三浦孝仁のサウンドスケッチ

第1回

超弩級機が集結! “世界で最も重要なオーディオショウ”HIGH ENDのココに注目

 ドイツのミュンヘンで開催されたオーディオショウ「HIGH END 2018」は、今年も大盛況のうちに閉幕した。会期は2018年5月10日~13日の4日間。世界各国のオーディオ関係者は、口を揃えるように「世界で最も重要なオーディオショウは、なんといってもミュンヘンのハイエンドショウ」と語るほど、とても高い評価を得ているピュアオーディオ専門のショウである。

ドイツのミュンヘンで開催された「HIGH END 2018」

 主宰者のハイエンドソサエティは、ドイツのオーディオメーカーやオーディオ専門誌の関係者により1982年に発足。記念すべき第1回目のハイエンドショウは1982年にデュッセルドルフで開催されている。ミュンヘンの会場(MOC)を使い始めたのは2004年からだ。私はそれ以前のハイエンドショウ(フランクフルト郊外のケンピンスキー・ホテル)から訪れているので、おそらく今年で20年ほどずっと通っていることになる。会場のMOC(ミュンヘン・オーダー・センター)はミュンヘン市の北にあり、U6ライン地下鉄のKieferngarten(キーフェルンガルテン)駅から徒歩で10分ほどである。

会場のミュンヘン・オーダー・センター

 このハイエンドショウが好評なのは、その運営スタイルが大きく関わっている。おおむね木曜日から始まる合計4日間の初日はディーラーや輸入元などの商談専用日に決められていて、一般のオーディオファイルは入場できない。残りの3日間は一般のオーディオファイルに解放される。しかも、キッチリと入場料をいただく有料のオーディオショウなのだ。

 収益はほとんどがショウの運営費として使われているようで、ミュンヘン空港の往復や主要ホテルの巡回など大型バスの定期運航などサービスが充実している。入場料の有無については意見があるだろうけれども、個人的には入場料を支払って観るほうが来場者=オーディオファイルの眼差しがより真剣になっているように映るのだ。

 メディア関係への対応も素晴らしく、取材陣は世界各国から訪れている。私にとって残念なのは、5月という会期。ステレオサウンド誌の編集スケジュールに重なるため誌面で紹介するのが難しいときが多い。今回はAV Watchでレポートしていこう。

 特にヨーロッパのオーディオメーカーは、ミュンヘンのハイエンドショウにタイミングを合わせるように新製品を発表する傾向がある。北米(米国+カナダ)のメーカーは国内ローカルのオーディオショウや米国ネヴァダ州ラスヴェガスで1月に開催されるCES(コンシュマーエレクトロニクスショウ)を発表のターゲットにしてきたが、それも時代の流れで変わりつつある。

 このハイエンドショウでは地元ドイツやヨーロッパのメーカーなどの直接参加は多いけれども、米国のオーディオメーカーはドイツの輸入元が取り仕切っている場合が多い。そのような場合、彼らのブランド名をリストから探すのはちょっと難しい。また、有名どころでも出展していないメーカーもある。たとえば英国バウワーズ&ウィルキンス(B&W)は数年前から出展していないし、日本のアキュフェーズも姿を見ることができない。刊行されるハイエンドショウのガイドブックは分厚く、内容も充実している。

 さて、ここから気になった製品をダイジェスト的にピックアップして、ランダムに写真と解説をスタートしていこう。まずは躍進する日本勢の紹介から。

レーザーでレコード読み取り、ロームが超高性能DAC開発、個性が光る日本勢

 レーザー光を照射して、その反射を読み取って音にするという光学式アナログプレーヤーである。日本にはエルプ(ELP)が存在したから決して目新しいとはいえないけれども、デザインはよりアナログプレーヤーに近くなっている。一般的なトーンアームと比べると逆向きのトレースだが問題はないのだ。

レーザーでアナログディスクを読み取るアルメディオのOPTORA

 この「OPTORA」を開発したのは東京・日野市にあるアルメディオで、2014年にTEACからストレージ部門が譲渡されたことでも知られる光ディスクに強い企業。本機の開発も移籍した元TEACの技術者によるものらしい。残念ながら会場で音を聴くことはできなかったが、かなり期待できそうな雰囲気。

【お詫びと訂正】記事初出時、“6月16日、17日に東京国際フォーラムで開催される「OTOTEN 2018」でも紹介される見通しだ。”としておりましたが、アルメディオは「OTOTEN 2018」に出展しません。お詫びして訂正します。(6月11日)

