小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1048回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

あっこれ本気だ。GoProを超え始めた「DJI Osmo Action 3」

9月4日よりティーザーが公開されていた「DJI Osmo Action 3」

もはやイノベーションは中国から!?

ここのところ小型カメラ系では、Insta360の製品ラッシュが続いている。7月に「Insta360 ONE RS 1インチ360エディション」、8月に「Insta360 Link」、9月に「Insta360 X3」と、毎月何らかの新製品が登場している事になる。まあそれぞれコンセプトが違うので、プロジェクトが別々に走っているのだろうが、レビューするほうも大変なのである。

中国勢と言えばDJIも、ある種カメラメーカーとしての存在意義を高めている。DJI Pocketシリーズは小型ジンバルカメラ、昨年登場のDJI Action 2で縦型合体分離という新しい方向性を打ち出した。

そもそも初代DJI Osmo ActionはGoProクローンなスタイルだったが、これでは勝てないということから「Action 2」に進化したのかと思っていた。ところがこの9月に発表された「Osmo Action 3」は初代同様、GoProスタイルで攻めてきた。ただし中身はかなり本気の改良が多数盛り込まれており、この形で本気でGoProに勝ちに行く気合いが感じられる1台となっている。

価格は基本セットの「Osmo Action 3 Standard Combo」が47,300円、拡張バッテリーキットを含むアクセサリーセット「Osmo Action 3 Adventure Combo」が66,000円となっている。今回はこの「Osmo Action 3 Adventure Combo」をお借りしている。

シンプルな形状に多くのイノベーションを組み込んだ「Osmo Action 3」を、さっそく試してみよう。

練り直されたボディとスペック

カメラではボディは同じで中身がマイナーアップデートする例も多いが、Osmo Action 3はサイズ感こそ初代Osmo Actionに近いものの、ボタン配置からバッテリー挿入口まで、まったく別物となっている。UIまで新しくなっており、本当に設計を一からやり直したことがわかる。

新設計となったボディ

ボディ全体は水深16m防水となっており、ハウジングなしで水中撮影が可能だ。以前よりレンズカバーが薄型になり、金属製のエッジを保護するためのシリコンカバーが付属する。ガラス部にはゴリラガラスを採用し、撥水・耐油コーディングが施されているため、水に濡れても表面に水滴が貼り付く心配がない。これはあとで試してみよう。

カバーガラスには撥水・耐油コーディング

レンズは視野角155度、35mm換算12.7mm/F2.8の単焦点レンズ。センサーサイズは1/1.7インチで、最大4K/120fpsで撮影できる。画角としては超広角、広角、標準(歪み補正)の3段階から選択可能だ。

撮影可能な動画解像度とフレームレートは以下の通り。16:9では最高120fpsだが、4:3では60fps止まりとなる。動画コーデックは、H.264とHEVCが選択できる。

モード解像度フレームレート
4K(4:3)4,096×3,07224/25/30/48/50/60
4K(16:9)3,840×2,16024/25/30/48/50/60/
100/120
2.7K(4:3)2,688×2,01624/25/30/48/50/60
2.7K(16:9)2,688×1,51224/25/30/48/50/60
/100/120
1080p(16:9)1,920×1,08024/25/30/48/50/60/
100/120/200/240

手ブレ補正は、全方向手ブレ補正の「RockSteady 3.0」、全方向手ブレ補正 + 最大45度までの傾きを補正する「HrizonBalancing(HorizonSteady±45°)」、全方向手ブレ補正 + 360度の傾き補正を行なう「HorizonSteady」の3パターンがある。それぞれ利用条件があるので、表組みでまとめておく。

モード効果制限
RockSteady 3.0手ブレ補正全解像度・
フレームレートで使用可能
HrizonBalancing手ブレ補正+45度までの
水平維持
4K(16:9)/60fps以下で
使用可能
HorizonSteady手ブレ補正+360度の
水平維持
2.7K(16:9)/60fp以下で
使用可能

