鳥居一豊の「良作×良品」

第72回

ソニー新サウンドバー「HT-Z9F」でDolby Atmos! 「最後のジェダイ」の戦いを満喫

 Dolby AtmosやDTS:Xといった最新のサラウンド方式は、BDやUltra HD Blu-ray(UHD BD)を中心として展開されてきた。しかし、今やパッケージソフトだけではなく、動画配信サービスでも採用されはじめている。対応機種に制限のある場合もあるが、NetflixやAmazonプライム・ビデオ、iTunesなどのサービスで、徐々にDolby Atmos音声採用タイトルが増えている。

 Dolby AtmosやDTS:Xの今まで以上の臨場感が楽しめるサービスが増えてきていることはありがたい話だ。

 そして、再生機器であるホームシアター機器も、高級機やAVアンプのようなハードルの高い製品ばかりでなく、サウンドバーのような比較的身近な製品もDolby AtmosやDTS:X対応の製品が増えてきている。

 今回紹介するソニーの「HT-Z9F」(直販価格:79,980円)も、見慣れたサウンドバー+ワイヤレスサブウーファのスタイルで、Dolby AtmosやDTS:X対応を果たしている。また、薄型テレビBRAVIAのX9000シリーズとデザインをマッチさせた「HT-X9000F」(直販価格59,880円)も同じくDolby AtmosやDTS:X対応。価格的にはミドルクラスだが、これまでの製品の多くが10万円を超える高級機種ばかりだったことを考えれば、身近なものになってきたと言っていい。

 大きな特徴は、これまでのDolby AtmosやDTS:X対応のホームシアター機器ではほぼ必須とされていたトップスピーカーやドルビーイネーブルドスピーカーに相当するスピーカーを持たない3.1ch構成ということ。高さ方向の再現は新たに開発した「Vertical Surround Engine」によって仮想的に再現しているのだ。

 こうしたバーチャル・サラウンド技術で、室内にたくさんのスピーカーを設置しなくても用意に最新鋭のサラウンドを実現できるのだが、果たしてその効果はどうだろうか? 実際に試してみよう。

奥行き約10cmのコンパクトなサイズで豊かな臨場感を実現。ハイレゾにも対応

 まずは、HT-Z9Fの概要から見ていこう。スピーカーユニットは、口径46mmで振動板に発泡マイカを採用したもの。サブウーファは口径16cmの紙コーン振動板にシグマ型磁気回路を採用して強力かつ正確な駆動を実現したユニットだ。スピーカーは、フロントの左右と中央にセンタースピーカーを備えており、3.1ch構成となる。

HT-Z9Fの本体とサブウーファ。シンプルなフォルムということもあり、スマートな印象だ

 駆動するデジタルアンプはハイレゾ対応の「S-Master HX」。アンプ出力は各チャンネルともに100Wで、合計の実用最大出力400Wのハイパワーとなっている。

 ハイレゾ再生については、リニアPCM最大192kHz/24bit、DSD最大5.6MHz(PCM変換)となっている。このほか、CD音源や圧縮音源を高音質化するアップスケーリング機能「DSEE HX」を備えているので、テレビ放送や音楽配信サービスの音声、Bluetoothで受信したスマホの音楽なども、ハイレゾに近い高音質で楽しむことができる。音質についてもなかなかこだわった作りのモデルだ。

HT-Z9Fの本体とサブウーファ。シンプルなフォルムということもあり、スマートな印象だ

 映像面についても、4K映像のパススルーに対応。HDR信号についても、HDR10、HLG、Dolby Visionの3方式のパススルー伝送が可能。もちろん、4K放送を見るために必要なHDCP2.2対応も万全だ。

 無線LAN(Wi-Fi)内蔵でChoromecast Built-in、Spotify Connect、Google Homeなどに対応。スマホアプリを使ったDLNAによるNASやPCに保存した音源のネットワーク経由の再生なども可能なほか、ネットワーク経由で別の部屋に音楽などを配信できるワイヤレスマルチルーム、専用リアスピーカーのSA-Z9R(直販価格34,880円)を使用して5.1chにグレードアップできるワイヤレスサラウンドなども備えており、機能的な充実度も優秀だ。

