定へのショートカットボタン的な役割を果たす

 新リモコンには、他社製品でも採用が進む「音声入力機能」を搭載。別体型の音声入力リモコンを付属させるのではなく、1つのリモコンに音声入力機能を統合させるデザインが一般的になったことは良いことだ。

 音声入力機能はクラウド側にあるAIエンジンとの連携で成り立っているため、年を経るごとに賢くなって使いやすくなっている。

 以前「YouTubeでストリートファイター5のバルログを検索」とやった場合には謎の変換が起きていたのだが、今では、ドンピシャの検索をしてくれる。間違いなく、実用レベルだ。

「YouTubeでストリートファイター5のバルログを検索」がちゃんと通る、音声認識機能

 さて、本機の最大の特徴でもあるシャープが提唱する「AI」と「IoT」を融合させた「AIoT」機能について触れねばなるまい。

 シャープはそのAIoT機能として「COCORO」プロジェクトを昨年から進めてきており、テレビでは今期の4Kモデルを中心に搭載をしてきた格好だ。

 COCORO VIDEO(レンタル型ビデオオンデマンド)、COCORO GAME(クラウドゲーミング)、COCORO MUSIC(定額制音楽配信サービス)といったCOCOROシリーズが搭載されているが、これらは,「既存の類似機能のブランド変更」的なものだが、シャープが一押しとしているCOCORO VISIONは、なかなかユニークなものになっている。

人感センサーでユーザーを認識するとCOCORO VISIONが起動する

 COCORO VISIONでは、ユーザーが普段、よく視聴する番組の嗜好を学習し、自動で類似番組や似た傾向の番組をお勧めしてくれる。これまでも似たような機能は他社製品にも搭載されていたが、AQUOSのCOCORO VISIONでは、人がテレビの前に立ったり、横切ったりすると自発的に電源オンとなり、音声で、そうしたお勧めのコンテンツを読み上げてくれるのだ。音声は男性、女性のどちらも選べ、ときどき「季節の挨拶」なんかもしてきたりするので面白い。テレビ番組以外にCOCORO GAME(クラウドゲーム)の新作や、COCORO MUSIC(音楽配信)のお勧めプレイリストも提案してきたりするので、とても積極的だ。

COCORO VISIONが作動する際にはディスプレイ部最下部が発光する

 スマホ用のCOCORO VISIONアプリもリリースされており、COCORO VISIONの提案をスマホ上からも確認ができる。そのお勧めをすぐに楽しみたい場合は、アイコンやリンクをスマホ上でタッチするだけ。また、テレビ番組の選局やHDMI入力切換もアプリから行なえるのでリモコン的な活用も可能だ。

COCORO VIDEOの起動画面
スマートフォンからもCOCORO VISIONの機能を活用できる

 人感センサーは温度変化をキーにして作動するとのことだが、試した感じでは画面前面付近でモノが動いたり、設置場所周辺が振動しても感知するようだ。

 夜中に起きて飲み物をダイニングキッチンに取りに行ったりして室内照明を付けると人が来たと判断して勝手に本機が始動し「おはようございます」と話しかけてきたときは驚いたが、シャープとしては、Amazon EchoやGoogle Homeのような、各家庭に1台のAIエージェントとして訴求していきたいのだろうか。

 まだ荒削りなところはあるが、シャープが手がける他ジャンルの家電との連携も出来るようであれば、COCOROシリーズは化けるかも知れない。少なくとも、今発売されているテレビで一番、おしゃべりなテレビであることは間違いない(笑)。

 ちなみに、COCORO VISIONがどうしても煩わしいと思う人は無効化もできる。

COCORO VISIONの動作設定。突然しゃべり出すテレビに馴染めないならばオフにすることも可能

 過去モデルでは、設定メニューの項目にカーソルをあてた状態で,リモコン上の[?]ボタンを押すと、その設定メニューに関連した電子取扱説明書にジャンプできたのだが、本機では使えなくなっている。[?]ボタンを押すと、電子取扱説明書のトップページに飛べるだけなのは残念だ。