前面1.4インチと背面2.25インチのディスプレイは、画角確認のモニターとして使用できるのはもちろん、タッチスクリーンになっており、前面ディスプレイも背面と同じく全てのメニュー操作が可能。取り付けてしまってから設定変更、みたいなシーンでも問題なく利用できる。

従来通りタッチスクリーンの背面ディスプレイ
前面ディスプレイでもタッチ操作が可能に

UIとしては、下へのスワイプでメインメニュー、上へのスワイプで撮影モードごとの設定、右にスワイプで再生画面、左へスワイプで撮影モード変更となる。そのほか画面右の設定アイコンで露出や音声機能へアクセスできる。なお片側のタッチスクリーンを使用しているときは、反対側のスクリーンはロックされる。両面同時に触って設定変更はできない、ということだ。

UIのデザインも刷新

今回マイク位置が変わり、正面のACTION 3と書かれた名版の中に2つある。加えて底部のDJIのロゴの内部にもマイクがあり、風切り音低減に効果を発揮するという。

型番部分にマイクと色温度センサーが内蔵された
底部のロゴ部分にもマイク

またACTIONの「O」の字の中は色温度センサーとなっており、撮影中でも動的に判断してホワイトバランスと露出を追従する。水面から水中に潜るといったシーンでも、特に水中モードに切り替える必要がないわけだ。

バッテリーは右側から挿入するスタイルに変更されたが、バッテリー自体も改善されている。容量は1,770mAhで、最大160分の動作が可能。タイムラプス撮影でテストしてみたところ、2時間11分撮影できた。また-20度での低温でも動作可能で、ウィンタースポーツ撮影に強みを発揮する。また80%充電まで18分という高速充電にも対応する。

バッテリーも新設計

「Osmo Action 3 Adventure Combo」では、3本のバッテリーを含む充電器も同梱されている。LEDの色で電池残量が把握でき、USB-C端子で充電できる。

「Osmo Action 3 Adventure Combo」に付属のバッテリー充電器

また今回は、プロテクトフレームに縦撮り用の仕掛けが搭載された。本体底部には元々マウント部があるが、側面にはない。そこでプロテクトフレームの側面にマウント部を付けて、縦でも横でも自由に取り付けられるようになっている。

プロテクトフレームにヒミツが
縦撮り用にもマウントできるようになっている

マウントは、Action 2でも採用されていた磁石でくっつくタイプのクイックリリースアダプタマウントを採用。基本的には両脇のツメで挟んで固定するわけだが、取り付け位置に対して磁石で引き込まれるため、位置決めする必要がない。引き込まれたら、ギュッと押しつけるだけでツメがパチンとはまる。

マウント部は磁石で引き合う設計

発色の良い絵柄

撮影画角は、超広角、広角、標準(歪み補正)の3段階となる。手ブレ補正OFFでのそれぞれの画角は以下のようになっている。

超広角
広角
標準(歪み補正)

RockSteadyをONにすると、1段階ずつ狭くなる印象だ。さらにHorizonSteadyをONにしても、水平維持が加わるだけで、画角には違いはない。

2.7K(16:9)/60fp以下では、360度の水平維持が使える。HrizonBalancing(HorizonSteady±45°)と、HorizonSteadyでの挙動の違いをテストしてみた。HorizonSteadyはひっくり返っても水平を維持するが、4Kでの撮影では45度までの補正となる。ただ通常の撮影では、45度まででも十分実用に耐えるだろう。

水平維持モードの違いをテスト

では補正力をチェックしてみよう。今回は4K60pで撮影しつつ、OFF、RockSteady 3.0、HrizonBalancing(HorizonSteady±45°)の3段階をテストしてみた。かなりの悪路を自転車で走行しているが、RockSteady 3.0はかなり強力にブレを抑える。さらに水平維持も加わると、悪路を走行しているとは思えない滑らかな動画が撮影できる。縦撮りでも同様にテストしてみたが、効果としては変わらないようである。