 外観は、ごくごく普通のサウンドバーのスタイルで、強いて言えば奥行きが約10cmとコンパクトに仕上がっていること。デザインはBRAVIAに合わせたもので、シンプルなフォルムと表面に異なる質感の仕上げを組み合わせた、モダンな印象になっている。

着脱可能なスピーカーグリルを外した状態。左右と中央に同口径のユニットが配置されている
特徴的な見た目の振動板は、発泡マイカを使用したもの。ソニーの単品スピーカーなどにも採用された特性の優れた素材だ

 高級機のようにオーディオ製品的な存在感はあえて出さず、シンプルで目立たないイメージなので、リビングなどに置いても大げさな感じにならない。身近な製品として、生活に溶け込むことを意識したのだろう。横幅こそ1mほどあるが、設置に困ることもなく、大画面テレビと組み合わせるにはちょうどいい感じだ。

やや斜めから見たところ。スピーカーグリルのあった部分は、下部に張り出しが出ていることがわかる
上面は手前側がグロス仕上げで、奥側が革のようなシボ加工となっている。操作ボタンはタッチセンサーで、ボタンを示すアイコンのみ印刷されている
横から見たところ。奥行きはぐっと短く、薄型テレビの手前の空いたスペースでも置きやすいサイズ。背面の突起もごくわずかだ
背面端子。HDMIは2入力/1出力。このほかに、LAN端子、USB、光デジタル音声入力、アナログ音声入力がある
壁設置用のネジ穴などがある背面。DTS:XやDolby Atmosなどのロゴは背面にある。シンプルな見た目を徹底している

 ワイヤレスのサブウーファは、デザインこそシンプルだが、内部のユニットは新開発のもので、また内部にも補強を増やして剛性を高めるなど、音質を徹底したものだ。

 ワイヤレスなので設置の自由度は高いが、サブウーファを壁際に置く場合は、壁の反射の影響で低音が増強されることを覚えておこう。低音が増すだけでなく、音量によっては部屋が振動したり、隣室に影響がでることもある。壁際ぴったりではなく、ある程度の距離を確保した方が悪い影響が出にくくなる。

ワイヤレスサブウーファは、前面の上側にユニットがあり、下部にはポートの開口部がある
ワイヤレスサブウーファを横から見たところ。奥行きはやや長めで、スマートな形状ながら十分な容積を確保している。
サウンドバーを壁掛け設置するための取り付け金具も同梱されている

基本的には手軽に使えるが、本格的な調整機能も備える

 一通りの接続が完了したところで、初期設定などを行なった。GUIはアイコンを使ったシンプルなもので、誰でもわかりやすいものになっている。入力の切り替えは「映像」と「音楽」に別れており、用途に合わせて選びやすくなっている。音楽の切り替えでは、BluetoothやUSB、アナログ入力のほか、Chromecast built-inもここから選択できるようになっている。スマホの音楽配信サービスなどを使う場合は便利だ。

 基本設定は「かんたん設定」で、ひととおりの設定をガイド付きで行なうことができる。オーディオ機器にあまり詳しくない人ならば、とりあえずはここの設定だけでも大丈夫だ。

「映像をみる」の入力切り替え。テレビ/HDMI1/HDMI2が選択できる。テレビを選んだ場合は、HDMIのARCまたは光デジタル音声入力によるテレビ音声の再生となる
「音楽をきく」の入力切り替え。Bluetooth/USB/アナログ音声入力/Choromecast Built-inとなっており、ワイヤレス再生やネットワーク再生などもここから選択する
「設定する」の項目には、「かんたん設定」と「詳細設定」がある。「かんたん設定」を行なえば、ネットワーク設定を含めた基本設定をガイド付きで行なえる

 詳細設定には、スピーカー設定や音声設定、HDMI設定など、専門的な項目も多数ある。「かんたん設定」を済ませたら、あまり細かく設定を変える必要はないが、オーディオ関係の設定は、便利さというよりも音質に関わる設定なので、一通りは確認しておきたいところだ。