 最近は、採用機が減ってきている「2画面」機能。これを搭載し続けてくれているのがシャープのAQUOSシリーズなのだが、本機にもちゃんと搭載されている。以前のように[2画面]ボタンが無いのはさみしいが、きちんと使える。同時表示できる2画面の組み合わせは「放送+外部入力」「録画+外部入力」のみで、ディスプレイ製品のような「外部入力+外部入力」の組み合わせには対応しない。

「2画面」メニュー。以前のAQUOSでは[2画面]ボタン一発で呼び出せたが、[ツール]ボタンからメニューを潜って活用する仕様に
親子画面(ピクチャー・イン・ピクチャー)の他、横並び画面(サイド・バイ・サイド)の配置が選べる2画面機能

 表示遅延についても計測した。比較対象は「0.2フレーム(3ms)/60Hz」という低表示遅延性能を誇る東芝REGZA 26ZP2だ。

 測定した画調モードは「標準」と「ゲーム」の2モードだ。

 「標準」モードでは約100msの遅延を確認。これは60fps換算だと約6フレームの遅延と言うことになる。

 「ゲーム」モードでは約33msの遅延を確認。これは60fps換算だと約2フレームの遅延と言うことになる。

 業界で最も早期から「ゲーム」モードを搭載していたAQUOSシリーズだが、競合製品の多くが約1フレーム未満になってきていることを考えると、もう一段の改善を望みたい。

「標準」モードでの遅延時間は約100ms。左が26ZP2、右がLC-50US5。
「ゲーム」モードでの遅延時間は約33ms

画質チェック~黒の締まりも発色も良好。暗色表現がやや苦手か

 LC-50US5の液晶は、UV2A液晶パネル(VA型パネル)。バックライトシステムはエッジ型を採用しており、映像フレーム内の明暗分布に応じた局所的なバックライト明暗制御(エリア駆動)には対応しない。ちなみに、上位モデルのUH5シリーズでは「メガコントラスト」技術という名称で、エリア駆動を導入している。

RGBサブピクセルが綺麗に縦に並ぶストライプ配列

 エッジ型バックライトの場合、映像フレームの平均輝度や、暗部と明部の面積比などを分析して、視覚上違和感の内容に階調を動的に制御していく必要があり、このあたりをうまくやらないと「黒浮き」などが露呈しがちとなる。このあたりのチューニングは、うまく作り込めている。

 バラエティ番組などの明るい舞台セットと照明で照らされた人物中心の映像では、液晶の明るさを効果的に活かした明るいパリッとした液晶映像が楽しめる。

 一方で、暗めの映像では輝度をグッと落とすことで、黒浮きを低減させる工夫を入れてくる。構造上、エリア駆動ができないので、いわゆるフレームバイフレームのバックライト制御を行なっているわけだが、暗部の階調もそれなりに描き出せている。

 もちろん、エリア駆動搭載モデルと比較すれば、本機との表現力の差はあるかと思う。しかしエッジ型バックライトモデルとしては、UV2Aパネルの恩恵もあって黒の締まりはよい。

明暗差の激しいシーンでも、暗い階調と明るい階調の表現を両立できている

 視野角については画面に対して、視線角度が45°あたりを下回ってくるとVA型液晶特有の黒浮きや色変移がわずかにあるが、実用上は問題なし。IPS型液晶にはそうした問題が無いと言われるが、その分、IPS型液晶はネイティブコントラストが低いので、そこは「よしあし」な関係である。

 意地悪に、暗い映像で斜めから見たりすると黒浮きは出てくるが、50型のLC-50US5の場合だと、画面の正面中央から描いた半径1m以上の範囲から見る分には特に違和感はない。

 発色も、テストパターンやテスト画像を見る限りは違和感はない。赤緑青の純色も鮮烈で純度も高い。肌色などの発色も自然だ。

中明色を全画面表示させてユニフォミティ(輝度均一性)をチェック。左右外周がやや暗いがエッジ型バックライトのわりにはまずまず。

 本連載ではお馴染みの分光器による計測もしてみた。今回は測定を各画調モードで行なった。

 バックライトの白色LEDの発光源が青のため、そのピークだけが凄まじく鋭いのは毎度お馴染みの特性だが、それでも、緑と赤のスペクトルの分離感が優秀だ。この赤緑青のスペクトルピークが分離しているほど、それらを混色させたときの発色が理想に近くなるので、本機はその点で優秀だと言える。

