第146回:ゲーム/3Dに最良のパーソナルREGZA
~偏光3Dメガネ採用プレミアム機。東芝「32ZP2/26ZP2」~
32ZP2、26ZP2 |
昨年からブームとなっている3Dテレビ製品。各メーカーが自社方式の優位性を訴えている中で、柔軟な製品開発を行なっているのが東芝だ。
東芝は2010年秋に最初にフレームシーケンシャル方式(アクティブシャッター3Dメガネ方式)としてREGZA ZG1/F1を投入。この夏にもフラッグシップ機のZG2シリーズを展開している。さらに、'10年冬にはREGZA GL1シリーズとして裸眼立体視方式の3Dテレビを発売し、注目を集めた。
そして今度は、偏光方式(パッシブ3Dメガネ方式)の3DテレビとしてREGZA「ZP2」を投入。結局、東芝は実用化されている3Dテレビの方式を一通り製品化してきたことになる。
今回の大画面☆マニアでは、日本メーカーとしては、偏光方式3Dテレビ一番乗りのREGZA ZP2を取り上げることにした。
■ 設置性チェック~デザインはオーソドックス。消費電力はやや高め
今回の大画面マニアでは、32型の32ZP2と26型の26ZP2の両方の実機を評価する。両者は画面サイズ、ボディサイズ以外に、液晶パネルに起因した基本性能が違うが、基本機能部分に違いはない。本稿では両シリーズに共通する事柄については単に「ZP2」と記し、型番固有の事柄については型番を明記する。
32ZP2 | 26ZP2 |
スタンド装着状態での重量は32型「32ZP2」が9.5kg、26型「26ZP2」が6.5kg。外形寸法は32ZP2で77.4×27.3×49.0cm(幅×奥行き×高さ)、26ZP2が64.8×27.3×47.6cm(同)。スタンドの台座部分はともに27.3cmなので、天板の狭いサイドボードの上に設置できる。筆者が試してみたところでは、26ZP2はカウンターキッチンのカウンターにも設置できた。
3種類の転倒防止機構を用意。1つは、スタンドの台座部にある穴にアンカーネジを打ち込んで設置台にネジ止めしてしまう方法。2つ目は、スタンドの台座底面にある転倒防止バンドを設置台の裏面などにネジで固定する方法。3つ目は、スタンドの台座部分のフックや穴に紐を通して設置台や壁などに固定する方法。説明書によれば、上記3つのうち、どれか1つでもいいし、複数の組み合わせでもいいそうだ。
今回は、テレビ台ではなくテーブルに設置して、視聴距離50cm程度の比較的視聴距離の短い環境で評価を行なったが、32/26型のいずれも画面が大きすぎるという印象はなかった。つまり、ZP2はテレビ製品だが、パーソナルなマルチメディアディスプレイ的な活用も十分いける。
32ZP2の側面、厚みは4.2cm |
ディスプレイ部の薄さは32ZP2が4.2cm、26ZP2が4.4cm。いまとなっては"極薄"というほどではないが、十分に薄い。額縁は最近流行のシームレスタイプではなく、額縁らしい額縁が存在するデザインとなっている。額縁の幅は上側が36mm、左/右側が34mm、下側(スピーカー部含む)が60mmとなっている。スタンドの台座はシンプルな平板デザインだ。スタンドには高さ調整機能は無し。設置台位置からディスプレイ部下辺までの距離は約57mm。
スタンドには上15度、下6度の角度調整機能は搭載されているが、左右の首振り機能はない。パーソナルユースを踏んでのことなのかも知れないが、この点は留意しておきたい。壁掛け設置にも対応しており、純正の取り付け金具「FPT-TA11」(実売23,000円前後)が設定されている。
スタンド部 |
パネル表面はハーフグレア加工。適度に外界からの映り込みを抑制しつつも、表示面の拡散を抑えている感じで、コントラスト感と画素のフォーカス感も悪くない。スピーカーは、本体下部の左右に2ユニットずつ、合計4スピーカーが実装されている。各ユニットは2.0×8.0cmの角形ユニットで構成され、総出力は20W(10W+10W)。
実際の出音を聞いてみると、テレビ視聴には必要十分な音質になっている。高域と低域がカットされた、シャリシャリした音質を想像していたのだが、パワー感もまずまず。ただ、音量を上げていくと低音と高音のパワー感がもの足りなくなってくる。
定格消費電力と年間消費電力量は32ZP2が126W、95kWh/年、26ZP2が86W、75kWh/年。3Dテレビということもあってか、両者共に、同画面サイズの競合製品と比べると若干高めだ。特に32ZP2は画面サイズのわりには消費電力の高さが目立つ。冷却ファンなしの静音設計となっているため、稼働時のノイズ等は無かった。
偏光方式のレグザシアターグラス3D(FPT-P200(J)」が1個付属する |
■ 接続性チェック~マルチメディアディスプレイとしての利用にも配慮した接続性
32ZP2の接続端子部 |
接続端子類は、正面左側面と背面に装備。端子のラインナップは32/26型で違いは無い。HDMI入力は3系統で、うち1系統が背面、2系統が側面だ。背面側がHDMI1となっており、ここがHDMI ARC(オーディオ・リターン・チャネル)に対応する。側面がHDMI2、3となるのだが、HDMI3に連動させられるHDMI3アナログ音声入力が背面側にあるので少々対応関係がややこしい。
PC接続端子はないが、HDMI端子を用いてデジタルRGB接続できる。REGZAの場合、HDMI階調レベルの誤認問題も基本的に起きないが、万が一、この部分で不都合が出た場合には、「機能設定」-「外部入力設定」階層下の「RGBレンジ設定」で「フル」「リミテッド」の明示設定が行なえる。
ちなみに、最新のREGZAでは「RGBレンジ設定」の「オート」とは別に、新たに「自動ゲームモード」が搭載されている。「HDMI自動画質モード設定」で、PS3やXbox360などのゲーム機を接続したHDMI入力を「自動ゲームモード」に設定すればいい。