スフォルツァートのネットワークプレーヤー「DSP-050EX」

 工房規模ながらも世界に通用するハイスペックなネットワークプレーヤーを企画・製造するスフォルツァート。この「DSP-050EX」は輸出オンリーの製品で、ユニークな逆台形のプロポーションは同社「DSP-Vella」などのフロントフェイスをデザインした人物によるもの。内容的にはエントリー機の「DSP-Pavo」と同等ながらも、ディスプレイは持たずマスタークロックも内蔵している。再生フォーマットの表示はLEDのみとシンプルにまとめられている。

サエクのトーンアーム「WE-4700」

 サエクが開発中という、伝説的なダブル・ナイフエッジ支持によるトーンアームだ。ベースとなったのは人気の高かった「WE-407/23」である。設計・製造の金属加工に携わっているのは、内野精工(本社:東京・国立市/工場:新潟県・長岡市)という、当時とは異なる企業。内野精工は加工技術の紹介として自社製トーンアーム「QUALLUM」も発表している。

 ナイフエッジ支持とは、ナイフの先端のように尖ったパーツを動作支点にすること。一般的なのはボールベアリングを使う方式である。ダブル・ナイフエッジでは上下方向に支点を配置することでガタをなくしている。完璧なダブル・ナイフエッジ支持は精度との戦いになるので、超精密加工と組み立てる技術者のセンスが求められよう。価格は100万円を超えるのではないだろうか? 内部配線はPC-TRIPLE Cが検討されているらしい。ちなみに、欧米人の多くはSAEC=サエクとうまく発音できないようだ。

スタックスのDAC内蔵ヘッドフォン・ドライバー「SRM-D50」

 スタックス史上で最高の音質を獲得したという静電型ヘッドフォン「SR-009S」がまもなく登場する。個人的にも導入を検討しているSR-009Sなのだが、スタックスのブースではUSB接続が可能な高音質DACを内蔵した専用アンプ(ドライバー)の「SRM-D50」が展示されていた。製造は中国のようなので、新発売のポータブル・アンプと同じくスタックスを擁する親会社EDIFIER TECHNOLOGYの製造なのだろう。搭載しているDAC素子はポータブル・アンプと同じくESS製らしい。

TADの新型スピーカーは「TAD-ME1」と同じCST同軸ドライバーを搭載

 TADの製品群のなかでも、最もコンパクトな「TAD-ME1」だけは蒸着製法ではなく精密プレス加工によるベリリウム振動板をツイータに搭載している。TADでは、これと同じCST同軸ドライバーを搭載したフロアスタンディング機を開発中ということだ。音は出していなかったが、独特のポート技術であるバイディレクショナルADSを2方向(バイディレクショナル)から全方向へとアレンジしたようなポート構造が両横に使われているのが興味深い。

 TADでは洗練されたクラスDパワーアンプ技術を採用した「TAD-M1000」というステレオ・パワーアンプも計画中である。

JICOによる瀬戸物をケースにしたMC型フォノカートリッジ

 JICOは日本精機宝石工業のブランド。同社のMM型フォノカートリッジ用の交換針は今や貴重な存在といえよう。以前から情報公開されており、日本国内でも発売されて間もないと思われるMC型フォノカートリッジ「瀬戸彫」(SETO-HORI)が試聴できる状態で展示されていた。

 線状接触というマイクロリッジ形状のダイアモンド針とボロン製カンチレバーによる振動系は、おそらく並木精密宝石による供給だろう。瀬戸彫は外装ケースに焼結セラミックである日本伝統の瀬戸物を採用したところがユニーク。その音質的な効果は定かではないが、焼結プロセスによる僅かな収縮などのデリケートな形状課題を解決しているのはいうまでもない。

半導体企業ローム(ROHM)が開発中の超高性能DAC素子

 日本勢で最後に紹介するのは、京都を代表する世界的な半導体企業であるローム(ROHM)が開発中という高音質のDAC素子だ。DSDで22.4MHz、PCMで768kHz/32bitまで再生できる素子は、旭化成エレクトロニクス(AKM)に代表される電圧出力タイプではなく、ESS製のDAC素子と同種の電流出力タイプである。