 マニュアルスピーカー設定は、できればきちんと設定をしておきたい。スピーカーの距離やレベル設定を行なうのだが、バーチャルサラウンド再生の場合はこうした設定をきちんとするかどうかで、サラウンド再現の具合も変化する。手間はかかるが、手間をかけただけの効果があるので、余裕のあるときに挑戦してみよう。

 距離は、基本的には実測する。ホームセンターなどで巻き尺などを手に入れておくといい。レベルについては、耳で聴いた感じ(聴感)を頼りにして、チャンネルによる音量差がないようにすれば十分。スマホアプリには騒音計やレベルメーターなどもあるので、これらを使って測定して調整すれば万全だが、チャンネル数は3.1chと多くはないので、そこまで精密にやらなくても大丈夫だ。

 このほか、ワイヤレススピーカーを追加する場合の設定もある。これについては、接続設定などもあるので、ワイヤレスで5.1ch化するときにはきちんと設定を行う。

 音声設定には、アップスケーリング機能の「DSEE HX」のオン/オフ、オーディオDRC(ダイナミック・レンジ・コンプレッション)、サウンドエフェクト、入力レベル自動調整などがある。

 ひとつひとつを細かく説明すると長くなるので簡単に説明すると、「DSEE HX」は好みにもよるが基本的にオンでいい。CD音源や圧縮音源の高音質化ができ、聴いてみたところ不自然な強調感もなく、スムーズで聴きやすくなる。

 「オーディオDRC」は、あまり大きな音量を出せない環境ならばオンにする。小音量でセリフや小さな音が聞こえにくくなることが減る。比較的大きな音を出せるならば、オフにすると映画館のようなダイナミックな音響になる。

 「サウンドエフェクト」は、基本的には「サウンドモード:入」を選んでおく。「ドルビー・スピーカー・バーチャライザー」はドルビー純正のバーチャルサラウンド機能だが、こちらを選ぶとサラウンドモードの選択や「バーチカル・サラウンド・エンジン」なども一切使えなくなるので注意しよう。これについては、音質の違いも含めて後でもう少し詳しく解説する。

 「入力レベル自動調整」は、テレビ放送でCMと本編の音量差、各入力に接続した機器ごとの音量差などを揃える機能。使っていて支障がなければ、「切」のままでいい。

「詳細設定」の項目一覧。スピーカー設定のようなAVアンプなどが備えるような項目もある。なかなか本格的だ。
スピーカー設定には、「マニュアルスピーカー設定」と「ワイヤレススピーカー設定」がある
マニュアルスピーカー設定では、距離とレベルを3.1chの各チャンネルごとに調整していく。手間はかかるがきちんと設定しておこう。
ワイヤレススピーカー設定では、対応したワイヤレススピーカーとの接続(ペアリング設定)などの項目がある
音声設定は、各種の音質機能の選択が可能。「サウンドエフェクト」は写真では「ドルビー・スピーカー・バーチャライザー」になっているが、基本的には「サウンドモード:入」を選ぶ

 HDMI設定やネットワーク設定は、一般的なオーディオ機器などとほぼ同様だし、「かんたん設定」のままで問題ないだろう。Bluetooth設定は、「受信」(スマホなどの音楽を再生)と「送信」(スピーカーからの音をワイヤレスヘッドフォンなどで聴く)が切り替えできるので、使い方に合わせて選べばいい。深夜はヘッドフォンで聴きたいという人には便利だ。このほか、高音質コーデックのLDACでは音質優先や接続優先などを選べるので、音が途切れることが多いようならば、設定を見直すといい。

 本体設定も、必要に応じて機能の入/切を選択しよう。IRリピーターは後ろにあるテレビのリモコン信号を再送信するもので、設置後にテレビのリモコン操作がしにくいと感じた場合はIRリピーターは後ろリピーターを「入」にする。ネットワーク設定は「かんたん設定」をした後ならば、とくに確認の必要はないだろう。