自動ゲームモード設定時は、そのHDMI入力がデジタルRGBに切り替わった瞬間にゲームモードへと自動移行してくれる。PS3をBlu-rayプレーヤーとして活用しているユーザーにはありがたい機能だ。PS3はBD再生時はデジタル色差出力、ゲームプレイ時はデジタルRGB出力となるので(デフォルト設定時)、このモードを活用すればBD再生とゲームプレイのたびに画調モードを切り換えなくても済むのだ。「RGBレンジ設定」と共に活用したい機能だ。
RGBレンジ設定 | HDMI自動画質モード設定 |
x.v.Colorは非対応。Deep Colorについては32ZP2のみが対応している。理由は分からないが、ここには32ZP2と26ZP2とで若干の機能差があることになる。
アナログビデオ入力は2系統。1系統はコンポジットビデオ入力。もう1系統はD5入力とコンポジットビデオの排他仕様で、接続端子は2つあるが、実際に利用出来るのはどちらか一方の接続のみだ。音声出力端子としてはステレオミニと光デジタルを備えている。ステレオミニは音量レベルをラインレベル固定か、ZP2側のアンプ回路を経由した可変レベル(音量調整可能)かを「機能設定」-「音声出力設定」で調整出来る。この辺りのマニアックさもREGZAらしいこだわりだ。
この他、地デジ/衛星放送用アンテナ端子、Ethernet、USB端子(録画用USB HDD接続用)、ヘッドフォン端子などが実装されている。アンテナ端子はディスプレイ部背面に対して垂直に端子が立つような実装形式だ。
USB端子は1系統のみで、ここは録画用のUSB HDD接続専用端子と説明されている。が、USBキーボードを差し込んでみたら普通に使えてしまった。ZP2にはWebブラウザ機能が搭載されており、YouTube視聴にも対応しているが、コンテンツ検索の際には、このキーボード利用が便利に使える。ZP2のUSB端子は、公式にUSBハブにも対応しており、録画用のUSB HDDをハブ経由で接続することが容認されている。筆者の実験では、HDDだけでなく、USBキーボードもハブ経由で利用できた。
SDカードスロットはなし。ただし、LAN内のDLNAサーバー内の写真コンテンツ、楽曲コンテンツの再生には対応している。また、タブレット端末やスマートフォンから、REGZAを操作する「RZタグラー」など連動アプリが利用でき「レグザAppsコネクト」にも対応している。
■操作性チェック~新UI「REGZAメニュー」を搭載。あらゆる操作レスポンスが高速化
リモコンの「CT-90381」 |
リモコンは最近のREGZAで共通的に採用されている縦長のバー型デザインを踏襲している。ボタン上に刻印されている数字や文字のフォントが大きめなのは高年齢者層に配慮したものだが、そうしたユーザー層でなくとも、実際、ボタン上の表記は見やすい。
そして、REGZA独自の様々な機能(写真/音楽再生機能、録画予約管理、HDMI連動機器操作など)にアクセスするためのボタン名が[REGZAリンク]から[REGZAメニュー]へと改称された(レグザエンジンCEVO搭載のZ2シリーズから)。
ボタンの名前を変えただけだが、個人的には、これはとても分かりやすくなったと感心。従来は、本体側に設定した録画予約確認をするのにも、[REGZAリンク]ボタンを押す必要があり、"リンク"機能を連想させるこのボタンを押させる操作系には疑問を抱いていた。[REGZAメニュー]となったことで、きっとREGZA初心者も"いらぬ勇気"を使わずとも気軽にこのボタンを押すことが出来るはずだ。
[REGZAメニュー]ボタンを押すと出てくるREGZAメニュー |
メニューデザインも従来機のような文字列が並ぶだけの「いかにもREGZA」という"お堅い"メニュー画面から様変わりしている。具体的には、[REGZAメニュー]を押すと、「見る」「メディアプレーヤー」「入力切換」「ブロードバンド」「録る」といった「操作目的」のイラストアイコンが出現し、これをリモコンの左右ボタンで選択して、さらにメニューの下階層に潜っていく、という操作系となった。
直下の階層メニューアイテムは小さく表示されており、とても扱いやすい。選択カーソルをメニュー上で動かすのではなく、選択項目は常に時計の12時方向で固定され、メニュー項目の方が回転して動くインターフェースとなった。この操作レスポンスがゲーム機並に高速で小気味よい。
なお、上級ユーザー向けの、全ての設定項目にアクセス出来るメニューは、内蓋を開けて現れる[設定]ボタンを押すことで出現する。ここは従来REGZAから大きな変更はなく、文字列が並ぶクラシックなインターフェースとなっている。ただし、操作レスポンスはいい。
番組表の表示レスポンスも高速化されている。従来機では番組表内のカーソル移動や番組表のスクロールがもっさりとしていたのだが、ZP2ではボタン操作の瞬間にカーソルが移動し、スクロールもほぼ一瞬で行なわれる。
[設定]ボタンを押して出るメニューは従来通り | 番組表の出画やレスポンスは高速だ |
電源ボタンを押してから地デジ放送が表示されるまでの所要時間は約1.5秒。これはかなり早い。入力切換は[入力切換]ボタンを押して入力メニューを開いてから希望の入力系統を選択するか、あるいは連続で[入力切換]ボタンを押しての順送りで切り換えることが出来る。入力切換に掛かる所要時間は、HDMI→D5で約3.0秒、HDMI→HDMIで約2.5秒。これはそれほど早くはない。
デジタル放送のチャンネル切換所要時間は約1.7秒。こちらは標準的な速さといったところ。アスペクト比切換は内蓋中側の[画面サイズ]ボタンを押すことで順送り式に行なわれる(アスペクトメニューは現れない)。切換所要時間は約2.0秒(実測)で、意外に遅い。アスペクトモードは、フル、ノーマル、HDスーパーライブなど従来と同様だ。詳しい解説は「46ZH500」の回を参照してほしい。
