小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1080回
机の上の救世主!? 12-in-1モニタースタンド「Anker 675」に色々接続する
2023年6月14日 08:00
Anker Series 6とは
モバイルバッテリーなどスマートフォン周辺機器に強いAnkerだが、その中にSeries 6というのがあるのをご存じだろうか。以前iPhone周辺機器で、MadSafeにくっつけられる充電器のシリーズを一通りテストしたことがあるが、当時は「MagGoシリーズ」という名前であった。
これらの型番が全部600番台だったことから、最近はこうした新体験を提供するラインナップを、「Seires 6」と呼んでいるようである。これにはUSB-Cハブやソーラーバッテリーなども含まれる。
そのSeries 6の中でひときわ異彩を放つのが、今回ご紹介する「Anker 675」である。USB-Cハブではあるのだが、モニタースタンドも兼用しているという製品だ。公式サイトでの価格は32,990円。
前回「Soundcore Motion X600」をレビューしたが、ハンドルが固定なので、正面に設置するとモニターにかかって邪魔なのが判明した。もしかしたらモニター台に乗せれば解決するかも、と書いたわけだが、Anker純正のモニター台があるということで、早速試してみた。
USB-Cハブとしても優秀
AnkerはUSB-Cハブでも割と参入は早かった。この分野ではすでに低価格な競合他社が沢山ある状況だが、信頼性という点で未だAnkerの人気は高い。
筆者も過去にケーブル接続型のUSB-Cハブを使っていたことがあるが、ハブ側でしょっちゅうケーブル類の抜き差しが発生するし、多数のケーブルに引っぱられることになるため、どうしてもハブから直接生えているケーブルの強度が問題になる。筆者は過去何度かこの部分が断線し、定期的に買い換えるようなことになっている。
一方でUSB-Cハブでもハイエンド向けとなると、別途電源を接続し、PCもそこから給電するような、一種のドッキングステーション化していく傾向がある。実際にはケーブルで繋がっているだけなので”ドッキング”はしていないのだが、機能的には外部接続をすべて面倒見るといった商品である。Ankerにも「Anker PowerExpand 13-in-1 USB-C Dock」といった製品がある。
今回取り上げる「Anker 675」も、クラスとしてはそこに準じる製品という事になる。ただモニター台と一体化しているので、置き場所に困らないどころか、スペースの有効活用も可能という一石二鳥製品である。デスクトップ型でも使えない事もないが、製品の趣旨としてはノートPCを拡張するための製品である。
製品としては足の短いコの字型の台なのだが、市販のモニター台によくあるような組み立て式ではない。内部に電源配線が通るので、ユーザー側での組み立ては危険という判断だろう。
サイズは横540×奥行き220×高さ90mmと、十分なサイズだ。重量は660g。スタンド部外側の左と天板の裏側に端子類がある。なお天板にはワイヤレスポートもあり、対応のスマートフォンやイヤフォンなどが充電できる。
付属品として大容量180WのACアダプタが付属する。またPCと接続用のUSB-C to USB-Cケーブルも1本付属する。
まず天板裏側の端子類から見ていこう。天板裏側にはトレイのような部分があり、あまったケーブルはここに巻き付けられるようになっている。また奧部にはケーブルを逃がすための穴も用意されている。
写真左側が設置すると奧側になるわけだが、左からPC接続用(アップストリーム)のUSB-C端子、ACアダプタ接続用端子、10Gbps対応のUSB-A端子、LAN端子、HDMI出力となる。HDMI出力は最大4K60p対応。
アップストリーム端子の供給電力は最大100Wだ。今回はM2 Pro版MacBook Pro(2023)を接続しているが、MacBook Pro付属のACアダプタは140Wなので、100Wだとちょっと足りない事になる。とはいえ、常時140W食っているわけではなく、普段は10W程度で動いている。急速充電時のみ、この電力量となる。
設置するとこの端子のアクセスは困難になるので、基本的には常時繋ぎっぱなしになることが想定される。USB-A端子にはキーボードを繋ぐといった事になるだろう。
側面の端子も見てみよう。写真では左側が奥側になる。左からPDによる電源供給も可能なUSB-C端子が2つ、同じく電源供給可能なUSB-A端子が1つ、通常のUSB-A端子が1つ、SDおよびMicroSDカードスロット、イヤフォン端子となっている。一番右は電源ボタンだ。
