小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1142回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

ついにPro化? DJI「Osmo Action 5 Pro」を試す

9月19日に発表された「DJI Osimo Action 5 Pro」

さて今年はどういう進化?

9月12日よりDJIのサイトで、PROと書かれたティザーページが展開された。9月19日22時に情報解禁という事だったが、その正体は、アクションカメラとして初めてのProを名乗る「DJI Osimo Action 5 Pro」だった。

DJIの歴代Actionシリーズの流れを整理してみると、2019年の初代「Osmo Action」は、すでにドローンや小型ジンバルカメラOsmo Pocketで他社を圧倒している中、DJIがGoProフォロワーとして参入する意味があるのかなと思われたが、2021年の「DJI Action 2」では超小型ボディにディスプレイ付きバッテリーユニットが分離合体できるというユニークな設計で、ただのアクションカメラとは違った方向性を示してきた。これは筆者も個人的に購入している。

2022年の「DJI Osmo Action 3」はGoProタイプながら非常に完成度が高く、元祖GoProにはない機能を多く搭載して、業界をあっと言わせた。続く2023年の「DJI Osmo Action 4」は、正直3とそれほどスペックが変わらず、センサーの大型化とLog対応という、画質向上をメインに据えたアップデートだった。

そして今年の「5」は、Proを標榜するモデルとなっている。Proが付かないモデルがあるわけではなく、もう5はPro向け、というコンセプトのようだ。何を以てProというのか、というところが気になるわけだが、DJI Action 5 Proはどのように進化したのか、早速テストしてみよう。

外寸は同じで機能追加

まず外寸だが、アクセサリ等の都合もあることから、サイズは3からずっと変わらず、70.5×44.2×32.8mm(長さ×幅×高さ)となっている。ボタン位置、端子の位置も同じだ。ただ光学系やディスプレイのスペックが違っているため、レンズカバーや破損防止保護シートなどは旧モデルと互換性がないようだ。

イメージセンサーは、サイズは4と同じ1/1.3インチCMOSだが、今回は最大13.5ストップの広ダイナミックレンジとなっている。またカラーモードとしては、ノーマル8bit、ノーマル10bit、HLG 10bit、D-Log M 10bitの4モード切り替えとなった。D-Log M 10bitは4から搭載しているが、HLGをはじめ10bit撮影を使いこなせるかが問われるカメラと言えそうだ。

センサーは新規だがレンズスペックは変わらず
D-Log撮影ではディスプレイのLUT補正機能も追加された

動画解像度はHD、2.7K、4Kに対応しており、最高フレームレートはHDで240p、2.7Kと4Kでは120pとなる。なお4の場合は映像アスペクト比が16:9のみ60p以上のハイフレームで撮影できたが、今回は4:3画角でも撮影できる。4:3のほうが画角が広いので、あとからトリミングして使用するなら4:3で撮影することが推奨されている。

モード解像度フレームレート
1080 16:91,920×1,08024~240
2.7K 16:92,688×1,51224~120
2.7K 4:32,688×2,01624~120
4K 16:93,840×2,16024~120
4K 4:33,840×2,88024~120

またHD 240p撮影の場合は、撮影後にカメラ内でフレーム補間を行ない、4倍の960pに変換する機能も備えている。これはあとで試してみよう。

静止画解像度は前作の約10MPから40Mpにアップ。最大で7,296×5,472ピクセルで撮影できる。また特定秒数内に限られるが、1秒に2枚や3秒で9枚といった連写機能も追加されている。

ディスプレイは背面と前面に2つあるスタイルだが、4がLCDだったのに対し、今回は高輝度OLEDに変更されている。10bit撮影がメインになった事で、ハイダイナミックレンジの状況が確認できるようにという事だろう。