アンダースキャン/オーバースキャンの切換は、テレビ視聴時とアナログソース入力時は[クイックメニュー]ボタンを押した先に現れる「画面サイズ切換」メニューでしか行なえない。しかし、HDMI入力時には[画面サイズ]ボタンで「Dot By Dot」モードを選択することでアンダースキャン選択が可能となっている。この操作系の不一致は昨年から気になっている部分だ。
ZP2の2画面機能は2画面を左右に並べて表示する、いわゆるSBS(サイド・バイ・サイド)モードのみの対応となっている。組み合わせられる2画面は、「外部入力+外部入力」の組み合わせ以外に大きな制限はなく、優秀だ。親子画面モードのPinP(ピクチャー・イン・ピクチャー)モードには未対応だが、SBSモード時の左右画面の大きさの大小はリモコンの上下左右ボタンで自在に調整できる。このサイズ操作のレスポンスはとても早く、しかもスムーズだ。
REGZAの特徴である充実した録画機能はZP2にも受け継がれている。USB接続した別売HDDへの録画になるが、ZP2では前述のようにUSBハブを利用することで同時に4台のHDDが接続が可能だ。著作権保護機構の関係もあってHDDは「ZP2への登録」という手続きを取る。登録は最大8台までが行なえる。「USBハードディスク設定」の「省エネ設定」を「省エネモード」にしておけば、録画動作時以外はUSBが通電されないようにできるので、接続したHDDがUSB電源連動動作対応であれば、録画/再生時以外は電源OFF状態にできる。
リモコンの蓋を開いた中に「今すぐニュース」や「設定」ボタンを備える |
地上/BS/110度CSデジタルのダブルチューナ仕様なので、2番組の同時録画も可能。ただし、2番組録画中は裏番組の視聴はできない。あらかじめ設定したニュース番組を上書き録画する「今すぐニュース」機能はZP2でも健在。一部のREGZAではこの機能を搭載しているのにもかかわらず、直接呼び出すボタンを省略してしまっていたが、ZP2では辛うじて内蓋を開いたところにボタンが生き残っている。ニュース放映時間中になかなか自宅にいられない忙しい人には便利な機能なので積極的に活用したい。
操作系としてわかりにくかったのは「ちょっとタイム再生」。これは「離席して戻ってきたときに離席した時点からの番組視聴を継続できる」機能だ。ZP2では、リモコン上の長細い[再生]ボタンの上に「ちょっとタイム再生」と記載されてるのでこのボタンを押すことでこの機能が開始されるのかと思いきや、押してもただエラーが出るだけで何も起こらない。実は「ちょっとタイム再生」機能はその記載がある[再生]ボタンではなく、[録画]ボタンを押すことで開始されるのであった。わざわざリモコンにシルク印刷を入れるのだったら、[再生]ボタンのトグル動作でこの機能が開始されても良かったと思う。
ブロードバンド関連機能も全部入りに近いほど揃えられており、「アクトビラ・ビデオ・フル」、「ひかりTV」、「T's TV」、「TSUTAYA TV」といったビデオ・オン・デマンド・サービスやYouTubeに対応する。
リモコンの上端付近にある[ブロードバンド]ボタンは、押してもカーソル位置が「ブロードバンド」に合うだけで、[REGZAメニュー]ボタンを押下して出てくるメニュー画面と同じものだ。結局、ユーザーは[ブロードバンド]ボタンを押した後、実際にブロードバンド機能項目を選ぶ前に必ず[決定]ボタンを押さなくてはならない。
せっかく専用のブロードバンドの呼び出しボタンを設けているのだから、これを押したときにブロードバンド機能のどれかをすぐに選択できる状態にすべきだ。また、外部入力画面を選択しているときには直接ブロードバンド機能が呼び出せず、一度テレビ画面を経由する必要がある。こうした些細な使いにくさはユーザーにストレスを与える。改善して欲しいポイントだ。
YouTubeは、動画のアップロートにこそ対応していないが、自分のYouTubeアカウントでのログインには対応している。なのでマイ動画やお気に入りなどの個人設定はPCでの利用環境と共有が可能だ。動作は非常に機敏でレスポンスもいい。前述したようにキーボードも繋げられるので「検索→動画視聴」という動画ジャンキー流の暇潰しはZP2単体で実践可能だ。
YouTubeに対応 | テレビ版Yahoo! JAPAN | Webブラウザを搭載。Flashには未対応 |
ZP2にはWebブラウザも搭載されているが、こちらは簡易仕様といった感じだ。筆者のブログ「(善)力疾走」を表示させてみたが、縦に長いサイトのせいかメモリエラーが発生して正しく表示が行なえなかった。また、サイトに埋め込まれているYouTube動画も再生出来ず。Web機能の使い勝手はタブレット端末やスマートフォンの方が上になってきてしまった感がある。
■ 画質チェック~色超解像の効果は絶大。32ZP2と26ZP2との画質差、性能差は僅かにあり
ZP2の映像パネルは、32ZP2も26ZP2も共にLG製のIPS液晶パネルを採用している。
32ZP2には新世代IPSパネルを採用 |
ただし、32ZP2の方は、最近LGが強く訴求している新世代IPS液晶パネルを採用している。新型IPS液晶パネルは、従来のIPS液晶よりも、液晶分子を高精度に初期配向させたパネルで、より理想に近い光制御が可能となっており、VA液晶に迫る引き締まった黒表現が出来るようになったとされる。従来型パネルを採用した26ZP2のコントラスト1,000:1に対し、新型パネルを採用した32ZP2は1,400:1となっているのは、この違いから来るものなのだ。さらに、32ZP2の方のみ、倍速駆動対応パネルが採用されている。