 ESS製DACのように専用のマスタークロック信号を必要とせず、マスタークロックは入力信号のクロック周波数をベースにしたものになるらしい。8パターンのデジタルフィルター特性を内蔵するステレオ仕様であるのも特徴。本製品の登場は2019年になる予定という。

ヴィヴィッド・オーディオ「KAYA」やウィルソンの最小機など海外勢も多数

 世界的に知られるスピーカーメーカーのフォーカル(FOCAL)は、最高級ユートピア・シリーズを少しずつアップデートしてきた。今年のハイエンドショウでは遂にトップエンド機が「グランドユートピア・EM・EVO」に、セカンドトップ機が「ステラユートピア・EM・EVO」へと進化。EMとは「エレクトロ・マグネット」、すなわち電磁石を意味する。

フランスを代表するフォーカルのトップエンド機

 ネオジムやフェライトなどの永久磁石では得られない強磁力を獲得するために、ユートピアの上位2機種では調整可能な外部パワーサプライによる励磁型(EM)ウーファを搭載しているのだ。数々の音質向上策が投じられているので詳細は割愛させていただくが、大注目すべき音質については日本上陸を待たなくてはならない。

QUADの大型エレクトロスタティック・スピーカーシステム

 QUADは既存の「ESL-2812」や「ESL-2912」を超えるサイズのESL=エレクトロスタティック・ラウドスピーカーを開発中だ。正式なモデルナンバーはまだ決まっておらず、2018年の開発ということから「18X」と社内で呼ばれているという。

 展示機は音の出ないモックアップだったが、背面にはESL-2812などと同じくパネルの剛性を高める金属製の支柱が使われていた。

ダン・ダゴスティーノの巨大なモノブロック・パワーアンプ

 クレルの創設者であり現在は独立してダン・ダゴスティーノ・マスターオーディオ・システムズ(Dan D'Agostino)を主宰するダニエル・ダゴスティーノ氏と私は、旧知の間柄だ。彼は巨大なハイパワーアンプを設計するのが大好きなようで、「リレントレス・モノブロック・パワーアンプ」と名付けられた本機は、8Ω負荷で1,500W(2Ω負荷で6,000W)を叩き出すAB級パワーアンプだ。その重量は220kg!!

 このリレントレス・モノブロック・パワーアンプはウィルソンオーディオを主宰するデイヴィッド・ウィルソン氏が存命中に同社に持ち込まれ、彼の最後の作品となる「WAMM・マスター・クロノソニック」をダイナミックに鳴らしている。

米ウィルソンオーディオの最小機「Tune Tot」

 ウィルソンオーディオ・スペシャルティーズを創設したデイヴィッド・ウィルソン氏(会長職)は、2018年5月25日の深夜に亡くなった。現在は設計主幹兼CEOである子息のダリル・ウィルソンが同社を運営しており、その彼が手がけたウィルソンオーディオで最小のスピーカーシステムが「Tune Tot」である。

 Tot=トットとは小さいことを意味する言葉で、同社にとって重要な単語。後に「System 5」~「System 8」となった「WATT/PUPPY」のWATTは、ウィルソン・オーディオ・タイニイ・トット(ウィルソンオーディオのちっちゃな子供)という名前だった。このチューン・トットはグリルや台座などのオプションがあるので、私は将来的に専用サブウーファまで用意されるのではと想像している。この製品には「WSAE」(Wilson Special Application Engineering)という記載があった。

SACD/CDに対応する英国dCSの「ロッシーニ・トランスポート」

 本来なら昨年にアナウンスできるはずだった、dCSの新しいSACD/CDトランスポートが「ロッシーニ・トランスポート」だ。同社の「ヴィヴァルディ」は、日本のエソテリック製VRDS-NEOドライブを搭載しており、このロッシーニでは同じく日本製だがD&M製のSACD/CDドライブが新たに使われている。

 CD専用ドライブを搭載している従来のロッシーニ・プレーヤーよりもドライブメカニズムが大きいため、少し背が高くなっているのも特徴。dCSではエントリー機「ドビュッシーDAC」に代わる新設計の単体DACを夏にも発表する予定である。その新製品の名前は「B」から始まる。

ドイツのアセンド社が開発した巨大なパッシヴ・サブウーファ

 アセンドのスピーカーシステムは時間軸整合の大掛かりなメカニズムが話題になり、日本市場にも登場したことがある。これは実際に稼働するという同社の50インチ口径サブウーファ。50インチ=直径127cmという巨大なもの。ドライブするパワーアンプはどれほど強力なのが求められるのだろうか?

