小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1007回
拡張できるアクションカメラ!?「DJI Action 2」を試す
2021年10月28日 08:00
DJI Osmo Actionから2年
今や小型カメラメーカーとしても立ち位置を強化しつつあるDJIだが、先日発表されたDJI RONIN 4Dには驚かされた。元々ドローンメーカーということもあってプロ用ジンバルでも人気が高かったが、ジンバル搭載のフルサイズシネマカメラまで登場させるとは、正直思ってもいなかった。
DJI RONIN 4Dはオプションパーツをどんどん合体させていけるシステムだが、アクションカメラ文脈でも同様のカメラが登場した。10月27日に発表されたDJI Action 2は、必要なパーツを組み合わせて自由に拡張していける、超小型システムカメラとも言える製品だ。
初代機とも言えるDJI Osmo Actionは、2019年の発売で、見た目も機能もGoPro互換機とも言える作りであった。正直これでは勝てないと思いつつも、DJIがジンバルのないカメラを作り始めたという意味で、エポックメイキングな製品であった。
あれから2年、DJIがアクションカメラに新風を巻き起こす。
多彩なユニットで拡張できる
DJI Action 2は、2タイプのコンボパッケージで販売される。「DJI Action 2 Dual-Screen Combo」は、カメラユニット、フロント タッチスクリーン モジュール、マグネティック アダプタ マウント、マグネティック ボールジョイント アダプタ マウント、マグネティック レイヤード、充電ケーブルのセットとなっており、価格は63,800円。
「DJI Action 2 Power Combo」はフロント タッチスクリーン モジュールではなくパワーモジュールが代わりに同梱されるセットで、価格は49,500円。今回はアクセサリもフルでお借りしている。ただし発売前のサンプルなので、最終仕様とは異なる可能性があることをお断りしておく。
まずはカメラユニット部から見ていこう。面積としてはスマートウォッチの画面程度を意識したサイズ感になっており、39×39×22.3mmと、かなりコンパクトだ。正面にレンズ、上部に録画ボタン、背面にタッチスクリーンを備えており、底部にはアクセサリユニットを取り付けるための端子がある。重量は56gで、水深10mまでの防水性能を持つ。
レンズは155度の超広角レンズで、F2.8。センサーは1/1.7インチのCMOSで、ISO感度は100~6400。静止画での最大解像度は4,000×3,000ピクセルだ。レンズ下にある小さな穴は、色温度用センサーだ。右下の小さい穴がマイクである。ディスプレイは446×424ドット、1.76インチで、350ppiとなる。
ボディは金属製で質感も堅牢性も高い。580mAhのバッテリーも内蔵しており、内蔵メモリーは約20GB。動作時間は、1080/30pの省電力モードで約70分。
カメラユニット単体で動作するが、フロントタッチスクリーンモジュールを下にくっつけると、前後にモニターがあるカメラとなる。すなわち、「縦型」が基本のカメラとなる。接続は強力なマグネットだが、左右にクランプもあるので、ねじれ方向に力を加えるとすぐ外れるというマグネットの弱点をカバーする。
フロントタッチスクリーンモジュールには1,300mAhの拡張バッテリーも内蔵しており、1080/30pの省電力モードで約160分の長時間記録にも対応する。マイク3つとスピーカーを内蔵しており、カメラユニットにはないmicro SDカードスロットやUSB-Cポートがある。また側面に録画ボタンを備えており、カメラ側でもこちら側でもどちらでも録画できる。
モジュール側のスクリーンもタッチ式で、カメラユニットのディスプレイと全く同じ操作が可能だ。
一方パワーモジュールの方は、フロントタッチスクリーンモジュールからディスプレイとマイク、スピーカーを外したものと考えればいい。バッテリー容量は同じく1,300mAhで、録画ボタンとmicroSDカードスロットを有する。ディスプレイが無いぶん動作時間が伸びて、同条件で180分となる。