バックライトには白色LEDを採用。32ZP2、26ZP2共にこの白色LEDを左右端に搭載したエッジ型バックライトシステムとなっている。32ZP2の方は、導光板を左右5エリアずつ、合計10エリアに分割してのエリア駆動に対応している。26ZP2はエリア駆動には対応せず、画面全体での動的バックライト制御のみになる。スペック的には32ZP2、26ZP2ともにダイナミックコントラスト値は200万:1となっているが、局所コントラストは32ZP2の方が良いことになる。
【32ZP2のLEDエリア制御】
LEDエリアコントロール=オフ | LEDエリアコントロール=弱 |
LEDエリアコントロール=中 | LEDエリアコントロール=強 |
実際の映像で同画調モードで同一映像を並べて表示して見比べてみると、最暗部の暗さと最明部の明るさはやはり32ZP2の方が良い。エリア駆動は、確かに26ZP2と比べると効果は有り、32ZP2の方がハイコントラスト感は出るのだが、高輝度領域と漆黒が同居するような映像での黒の沈み方に両者で大きな違いはない。これは、32ZP2のエリア駆動が画面左右端からの光を導光させて実現する簡易方式のためだろう。
真っ黒な背景の中央に純白で塗りつぶした四角形を表示させたり消したりする、意地悪なテスト画像を作って評価してみたのだが、白い四角形のオンオフで、画面の左右端の広範囲の黒が微妙に明るくなるのが分かる。全体的に暗い映像では32ZP2のエリア駆動の効果は出るが、画面の一部が極端に明るいときには、26ZP2と32ZP2のコントラスト感に大きな違いはないということだ。
【32ZP2の画質モード】
あざやか | 標準 | テレビプロ |
映画プロ | ゲーム | PC |
発色は32ZP2と26ZP2とでは微妙に違う。32ZP2は赤と緑の純色の純度が高いが、26ZP2は色深度が32ZP2よりも浅めで、赤にも若干白色LEDの青味が乗る印象がある。
また、同一画調モードでも、26ZP2の方がホワイトバランスがやや黄味が強めの画調になりがちだ。肌色なども32ZP2の方が黄味が乗らない分だけ雑味がなくリアリティがある。
色深度も二色混合グラデーションなどを表示させると、32ZP2の方が混ざり具合が自然に見える。実際、発色に関しては、スペック上でも差異があり、32ZP2のみHDTV色域ITU-R BT.709(色に関してはsRGBと同等)の99%をカバーしていると公称している。
見比べて総じて言えるのは、絶対的な画質では32ZP2の方が上だということだ。ただ、見比べなければ、26ZP2も不満はないレベルだとは思う。
【32ZP2と26ZP2を同一画質モードで比較】
あざやか | 標準 | テレビプロ |
映画プロ | ゲーム | PC |
32ZP2よりも26ZP2の方がやや肌色の黄味が強い |
画素描画のフォーカス感は良好だ。ノングレアパネルのようなモヤっとした感じもなく、文字やテクスチャはドット単位の表現もくっきりと見える。
視野角についてはIPS液晶パネルなので基本的には広いのだが、表示面側に3D立体視のための偏光フィルムが貼り付けられているためか、視線が表示面を掠めるようなアングルでは階調が若干鈍いような見栄えになる。ただし、実用上の視聴範囲では問題ない。これは32ZP2、26ZP2、共に言えることだ。
32ZP2の表示画素の拡大 |
REGZAと言えば、昨今の超解像ブームの火付け役。超解像とは、その映像が失ったと想定される解像度情報を推測して復元する高画質化処理だ。
REGZAでは「レゾリューション・プラス」という機能名で搭載されるこの超解像機能だが、今回のZP2では6世代目の「レゾリューション・プラス6」となった。大きな進化ポイントは、超解像処理を従来の同一フレーム内探索だけではなく、過去と未来のフレームにまで探索を拡張するところだ。
具体的には、過去は2フレーム、現在フレーム、そして未来フレーム、合計4フレームを超解像の処理対象とする。なお、具体的な処理系としては、REGZA側にやってきた映像フレームを合計4フレームバッファし、表示を1フレーム遅らせることで実現される。
レゾリューション・プラス6の新機能「3次元フレーム超解像」の動作概念図 |
この時間方向にまで探索範囲を拡張する超解像には「3次元フレーム超解像」という機能名が与えられており、「映像設定」メニュー階層下の「3次元フレーム超解像」設定にて「オン/オフ」が行なえる。
実際にDVDやBlu-rayを見てみたのだが、オン/オフでそれほど劇的に効果が変わるシーンに巡り会えなかった。時間方向探索する超解像としてはMotionDSPのものが有名だが、あれのような分かりやすい効果を期待していたのだが、ZP2の3次元フレーム超解像のオン/オフの効果の違いは分かりにくい。
DVDの480i映像を480pにプログレッシブ化した映像、1080pにアップスケールした映像で縦縞のシャツを着た男性の縦縞のシャツや草原でピクニックをする男女の動画などを見て、シャツの縦縞の描画具合や生い茂る草葉の陰影に着目して見たのだが、明確な差異が確認出来ず。1080pの映像でも同様のシーンを見ても変わらず。恐らくだが、毎秒60フレームにおける4フレーム程度(時間にして約0.067秒間)の探索では、あまりにも前後のフレームの映像が似すぎていて、従来の同一フレーム内探索と比較してそれほど画質の向上が望めないのかもしれない。
レゾリューション・プラス6のもう一つの新機能は、「色超解像」機能だ。福山雅治氏のREGZAテレビCMの「4倍復元」のメッセージはここの機能を言い表したものだ。
デジタル放送ではYUV=4:2:0と呼ばれる形式の映像で伝送されてきている。いわゆる色差信号というものだ。PCなどに採用されているRGB伝送フォーマットでは赤緑青の3原色の3原色強度で1画素をフルカラー表現するが、ビデオなどで広く利用される色差伝送フォーマットでは、1つの輝度情報と2つの色差情報で1つの画素の色を表現する形式になる。