HDMI設定では、HDMIリンク機能のオン/オフと、リンク機能で連動させる項目を選べる
Bluetooth設定では、ペアリング設定などのほか、動作モードを「受信」または「送信」が選べる。使いたい機能を選んで切り替える
本体設定の一覧。こちらも使い勝手に合わせて使うか使わないかを選べばいい
接続設定では、有線と無線の接続設定が用意されている

いよいよ上映開始。いきなり緊迫した場面からの幕開けだ

 さて、いよいよ上映だ。今回の良作は「スターウォーズ/最後のジェダイ」。新3部作の第2作であり、前作で最後の最後に姿を現したルーク・スカイウォーカーが本格的に活躍するであろう作品だ。話題作であり注目作だから、物語については賛否両論となっているが、筆者的にはかなり満足している。ファースト・オーダーの追撃からひたすら逃げ続けるだけの内容だが、フィンたちの冒険、レイのフォース修行などが入り交じり、なかなか楽しくみることができた。

スター・ウォーズ/最後のジェダイ 4K UHD MovieNEX
(C)2018 & TM Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

 しかも本作は、BDだけではなくUHD BDも発売された。スター・ウォーズシリーズとしては初だ。4K+HDRの映像を収録しているわけだが、HDR方式はDolby Visionとなっていることも注目。ちなみにDolby Visionは、HDR10が10bit記録であることに対し、最大12bit記録となる。また、HDR10では全編通して同じHDR特性になっているのに対し、Dolby Visionでは明るいシーンや暗いシーンといったカットごとに異なるHDR特性を使い分けることができるので、よりダイナミックレンジの広い映像を収録できることが特徴。

 薄型テレビでは、LGがいち早くDolby Visionに対応しているほか、ソニーも対応を表明しており、製品によってはすでにバージョンアップによる対応が始まっている。反面、パナソニックはHDR10+という新規格を発表したこともあり、対応は不透明。東芝も今のところ対応は表明していない。このようにメーカーごとに対応状況が異なっている。

 とはいえ、Dolby Vision非対応の薄型テレビなどでは、HDR10で映像を出力するので、HDR対応の薄型テレビならば4K+HDRの映像を見ることは可能。Dolby Vision対応を重視するかどうかは悩ましいところだ。まだまだタイトルは少ないので、発売または配信されるタイトルが増えてきてから検討しても十分だろう。

 試聴ではUHD BD版を試用し、東芝の55X910で4K+HDRの試聴をしている。プレーヤーは、パナソニックのDMP-UB900だ。

 まずはいつものイントロから序盤に撤退戦の場面で、「ドルビー・スピーカー・バーチャライザー」を試してみた。「音声設定」の「サウンドエフェクト」でこちらを選択すると、サラウンドモードの選択や「Vertical Surround Engine」は選択できなくなる。

 Dolby Atmosの再生については、空間の広がりが多少良好になり、高さ感も豊かになると感じたが、標準である「サウンドモード:入」に戻し、「Vertical Surround Engine」を組み合わせてみると、空間感はほんのわずか小さいものの、移動感や定位の明瞭さがあり、サラウンド再現に多少に違いはあるが、どちらも捨てがたい。面倒でなければ、Dolby Atmos作品だけは「ドルビー・スピーカー・バーチャライザー」を選ぶといった使い方をしてもいいだろう。この取材では、一般的な使い方を想定し、「サウンドモード:入」として、サウンドモードは「シネマ」を選択した。基本的に「Vertical Surround Engine」もオンで聴いている。

サウンドエフェクトを選んだところ。「サウンドモード:入」と「ドルビー・スピーカー・バーチャライザー」、「切」が選べる。
「サウンドモード:入」で「Vertical Surround Engine」を組み合わせた場合の画面表示
「ドルビー・スピーカー・バーチャライザー」を選択した場合の画面表示。表示される内容が変わっているのがわかる