秒数内に何枚、といった格好で連写も可能
ディスプレイは前後ともOLEDに

防水性能としては、4が防水ケースなしで水深18mだったのに対し、今回は20mにアップされた。また内部に圧力センサーが装備されたことで、水中に潜れば水深を、地上では高度が表示されるようになった。また水に入れば自動的に録画を開始し、水から出れば録画を停止するといった機能も追加されている。なお防水ケースに入れた場合は、圧力検知ができなくなるので、この機能は使えなくなる。

底部にある小さな穴が圧力センサー
圧力変化による自動録画も可能

録画機能として大きな変化は、内蔵ストレージが搭載されたことだ。容量は47GBあるので、そこそこ長時間撮影にも対応できる。microSDカード忘れた、という時にも撮影できないという最悪の事態が回避できる点は、ありがたい追加ポイントだ。もちろんmicroSDカードスロットもある。ただしデュアル記録やリレー記録には対応していないようだ。

内部ストレージとSDカードの両方が使える

手ブレ補正機能には、水平維持機能との組み合わせで、RockSteady 3.0、RockSteady 3.0+、HorizonBalancing、HorizonSteadyの4タイプがある。解像度やフレームレート、あるいはアスペクト比の組み合わせで使えるモードが限られてくる。これまでどの組み合わせで何が使えるのかをまとめたことがなかったように思うので、一覧にしておく。

「1080P」242530485060100120200240
RockSteady
RockSteady+
HorizonBalancing××××
HorizonSteady××××
「2.7K/16:9」242530485060100120
RockSteady
RockSteady+
HorizonBalancing××
HorizonSteady××
「2.7K/4:3」242530485060100120
RockSteady
RockSteady+
HorizonBalancing××××××××
HorizonSteady××××××××
「4K/16:9」242530485060100120
RockSteady
RockSteady+
HorizonBalancing××
HorizonSteady××××××××
「4K/4:3」242530485060100120
RockSteady
RockSteady+
HorizonBalancing××××××××
HorizonSteady××××××××

音声収録という点でも強化が見られる。以前は本体正面のActionというロゴのところにマイク穴が空けられていた。だが今回はマイク穴をロゴプレートで隠すように設計変更されており、風によるフカレを減少できるという。これも後でテストしてみよう。

マイク穴はロゴプレートでカバーされた

また4では同社製のワイヤレスマイク、DJI Mic2を接続できたが、1台だけだった。今回は2台接続できるようになっており、Vlog撮影などでも収録バリエーションが強化されている。

DJI Mic 2とも直接接続できる
ワイヤレスマイクは2台接続可能に

4から付属している保護フレームも健在で、マグネット式マウントによって縦撮りにも対応する。また新撮影モードとして「被写体トラッキング」が追加されており、このモードで撮影した際にも収録は自動的に縦構図となる。

保護フレームを使って縦撮りに対応するのは同じ

バッテリーも新しくなっている。4までは1,770mAhだったが、5Pro用は1,950mAhとなる。そのため、旧製品のバッテリー充電ケースでは、新バッテリーを完全充電できなくなっている。旧製品をお持ちの方は、バッテリーと充電ケースの組み合わせを混在させないよう注意が必要だ。

バッテリーも容量アップ
新規バッテリーに合わせて充電ケースもリニューアル

加えて4nmプロセスによる制御チップの採用や消費電力の見直しにより、バッテリー駆動時間を従来の160分から240分に拡張した。もちろん持続時間はディスプレイの消灯時間などによって変わってくるが、タイムラプス撮影などでも外部給電不要で、ある程度の時間は撮影ができると考えていいだろう。

4:3撮影を強化した動画機能

では早速撮影してみよう。レンズの焦点距離は35mm換算でおよそ9mmだが、録画モードや手ブレ補正のグレード、歪み補正など加えるとだんだん狭くなっていく。一般のアクションカメラでは、それで結局どれぐらいの焦点距離になるのかわからなかったが、本機では各種モードの組み合わせでの焦点距離が表示されるようになっている。他のカメラと組み合わせてマルチカメラで撮影するときに、画角のバリエーションの組み合わせを設計しやすくなるだろう。