この「輝度+色差」の表現手法は人間の「輝度変化には敏感だが、色変化には曖昧」という視覚特性を応用して情報削減が行ないやすいことから、放送系の動画伝送方式ではアナログ時代から長く広く使われてきた形式だ。
「レゾリューション・プラス6」の「色超解像処理」の動作概念図 |
色差表現には、いくつかのバリエーションがあるが、テレビ放送やBDなどに利用されるYUV=4:2:0形式では、2×2の4ピクセルのうち輝度情報においては全4ピクセルについて8ビットでデータ化するが、色情報については2×2の4ピクセルにおける平均値の1個の値しか持たない。つまり、デジタル放送の映像は、色解像度が輝度解像度の1/4しかないことになる。例えばだが、YUV=4:2:0のフルHDフォーマットだと、輝度情報は1,920×1,080ドット分あるのに、色情報は960×540ドット分しかないと言うことなのだ。
これまでのREGZAの超解像処理も、基本的には輝度情報に着目し、この輝度情報の解像度復元に注力したものであった。レゾリューション・プラス6の色超解像では、この超解像の処理系を色差情報にまで拡張するものになる。つまり1/4に平均値化されてしまった色差情報を、輝度情報の解像度に見合う量にまで超解像技術で推測して復元するのが「色超解像」ということになる。
なお、ZP2では、この色超解像機能はオン/オフすることはできず、超解像機能(レゾリューション・プラス)を有効化しているときには自動的に効くことになる。
これは、3次元フレーム超解像とは違って効果が分かりやすい。白地に彩度の高い原色で文字が描かれている箇所などでは、従来の超解像では、その文字自体はくっきりするものの、その原色の滲みはそれほど改善されなかった。ZP2では、そうした色の滲みが大きく改善される。また、高周波のテクスチャ模様にて、輝度情報のみ超解像処理化されたことで顕在化する、不自然な色味の濃淡もZP2では起こりにくく、すっきりとしたテクスチャ描画がなされる。
この色超解像は、デジタル放送番組と録画したデジタル放送番組、あるいは外部入力だと480i、480pにしか効かせることが出来ない制約がある。つまり、DVD映像に効かせたい場合、プレーヤー側でアップスケールさせず、480iか480pで出力する必要があるということだ。もちろんBDソフトにも効かせることはできない。この制約は次期モデルでは取り払われると期待したい。
1つ、誤解しやすいのは「色解像度」という設定項目だ。これは結論から言うと、レゾリューション・プラス6の色超解像とは全く無関係の設定項目になるので注意したい。ちなみに、この設定項目は、2009年モデルまでは「色帯域」と命名されていたもので、これについての解説と設定の効果の説明については本連載「55ZX9000」の回の「色帯域」の箇所を参照して欲しい。
今期のREGZAの隠れた目玉機能である進化版「アニメモード」にも触れておかなければならないだろう。
「アニメモード」は「映像設定」メニューの「コンテンツモード」設定で明示設定出来るモードで、アニメに最適な画調を作り出すスペシャルモードだ。「コンテンツモード」設定はデフォルトでは「オート」になっていて、テレビ放送視聴時や録画番組再生時には、番組表の情報を元に判断するため誤りなく自動で「アニメモード」になるのだが、外部入力経由の映像に関しては「オート」の正解率は完全ではない。よってBDやDVDなどでアニメを再生している時には明示的にユーザーが「アニメモード」にした方がいい。
さて、この「アニメモード」だが、有効にすると、ほとんどレタッチレベルの画像処理が行なわれ、画質が劇的に向上する。
特にDVDのアニメが分かりやすい。輪郭や色境界付近のモスキートノイズがウソのように消え、MPEG圧縮の誤差が原因で見える不快な時間方向の濃淡変化も、「アニメモード」を有効化させると、力強い単色で塗りつぶされるようになり、まるで原画を直視しているかのような画質になる。
なお、アニメモード用の補助パラメータとして「輝度エッジ補正」と「色エッジ補正」が用意されており、それぞれ輪郭線の強調と色境界の強調の設定に対応する。デフォルトでは「オート」設定になっているが、「手動」を選ぶと0~10の強度設定が可能になる。
「輝度エッジ補正」の輪郭線強調は設定効果が分かりやすく、強度を上げていくと輪郭線の黒味が増していく。古いアニメのDVD版は、輪郭線が曖昧になっているものが少なくないが、この設定の強度を上げると輪郭線が実線化されてアニメらしいアニメになる。
「色エッジ補正」は、設定の効果は少々分かりにくい。これは、色エッジ補正の効果よりも、アニメモードの本質機能であるノイズ処理や塗りつぶし効果の方が支配的なためだろう。アグレッシブな映像の作り込みが行なわれる「アニメモード」だが、目立った不都合やエラーは特に確認されず。ユーザーとなった暁には積極的に利用してみて欲しい。
コンテンツモード=オフ | コンテンツモード=アニメ。輪郭線周辺のモスキートノイズが消え、輪郭線も実線近いクリアな描画になる |
3D立体視の画質はどうか。ZP2は偏光方式の3D立体視を採用しており、この方式では1,920×1,080ドットの液晶パネルの偶数ラインと奇数ラインのそれぞれを左右の目の映像に割り当てて表示を行なう。左右それぞれの目が得られる視覚はパネル解像度の半分の1,920×540ドットずつになるが、常時、両目が3D映像を見ることになるので、明滅感が少ないという特長がある。
時分割式に表示を行なうアクティブシャッター方式の3D立体視は、単位時間あたりには片目のシャッターが必ず閉じているため、常に片目でしか3D映像を見ていない。このため、アクティブシャッター方式では視覚される3D映像が暗くなるという弊害があるが、偏光方式は常に両目で見るので明るいという利点もある。