「標準」モード
「シネマ」モード
「ゲーム」モード
「PC」モード
「フォト」モード
「ダイナミック」モード

 映画コンテンツは、Ultra HD Blu-rayの「ワンダーウーマン」を中心に視聴したが、気が付いた点が何点かある。

 1点目はエリア駆動のないエッジ型バックライトモデルながらも、HDR表現がうまく行なえているということ。

 目映い閃光エフェクト表現や、HDR表現では定番となりつつある太陽の逆光表現などは、HDRコンテンツらしい激しいまでのコントラスト感が楽しめた。本作では、主人公のワンダーウーマンがメタリックワインレッドとも言うような金属光沢の臙脂(えんじ)色と黄金の衣装を纏うのだが、シーンによってはそのハイライト表現がとても立体感を伴って見えていた。

 2点目は、主役一行の暗がりでの隠密行動などのシーンで、暗い肌色や暗い背景の階調が粗く見えたこと。中明色以上の明るい色はとても自然に見えるのだが、かなり暗めの暗色は階調分解能が低く見える。暗色の色味自体は残っているが、縦横軸を色域、高さ方向の軸を輝度域にとった立体的な色表現域、いわゆるカラーボリュームにおいて、暗い色域の分解能が不足している印象を持つ。

エッジ型バックライトシステムにとっては"いじめ"のテスト画像。しかし、UV2Aパネルの恩恵か、意外に黒領域の締まりはいい。

 LC-50US5は倍速駆動にも対応する。機能としては2つのブロックに分かれていて、毎秒60コマの映像を算術合成した補間フレームを挿入することで毎秒120コマ表示させる「倍速液晶技術」と、毎秒24コマの映像を3-2プルダウンさせるだけでなく、その足りないコマを算術合成して毎秒60コマ化する「フィルム・デジャダー」がある。

 双方とも、その振る舞いは優秀で、いつもこの類の機能テストで使っている「ダークナイト」のビル群の上を飛ぶ飛行シーンでも破綻(補間ミス)がないばかりか(フィルム・デジャダー機能)、一般的なテレビ視聴においても(倍速液晶技術)破綻は見られなかった。また、毎秒480コマ相当のバックライトスキャニング(実質的な黒挿入)である「480スピード」モードは視覚上暗くはなるが、もともと本機はかなり明るいため、暗室で見る分には全く違和感なく見られる。

 シャープのAQUOSはもともとこの種の機能に関して優秀だったが、今や熟成の域に達しているといったところか。「ぬるり」としたスムーズ映像表示が好きな人には強い魅力があると思う。

充実の機能&性能のAQUOS 4K

 設置性はコンパクト軽量、省電力性能も優秀。サウンドも良好。HDR映像のコントラスト感は良好だし、明るい色に関しては発色もいい。画質に関しては、暗色がらみに少々課題は感じたが、それ以外は不満はなし。録画機能も充実している。

 COCORO VISIONというAIエージェント機能は、人感センサーまで搭載しているのは面白い。ただ、Amazon EchoやGoogle Homeのような自然言語ベースの対話機能は有していないため、パンチは弱い。せっかくのAndroid TVなので、Google Home miniくらいの機能があればもっと楽しくなりそうだ。いま、4Kテレビに必要な要求を満たした、満足度の高い製品になっている。

 なお、AQUOS 4Kの最上位「UH5シリーズ」は、50型「LC-55UH5」が35万円前後、60型「LC-60UH5」が36万円前後だ。50型のLC-50US5より10万円以上高価だが、55/60型の価格差はUH5/US5シリーズ間であまり大きくないため、55型以上を選ぶのであれば、UH5シリーズが魅力的かもしれない。画質面では、UH5ではバックライトエリア駆動に対応し、さらに60型は直下型バックライトという特徴もある。貸出を断っておいてなんだが(笑)、今後機会があれば、LC-60UH5の画質も確認したい。

トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。3Dグラフィックスのアーキテクチャや3Dゲームのテクノロジーを常に追い続け、映像機器については技術視点から高画質の秘密を読み解く。3D立体視支持者。ブログはこちら