カメラユニットを充電する際には、このいずれかのモジュールが必要になる。カメラ本体には充電端子がないので、モジュール経由でカメラ内バッテリーも充電するからだ。
そのほかのアクセサリも見ておこう。マグネティックアダプタマウントは、GoProアクセサリと互換性があるマウントだ。底部に磁石とクランプでくっつけるのは同じである。
マグネティックボールジョイントアダプタマウントは、角度が自由に変えられるマウントで、底部には三脚穴がある。また底部に粘着性のあるスタンドをねじ込むことで、ガラス面などにくっつけて撮影できる。
マグネティックレイヤードは、カメラユニットを磁石でくっつけて首からぶら下げるためのツールだ。プレートを服の中に入れ、カメラユニットで服を挟む格好で固定する。
別売アクセサリとして、リモートコントロール拡張ロッドがある。これは3段に伸びるロッドで、底部のグリップが三脚兼用になっているというよくあるアクセサリだが、着脱可能なBluetoothリモコンが付属する。フル充電で約5時間の動作が可能で、録画開始だけでなく、カメラユニットの撮影モード変更もできる。
防水ケースは、カメラユニットと拡張モジュールをくっつけた状態で水中撮影するものだ。拡張モジュールは防水仕様ではないので、長時間の水中撮影には必須となる。このケースを使うと、水深60mまで耐えられる。ケースに入れると録画ボタンしか押せないので、設定変更はスマートフォンアプリか拡張ロッド付属のリモコンが必要になる。
また水中撮影用としてフローティングハンドルもある。これはストラップが付属しているだけでなく、ハンドル自体が「浮き」になっているので、水中で見失っても水面に浮上してくる。グリップ底部が蛍光オレンジになっているので、海上でも見つけやすいはずだ。
また別売でマクロレンズもある。これもカメラユニットにマグネットで固定する専用品だ。
ハイフレームに振り切ったスペック
すでにアクセサリ関連だけでお腹いっぱいになった感はあるが、まだカメラ性能をご紹介していない。撮影モードとしては、写真、動画、クイッククリップ、スローモーション、タイムラプスの5つ。スマホアプリ「DJI Mimo」を使用すると、このほかにハイパーラプスとライブ配信モードが利用できる。ハイパーラプスはタイムラプスと似たような機能だが、撮影中に設定したフレームレートと等倍撮影が切り替えらえる。
撮影可能な動画フォーマットとしては、以下のようになる。
撮影モード | 解像度 | フレームレート |
4K(4:3) | 4,096×3,072 | 24/25/30/48/50/60fps |
4K(16:9) | 3,840×2,160 | 24/25/30/48/50/60/100/120fps |
2.7K(4:3) | 2,688×2,016 | 24/25/30/48/50/60 fps |
2.7K(16:9) | 2,688×1,512 | 24/25/30/48/50/60/100/120fps |
1080p(16:9) | 1,920×1,080 | 24/25/30/48/50/60/100/120/200/240fps |
動画の最大ビットレートは130Mbpsで、コーデックはH.264とH.265が選択できる。ただし、4Kで100fps以上のハイフレームレートやスロー撮影する場合は、H.265固定となる。スロー撮影は、HD解像度では4倍と8倍、2.7Kと4Kでは4倍となる。
電子手ぶれ補正機能としては、強力な補正を行なうRock Steadyと、水平を維持するHorizon Steadyの2モードを備える。Rock Steadyは全解像度で使用できるが、Horizon Steadyが使えるのはHD解像度と、2.7K (16:9)の60fpsまでとなる。
画角設定は、超広角、広角、標準(歪み補正)の3モード。ただしHorizon Steadyモードの際は、標準(歪み補正)固定となる。それぞれの画角は以下の通り。