実際の映像を見てみると、ZP2では、画面サイズが32/26インチということもあって、それぞれの目で見る映像が1ライン飛ばしで抜けていることのスカスカ感はほとんど感じられない。逆に言うと、これ以上の大型画面サイズになるとスカスカ感が気になってくるかも知れない。その意味ではこの方式の32/26インチというサイズはこの方式の最良サイズと言うことが出来るかも知れない。
【サイド・バイ・サイド時の3D映像の超解像】
ゲイン調整=1 | ゲイン調整=5 |
補正レベル=オフ | 補正レベル=高 |
また、偏光方式らしく3D映像がとても明るいことも特筆すべき点だ。アクティブシャッター方式では部屋の照明を落とさないと、例えば「トロン:レガシー」のような暗めのシーンが多い3D映画はかなり見にくくなるが、ZP2では部屋が明るくても結構普通に見ることが出来る。
それと、反対側の目の映像が二重映りで見えてしまう「クロストーク現象」は、偏光方式なのでかなり少ない。ワーストケースが出やすい、暗い背景に明るい物体が移動する3D映像でもクロストークはほとんど見えず、切れの良い立体感が得られていた。筆者が、確認用に用いている「怪盗グルーの月泥棒」の遊園地のジェットコースターのトンネル通過シーンでもクロストークの殆ど無い良好な3D映像を視覚出来た。
偏光方式なので、映像が見えている範囲であれば、3D映像はちゃんと3Dで見えるのだが、「クロストークの少なさ」にこだわると、ある程度のスイートスポット(クロストークが最も少なくなる視聴位置)が有ることに気がつく。
3D設定 | ZP2に内蔵されている「3D視聴位置チェック」モード。このテストモードを利用して最適な視聴位置を探ることが出来る |
偏光方式の3D立体視は、液晶画素の表示面側に偏光フィルムが貼り付けられている構造の関係で、表示面から上下方向に視点をずらすとクロストークがグっと増えてしまう。これは液晶パネルの視野角とはまた別問題の制約だ。なお、2D表示時には、この上下視野角に制限はない。
今回の32/26ZP2について深く調査を行なった結果、予想通り、表示面の中央に相対する位置が一番クロストークが少なかった。
ただし、表示面からの距離によってもクロストークの大小が変わってくる。両目の距離や視線に依存する問題なので個人差はあるはずだが、筆者は、32ZP2では約70cm程度以上、26ZP2では約60cm以上が最良と判断する。3Dモニターとして使う場合は、これぐらいの視聴距離は確保したい。
テレビの場合は、視聴最適距離として「画面の縦辺の長さの3倍」と言われているが、32ZP2の場合は約1.2m、26ZP2の場合は約1.0mとなる。一般的な設置であれば、十分な視聴距離が確保できるだろう。
3Dフォーマットはフレームパッキングの他、サイド・バイ・サイド、トップ・アンド・ボトムの方式にも対応する | 2D表示モードの方式選択画面 |
さて、この最適視聴距離を守っていても、上下に眼球位置をずらすと徐々にクロストークが増える。筆者個人として許容出来る範囲としては表示面中央から上下±15d度くらいまでが良好な3D画質が得られると感じた。設置の際には、普段の視聴位置(高さ)を決定し、表示面が上下±15度の範囲になるようなテレビ台の高さを決定する必要があるだろう。
マルチメディアモニターとしてデスクトップ設置して活用する際には、どうしても視線が見下ろし気味となりクロストークが増えてしまうので、やや嵩上げして設置することをお勧めする。
歴代REGZAから変わった部分も多い「詳細調整」メニュー。 |
2D画質に関してはほとんど視野角の制限はないし、3D画質においても左右の視野角にはほとんど制限がないといっていいが、画質を追求すると意外に上下の視野角はシビアだと言うことには留意したい。
「設定」メニューの構成や各種高画質ロジックの基本画調パラメータは、従来のREGZAシリーズからは大きな変化はないので、47Z1の回などを参照して欲しい。画質モードは「おまかせ」「あざやか」「標準」「テレビプロ」「映画プロ」「ゲーム」「PC」の6種類だ。本稿では、ZP2で搭載された新機能を解説する。
まず、超解像関連の設定の「レゾリューション・プラス設定」から。従来機では「レベル調整」で超解像のかかり方を指定するものだったが、ZP2では「ゲイン調整」と「補正レベル」の2つのパラメータに増えている。「ゲイン調整」は従来機の「レベル調整」に相当し、従来機通り「1(弱)~5(強)」の5段階設定となっている。
ZP2では超解像関連のメニュー構成が様変わりしている |
「補正レベル」は超解像処理の適用範囲を設定するもの。設定値は「オフ・弱・中・高・オート」が選べる。「弱」は明かに明暗差があるところにしか超解像は効かないが、「高」はちょっとした明暗差にも超解像が適用される。弱、中、高の差は微少であり、通常はオートを設定しておけばいい。オフは超解像処理自体がオフになるようだ。「レゾリューション・プラス」設定にも「オフ」があるので、なぜオフ設定が2つも受けられているのかはよく分からない。
【2D映像の超解像】
ゲイン調整=1 | ゲイン調整=5 |
補正レベル=オフ | 補正レベル=高 |
【2D映像の超解像(拡大)】
ゲイン調整=1 | ゲイン調整=5 |
補正レベル=オフ(拡大) | 補正レベル=高(拡大) |
「フィルムグレイン抑制」も超解像関連の新しいパラメータだ。フィルム撮影された映画などで見えるランダムなノイズのようなチラツキを超解像処理で際立たせないようにするための設定だ。設定範囲は「オフ・弱・中・強・オート」。フィルムグレインは、フィルム上の粒子が時間方向に引き起こすノイズだが、これを「ノイズ」と見なす見方がある一方で、「フィルムの味わい」とする見方もある。「ノイズ」として考えるユーザーは「強」設定にすることで、このチラツキを抑えることが出来る。「オフ」設定は、そうした特別な抑制処理をしない設定となる。ちなみに、筆者がテストした感じでは、強めに掛けると、MPEG映像のモスキートノイズの低減にも効くようであった。通常は「オート」でいいだろう。
