小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1088回
高画質アクションカム「DJI Action 4」。大型センサー、10-bit&D-Log Mの実力は!?
2023年8月23日 08:00
完成度が高かったAction 3の次は?
DJIのActionシリーズは、初代が2019年発売の「Osmo Action」、2世代目が2021年の「DJI Action 2」、3世代目が2022年の「Osmo Action 3」と進化してきた。そして今年登場したのが、「Osmo Action 4」である。
こうしてみると、2世代目の「DJI Action 2」のみ、かなり特殊な分離合体形式で、それ以外は一体型のGoProスタイルであることがわかる。2だけ名前にOsmoが付かないのは、コンセプトが違うということのかもしれない。
2が例外だとすると、初代「Osmo Action」と3代目「Osmo Action 3」の間は3年の隔たりがあり、ものすごくジャンプアップしたように見えたのも当然かもしれない。もうそれ以上やることがないんじゃないかというほどの進化だったが、「Osmo Action 4」では基本機能はそのままに、センサーを大型化して画質向上を図った上位モデルという位置づけで登場した。
販売形態としては、保護フレームやマグネットマウントなどが付属する「スタンダードコンボ」が58,300円、スタンダードコンボに加えてバッテリーケース+バッテリー3個と1.5m延長ロッドなどが付属する「アドベンチャーコンボ」が75,900円となっている。
デザイン的には据え置き、中身だけ進化という、デジタルカメラによくあるパターンとなったOsmo Action 4を、早速試してみたい。
ほぼ変わらないボディ
Osmo Action 3と4は何が違うのかというところが気になるわけだが、外寸は全く同じ、重量も同じだ。ボディ上の違いは、本体防水性能が3は水深16mであったのに対し、4では18mになっているところぐらいだろうか。ボディカラーは若干、4のほうが暗めになっているようだ。
正面のActionロゴの「O」の時のところに色温度センサーが内蔵されているところも同じ、底部にステレオマイクを配置したところも同じだ。上部のスピーカー穴のデザインが多少変更されているが、外観の違いは小さい。
また3同様マグネット式のマウントに対応しており、プロテクトフレームを使用すれば縦撮りもできるところなども変わっていない。
一方機能が減ったところもある。3では音声の指向性で「オフ」と「前方」の切り替えがあったが、これがなくなっている。あまりVlogのような音声収録をする人が居なかったのだろうか。ただマイク指向性が変えられるというのは昨今のカメラのトレンドなので、これが後退したのは残念だ。
最大の違いはセンサーで、3が1/1.7インチなのに対し、4は1/1.3インチと大型化している。従ってレンズ設計も新規でレンズ径も大型化しているが、スペックは変わっておらず、視野角115度、絞りF2.8となっている。
またカラーモードとして「10-bit & D-Log M」に対応した。これは同社製ドローンではすでに2020年頃から搭載が始まっているが、高ダイナミックレンジと約10億色以上が記録できるLog収録モードだ。以前のD-Logよりも調整幅は狭くなるが、調整しやすいということから最近は多くの製品で搭載されるようになっている。作品化するにはカラーグレーディングが必要になる。
動画解像度はHD、2.7K、4Kに対応しており、最高フレームレートはHDで240p、2.7Kと4Kでは120Pとなる。ただし映像アスペクト比が16:9のみに限られる。
手ブレ補正は電子式で、RockSteady 3.0、RockSteady 3.0+、HorizonBalancing、HorizonSteadyの4タイプが利用できる。RockSteady 3.0+までは全モードで使用できるが、HorizonBalancingはフレームレート60fps以下のときのみ使用できる。またHorizonSteadyは解像度2.7K以下、フレームレート60fps以下のときのみ使用できる。
アスペクト比が4:3の時や、フレームレートが100/120fpsの時は、画角を「広角」にセットしておけばジャイロデータが記録できるので、あとでスマホアプリのDJI MIMOを使って手ブレ補正をかけることができる。
手ブレ補正は相変わらず優秀
まず手ブレ補正からチェックしてみよう。アクション系のカメラということで、手持ち撮影というよりは、乗りものに固定した際にどれぐらいスタビライズするかがポイントになる。
今回は4K60pでの撮影を基本にしてみた。利用できる補正としては、RockSteady 3.0、RockSteady 3.0+、HorizonBalancingまでとなる。HorizonBalancingは最大45度までの傾きでも水平を維持する。HorizonSteadyは360度回しても水平を維持するが、45度以上傾かなければ同じである。ただし画角はかなり狭くなる。