各種モードの組み合わせによる焦点距離がわかる

なお一番多くの撮影モードが使える1080p時の実際の画角は、以下のようになっている。

手ブレ補正なし 超広角 9mm
手ブレ補正なし 広角 10mm
手ブレ補正なし 標準(歪み補正) 14mm
RockSteady 3.0 標準(歪み補正) 15mm
RockSteady 3.0+ 標準(歪み補正) 17mm
HorizonBalancing 標準(歪み補正) 17mm
HorizonSteady 標準(歪み補正) 19mm
デジタルズーム2倍

手ブレ補正の強度については、新たに強化されたという話も聞いていないが、かなり強力に補正する。サンプル動画程度の振動であれば、もうRockSteadyもRockSteady+も差がわからないし、水平維持もHorizonBalancingとHorizonSteadyもそれほど違いがない。まず手ブレ補正で心配する必要はなさそうだ。

手ブレ補正のテスト

今回は10bitカラーが充実したということで、D-Log M 10bitでサンプルを撮影している。LUTは今回イメージセンサーが違うので、新しいLUTが提供される可能性が高い。だが執筆時点ではまだ公開されていなかったので、Action 4用の「DJI OSMO Action 4 D-Log M to Rec.709 vivid LUT」で代用している。

また画角は4:3で撮影し、編集時に16:9にトリミングすることで、画角のおさまりのいいところを切り出している。

4K/60P 4:3で撮影後、16:9にトリミングしたサンプル

最初のカットで空にブロックノイズを感じるのは、YouTube画質へ圧縮に起因するもので、オリジナルにはない。全体的に逆光でもディテールは良好で、色味も強く、個性のある絵柄になっている。

夜間撮影用に、「スーパー夜間」という撮影モードが用意されている。解像度は1080p、2.7K、4Kが用意されているが、いずれもアスペクト比は16:9固定で、フレームレートも最高30fpsとなっている。今回は4K/30pで撮影している。

「スーパー夜間」による撮影

満月が出て比較的明るい夜だったが、全体的にまあまあ明るく撮れている。ただ歩きの振動に合わせて映像の輪郭が滲むようなブレが見られる。最後のカットは小走りに走ってみたが、その傾向が顕著にわかる。センサーの高画素化の影響で、感度が下がっているのかもしれない。

Action 4には「低照度映像最適化」というメニューがあり、夜間撮影に強みを発揮していたが、5 Proにはそのようなメニューが見当たらなかった。逆光などダイナミックレンジが広いシーンでは5 Pro、夜間撮影は4という棲み分けが妥当かもしれない。

改良された音声収録と、旬の機能「旬の機能オートフレーミング」

5ProではVlogでの使用も想定して、新機能や改良が加えられている。まずハードウェアとしての改善として、マイク実装方法が変更されている。マイク穴がAction 5 Proというプレートの後ろ側に隠されたことで、横風によるフカレにも強いという。

DJI Mic 2による集音と比較してみると、内蔵マイクの音質は割と硬質で、明瞭感が高い。DJI Mic 2は1台しかないのでモノラルなのに対し、内蔵マイクによるステレオ収録であるという違いもあるだろう。風切り音低減機能をOFF、標準、高と切り替えてみたが、音質の差はほとんど感じられなかった。

内蔵マイクの性能をチェック

肝心の風切り低減だが、「標準」ではまだ若干風の影響を受けるようだ。「高」ではかなり自然に抑えられている。音質への影響は少ないので、風があるときは迷わず「高」でよさそうだ。

最近注目されているのが、固定カメラで被写体をトラッキングし、自動的に積雪なフレーミングを行なってくれる機能だ。どのカメラが最初だったのかは判然としないが、筆者が覚えている限りではソニー「ZV-E1」で搭載されている。当時はそれほど注目されていなかったが、最近では同社業務用機の「PXW-Z200」と「HXR-NX800」にも搭載され、再び脚光を集めている機能である。