新パラメータ「原画解像度」設定についても説明が必要だろう。これは、超解像処理と、後述するアニメモードに関係の深い設定だ。設定値は「オート」の他、「1,920×1,080、1,440×1,080、1,280×720、960×540、720×480、640×480」が用意されている。
「原画解像度」 |
REGZAの各種画像処理は、480p~1080pといった映像フォーマットではなく、その映像のヒストグラム解析結果を用いて判明した実行解像度に基づいて処理を行なう適応型の設計になっている。例えばDVDの480p映像を1080pにアップスケールした映像でも、REGZAエンジンはヒストグラム解析結果で480p映像と判別できれば、その解像度に適した高画質化処理を行なう。ただし、常に正解が保証されているわけではない。そこで、これをユーザー側が明示設定させるソリューションが、このパラメータということになる。なんともマニアックな設定だ。
一番分かりやすいのはDVD映像だ。PS3のDVD映像のアップスケール再生は結構な高品位再生となることから、ヒストグラム解析ではこれを720×480ドットソースと見抜けない。ここで「原画解像度」の設定を「720×480」としてやると超解像処理による陰影がより自信ありげに描き出されるようになる。
そして、この「原画解像度」設定は「アニメモード」にも効く。
ブルーレイの1080p記録のアニメなどは、ここを「1920×1080」とした方が、「輝度エッジ補正」(輪郭線強調)を強めに設定したときに輪郭線を不用意に太くせずに済む。逆に、曲線の輪郭などにジャギーや違和感を感じたら、「原画解像度」設定を上げ下げしてみるのもいいかもしれない。
下の画像は、640×480ドットの映像をアップスケールして超解像を掛けた様子。原画解像度と入力映像の解像度を一致させると超解像もより効くことが分かる。
原画解像度=オート | 原画解像度=640×480 |
32ZP2には、倍速駆動機能が搭載されており、この機能には「アクティブスキャン240」という名前が付けられている。従来モデルでは「Wスキャン倍速」「倍速モーションクリア」と様々な名前が付けられてきたが、それほど大きな進化はない。基本的には液晶パネルを120Hzの倍速で駆動し、60フレームの入力映像の合間に算術合成した補間フレームを挿入しつつ、バックライトスキャニングを組み合わせてインパルス表示を行なうという機能になる。液晶自体は120Hzの倍速駆動だが、バックライトをさらに倍の240Hzで駆動しているから「アクティブスキャン"240"」という名前になっている。
この倍速駆動機能を制御するパラメータとして「倍速ワイドエリア補間」と「フィルムモード」という2つの設定項目が設けられている。
「倍速ワイドエリア補間」は、補間フレーム生成のために必要なピクセル単位の動きベクトルを求めるための探索処理をどのくらいの広さで行なうかを設定するものになる。設定値は「スタンダード/ワイド」の2種類で、ワイドはより広範囲に探索を行なうことになり、画面内を高速に移動するオブジェクトに追従出来ることになる。つまりは動きの速い映像の補間フレームを高精度で作れるようになる……ということだ。
とはいっても、「スタンダード」「ワイド」のどちらの設定にしても「ダークナイト」のビル群の飛行シーンのような難解なシーンではビルの窓枠に激しいピクセル振動が出てしまっていた。ただ、強いて言えば、スタンダードの方がワイドよりもやや振動が薄めになる。常用するならば「スタンダード」の方だろう。
毎秒30コマ、24コマの映像への補間フレームの適用具合は「フィルムモード」設定で行なえる。設定値として「オフ-フィルム-クリアフィルム-スムーズ-クリアスムーズ」が選べ、「クリアフィルム」「スムーズ」「クリアスムーズ」では補間フレームが挿入される設定となる。「クリアフィルム」が補間フレームの支配率が最も低く、「クリアスムーズ」が補間フレームの支配率が最も高い。すなわちエラー発生時のピクセル振動は「クリアフィルム」が一番分かりにくいことになるのだが、とはいってもやはり見ててブルブルっと震える瞬間には遭遇する。
「フィルムモード」設定 |
ここ数年、あまり進化の感じられないREGZAの補間フレーム技術だが、バックライトスキャンに関しては、今回とても見栄えがよく仕上がっている。「フィルムモード」の「フィルム」設定は、補間フレーム無しのバックライトスキャンのみとなるが、この時の画質が素晴らしいのだ。フィルムジャダーの味わいが残りつつ、液晶特有のホールドボケがほとんど感じられない。ブラウン管でみているようなキレのある描画で、それでいてブラウン管のような明滅感もない。常用はこれだろう。
最後にゲームモードについて言及しておこう。
REGZAは、今やゲーム対応テレビの代名詞的存在であり、日本のテレビメーカーで最も早く、そして最も強力なゲームユーザーサポートを行なっているテレビだ。
ZP2には、従来のREGZAにも搭載されていた「PSP画面の全画面表示」機能の進化版「オートポータブルズーム」機能が搭載されている。これはPSPのメニュー画面とゲーム画面を自動認識して常に最大表示を行なう賢いモードだ。
ZP2には、CELLREGZA X2に搭載されていた「SDゲームファイン」モードも搭載されている。これはD5端子入力されたアナログSDビデオ(480i/p)に対して横解像度方向は2倍オーバーサンプリングを行ない、縦解像度方向は二重化を行なうモードだ(HDMI入力では利用不可)。ZP2では自己合同性型、再構成型の超解像処理、色の超解像処理が適用されるようになり、ハイレゾ化されたような高画質映像でプレイ出来るようになった。