 サウンドモードは、シネマ/ミュージック/ゲーム/ニュース/スポーツ/スタンダードがあり、ミュージックやニュースはステレオ再生に近い音場感で、シネマやゲームやスポーツ、スタンダードが豊かなサラウンド感を楽しめるものになっている。それぞれの違いは空間感や声(セリフ、アナウンス)の定位感や明瞭度に違いがある。シネマが特徴的なのは、低音の伸びがもっとも優れ、よりスケール感の大きい迫力のある音場になる。映画館のような広い空間での音響をイメージした感じで、映画にはもっとも相性が良い。

 これらは、従来からの技術である「S-Force Pro Front Surround」技術によるもので、前後左右の音の広がりを再現する。これに、「Vertical Surround Engine」を組み合わせることで、高さ方向の再現が可能になるわけだ。基本的には頭部伝達関数を用いたバーチャルサラウンド技術ではあるが、わざわざ別にしているのは、Dolby AtmosやDTS:Xだけでなく、通常の5.1/7.1ch音声の場合でも「Vertical Surround Engine」を使って高さ方向の再現を楽しめるようにするためだろう。

 改めて、冒頭から見直すと、テーマソングは前方に広々と広がり、奥行き感も豊かだ。そのまま、撤退戦の場面に移行するが、次々と姿を現すファースト・オーダーの艦隊がなかなかの迫力。ビュンと超高速移動で飛んでくる様子は移動感も豊かだし、姿を現したときの圧迫感のあるエンジン音のようなノイズもなかなかに不気味だ。

 そのまま、Xウイングと爆撃機による攻撃が始まるが、敵のタイ・ファイターとの縦横無尽な空中戦では、思った以上に真横や後方に回り込む音もしっかりと再現されていることがわかる。高さ感も含めて3.1chのシステムとは思えないサラウンド感だ。

 強いて言うならば、後方や真後ろの音はやや定位感が曖昧になると感じるが、これはリアルにスピーカーを6.2.4chで配置した自宅のシステムと比較しての印象。さすがにリアル6.2.4chには及ばない。

 このあたりが物足りないならば、本機はSA-Z9Rのような対応するワイヤレス・スピーカーを追加することができる。当然ながら後方を含めたサラウンド空間の再現性は大きく高まるし、「Vertical Surround Engine」を使うと高さ感の再現だけでなく、空間全体のシームレスな繋がりの良さも向上する。壁掛けも可能で、電源さえつなげば信号配線は不要なワイヤレス接続なので、比較的使いやすいので、ユーザーはぜひとも検討してほしい。

ワイヤレススピーカー「SA-Z9R」

 さて、ファースト・オーダーの艦隊から超高速航法で逃げ切ったはずの反乱軍だが、その航跡をトレースされ、再びファースト・オーダーの艦隊の追撃を受け、危機は続く。攻撃を受け、レイア将軍が負傷してしまうなどピンチの連続だ。

 ここで注目したいのは、艦内で繰り広げられる会話の明瞭度。声がくっきりとした再現で実に明瞭。もちろん、緊迫したムードも伝わるし、血気盛んなポー隊長(降格された)らのテンションと、あくまでも冷静なレイア将軍らとの会話も緊張感をもって描く。

 HT-Z9Fの音は、バーチャルサラウンドのサウンドバーとして、かなりレベルの高いサラウンドの再現が可能になっているが、それを支えているのが基本的な音の実力の高さであることがよくわかる。特にセリフに実体感があるのは、センタースピーカーを加えた3.1ch構成ということもあるが、艦内のノイズやさまざまな機器のざわざわとした音や周囲のざわめきなどもきめ細かく再現しながら、セリフなどはしっかりと浮かび上がらせ、粒立ちよく聴かせてくれる。多数の音がたくさん出ているのに、混濁感が少なく、実に明瞭に描いている。このあたりの実力はかなりのものだ。