BALLFINGER社のアナログ・リール・トゥ・リール機器

 オープンリール磁気テープが再注目されているなか、独デュッセルドルフのボールフィンガー社は本格的なテープデッキを開発した。録音・再生の電子回路を持たないものなどバージョンが細分化されており、これはフル搭載の仕様になる。主宰者に話を伺ったところ、テープデッキに詳しいベテランのエンジニア(おそらくスチューダー出身者)が設計を行なっているという。

韓国SOtMが開発中のピュアオーディオ・LANスイッチ

 “ソウル・オブ・ザ・ミュージック”の略である韓国SOtMは日本でも製品が販売されている。これは8個のRJ45端子を装備するLANスイッチのプロトタイプだ。紹介するのには理由があり、なんとオプションで10MHz正弦波マスタークロックを入力できるというのだ。それによる音の変化はかなり大きいということで、私は注目している。また、光ケーブル伝送によるSFPポートも2基を装着。話題の独テレガートナー製LANスイッチと音を比べてみたいところだ。

ヴィヴィッド・オーディオの新製品「KAYA」

 B&Wでノーチラスを開発したローレンス・ディッキー氏が設計するヴィヴィッド・オーディオ(VIVID audio)の製品は個性的なルックスとニュートラルな音質で人気が高い。新製品のKAYAはセンタースピーカーを含む全5種類をラインナップする意欲的なスピーカーシステム。同社製品のなかでも落ち着きのあるルックスに仕上がっている。早く聴いてみたいスピーカーシステムである。

英コードエレクトロニクスのステレオパワーアンプ

 英コードエレクトロニクス(Chord)から、大好評の単体DAC「DAVE」と同じサイズのステレオパワーアンプが登場する。名称は「エチュード」。同社製品らしく高効率のスイッチモード電源を搭載するAB級のパワーアンプで、MOS-FETによる出力は4Ω負荷で150W+150Wという。ブリッジ接続によるモノーラル・モードでは4Ω負荷で300W出力になる。想像していたよりもプレーンな外観だった。

独エラックの最高級スピーカーシステム「コンセントロ」のジュニア機が登場

 新社長を迎えたドイツのエラック(ELAC)は、最高級機としてデビューした「コンセントロ」のジュニアモデルである「コンセントロ-M」を発表した。デザインや音のコンセプトを共通としながらも、ドライバーの総数を減らして少し背の低いプロポーションへと仕上がっている。

スイス・ゴールドムンドの巨大なワイヤレス・スピーカーシステム

 以前からゴールドムンドはWi-Fiによるオーディオ信号の伝送を推奨してきた。本機は「サマディ」という名称の2ボックス機で、12インチ口径のウーファと2基の7インチ口径ミッドレンジ、そしてソフトドーム・ツイータを装備している。驚くのは背面にWi-Fiアンテナがあるだけというシンプルな構成。アクティヴ駆動なので電源ラインも装備するが、オーディオ信号は基本的に96kHz/24bitサンプリングのデジタル伝送になる。2基の高性能DSPで独自の「Leonardo2テクノロジー」による独自のデジタル処理を行なうという。

空中浮遊プラッターによるアナログディスクプレーヤー

 昨年のハイエンドショウから個人的に興味を抱いているアナログプレーヤーだ。これはスロヴァキアのMAG-LEV Audioの製品。磁気浮上による非接触回転で約2kgのプラッターを廻すというものだ。2018年エディション(まだプロトタイプ)は、一連の動作がよりスムーズになったようで、確実に完成度を高めてきている。

ヴェルテレのハイエンド・アナログプレーヤー

 ヴェルテレ(VERTERE)は高級オーディオケーブルからスタートしたメーカーで、主宰者は英ロクサンを立ち上げたトゥーラージ・モグハダム氏。基本設計はロクサンの「TMS」にも似ているが、硬質アクリルを多用したボディや金属製プラッターとトーンアームは高精度な雰囲気で存在感を際立たせている。取り付けられていたMM型フォノカートリッジは日本のトップウイングによるダイレクトフラックス発電の「朱雀」だった。