USB-C端子2つの合計電力供給量は45Wとなっている。
高すぎず、低すぎず
では実際に設置である。筆者宅はこれまでも何度かご紹介したことがあるが、PCモニター代わりに東芝の40インチ4Kテレビを使用している。普段はMacBook Proの液晶部は展開しておらず、この40インチテレビだけで仕事をしている。
これをAnker 675に乗せてみると、まるで専用品のように脚部が綺麗に収まった。ただ、ワイヤレス充電ポートのところに脚部が少しかかるので、充電ポートとしては使えなくなった。小型のイヤフォンなら行けるかと思ったのだが、ディスプレイとの隙間にはつっかえて入らなかった。
PC向けディスプレイの多くは1本足だし足も長いので、普通はこんな事にはならないだろう。ただ横長のディスプレイでは、スタンド部が長いV字型をしているものもあり、そうしたものは脚部がワイヤレス充電部まで届くものもあるかもしれない。
大型ディスプレイの場合、全画面を使って1つのアプリを使うケースはあまりないが、9cmも高くなると、最上部にあるメニュー類はちょっと遠くなる印象がある。スタンドを使って上げるサイズとしては、16:9なら32~36インチか、もっと横に長いディスプレイが妥当だろう。
ただ、これまでまあまあデッドスペースだったディスプレイ直下に大きな収納空間が生まれるのは、目からウロコである。台の下の空間は、幅515×奥行き220×高さ65mmとなる。一般的なテンキー付きキーボードでも横幅は450mm程度なので、余裕で収納できる。ただ筆者が常用しているKINESISのエルゴノミクスキーボードは最高部が70mmぐらいあるので、このスペースには入らなかった。
台の下にパソコンを収納するということも考えられる。13インチMacBook Airを収納してみたが、これは奥行きが210mmぐらいなので、余裕で収納できる。一方16インチMacBook Proは奥行きが250mmあるので、3cmほど飛び出す事になる。
LIDクローズではなく、普通に展開して使う場合はどうか。13インチMacBook Airの場合、目線位置からはちょうど本体ディスプレイと外部ディスプレイの高さが被らず、デュアルディスプレイとして使う場合には十分なパフォーマンスが得られるようだ。
一方16インチのMacBook Proの場合、本体ディスプレイの上部が外部ディスプレイに食い込む格好になり、視線としてデッドスペースができる。もっとも、ディスプレイの脚部の長さにもよる話なので、16インチPCでも問題ないディスプレイはあるだろう。
また前回懸念していた、Anker X600のハンドル部だが、90mm上げる事でまったく問題なく真正面に置けるようになった。X600に限らず、大きめのBluetoothスピーカーでも正面に置けるだろう。仕事中のオーディオ環境は、より柔軟に考える事ができる。
総論
ディスプレイ台にUSB-Cハブを内蔵するというのは、なかなか優れたアイデアである。調べてみるとすでに数年前からこうした商品は沢山販売されており、多くは1万円以内で購入できる。
本機のような3万円越えの製品はむしろ破格に高いが、やはり180Wもの超大容量電源と、PD給電可能なType-Cポートがふんだんにあるという、USBハブとして強力なあたりがAnkerならではという事になるだろう。
ACアダプタが巨大でその置き場に困るという意見もありそうだが、それはスタンド下に収納できるとも考えられる。これだけ容量が大きければ、将来的にはトランスも脚部に内蔵して、コンセント直刺しのようなスタイルも考えられる。
ポート類が左横に付いているという点では、ケーブルやメモリーカードの抜き差し頻度が多い場合、いちいち左側を覗き込まなければならないというデメリットもある。利便性を考えれば、SDカードスロットなどは正面にあっても良かっただろう。
またポート類は左側が良かったのかという問題もある。有線マウスやUSBテンキーなどを繋ぐ場合、ケーブルが右から左に横断することになり、見た目もごちゃごちゃする。この場合は、スタンドの前後を逆にして設置したほうがいいかもしれない。
製品自体は概ね満足できるところだが、やはり3万円越えという価格設定がネックになるところだ。とはいえ180WものUSB-Cハブというのもなかなか存在しないわけで、ある意味モニタースタンドにUSB-Cハブを付けたというより、強力USB-Cハブを邪魔にならないように設計したらモニタースタンドになった的な立ち位置である。そこの価値がわかる人にはこれ以外の選択肢はないという、尖りきった製品ということになる。