 本作は艦隊戦をはじめとしてアクションシーンも数多く、当然のようにダイナミックレンジの広い音作りになっているので、音量も大きめの方がより迫力を味わえる。音量を絞ってしまうと、さすがに細かな音が聴き取りづらくなりがちだ。こんな場合には、「ボイス」機能を使うといい。OFF/1/2でセリフの音量を上げることのできる機能で、音量を絞ったときでも声の明瞭度をキープして、楽しむことができる。深夜などは「ナイトモード」を組み合わせれば万全だろう。

付属のリモコン。コンパクトサイズながらも、入力切り替えやサウンドモードをダイレクトに選択できる

Dolby Atmosらしい、立体的な空間再現と移動感

 一方、隠棲するルーク・スカイウォーカーと対面したレイだが、反乱軍のために再び戦うことを求めるも、ルーク自身はこの場所から離れるつもりはないとそっけない。自分にできることは何もないといいたげだ。とはいえ、レイが乗ってきたミレニアム・ファルコン号にこっそり侵入して、かつての日々を思い出しているなど、すっかり人が変わってしまったというわけではなさそう。

 紆余曲折があって、フォースに目覚めたレイに修行を行なうことになるのだが、ここでの修行の場面がオーディオ的になかなか楽しい。

 まずはフォースの真理に近づくため、世界や宇宙を体感する瞑想を行うのだが、ルークの言葉に導かれるように、世界のさまざまなイメージが展開していく。この場面はちょっとしたデモソフトのようで、激しい波にさらされる断崖や心休まる自然の景色、そんなイメージに合わせて、音場も次々と変化していく。Dolby Atmosの豊かな空間再現の実力がよくチェックできる場面だ。波の音や風の音、世界に存在するさまざまな音が四方に現れ、自分を包み込んでいくような感じは、かなりのレベルだ。

 そして、修行を重ねるなかで、レイは自分を呼んでいると感じる闇の深奥、暗黒面へと踏み込んでしまう。自分の求めるものの正体を探して奥へと進むレイは、いつしか合わせ鏡の中にいるような、自分が無限に整列している状態であることに気付く。パチンと指を鳴らすと整列した自分が次々にに指を鳴らしていく。そのパチンという音も後ろから前へときれいに定位しながら移動していく。このあたりの再現もなかなかのもので、自分を取り囲むサラウンド空間の中で、音が自由な場所から発音されている感じをきちんと再現できている。5.1/7.1chのサラウンドが、前や後ろ、右や左といった方向感をもって音を再現しているイメージだとすれば、Dolby Atmosは立体的な座標のある1点から音が出てくるイメージが近い。よくもここまで、Dolby Atmosらしい音場再現を可能にしたものだと感心する。

 これはもちろん、Dolby Atmos音声信号自体にそうした膨大な情報量が含まれていることも大きな理由だ。エントリークラスのサウンドバーの製品は、Dolby AtmosやDTS:Xどころか、ドルビーTrue HDやDTS HD MasterAudioにも対応せず、ドルビーデジタルやDTS音声のみのものが多い。それらの製品にも優れた製品は少なくないが、受け取ることのできる信号が限られ、Dolby Atmosなどに比べれば、大幅に情報量をそぎ落とした音声信号でサラウンド化を行うのだから、絶対的なサラウンド効果には大きな差が出てしまう。

 これは、筆者自身もドルビーTrueHDやDTS HD Master audioの登場時期に実感したが、価格の低いエントリーに近い製品ほど、上位のサラウンドフォーマットに対応したときの音のグレードアップの幅が大きい。絶対的な音のクオリティは決して高くない価格帯の製品だからこそ、元の情報量が豊かになった結果、音質が良くなったと感じやすいのだ。もちろん、大幅に増えた情報量に合わせて音のチューニングなども変えるし、コストの制約のなかでより良い音を追求した結果でもあるが、HT-Z9Fはそれまでの同価格帯の製品と比べると、まさに別次元と言える飛躍を果たしているのだ。

最後のクライマックスは、極上の爆音を存分に満喫しよう

 「スターウォーズ/最後のジェダイ」は、3つの視点が次々と切り替わっていく展開だし、カイロ・レンと銀河皇帝の関係も大きく変化するなど、物語としての展開もダイナミックだ。フィンとローズの冒険も、カジノのある惑星での出会いが、今後の物語にも大きく影響してくるはず。アクションも含めて見どころはいっぱいあるが、最後は筆者が一番大好きなシーンを紹介しよう。