英PMCのフラグシップ機「フェネストリア」

 英PMCのフラグシップ機「フェネストリア」。この大型フロアスタンディング機の最も特徴的な技術ポイントは、ミッドレンジとツイータをマウントしている厚いアルミニウム部材をシリコン系の緩衝材を使ってフローティング保持したこと。これにより4基のウーファやエンクロージュアからの不要共振や振動を効果的に遮断することができ、クリーンな音を獲得している。

 クロスオーバー周波数は380Hzと3.8kHzである。低音域のローディングはアドヴァンスト・トランスミッション・ライン(ATL)というPMCが好んで使っているトランスミッションライン方式。

リトアニアのリードが開発した新発想の軸受機構を持つトーンアーム

 トーンアームの軸受け機構で垂直方向と水平方向の両方からスムーズな動作が求められる。一般的にはジンバルサポートと呼ばれる、両方の軸の延長線が交差する「+」形状の軸受けが与えられている。リトアニアのリードが新開発した「Reed 1x」というトーンアームでは、ジンバルサポートなのだが垂直と水平を全体に45度にずらした「X」形状の軸受けとしたのがユニーク。動作的に同じとはいえ、合計4基のピボット(回転軸)に加わる負荷の具合は異なる。

スイスのターレス・トンアームが最高級機を発表

 “トーンアーム(Tonearm)”は英語圏で使われるが、ドイツ語圏では“トンアーム(Tonarm)”となる。“トーン”も“トン”も音を意味する単語だ。ターレスはトラッキングエラーを最小にする独自機構で高い人気を誇っており、今回のハイエンドショウでは12年間の集大成である「ステイトメント」という新型トーンアームを発表。これがターレスの最高級モデルになる。

 2本のアルミニウム合金製パイプは中心部が太くなった双方向テーパー形状になっていて、シールディングされた中心部分の軸受け構造も超精密。トラッキングエラーは最大で0.006度という。主宰者のミッハ・フーバー氏は以前にも増してEMTとの関係を強めているようだ。

ディナウディオの新型コンフィデンス

 最初に見かけたとき、私はツイータが1基なことに驚いてしまった。考えてみれば1基というのは当然のことかも知れないけれども、ディナウディオ(DYNAUDIO)の新しい「コンフィデンス」は音響的に美しい湾曲が与えられたバッフル形状も洗練されていて、やはり新世代らしい雰囲気を醸し出している。エンクロージュアも曲面を活かしており、価格がアップするらしいという情報も。ディウナウディオの資本関係が変わったのは2014年からで、少しずつではあるが製品に変革が感じられるようになってきた。

オルトフォンの創立100周年モデル「MC century」フォノカートリッジ

 アナログディスク関連は活況である。デンマークのオルトフォンは、創立100周年を記念した3機種を発表。これは「MC センチュリー」という空芯タイプのMC型フォノカートリッジ。これまでフォノカートリッジ用に供給したことのない日本企業が、本機のためにダイアモンド製カンチレバーを造りあげたのが大ニュース。発電効率の低い空芯タイプということで磁束を高める工夫が凝らされている。

 同時発表の記念モデルとして、SPU センチュリーとコンコルド センチュリーも展示されていた。MC センチュリーのようにダイアモンド製カンチレバーを採用する機種は世界的にも少ないので、その音に注目が集まっている。

ブルメスターの巨大なモノブロック・パワーアンプ

 私が紹介するハイエンド2018の締め括りは、独ブルメスター・オーディオシステム(Burmester)が新たにトップエンドとして発表したシグネチュア・ラインのモノーラル・パワーアンプだ。「159」という番号が与えられた本機は、最初の試作機が2016年に発表されていたもの。詳細は不明だがそのボディは大型で重量級。創設者のディーター・ブルメスター氏は2015年に世を去ったが、本機の構想はすでに始まっていたようだ。

 以上、ミュンヘンで開催されたハイエンド2018をダイジェスト的に紹介してみた。実際には1日ではとても見終われないほど多くの製品が出展されているオーディオショウである。映像関連の機器をほとんど見かけないピュアオーディオに徹しているのもハイエンドショウの特徴といえよう。大型のホーン型スピーカーシステムが多いのもドイツらしい特色であり、輸入元が存在しないけれども紹介したかった製品がいくつもある。来年の会期予定は2019年5月9日~12日の4日間。場所は同じくミュンヘンのMOCである。

三浦 孝仁

中学時分からオーディオに目覚めて以来のピュアオーディオマニア。1980年代から季刊ステレオサウンド誌を中心にオーディオ評論を行なっている。