バイク・自転車用アクセサリーキットもお借りしているので、自転車に装着して補正量を比較した。RockSteady 3.0、RockSteady 3.0+は、このテストではほとんど違いがないように見える。HorizonBalancingは、画角がちょっと狭くなるものの、水平維持能力は高い。手持ち撮影で広角だと水平が気になるので、積極的に使っていきたいところだ。
一方、4K120p撮影にて後処理でDJI MIMOで手ブレ補正処理させてみたが、こちらはレベル設定などは何もなく、補正具合としてはRockSteady 3.0にも及ばない。また発色も落ちるので、あまり実用的な方法とは思えない。
音声収録もテストしてみた。今回は前方への指向性設定がなくなっているが、音声の集音はまずまず良好だ。風ノイズ低減をONにすると多少声質が硬くなるが、風切り音は概ねカットされている。
HD解像度まで落とすと、8倍速スローで撮影できる。今回は水中に潜るよう設置してみたが、水中から出たときの水切れも良好だ。これはカバーガラスが撥水・耐油コーディングされているからである。耐油性能もあるので、うっかりガラス面に触っても指紋が付きにくく、柔らかい布で拭き取ればすぐ綺麗になる。
10-bit & D-Log Mと夜間撮影
Action 4のポイントはセンサーの大型化による画質向上だ。中でも10-bit & D-Log Mの対応は気になるところだ。これまでは主戦場がドローンだったので、地上での撮影でどういう絵柄になるのか、見たことがある人は少ないだろう。
今回はいつもの風景を10-bit & D-Log Mで撮影、DaVinci Resolveでカラーグレーディングした。LUTはOsmo Action 4の公式サイトにて配付されている、「DJI OSMO Action 4 D-Log M to Rec.709 vivid LUT」を使用した。
10-bit & D-Log Mの特徴は、LUTを当てなくても激しく黒が浮き上がることもなく、そこそこ見られる絵になっているところである。このため、編集ツールのサムネイルでは10-bit & D-Log Mで撮影したのかノーマルで撮影したのか判別が難しい。混在して撮影した場合は、カメラ側でメタデータを確認するしかない。
サンプルとして、LUTを当てて編集した映像のあとに、同じシーンをLUTで追加してある。クロマが低いが、なんとなくそういう写りなのかなと思わせる程度の違いしかないので、うっかり処理を忘れてしまう可能性もある点に留意いただければ幸いだ。
LUTを当てた映像で評価すると、発色が良いのはもちろんだが、空のグラデーションにも階調が見られず、非常に滑らかに表現されている。このあたりはさすがドローンで鍛えられた表現というところだ。
画質面としては、撮像素子の大型化に伴って1ピクセルの面積も大きくなったことで、暗部撮影にメリットがあると見られる。撮影メニューの中にも「低照度映像最適化」という項目があり、オフと自動が選択できる。
ただしこの機能が使えるのは、フレームレートが30fps以下の場合のみである。よって夜間撮影は、4K/30pで撮影している。またこの機能は10-bit & D-Log Mとは併用できない。順に最適化オフ、自動、オフ+10-bit & D-Log Mで撮影している。
撮影はすでに日没後で、目視ではようやく足もとが見える程度である。オフでは暗部にノイズがチラチラしているが、自動にしたからといってツルツルに処理されるわけではない。若干ノイズの暴れ具合がゆっくりになっているかな、といった程度である。この程度であれば、10-bit & D-Log Mで撮影して暗部は潰してしまったほうが、SNは良く見えるのではないだろうか。
低照度映像最適化を自動にセットして一通り夜間撮影をしてみたが、完全な暗がりよりも、光量が落ちた夕暮れや照明が当たっているあたりの方が効果がありそうだ。このサンプルは4Kで撮影してHDにシュリンクしているので、SNはさらに良好に見えるはずだ。
総論
Action 3に高画質をプラスという格好で登場したAction 4。センサーの大型化によるキレの良さというよりは、10-bit & D-Log M対応の恩恵が一番大きいように思える。4を使うなら、10-bit & D-Log M撮影を使わないとメリットが出ないとも言える。
期待された暗部撮影だが、それほどすごく暗部に強いというわけでもないように思える。もちろん3に比べれば向上しているのだろうが、裏面照射CMOS搭載のカメラに比べれば限度がある。やはりシーンに応じてカメラを使い分けるというのが妥当だろう。
スタンダードコンボで比較すると、3に対しておよそ11,000円アップとなるわけだが、このぐらいの差なら3で十分という考え方もあるだろう。さらにガジェット的な面白さで言えば、価格が下がってきたAction 2もお買い得になってきている。
時期的にはそろそろGoProも次期モデルが出そうなタイミングではある。例年だいたい9月から10月に新モデルが登場している。今年の新モデルが全て出そろってから、購入を検討するのもいいだろう。