 言うまでもなく、ルーク大活躍の場面だ。追い詰められた反乱軍は旧反乱軍の基地の残る惑星へと退避。銀河に向けて反乱軍への支援を要請する。圧倒的な軍勢を率いて惑星に降り立つファースト・オーダー。奮闘むなしく絶体絶命の危機に陥った反乱軍にようやく姿を現すのが我らがルーク・スカイウォーカーだ。

 圧倒的な軍勢の前に一人で立ち向かう姿もカッコイイ。ファースト・オーダーは、たった一人の人間にするとは思えない規模で攻撃を開始する。その時の音が壮絶だ。単純に爆音が出るというだけでなく、かなり低い音域の低音もたっぷりと入っており、地鳴りのような身体を震わせるような音が出る。

 こういう音が入ったソフトは、立派なサブウーファを持っている人は大好物だ。この音が激しく鳴るほど、ファースト・オーダー側がルークに対して感じているプレッシャーの大きさを表すわけだから、ショボイ爆撃で終わってしまうとルークのカッコ良さも半減してしまう。

 HT-Z9Fのサブウーファは、かなりの出来だ。16cmウーファは、これまでのサウンドバータイプのミドルクラスの製品でも採用しているが、重低音の再現を追求しながらも、筐体の強化やユニットの改善などにより、大振幅で生じる高調波歪みの低減、筐体の振動による音の濁りを減らし、かなり質の高い低音再生を可能にしていることがわかった。

 今までならば、このクラスの製品だと最低音域の伸びや低音の解像感などを含めて、やや物足りなさを感じることが少なくなかったが、HT-Z9Fのサブウーファはそうした不満はほとんど感じない。本気で映画館並の音量を出しても十分に応えるし、近所迷惑が心配になるレベルの実力がある。そこまで音量を出さなくても、ふだんより少し大きな音量で十分に質の高い低音を味わえるのでご安心を。メインボリュームとは独立してサブウーファのボリュームも調整できるので、メインの音量に合わせてサブウーファの音量をうまく調整してやると、質の高い再生を楽しめるだろう。使いこなしのポイントは、メインの音量を上げたときはサブウーファの音量は下げる。小音量再生の場合は逆にサブウーファの音量を上げること。うまくバランスが合うと、特に小音量再生の場合、見違えるほど音の力強さが増し、聴き応えのある音になる。

 さて、絶望的なレベルの爆撃がようやく終わった後は、ルークの勇姿に惚れ惚れとしてしまえばいい。旧作からほぼリアルタイムで見てきた世代の筆者としては、ハン・ソロも含めてかつてのヒーローの年老いた姿を見るのは、悲しいものもあるのだが、ハン・ソロもルークも老いた姿が実に立派だった。

 「キングスマン:ゴールデン・サークル」でカメオ出演したときの何のオーラも感じないおじさんと同一人物とは思えない。これも「スターウォーズ」という作品の面白いところなのかもしれない(作品にかける意気込みがまるで違うとは思うが)。

 ともあれ、新たな3部作もいよいよ次がクライマックスとなるわけで、そちらへの期待も含めて楽しく鑑賞することができた。しかも、十分に手の届く価格の製品でここまで満足できるのはうれしい。

 映画館の大音量に匹敵するとまでは言えないが、自宅でわざわざUHD BDを買って見たときに、その音の違いにがっかりするようなことはなく、映画館での興奮がしっかりと蘇るレベルの音だ。

 冒頭で述べたようにDolby AtmosはBDやUHD BDだけでなく、動画配信サービスなどでも採用が進んできている。ぜひ映画ファンは、Dolby Atmos環境の導入を検討してほしい。手の届く価格でしかも驚くレベルの実力を持つことは間違いないし、天井へのスピーカーの設置なども不要な手軽さは大きな魅力となるはずだ。

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鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。