ゲームファインモードは「SDゲームファイン」と「レトロゲームファイン」の2モードに増えた | 自己合同性型、再構成型の超解像処理、色の超解像処理が適用される「SDゲームファイン」 | ドット感を味わうには「レトロゲームファイン」 |
CELL REGZA X2に搭載されていた、ドットがキッチリと四角形に描かれるあのモードは「レトロゲームファイン」と名前を変えて搭載されている。こちらは「SDゲームファイン」から各種超解像処理を省いたものになる。カクカクしたドット感を楽しみたいレトロゲーマーはこちらがお勧めだ。
そしてREGZAのゲームモード言えば、やはり低遅延性能の素晴らしさが注目されるわけだが、ZP2は、REGZA史上最速の低表示遅延を実現している。
型番 | 2D映像時 | 3D映像時 |
32ZP2 | 約0.7f(約12ms) | 約2.3f(約38ms) |
26ZP2 | 約0.2f(約3ms) | 約1.5f(約25ms) |
※1f(1フレーム)=1/60秒で換算
32ZP2の方が26ZP2よりも僅かに及ばないのは、32ZP2が倍速駆動対応パネルだからだ。ゲームモードでは補間フレームを生成はしないが、液晶パネルの駆動自体は倍速駆動が行なわれるので、倍速駆動回路に映像データを準備しなければならない。このためその必要がない等倍速パネル26ZP2よりも0.5フレーム(約8ms)分遅いのだ。
では、ゲームモニター性能としては26ZP2の方が優秀なのか? というと一概にもそうは言えないかもしれない。
確かに32ZP2のほうが描画開始が26ZP2に対して約8ms遅くなるが、32ZP2の倍速駆動パネルの方が液晶画素への描画が行なわれてから目的の色になるまでの応答速度が速い。つまり、目的の映像表示状態になるまでの所要時間は32ZP2の方が短い可能性があるのだ。
左が32ZP2、右が26ZP2。表示フレーム番号の表示に注目すると僅かに右の26ZP2の方が先行する |
ということで、実際に、いくつかの実験を行なった。まずは本連載では恒例となっている東芝REGZA19RE1との比較だ。ツールはいつものように「LCD Delay Checker」を用いた。なお、今回は、動画撮影を240Hzで行なった。
32ZP2と19RE1、26ZP2と19RE1とでの比較では、共に19RE1と同等の表示タイミングが実現出来ていることを確認。
32ZP2と26ZP2とで比較すると、26ZP2の方が僅かに表示が先行していることから、表示遅延は26ZP2の方が少ないと言えそうだ。もう一つ、「RefreshRateMultitool」でも、32ZP2と26ZP2との表示遅延比較を行なってみたが、やはり僅かに表示が先行していることが見て取れた。
左が32ZP2,右が26ZP2。左上から右下に向かって白いマスが60個の黒いマスを移動するテスト。32ZP2の方が僅かに遅れている |
32ZP2の液晶パネルは倍速駆動液晶で応答速度も早いはずなのだが、0.5フレーム分の遅延分は表示結果にも及んでいると見られ、ごく僅かだが、26ZP2の方が低表示遅延だということが確認出来た。
3D立体視時(サイド・バイ・サイド時)の表示遅延も計測してみたが、こちらも僅かに26ZP2の方が低遅延であった。
また、2D表示時から3D立体視時とで、どのくらいの遅延が増加するのかも計測してみた。これは19RE1(2D)との比較だが、32ZP2は3フレーム、26ZP2は2フレームの遅れとなっていた。上記の表の実測としてはうなずける結果だと言えよう。
左が32ZP2、右が26ZP2。3D時も右の26ZP2の方が僅かに低遅延 | 左が26ZP2、右が19RE1。3D時は2D時に対して2フレームほど遅延が増加している | 左が32ZP2、右が19RE1。3D時は2D時に対して3フレームほど遅延が増加している |
■ カジュアル3Dテレビやマルチメディアモニターとして最良
REGZA ZP2シリーズは偏光方式の3Dテレビ製品ということで、3D映像の明るさ、3Dメガネが安価であることが強く訴求される。特に3Dメガネに関しては、偏光方式の価格の安さは圧倒的だ。東芝純正のZP2用の3Dメガネ「FPT-P200(J)」は実売約3,000円に対し、ZG系などのアクティブシャッター方式3Dメガネ「FPT-AG02(J)」は実売約8,000円だ。
それと、偏光方式の3Dテレビはメガネの互換性が高いことが知られているが、今回の筆者の実験では、三菱のディスプレイ「RDT233WX-3D」のもの、LGエレクトロニクスの「CINEMA 3D」用のもの、イベント会場で配布されていたRealDロゴ入りのものが問題なく使えてしまった(左右レンズの対応もバッチリ)。メーカー保証はないが、試してみる価値はある。そうした意味でも、低コストかつ手軽に3D映像を楽しむファミリー層向けの3Dテレビとしては、ZP2はおあつらえ向きな製品だと言える。
そして、26/32インチという大きさや、充実しすぎているといってもいいくらいのゲーム関連モードのことを考えるとパーソナルユース、あるいはゲームモニター的な用途にも最適だと思う。特に26インチの26ZP2は大きさ的にもマルチメディア液晶ディスプレイとして活用することをメインに購入するのもありだろう。32ZP2も、ギリギリでデスクトップユースにできるサイズといえるので、設置場所や予算が許せば32ZP2の方を選択するのもいいかもしれない。
26ZP2の実売価格は10万円前後、32ZP2は11万円前後。“液晶ディスプレイ”としては高価という見方もあるが、3D/ダブルチューナ搭載で2番組同時録画にも対応しているデジタルテレビと考えれば、高くはない。
(2011年 7月 21日)