簡単に操作方法も見ておこう。シャッターボタンを押すと電源ON。もう一度押すと撮影開始だ。画面を上から下にスワイプすると、設定画面が出てくる。下から上にスワイプすると、撮影モードとフレームレート、手ぶれ補正モードの選択だ。右から左にスワイプすると、視野角の設定、左から右は再生モードとなる。また画面中央付近を左にスワイプすると、撮影モード選択となる。電源OFFはシャッターボタン長押しである。
ボイスコントロールにも対応するが、サポート言語は英語と中国語のみだ。「Start Recording」「Stop Recording」「Take Photo」「Shut Down」の4コマンドに反応する。
良好な撮り味
では早速撮影してみよう。昨今はアクションカメラとはいえ、4K撮影が標準になっているところであるが、60p撮影はもちろんのこと、最高120p撮影まで可能なのは心強い。今回は4K/60pをベースに撮影し、一部4Kで対応できない撮影のみ1080/60pで撮影している。撮影日はあいにく曇天でパッとした絵ではないが、ご容赦いただきたい。
まずは手ぶれ補正から確認していこう。Rock Steadyは、歩いていると歩行の上下感があるが、むしろ走ってしまった方がブレが止まる。補正の周波数が、歩行よりもっと高い方に合わせてあるのだろう。Horizon Steadyはカメラがどう傾いても水平をキープするので、マグネティックレイヤードで服に取り付けた際に便利である。
一般的な撮影では、背面液晶は小さいが見やすいので、コンパクトながらも全く普通のカメラとして使える。スマートフォンを併用すればワイヤレスでモニターできるので、モニターが見えづらい角度でも撮影には問題ない。録画ボタンは適度なクリック感があり、確実に反応するので、この手の小型カメラにありがちな「逆スイッチ」は一度も起こらなかった。サンプルには、途中防水ケースで撮影したカットや、マクロレンズ使用のカットも入っているので、確認して欲しい。
音声収録では、フロント タッチスクリーン モジュールを併用すると、前後左右にマイクがあることになるので、全周囲の音の収録が可能だ。Vlog撮影でも使いやすいだろう。
ただ長時間収録していると、時折収録音声に音のダブりのようなものが乗る現象が見られた。この辺りは今後のファームアップで修正されるだろう。
スロー撮影は、4Kでは4倍、HDでは4倍と8倍の撮影が可能だ。ハイスピードでも画質やSNの低下が見られず、なかなか良好だ。もうちょっと光量のある日にもう一度試したいところである。
静止画撮影でも、解像度はまずまずで、広角レンズを生かした面白い絵が撮れる。ただ、被写界深度の深さを生かした遠近のある構図では、標準(歪み補正)だと遠景の歪みは補正されるが近景の端の方が歪む。むしろ歪み補正なしの方が、写真としては面白いかもしれない。
総論
合体型のカメラは過去にも色々あったが、構造が複雑になり、また取り回しも面倒ということで、あまり普及しなかった。しかしAction 2の場合は、カメラ部とモジュール部が同サイズであり、着脱も簡単だ。
今どきのカメラとしては、HDRやRec.2020といった深度方向へは拡張せず、ハイフレームレート方向へ伸ばしたことで、用途を明確化した格好だ。ライトユースなら、すでにDJI OMシリーズやDJI Pocket 2といった製品で、DJI Mimoアプリでちょっと編集してすぐシェア、という流れがすでにできている。本機も同様のラインに乗れる。モジュール側が防水ではないことから、GoProのように吹っ飛んだりぶっ壊れたりする事を前提とした激しい撮影ではなく、もうちょっと落ち着いた撮影に向く。
価格も63,800円と49,500円の2つのコンボがあり、ちょうどGoPro Hero10のサブスク価格54,000円を挟むような格好である。自撮りするなら63,800円のDual-Screen Comboは必須だが、フロントタッチスクリーンモジュールは別売19,800円であとからでも買える。前方しか撮らないなら、49,500円のPower Comboで十分だ。
Vloger向けカメラとしても、十分対応できる。この形になって初のカメラだが、動作も安定しており、DJIの技術力の高さや勢いを感じさせる一品だ。