手ブレ補正比較

今回は縦撮りでサンプルを作ってみたが、元々発色も綺麗なので、空抜けも美しく、スカッとした映像が撮れる。手ブレ補正もあり広角なので、手持ちでも十分動画撮影に耐える。

4K/60p縦で撮影したサンプル

発色の傾向は静止画でもあまり変わらない。プロテクトフレームに入れるとシャッターボタンがかなり堅くなるのが難点だが、スナップ撮りも楽しいだろう。

静止画モードで撮影したサンプル

高度化する特殊撮影機能

続いて気になるのは、音声の扱いである。音声モードにはステレオ/モノラルのほか、指向性としてオフ/前方の切り替えができる。また風ノイズ低減のオン/オフが可能だ。

右側の設定アイコンをタッチすると表示される音声設定

今回は底部にもマイクがあるとのことだが、そこはマウント機構があるので、マウントを取り付けてしまうと集音に影響があるのではないかが気になるところだ。そこで横と縦で集音具合が変わるかテストしてみた。集音モードは、ステレオ・前方指向性・風ノイズ低減オンである。

縦横の集音の違いをテスト

実際比べてみても、違いはほとんどわからない。レベルメーターの振れ方も変わらなかった。底部マウントの影響は考えなくても、ちゃんと底部マイクは動作するようだ。

Vlog撮影では、自撮り棒を使ってのセルフィー撮影も多用される。360度カメラでは自撮り棒を消すことができるが、アクション系のカメラにはその手の機能がなかった。ところが本機はそれをAIの力で処理する。

クラウドに上げて処理を行なう「InvisiStick」機能をアプリ側に搭載

棒の消し込みはその場ではできず、専用アプリを使ってクラウドで処理させることになる。結果としては、まあ消えてると言えば消えてるのだが、処理としてはもう一歩という感じである。ただAIなので、処理を重ねていくうちに完成度も向上するだろう。

AI処理による自撮り棒消去

レンズのカバーガラスのコーティング性能もテストしてみた。海の中に沈めて取り出すといった動作を繰り返してみたが、ガラス表面に水滴が付着することはなかった。サーフィンやボディボード、あるいはウインタースポーツでも安心して撮影できるだろう。また水中でのホワイトバランスの追従性にも注目してみて欲しい。

水中撮影のテスト

タイムラプス撮影では、あらかじめシーンに応じた撮影間隔がいくつかプリセットされている。ただ全体的に撮影時間が短めなので、1時間2時間といった撮影を行なう場合は、カスタム設定を使う事になる。

タイムラプスではあらかじめシーンに応じたタイムがプリセットされている
カスタム設定で撮影したタイムラプス

総論

ティーザー広告を見る限り、縦撮りぐらいしか特徴がないのかなと思っていた。だが実際に触ってみると、縦撮りどころかこのスタイルでの完成形を目指し、やれることは全部やった感のあるカメラなのがわかる。

またマウント部が工夫され、縦でも横でも瞬時に付け替えられるのは面白い。同じセッティングで縦横2回撮影も可能だ。この場合、メニューなども90度回転してくれるので、首を曲げて設定変えする必要もない。

今回はバッテリーが3本あったため、タイムラプスも気軽にチャレンジできた。バッテリー持続時間もそこそこ長いので、長時間撮影に耐えるのはありがたい。また撮影日は晴天で気温も高かったが、特に冷却しなくても熱暴走することもなく、安定して撮影する事ができた。低温だけでなく、日本の夏にも耐えられるようだ。

一点苦言を呈するなら、初代がOsmo Actionで、二代目がDJI Action 2、三代目がOsmo Action 3と、Osmoが付いたり付かなかったりするのはややこしい。公式サイトを見ても、シリーズ名にはOsmoが付くが製品名にはあまり付かないなど、法則がよくわからない事になっている。このあたりは整理して欲しいところだ。

それにしてもこの円安の中、これだけの機能を積みながら単体で47,300円は、かなり戦略的な価格設定だ。このタイプのアクションカメラでは、いよいよDJIが天下を取りに来たという事だろう。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。