ソニーのカメラでは、4K撮影のHD切り出しで、アスペクト比は横長の16:9である。一方本機の実装は、4K撮影で縦長9:16で切り出すというスタイルになっている。確かにフォローするのは二足歩行で縦長画角の人間がメインだし、大抵は横にしか動かないので、横長16:9画面から切り出すことを考えれば、縦長に切り出した方がマージンが広い。

実際にテストしてみたところ、フォロー精度はかなり高い。このあたりは以前からドローンで被写体トラッキングを長いこと搭載しており、かなりこなれている印象だ。

「被写体トラッキング」による撮影

10秒ぐらいはトラッキングが外れても復帰できるとは聞いていたが、試してみたところ10秒を超えても復帰できるようだ。ただこのあたりは、10秒ぐらいを目安にしてほしいという事なのかもしれない。また遠く離れていっても、トラッキングは維持しているようで、ちゃんと移動に合わせて画角をフォローしているのがわかる。1人での撮影には威力を発揮する機能だろう。

スローモーションも、強化されたポイントだ。元々1080では240pで撮れるので、30p再生すれば8倍速スローにはなる。さらに今回は、1080/240pで撮影した際に、カメラ側での再生時にカタツムリのマークを押すと、そのポイントからさらにフレームを補間して960p相当のスローを生成してくれるという機能を搭載している。

再生中にカタツムリマークを押すと、そこからスローモーションになる
クリップ作成までしばらく待たされる
スロー補間された部分は、本体およびDJI MIMO上では青く表示される

実際に試してみたところ、長いクリップ全体を960pに変換してくれるわけではなく、カタツムリマークを押した場所から35秒間をスローにしてくれるという機能のようだ。オリジナルの映像に続いて、フレーム補間してスローになった画像を連続でご覧いただく。

フレーム補間によるスローモーション

音が無くなってスローが始まったポイントが、補間が始まったところである。一気に960pになるわけではなく、段階的にスローダウンしていくといった演出がなされているようだ。復帰する際も、徐々に元のスピードに戻る。

だがこうしたスピード変化は、Proモデルでは必要ない。これは映像演出に関わる部分なので、どこをどうスローダウンするのか、スピード調整は編集者が判断するべきだ。よってこうした演出は、プロの世界ではかえって邪魔なのである。単に960pに補間した映像を出力してくれるだけで十分だったのだが、まあ、余計なことをしてプロに叱られるところから、Pro用への道が始まる。アップデートなどでの改善を期待したい。

総論

何を以てProなのか、という問いに関しては、撮影のプロ向けという意味合いもあるだろうし、登山やダイビングといったハードなプロスポーツ向けへの対応という意味合いもあるだろう。

特に圧力計を備えたことで、水中に潜ると自動撮影、バッテリーも長持ちというのは、潜水撮影をよくやる人にはありがたい機能だろう。一方陸上においては、高度がわかる程度の機能しかないので、こちらのほうも何か撮影に関する機能アップを期待したいところだ。

地味ながら強化されたポイントは、音声収録だろう。ワイヤレスマイクも2ch使えるし、本体マイクもかなり良好に集音できる。ワイヤレスマイクを使った場合でも、「内蔵マイクでの音声バックアップ」という機能をONにしておけば、カメラマイクでも音声を別ファイルで集音できる。「音は二の次」だった従来型アクションカメラでは、しゃべりが多い撮影には不向きだったが、Vlogはもちろんテレビロケでタレントに持たせるカメラとしても使いやすいのではないだろうか。

4:3アスペクトでの撮影も、フレームレートの制限がなくなったことで、利用しやすくなった。広めにとって16:9やHD切り出しに利用できる。また縦構図にはなるものの、被写体トラッキングはかなり実用的だ。

コンシューマ用途としてはオーバースペックなところもあるが、プロユーザーにはまさに重要な機能強化だと言える。画質的にはすでに4で不満はなかったが、5Proはさらに分かっている人のカメラ、という位置づけだろう。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。